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【安田理央の「アダルトカルチャーの今と未来」】(112) 違法アップロードサイトによる“挑発的なアピール”

AVの違法アップロードサイトとして知られる『MissAV』が今年1月に突如、閉鎖されました。法的手続きによってドメインの没収が行なわれたとのことでした。しかし、その後、MissAVはドメインを変えて復活。しかもトップ画面には、こんなメッセージが表示されていたのです。「Iさん(※原文では女優名)への感謝の気持ちを込めて、MissAVではIさんの動画を広告なしでご覧いただけます!」。

MissAVは違法アップロード動画の再生前に広告を流し、その収益で運営されているサイトのようなのですが、超人気AV女優であるIさんの作品だけ広告を外して再生できるようにするというのです。何故Iさんが狙い撃ちされてしまったのかといえば、MissAVのドメインを没収したというメッセージ画面には当初、Iさんの顔写真が掲載され、“JAV海賊版対策プロジェクト(※カバーガール:I)”というクレジットが表記されていたのです。つまり、Iさんに逆恨み的な嫌がらせ攻撃に出たというわけです。

しかも、「1000万人が『MissAVが帰ってきた!』とSNSに投稿されれば、MissAVはすべての広告を削除します!」等という挑発的なメッセージまで書かれています。現在はドメイン没収の画面からはIさんの画像は削除されていますが、MissAV側のトップ画面は今でもそのままです。

4月に入ると、再びMissAVへのアクセスが制限されます。今度はこんな画面が表示されるようになります。「このサイトは、児童への著しい権利侵害である児童ポルノを掲載しているサイトと判定され、児童ポルノアドレスリストに掲載されているためブロックされました」。このメッセージ画面には“一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会”とクレジットされています。

『インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)』は、児童ポルノ画像等の違法コンテンツの流通を防止することを目的に2011年に発足した団体で、プロバイダー事業者や検索エンジン事業者等によって運営されています。つまり、MissAVはICSAに有害サイトとして指定され、日本からのアクセスをブロックされたというわけです。

これでいよいよMissAVも終わりかと思いきや、日本からのアクセスが制限されているだけで、サイト自体は存在し、VPNやミラーサイトを利用すれば見られてしまう等、結局はいたちごっこになってしまっているのが現状です。そして、たとえMissAVが完全に閉鎖されたとしても、他にもこうしたサイトは数多く存在している為、状況は変わらないでしょう。DVDから配信へと移行が進んだ日本のAV業界において、違法アップロードは以前にも増して大きな問題となり、業界に大ダメージを与えているのです。


安田理央(やすだ・りお) フリーライター。1967年、埼玉県生まれ。雑誌編集者やコピーライターを経て、1994年からフリーに。著書に『AV女優、のち』(角川新書)・『ヘアヌードの誕生 芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』(イーストプレス)・『日本AV全史』(ケンエレブックス)等。


キャプチャ  2025年5月5日号掲載

テーマ : アダルト
ジャンル : その他

【石井聡の「政界ナナメ読み」】(56) “岸田再登板”で自民は立ち直るか

内閣総辞職から僅か2ヵ月余りの間に、岸田文雄前首相の再登板説がしばしば語られるようになった。石破茂内閣の評判が出だしから芳しくないので、政治ネタに事欠いているのか。自分も取り上げているのだから、それは言うまい。とはいえ、岸田氏本人がまんざらでもない様子に映るのは、不気味というより珍妙だ。

アメリカのドナルド・トランプ次期大統領の復帰等に後押しされたのでもあるまいが、このところ『資産運用立国議員連盟』を立ち上げ、石破首相と意見交換する等、岸田氏は意欲的な動きを見せる。だが、ちょっと待ってほしい。岸田氏は自身の再選がかかった総裁選での勝負を避けたのだ。昨年は“裏金”問題を受けて唐突に派閥の解消を打ち出し、その後の党内の新たな組織づくりに取り組んだわけでもなかった。“政治とカネ”の問題で対応に手間取り、衆院選でこれを大きな争点にしたとの批判もある。

派閥解消も政治倫理審査会に自ら出席したこと等、岸田氏の対応についての評価は分かれる。しかし、“衆院選惨敗→与党過半数割れ”の元凶を辿れば、そこに岸田氏が存在することに目を瞑るわけにはいかない。果たして、その当人が軽々に再登板を考えるだろうか。

もし昨年末から今年にかけての早い段階、つまり傷の浅い段階でけじめをつけていれば、国民の側も多少は“いずれ再起を期す為の退陣”という受け止め方はできただろう。8月のお盆休みの時期まで決断をためらったのは、“決められない政治”を象徴するものだったとも言える。

もちろん、岸田氏が再登板に挑む権利はある。健康面で特に問題を抱えているわけでもなさそうだし、気力は十分。首相在任中、防衛力強化や賃上げ、投資の促進等に果敢に取り組んだ姿勢には好評価もある。良好な日米関係の維持にも努めた。

何よりも岸田氏を有利にしているのは、自民党内でその復権を阻止する強い敵が見当たらないことだ。総裁選に出た候補のうち、高市早苗前経済安全保障担当大臣は衆院選で多くの同志を失った。小泉進次郎元環境大臣は総裁選で敗れた後、衆院選大敗後に党選挙対策委員長も引責辞任した。実力を持ちながら、酷い負け方で格を下げた候補もいる。

一方、二階俊博元幹事長の引退に象徴されるように、長老やキングメーカー等と位置付けられてきた人達も“実力者”と呼ぶには影が薄くなった印象だ。総裁選で思い通りのシナリオを描き切れなかったことが大きい。派閥解消で党内が流動化した状況で、これを本格的な再編成に繋げるような気配も見られない。

“石破おろし”がただちに起きないのも同様の事情があるが、与党過半数割れショックから立ち直る力は残っていないということだろうか。いずれかの時点で石破首相が行き詰まった場合、新たな後継者を送り出せず、急場凌ぎで岸田氏の再登板を許すようでは、党再生への期待や関心は失われるだろう。

高市氏がインターネット番組で、小林鷹之元経済安保担当大臣との連携を前提とした“保守派”の結束が必要だと語った。何故、先の総裁選でそれをしなかったのだろうかとも思うが、自民党の保守とは何かについて、改めて明確にできるものになるなら有意義なことだ。どちらがシャッポになるかで頓挫するのは惜しい。まずは、双方の同志達が具体的な連携の動きに繋げられるかどうかに注目したい。 (本紙特別記者 石井聡)


キャプチャ  2024年12月6日付掲載

テーマ : 自民党の腐敗
ジャンル : 政治・経済

【誰の味方でもありません】(393) 老いた街の“潜伏キリシタン”

https://www.dailyshincho.jp/article/2025/04240555/?all=1


キャプチャ  2025年4月24日号掲載

テーマ : 九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)・沖縄地方の各県の路線案内
ジャンル : 地域情報

【WORLD VIEW】(157) バンクシーは何故特別なのか?



世界的に注目される作品達が、不思議なほど街の景色に溶け込んでいた。独特の存在感を漂わせながら――。私は今月、ロンドンに赴任した。先ず確かめたかったことの一つが、正体不明の芸術家・バンクシーのグラフィティー(※落書き)がどんな場所に、どのように描かれているのかということである。

西部ブリストル近郊出身の50歳前後の男性だといわれるバンクシーは、特にブリストルやロンドンに多くの作品を残してきた。自身のウェブサイトや『インスタグラム』に作品をアップするが、描いた場所は明かさない。その為、ファンらが場所を特定し、分布図等をインターネット上に公開している。私はそうした地図を頼りに、地下鉄やバスを乗り継ぎ、これまでに8作品を見に行った。宝探しのようでわくわくした。

モノクロで繊細なタッチが特徴の彼の作品は、時に予想外の場所に現れる。専門学校の外壁の下部に小さく描かれたものもあれば、レストランのテラス席の壁に収まっているものもある。グラフィティーが“ストリートアート”とも言われる所以だ。

バンクシーの壁画は、他のグラフィティーライターに上書きされたり、壁ごと盗まれたりして、消失しているものが少なくないが、残っている作品の多くはプラスチックのパネルで覆われている。建物の所有者や自治体による保護措置だ。最早落書きではなく、一種の“アート”として認知されていることが窺える。ただ、写真を撮る私に「こんな落書きがアートなのか、俺にはよくわからないな」と吐き捨てるように言う初老の男性もいた。

グラフィティーの文化は、1970年代にニューヨークで生まれたヒップホップの四大要素の一つとして始まった(※他の要素はラップ、DJ、ブレイクダンス)。スプレーを使い、自分の名前や社会的・政治的なメッセージ等をイラストやデザイン化された文字(※タグ)で表現する。

ただ、公共物や私有財産に無許可で描かれることが多く、器物損壊等の罪に問われる可能性がある。自宅の壁等に勝手に描かれて怒る人も当然いる。それでも、ロンドンではグラフィティーをあちこちで目にする。規制よりも表現の自由をできるだけ優先しようという価値観を感じる。私が2022年まで赴任していたアメリカの都市部も、“壁に世相が表れる”と思うほど街にグラフィティーが溢れていた。

イギリスの調査会社『ユーガブ』が2023年2月に実施した世論調査によると、同国の成人の67%が「グラフィティーをアートと見做すことができる」と回答している。そうした国民性がバンクシーを生んだとも言えるだろう。

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テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

【安齋肇の「空耳だけが人生だ!」】(63) 僕は“尻”じゃなくて“耳”のほう

――前回から引き続き、評論家・編集者の山田五郎さんのお話です。山田さんと初めて会ったのはいつ頃ですか?
「彼が未だ講談社の社員だった頃じゃないかな? 何とも記憶が曖昧なのはさ、山田さんとは“山田さん”としては会っていないからね。本名の“武田さん”で会っているから、編集の武田さんで」
「そうだ。1985年頃かなぁ。同じ講談社の編集者だったいとうせいこう君と、ライターの押切伸一君が〈PAPERS〉って同人誌を立ち上げた時にね。武田さんがいてさ、『いとう!』って言ったんだよね。編集部の年上だから当たり前なんだけど、何か怖い感じの人かなぁって思って。僕の周りはフニャフニャだらけだからね。ビシッとスーツ着ているし」
――いつもTシャツ姿の安齋さんとは真逆ですね。
「コラコラ! まぁ、確かに真逆だね。その後、ナンシー関さんが集めた宴会で一緒になったりしていて。で、いきなりタモリ倶楽部ですから」
――山田さんは1991年から同番組のコーナー『今週の五ツ星り』に、“お尻評論家”としてレギュラー出演していましたね。
「伝説のコーナーですよ。今じゃ考えられない、お尻鑑賞コーナー。大きな額縁の中に黒いカーテンがかかっていて、左右に開くとお尻を向けた女性が立っているのね。そのお尻をマジマジと見て、山田さんが講評するのね。『典型的な和尻ですね』とか、『ルネサンス後期の洋尻ですね』とか」
「あの山田さんの持っている美術史の教養が存分に出てくるの。タモリさんも絵画鑑賞のように、時にセクシーに。教養講座のパロディーなんだよ。それが何ともおかしくってさ。初めてテレビに出た時から冗舌なんだ、山田さん。風格すらあった。タモリさんともバッチリ息が合っているの」
――タモリさんの“4ヵ国語麻雀”も“イグアナ”もパロディーですもんね。
「“イグアナ”は形態模写でしょ。ん? 大きい括りで、パロディーか。まぁいいや。んで、しかもフリートークだからさ。凄いのよ。僕はタモリさんにも、山田さんにも感じるんだけどさ、決して知識やら教養やらをひけらかさないんだよね。何か謙遜なの。しかも、それを笑いにすることができる人なんだよ。こんな人は中々いないよ。常に上品でさ、常にきちんとしていて」
――確かに。
「因みに、〈今週の五ツ星り〉と〈空耳アワー〉は数ヵ月間、タモリ倶楽部で一緒に放送していたんだ。僕らって真逆じゃん、見た目も何もかもが。なのに、山田さんに間違えられることがあってさ。空港の荷物検査の人に『今回はお尻の視察ですか?』って聞かれたりしてさ(笑)。ある時なんか『お尻のコーナーを復活させて下さい!』って。いやいや、僕は“耳”のほうだから!(笑)」 (聞き手・構成/フリーライター 尾谷幸憲)


安齋肇(あんざい・はじめ) イラストレーター、アートディレクター。1953年、東京都生まれ。『タモリ俱楽部』(※テレビ朝日系)の空耳アワーにて“ソラミミスト”として出演。これまで『日本航空(JAL)』のリゾッチャのキャラクターデザインや、『ジャストポップアップ』(※NHK総合テレビ)のタイトルアニメーション、『ユニコーン』や奥田民生のツアーパンフレットのアートディレクション、宮藤官九郎原作の絵本『WASIMO』の原画等を担当。『キイテル』(FMヨコハマ)の水曜『安齋肇のちょめラジ』に出演中。


キャプチャ  2025年5月5日号掲載

テーマ : テレビ朝日
ジャンル : テレビ・ラジオ

【上沼恵美子の「一喝!」】(66) 仕事仲間から“人相不良レディー”扱いされている私…愛想よくすべき?



この連載について「口述ですか?」と聞かれることがあるんですが、いえいえ、自分で書いております。読者の皆様からの“お題”を前にうんうん唸り、頭に変な汗をかきながら書いております。あまりにつらいんで「そろそろ最終回に…」と編集部に相談したことも、実はあります。そうしたら4月3日号の本誌で、平松洋子さんがご自身のコラム(※『この味』)で、この連載のことを褒めて下さったんです!

「いつもキレキレ」「膝を打ったり爆笑したり涙が滲んだり、忙しかった」「思わず駆け寄って握手を求めたくなった」「もう最高です」――。何度読み返したか、わかりません。もう少し連載、頑張ってみようと思いました。平松さん、あなたこそ最高です。私のことを「畏れ多くて、最初から呼び捨てはムリ」とお書きになっておられましたが、とんでもない。“エミリー”って呼んで下さい♡
          ◇
Q. いつも楽しく拝読しています。私は現在46歳ですが、若い頃からよく「愛想がなく、怖い顔」と言われてきました。最近、加齢によってその怖い顔にますます磨きがかかり、今や完全に“人相不良レディー”となっています。職場の若い子達からも“恐ろしい顔のお局”と陰口を叩かれていそうな気がします。自分では周囲に配慮して「にこやかになごやかに、優しいオーラを出して過ごさなければ」と思う一方で、「何で若者に迎合して、楽しくもない時にニコニコせなあかんねん。どう思われてもええわい」とも思います。どちらの私でいるべきでしょうか? アドバイスを頂きたくて投稿しました。 (大阪府・女性・46歳)

A. “美魔女”という言葉がありますよね。この言葉を最初に聞いた時、私がイメージしたのは、還暦を過ぎているのに細いウエストを強調させたような服を着て、縦ロールの赤髪にハイビスカスをのっけて歩く女でした。実際にそんな人を見たわけではありませんが、「ええ年して恥さらしな女やな」と思っていました。

誤解でした。“美魔女”というのは、もともとファッション誌の『美STORY』(※現在は『美ST』)から生まれた言葉で、そのココロは“まるで魔法のように年齢を感じさせない美しさを保っている女性”。ある程度、歳を重ねて、外見美と知的美を兼ね備えている大人の女性、というイメージですね。

結局、女の外見がものを言うのは若い時だけ。18から23までです。しかも、外見につられて寄ってくるのはアホな男だけです。月日が経てば人は変わります。いくら“美魔女”といったって、ある程度、歳を重ねた人がホンマに綺麗ということはないんですよ。やっぱり皺も増える、シミも増える、いらんところに肉もついてくる。

でも、様々な経験、出会いと別れを経て、それに伴う喜び、悲しみ、苦しみ、忍耐、優しさ、許す力等が積み重なって、その人の内面から滲み出る本物の美しさを作り出すのです。そう、まさにあなたのような人こそ“美魔女”の素質があるんやと思うんですよ。自分のことを“人相不良レディー”と茶化せる人間力が魅力になってくるんです。

若い子から、恐ろしい顔のお局と陰口を叩かれているかもしれない? 大いに結構。言わせておけばいいんです。何もわかっていないヒヨッコが、あなたの目に見えない美しさの迫力にびびって、鳴いているのです。ピヨピヨ。

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テーマ : 対人コミュニケーション
ジャンル : ビジネス

【今週の「一言物申す!」】(03) “人権重視”の時代に“職業はレイシスト”と書く地方紙があるらしい



埼玉県営公園で先月23日、トルコの少数民族クルド人の祭り『ネウロズ』開催に抗議する市議と一部地方紙の記者が衝突する騒ぎがあったばかりだが、更に驚かされる地方紙があった。首都圏で発行されているこの新聞では、紙面に掲載する人物に“レイシスト”という肩書きが普通に使われているのだ。

レイシストは人種差別主義者を意味し、名指しされた相手にしてみれば相当侮辱的な表現であり、人権侵害と言っても過言ではないが、この新聞では以前から繰り返し使用している。これが過激な政治団体や政党の機関紙でもなく、各家庭に配られる一般紙というのだから驚きである。

「レイシストで埼玉県戸田市議の◯◯氏(※記事では実名)はクルド人への嫌がらせのため祭りの会場にまで乗り込んできた」。この地方紙が先月のネウロズについて書いた〈現職市議がヘイト行為 嫌がらせに市民ら抗議〉と題する記事の書きだしだ。

記事はこう続く。「差別根絶が職務である公人が、子どもたちも大勢いる中で卑劣なレイシズムを実践するというたがの外れぶり」「レイシスト仲間を引き連れた◯◯氏は差別を許さない市民に追い立てられ…」。記事の末尾には男性記者の署名があった。市議が公開したネウロズの動画で、別の地方紙記者2人の背後で野次を飛ばしていた記者だった。

この記事にもあるように、同紙の報道ぶりで驚かされるのが、人物の職業等を示す肩書きに“レイシスト”という言葉が使われていることだ。別の記事でも「◯◯市在住のレイシスト、◯◯氏」等と書かれた新聞が、各家庭に配達されている。「海老名市在住のレイシスト、◯◯氏(※記事では実名)が代表を務める差別団体『◯◯』(※同)のヘイト街宣が◯日、JR川崎駅前で行われた」「ヘイト団体が韓国大使館前で街宣を行い、都内在住のレイシスト、◯◯氏(※同)が…演説を行っていた」。

『広辞苑』によると、レイシズムとは“人種差別主義”。レイシストは人種差別主義者を意味する。ネウロズの動画に一緒に映っていた2記者が其々所属する地方紙でも、流石にこうした使い方はしていない。試みに、記事データベースサービスで“レイシスト”と検索したところ、過去5年間で全国紙と地方紙計48紙のうち、本紙を含む27紙で計510本がヒットした。このうち、この新聞は379本で74%を占めていた。他紙はアメリカのドナルド・トランプ大統領を批判する内容等、海外の記事が目立った。

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テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

【宇垣美里の漫画党宣言!】(142) “ホラー×ギャグ”のオカルト青春劇

辛いものやお酒に加え、ホラーは好き嫌いが大きく分かれるものの代表だ。そして“得意じゃないけど好き”という人が多いのも、これらの特徴。そんな苦手だけどついつい手を伸ばしちゃう、後で「止めときゃよかった~」って思うだろうなとわかっていても、摂取せずにはいられない。そんな怖いものみたさな衝動に抗えない貴方にうってつけなのが『写らナイんです』だ。安心して下さい、怖いのは怖いけど、笑っちゃうくらい最強なんだから。

霊媒体質の黒桐まことは行く先々で見えてはならないものを引き寄せてしまい、周囲にまで悪影響を及ぼしてしまうことから、転校続きの孤独な高校生活を送っていた。そんなある日、彼を部活に勧誘してきたのが、たったひとりのオカルト部部員である橘みちる。みちるはオカルト部に情熱を燃やし、何とか心霊写真を撮ろうと日々奮闘していたが、実は霊感が無さ過ぎるあまり、無意識でそこら中にいる怪異を根こそぎ除霊しまくっているのだった。

みちるによって撮られた初めて変なものが写らナイ自分の写真を手に入れた時のまことの表情には、思わずほろり。その瞬間に、まことはこの作品のヒロインであり、みちるこそが自覚なき白馬の王子様なのだと、ここからまことの人生がリスタートするのだと確信した。

まことの見ている世界は禍々しいものでいっぱいで、怪異のシーンはおどろおどろしい描写含め夢に出てきそうなくらいに悍ましい。それでも読後感は爽やかで、どこまでいっても安心感が漂っているのは、自覚のないままに最強なみちるがそこにいるからこそ。みちるの存在に怯える怪異達が不憫にすら見えてくるほどだ。人生を諦めかけていたまことの厭世観をぶっ飛ばすようなみちるの底抜けの明るさが眩しいったらない。

対怪異には自覚なく負けなしだけどポンコツなみちると、苦労してきただろうにそれでも他人や怪異に優しく面倒見のいいまことのバディー感が徐々に育っていく様子も微笑ましい。何故か怪異を物理的に殴ることができ、まことを守るべき子供として扱う顧問の間宮先生や、オカルトグッズマニアでお金に細かい日下先輩等、2人を取り巻く人々も皆、濃厚な個性の持ち主。ホラーとギャグの反復横跳びはいっそ景気がよくて、この作品そのものに除霊効果がありそうだ。

最新刊では他校のオカルト部による妨害活動で危険な霊が召喚され、果たし状まで残された。えっ、物騒過ぎない? というか、オカルト部の全国大会って一体何なんだ!? 未成年がしていい活動か? そもそも何故みちるはこんなにも強いんだ?――等々、謎は深まるばかり。でも、何の理由も必要ないのかもしれないな。それよりも、部活動や期末テスト、夏祭りに合宿と時に霊に困らされながらも、これまでを取り返すように青春を謳歌するまことが只々可愛らしくて、ずっと見守っていたいんだ。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。著書に『風をたべる』(集英社)・『宇垣美里のコスメ愛』(小学館)・『愛しのショコラ』(KADOKAWA)。近著に『風をたべる2』(集英社)。


キャプチャ  2025年3月27日号掲載

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

【INSIDE USA】(230) ドナルド・トランプが破壊する“20世紀秩序”の先にあるもの

“フランクリン・ルーズベルト以来、最も重要な意味を持つ大統領”――。ドナルド・トランプ氏が昨秋のアメリカ大統領選挙で当選した直後、そう評したのは本誌の先輩格である英誌『エコノミスト』だ。トランプ大統領就任から2ヵ月、その予言めいた評価が着々と現実になりつつある。

20世紀は“アメリカの世紀”と言われた。米誌『タイム』発行人だったヘンリー・ルースがこの言葉を使い、孤立主義的だったアメリカに世界の民主主義のリーダーとしての自覚と奮起を促したのが1941年。その年の12月に真珠湾攻撃を受けて第二次世界大戦に参戦したアメリカは、フランクリン・ルーズベルト大統領に率いられ大戦を勝ち抜き、ルースが呼びかけた通り、世界の指導者と呼ばれるに相応しい大国になった。

そのアメリカの指導力の下で生まれた『国際連合』と『国際通貨基金(IMF)』、『世界貿易機関(WTO)』等が支える“ルールに基づく自由主義国際秩序”は、冷戦を乗り越え、世界の繁栄を生んだ。だが、その20世紀世界秩序に限界が見え、歪みが先進各国の凄まじい格差社会等の形でさらけ出された。その中で登場したのがトランプ大統領だ。冒頭の“フランクリン・ルーズベルト以来、最も重要な意味を持つ大統領”とは、その20世紀秩序の終わりを意味すると解釈できる。

確かに、トランプ氏が矢継ぎ早に繰り出す関税引き上げは、自由貿易ルールなどお構いなしだ。国連ではロシアのウクライナ軍事侵攻を非難する決議に、ロシアと共に反対に回る。助けを求めるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を「お前には切り札がない」と叱りつける。グリーンランドの奪取を示唆したり、カナダにアメリカとの合併を呼びかけてパナマ運河の返還を求めたり──。最早20世紀秩序は、それをつくり出したアメリカ自身によって破壊されている状態だ。

2期目のトランプ政権の対外政策の解釈を巡っては、様々な議論がある。20世紀前半から使われてきた言葉“アメリカファースト”は、孤立主義の標語とされてきた。だが、グリーンランド獲得等の拡張主義傾向はそれとは矛盾する。19世紀のモンロー主義に近い“勢力圏”の思想が前面に出てきたとも考えられる。

20世紀世界秩序の背景にあったリベラリズムの理念が後退し、リアリズムが復権しているという議論が、昨年来盛んだ。つい最近も、『ニューヨークタイムズ』が「トランプ外交は一見粗雑だが、リアリズムである」という自社の論説委員による論考を掲載した。

典型的なリアリズム思考を表明したのはマルコ・ルビオ国務長官だろう。「冷戦後に生まれたアメリカ一極支配の変則時代は終わった。今やアメリカ、ロシア、中国等大国が競い合う多極時代に戻った。そこで如何に戦争や紛争を避け、アメリカの国益を増進するかが課題だ」(※政治コメンテーターであるメーガン・ケリー氏とのインタビューにて)。

突き詰めて言えば、大国だけによる権力政治で平和を維持する19世紀欧州のような世界が再来するということだ。そうした大国間外交時代には、大国の国益の為に小国の利害は軽視、或いは無視される。米露が其々の国益を懸ける頭越し外交で自国の運命を翻弄されているウクライナは、再開された大国間リアリズム外交がつくり出す“平和”の為の犠牲になるのかもしれない。


会田弘継(あいだ・ひろつぐ) 『共同通信』客員論説委員・関西大学客員教授。1951年、埼玉県生まれ。東京外国語大学英米語科卒業後、共同通信社に入社。神戸支局・大阪社会部・外信部・ワシントン特派員・ジュネーブ支局長・ワシントン支局長を歴任。同志社大学一神教学際研究センター共同研究員・上智大学非常勤講師等を経て現職。著書に『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮社)・『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)等。


キャプチャ  2025年3月29日号掲載

テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

【ミズグチケンジの「今日も地球のどこかから」】(26) アムステルダム(オランダ)――“古いもの”を守りながら“新しいこと”が発信される街

20250428 02
「どこに行きたいか?」と訊ねられたら「兎に角、ヨーロッパのどこか」と答える。オランダ、ドイツ、ベルギー、イギリス、イタリア――どの国もいい。その理由は、古い街並みと文化がそのまま残っているからだ。新しい物事を取り入れる方法も、全てを新しくしてしまうのではなく、古い外殻を保ちながら“新しい”を内包していることが多いと感じる。

わかり難いので例を挙げると、アムステルダムのあるショップが古いものの中に“最新”があった。そのショップはサウンドショップ。即ち音楽を売る店だ。色々な音楽を販売しているが、レコー ドやCDではなく、今ならではのデータ販売なのである。好きなヘッドフォンやイヤホンで音楽を試し聞き、気に入ったらその音楽をダウンロードする。

ダウンロードは二次元バーコードを自分のスマートフォンで読み込んで、『Spotify』・『Apple Music』・『Amazon Music』等で視聴できるようになるという仕組みだ。何が新しいって、そのお店はソファーに座ったりお茶をしながら、音楽を聴く僕らに好みの音楽を探してくれるのだけど、それは何と無料なのだ。

そのショップで扱っているのは“音楽”で、音楽がダウンロードされればショップの利益になる仕組みなのか僕にはわからなかったが、ヘッドホンやミュージックプレイヤー等の端末も売っているし、コーヒーショップもあるのだけど、メインは間違いなく“音楽のダウンロード”なのであった。

これを目の当たりにして「こんな空間があるんだ。未来だな!」と思ったが、しかしその場所は18世紀に建てられた公民館であり、音楽ホールとして使われた場所。その店の写真を撮らなかったのが非常に残念だが、このサウンドショップをアムステルダムで探すのはきっと楽しいと思うので、是非訪れていただきたい。

今、サウンドショップから自転車を暫く走らせて、木陰が良い感じのベンチにいる。さっきダウンロードした音楽を聴きながら、コーヒーを飲む。ベンチはある夫妻からの寄贈で、1985年に贈られたと金属プレートに刻印されている。40年前からあるこのベンチに座って聴き始めたのは『ヴァンヘイレン』の『ジャンプ』(※1984年)。ほぼ同じ年じゃん! それでは、また手紙を書くね。


ミズグチケンジ(水口謙二) 写真家・『ジェットスロウ』代表。雑誌編集者として、2003~2010年、『ルアーマガジン』・『ルアーマガジンソルト』・『ルアーマガジンリバー』・『磯釣りスペシャル』・『ちぬ倶楽部』等の定期刊行物の編集長を務める。多くのムック誌と映像作品をプロデュースし、2011年3月に独立。


キャプチャ  2024年11月号掲載

テーマ : オランダ
ジャンル : 海外情報

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George Clooney

Author:George Clooney

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