【棚橋弘至の「プロレス社長奮闘記」】(22) 推し活隆盛の今こそ地道なPRが効いてくる!?
ご存知の方もいるかもしれませんが、映画『エイリアン』シリーズ等を手掛けたリドリー・スコット監督の渾身の大作『グラディエーターⅡ~英雄を呼ぶ声~』(※公開中)のプロモーションに『新日本プロレス』も参加しました。10月の両国大会で僕と海野翔太、エル・ファンタズモが剣闘士の甲冑を着て試合に入場、公開直前のイベントにも登場しました。
言ってしまえば我々も現代の剣闘士。甲冑姿がとても似合っていましたね(※自賛)。今回のような大作に関わって改めて思ったのは、映画はプロモーションにかける規模と熱量が段違いだということ。ハリウッドから有名俳優に来てもらう、各界の著名人にPRに参加してもらう等、やはりスケールが違います。
そんな活動のひとつの仕掛けとして、新日本プロレスの選手を起用してもらえるのは、とてもありがたいことです。もう18年も前ですが、2006年に初めてIWGPヘビー級チャンピオンになり、最初に始めたのがプロモーション活動でした。プロレスの地上波での放送が深夜になり、会場への動員も思うように増えない。新日本プロレスが“冬の時代”と呼ばれていた頃のこと。
その時のプロモーション活動といえば、地道に飲食店を回って大会ポスターを張らせてもらって、チケットを手売りしたり、ラジオで大会の宣伝をしたり、新聞やタウン誌の取材を受けたり…。文字通り地道に頑張ってはいましたが、長い間、結果は実らない。厳しいものでした。
そこから、「こうした活動も大事だけど、もっと僕がテレビにバンバン出て有名になって、誰もが知っているプロレスラーにならねば」と考えるようになり、積極的にテレビに出演。新日本プロレスのV字回復の一端を担ったと自負しています。ただ、今は“テレビに出る”だけでは観客動員に直結しない難しい時代だと感じています。家族でテレビを見ることも少なくなり、趣味も多様化して、「この人、テレビで見た」だけでは、会場まで足を運び、お金を払ってもらえません。
一方で現代は“推し活”隆盛の時代でもあるわけで。逆に今こそ足を使った地道なプロモーションが効いてくる筈! ここに戦略的なSNSの活用、映画・テレビ・イベント等多媒体への積極的な参加を重ねていけば光明が見えるのではないか。そんな思いで多種多様なPR活動に参加しています。
今回のタイアップの話に戻りますが、こんなありがたい機会って意外にないんです。作品を全力でPRしつつ、映画ファンに「こんな選手がいるのか」と知ってもらう。動員アップに直結しないかもしれませんが、こうした活動を通じて、一度でも試合に足を運んでもらえたら…。剣闘士宛らの魅力的な試合で、お客さんをローマ市民の如く熱狂させる自信がありますよ!(笑)
棚橋弘至(たなはし・ひろし) 『新日本プロレスリング』代表取締役社長兼レスラー。1976年、岐阜県生まれ。立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入寮。得意技はハイフライフロー。著書に『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)・『カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの“復活力”』(マガジンハウス)等。
2024年12月17日号掲載
言ってしまえば我々も現代の剣闘士。甲冑姿がとても似合っていましたね(※自賛)。今回のような大作に関わって改めて思ったのは、映画はプロモーションにかける規模と熱量が段違いだということ。ハリウッドから有名俳優に来てもらう、各界の著名人にPRに参加してもらう等、やはりスケールが違います。
そんな活動のひとつの仕掛けとして、新日本プロレスの選手を起用してもらえるのは、とてもありがたいことです。もう18年も前ですが、2006年に初めてIWGPヘビー級チャンピオンになり、最初に始めたのがプロモーション活動でした。プロレスの地上波での放送が深夜になり、会場への動員も思うように増えない。新日本プロレスが“冬の時代”と呼ばれていた頃のこと。
その時のプロモーション活動といえば、地道に飲食店を回って大会ポスターを張らせてもらって、チケットを手売りしたり、ラジオで大会の宣伝をしたり、新聞やタウン誌の取材を受けたり…。文字通り地道に頑張ってはいましたが、長い間、結果は実らない。厳しいものでした。
そこから、「こうした活動も大事だけど、もっと僕がテレビにバンバン出て有名になって、誰もが知っているプロレスラーにならねば」と考えるようになり、積極的にテレビに出演。新日本プロレスのV字回復の一端を担ったと自負しています。ただ、今は“テレビに出る”だけでは観客動員に直結しない難しい時代だと感じています。家族でテレビを見ることも少なくなり、趣味も多様化して、「この人、テレビで見た」だけでは、会場まで足を運び、お金を払ってもらえません。
一方で現代は“推し活”隆盛の時代でもあるわけで。逆に今こそ足を使った地道なプロモーションが効いてくる筈! ここに戦略的なSNSの活用、映画・テレビ・イベント等多媒体への積極的な参加を重ねていけば光明が見えるのではないか。そんな思いで多種多様なPR活動に参加しています。
今回のタイアップの話に戻りますが、こんなありがたい機会って意外にないんです。作品を全力でPRしつつ、映画ファンに「こんな選手がいるのか」と知ってもらう。動員アップに直結しないかもしれませんが、こうした活動を通じて、一度でも試合に足を運んでもらえたら…。剣闘士宛らの魅力的な試合で、お客さんをローマ市民の如く熱狂させる自信がありますよ!(笑)
棚橋弘至(たなはし・ひろし) 『新日本プロレスリング』代表取締役社長兼レスラー。1976年、岐阜県生まれ。立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入寮。得意技はハイフライフロー。著書に『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)・『カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの“復活力”』(マガジンハウス)等。
2024年12月17日号掲載