■ J2からの降格を経験しているのは3チームのみJ2のクラブ数が上限である22クラブに達したため、下部リーグ(=当時はJFL)への降格制度がスタートしたのは2012年だったが、このときはJ2で最下位に終わった昇格1年目の町田ゼルビアが自動降格した。翌年はガイナーレ鳥取がJ2で最下位になって入替戦に進んだが、讃岐との決戦に敗れてJ3への降格が決定。翌々年の2014年はカターレ富山がJ2で最下位となってJ3に降格することになった。
2014年に21位だったカマタマーレ讃岐は入替戦に回ったが、J3で2位の長野パルセイロと戦って辛くもJ2残留を決めたことは記憶に新しい。まとめると、2012年は町田ゼルビア、2013年はガイナーレ鳥取、2014年はカターレ富山がJ2に降格して、現在はJ3に所属している。富山は降格1年目であるが、町田と鳥取は再昇格に失敗している。「J2への再昇格を果たしたチームはゼロ」というのが現実である。
今後、J3リーグはクラブ数が増えていく見込みなので、J2再昇格の難易度はますます高くなると予想される。改めて言うまでもない話であるが、(J1からJ2に降格するのもクラブとして大ダメージを受けるが、)J2からJ3に降格するとその比ではないほど露出度が減少する。経営的に苦しいクラブにとって「J3降格」というのは現時点では死活問題となる。J3降格は絶対に避けなければならないことである。
■ 金沢・群馬・讃岐・愛媛FCの4チームが降格候補と言われていたが・・・。結局、JFLあるいはJ3への降格経験のあるクラブは町田と鳥取と富山の3チーム。ということでいずれも比較的、最近J2に昇格してきた新しいクラブだった。多くのJ2クラブにとって「J3降格」というのは現実味の薄い話だったが、今シーズンは様相が異なる。25節が終了時点では京都が20位で、大分が22位の最下位。J1経験が豊富でタイトルを獲得したこともあるクラブがJ3降格の危機に瀕している。
開幕前、多くの人が降格候補に挙げていたのは昇格1年目の金沢、昇格2年目で昨シーズンは21位だった讃岐、主力の流出が目立った群馬、粉飾決算の問題が発覚した愛媛FCの4チームだった。この4チームが残留争いの中心になるのではないか?と予想した人が大半だったが、降格予想が多かった4チームはシーズンが始まるといいペースで勝ち点を積み上げたため、残留争いの展開が全く読めなくなった。
金沢の快進撃については今更触れるまでもないだろう。一時は首位に立つなど前半戦のJ2の主役だった。組織的な守備と必殺のセットプレーを武器に3月・4月・5月は順調に勝ち点を積み上げた。ここにきて勝ちきれなくなっているが、十分すぎるほどの貯金があるため、降格を気にする必要は全くない。謙虚な森下監督は「あくまでも目標は残留」と語っているが、プレーオフ圏内も十分に狙える。
群馬の奮闘ぶりも大きな話題になった。FW平繁、FWダニエル・ロビーニョ、DFクォン・ハンジンという攻守の軸となる選手が揃って流出した一方で、即戦力と言えるのは古巣に戻ってきたMF松下裕くらい。新監督の服部監督も未知数だったため、不確定要素が多かったが、昇格候補の千葉を連破するなど「大物食い」で話題になった。MF江坂、MF吉濱、FW野崎桂など活きのいい若手の活躍も目立つ。
金沢や群馬ほど話題になっていないが、昇格2年目の讃岐も頑張っている。J1経験が豊富なGK清水健を獲得した効果は絶大で、失点数はJ2の中でも屈指の少なさ。DF藤井航とDFエブソンを中心とした中央の守備は堅くて、MFアンドレアやMF仲間を中心としたカウンターは切れ味抜群。典型的な堅守速攻型のチームであるが、FW木島良を筆頭に攻撃陣は個性派ぞろい。顔ぶれはなかなか魅力的である。
愛媛FCも悪くない。5試合連続無得点と苦しんだ時期もあるが、26節はアウェイで札幌を下したことで一息付ける状況になった。攻守の軸となるボランチ陣に怪我人が続出していることは木山監督にとっては大きな誤算と言えたが、FW西田とMF瀬沼とMF河原のトライアングルはJ2の中でも屈指の破壊力を持っており、右足のミドルパスの精度が高い大卒ルーキーのDF江口は飛躍のシーズンになっている。