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【今週の信用情報】(10) 武田薬品の“失われた10年”&船井電機の“救世主”に元環境大臣

社長就任から10年間で手にした報酬総額は150億4000万円――。江戸時代に創業の『武田薬品工業』は240年以上の歴史を持つ。2014年、初の外国人社長として鳴り物入りで就任したのが、世界最大級の製薬会社『グラクソスミスクライン』出身のクリストフ・ウェバー(57)だ。しかし、ウェバー氏が率いる武田はこの間、凋落の一途を辿っている。

「グローバル化路線を敷いたウェバー社長は2019年、創業家の反対を押し切り、アイルランドの製薬大手であるシャイアーを6兆8000億円で買収しました。日本企業による過去最大の買収案件として話題になりました。しかし、世界13位のメガファーマとなったものの、市場は『図体がでかくなっただけ』と冷淡で、株価は6000円台から4000円台へと急落しました」(経済アナリスト)。

一方で、『武田コンシューマーヘルスケア』(※現在の『アリナミン製薬』)をアメリカの投資ファンド『ブラックストーングループ』に売却する等、中核事業の切り売りも図った。そのM&A戦略が財務の悪化を招いたという。

「更に、ウェバー社長は大規模なリストラも断行しました。その結果、武田の“創薬力”が著しく低下しました。年間700億円以上を売り上げた高血圧症薬のアジルバは特許が2023年に切れ、1000億円弱の売上をもたらす胃潰瘍薬のタケキャブも2031年には特許切れに。武田は、それら稼ぎ頭を補う新薬を生み出せていません。新薬開発には最低でも10年かかります。武田にとって、ウェバー政権はまさに“失われた10年”だったわけです」(同)。

          ◇

FUNAIブランドで知られる、中堅AV機器メーカーの『船井電機』。廉価のテレビが主力商品だが、中韓勢に押され、赤字が続いている。目下、それに追い打ちをかけるような緊急事態が勃発中である。抑も、船井電機は創業者の船井哲良氏が1951年に興したミシン問屋がルーツ。長男は医師の道を選び、2017年に没した父から受け継いだ船井電機株を2021年に処分した。『秀和システム』という出版社がTOBによって船井電機を完全子会社化し、上場廃止に。

「昨春に持株会社制へ移行し、船井電機は船井電機HDの傘下に入りました。その両社の社長には秀和システム代表の上田智一さんが就きました。続けて船井電機HDは、本業とは縁遠い脱毛サロンチェーンのミュゼプラチナムを買収しました。40億円弱と見られる買収資金は大阪府大東市にある船井電機の本社ビル等を抵当に入れ、用立てられたのです」(船井電機関係者)。

ところが、僅か1年で、割引クーポンサービスを手掛ける『KOCジャパン』という企業にミュゼを売却。更に1ヵ月後には『TNCアセットマネジメント』なる貸金業者に転売された。

「一方で、ミュゼはインターネット関連企業のサイバーバズに対し、ウェブ広告の代金22億円が未払いでした。船井電機HDが債務保証をしていた為、今年9月初め、船井電機株の9割超を仮差押えられるはめに。尚且つ、船井電機からミュゼ側に50億円近い資金の流出も発覚したのです。その結果、“特別背任”に問われる可能性が生じた上田さんは船井電機HD、船井電機共々、9月27日付で社長を退任しました」(同)。

代わって、『日本政策金融公庫』の上野善晴元専務が船井電機の社長に、会長には原田義昭元環境大臣が起用された。原田氏に訊くと、「『前の経営陣を総取っ替えするので、新しい経営陣と会社の立て直しをしてほしい』と依頼されました。過大投資の問題があって、その修正を図っていこうと考えています」。事件化の様相か。


キャプチャ  2024年10月24日号掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

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