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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
福岡ハカセ、そしてライアル・ワトソン
「動的平衡~生命はなぜそこに宿るのか」読了。

著者の福岡伸一は分子生物学者で、「できそこないの男たち」「生物と無生物のあいだ」「プリオン説はほんとうか~タンパク質病原体説をめぐるミステリー」などの著書で知られる。週刊文春にも「福岡ハカセ」として科学エッセイの連載を持ち、あちこちで活躍中。

この本も、雑誌に連載した、生命科学エッセイを1冊の本にしたもの。

連載エッセイだけあって、どの表題についても読み切り。逆に内容の重複を感じる部分もあるが、専門知識は必要なく気楽に読める。「生命とは何か」という問いを巡る、研究者達のドラマや研究の歴史について、興味深いエピソードから説き起こし、生命科学の現状を、あれこれ俯瞰できるようになっている。「プリオン」や「生命の定義」など、今までの著作で扱った話題についても簡単に総括されており、これも面白い。

著者は最近翻訳にも力を入れており、翻訳した2冊が近々出版されるのだが、それがライアル・ワトソンの本だと書いてあり、これにはちょっとビックリ。ライアル・ワトソンは、「ニュー・サイエンス」ブームの時にずいぶん本が売れたが、面白いものの、書かれているエピソードに怪しいものが多い。

ワトソンの「生命潮流」という有名な本がある。ここで述べられている「100匹目のサル」のエピソードは、個々の生命レベルを越えた上位の次元で、生命が繋がってるのではと思わせる実に印象的な話。しかし、これについては、サル学の研究者が「そんな話は聞いたことがない」と否定している。

また、テニスボールの裏表を一瞬にして「ポン!」と裏返すことのできる超能力少女に関しても、本当ならば、次元を超越した超能力の存在を示唆する衝撃的な話。ワトソン自身が、その裏返ったボールを手元に持っているという話だったのだが、コリン・ウィルソンに執拗に追求され、結局ホラだとばれてしまった。残念なことに、一番肝心なところがホラなんだなあ、この人は(笑)。

今回、福岡ハカセが翻訳した本の一冊は、象の生態を扱った「エレファントム」というらしい。その中に、南アフリカの生息地で、象牙乱獲により、たった一匹になってしまった象が、行方不明になる話がある。現地に飛んだライアル・ワトソンが探しに行くと、海を見下ろす高台にその象を発見。そして、ワトソンは、その象が、海に現れたシロナガスクジラと、低周波を使ってコミュニケーションをしている場面を見たのだという。海と陸に分かれた孤高の生物同士の、魂の邂逅。まさに奇跡のように美しい詩的な場面。と、福岡ハカセは紹介するのだが。。。しかし、上記のようなワトソンの昔の「ホラ」癖を知ってると、話があまりにも美しすぎて、どうにも眉唾だなあ(笑)。

もっとも、ところどころに「ホラ」や「トンデモ」があっても、ワトソンの著作自体は、自然への素直な畏敬と愛情に基く、美しい詩情あふれるものであり、個人的には決して嫌いではなかった。「スーパーネイチュア」、「風の博物誌」、「アースワークス」など、どれも懐かしい。ワトソンご本人は、昨年亡くなったのだそうで、ここにもしみじみと時代を感じる。福岡ハカセ翻訳の新刊が出たら、また買ってみるか。

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コメント
この記事へのコメント
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2010/10/17(日) 16:56:33 | | #[ 編集]
Re: またしても古い記事にコメントなぞ
そうですかあ。

とても興味深い、ハカセの話をありがとうございました(笑)。

まあ、人間万事塞翁が馬ということですかねえ。
2010/10/18(月) 12:32:50 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
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