Amazon.co.jpでふと見つけた文庫本、「池波正太郎の食まんだら」読了。
10年ほど、池波正太郎の「書生」を務めたという著者が、池波がかつて愛した飲食店を自分で巡り、その思い出を語るというエッセイ。変わった題名であるが、もともとは「池波正太郎への手紙」という単行本を文庫化にあたって改題したものらしい。
「書生」というのはよく分からないが、まあ、秘書のようなもんであろうか。フランス等への食紀行にも同行していたことが語られており、池波とのつながりは深いようだ。しかし、その著者にして、昭和11年生まれで、もうすでに73歳。池波は1990年に67歳で亡くなっているから、没後20年近く。もしもまだ健在であったなら86歳。まだ小説は本屋に並んでおり、売れ続けているが、池波の時代も、次第に遠くなりつつあるのだなあという感慨あり。
「池波正太郎の銀座日記」などの一連の食エッセイに出てくる、「花ぶさ」、「まつや」、「山の上ホテル」、「たいめいけん」、「煉瓦亭」、「新富寿し」など懐かしい店を、昔を偲んで著者が食べ歩きする。そして随所にフラッシュバックする、池波が健在の頃の懐かしい思い出。もはや遠い思い出になりつつある恩師の記憶と、自らも人生の終盤にさしかかった著者との距離感が、独特の情感を持ったエッセイに結実している。
「池波は、「食通」でも「グルメ」でもなかった。しかし、毎日の一食一食をたとえラーメンであっても死ぬ気で、一期一会の覚悟で食べていた「食道楽」である」と著者は述べる。確かに、お金にあかして美食三昧した人ではない。市井のフラリと一人で入れる店を好み、自分の嗜好にあったものだけを真剣に食し続けた人であったように思える。
旅行時に著者が、小さな字を見づらそうにしていると、「すぐに眼鏡屋に行って遠近両用眼鏡を作りたまえ。金はオレが出す」と行きつけの眼鏡屋を紹介して、何十万円もする鼈甲の眼鏡をあつらえてやる。口うるさいし、時に癇癪も起す頑固親父であるが、親分肌で身内に対しては実に面倒見がよい。身近にいた者でないと語れない、そんな池波正太郎の素顔が生き生きと素描されているのも面白かった。
「銀座日記」や、「むかしの味」、「食卓の情景」、「散歩の時何か食べたくなって」、「男の作法」など、池波正太郎のエッセイは色々読んだが、また読み返したくなった。
10年ほど、池波正太郎の「書生」を務めたという著者が、池波がかつて愛した飲食店を自分で巡り、その思い出を語るというエッセイ。変わった題名であるが、もともとは「池波正太郎への手紙」という単行本を文庫化にあたって改題したものらしい。
「書生」というのはよく分からないが、まあ、秘書のようなもんであろうか。フランス等への食紀行にも同行していたことが語られており、池波とのつながりは深いようだ。しかし、その著者にして、昭和11年生まれで、もうすでに73歳。池波は1990年に67歳で亡くなっているから、没後20年近く。もしもまだ健在であったなら86歳。まだ小説は本屋に並んでおり、売れ続けているが、池波の時代も、次第に遠くなりつつあるのだなあという感慨あり。
「池波正太郎の銀座日記」などの一連の食エッセイに出てくる、「花ぶさ」、「まつや」、「山の上ホテル」、「たいめいけん」、「煉瓦亭」、「新富寿し」など懐かしい店を、昔を偲んで著者が食べ歩きする。そして随所にフラッシュバックする、池波が健在の頃の懐かしい思い出。もはや遠い思い出になりつつある恩師の記憶と、自らも人生の終盤にさしかかった著者との距離感が、独特の情感を持ったエッセイに結実している。
「池波は、「食通」でも「グルメ」でもなかった。しかし、毎日の一食一食をたとえラーメンであっても死ぬ気で、一期一会の覚悟で食べていた「食道楽」である」と著者は述べる。確かに、お金にあかして美食三昧した人ではない。市井のフラリと一人で入れる店を好み、自分の嗜好にあったものだけを真剣に食し続けた人であったように思える。
旅行時に著者が、小さな字を見づらそうにしていると、「すぐに眼鏡屋に行って遠近両用眼鏡を作りたまえ。金はオレが出す」と行きつけの眼鏡屋を紹介して、何十万円もする鼈甲の眼鏡をあつらえてやる。口うるさいし、時に癇癪も起す頑固親父であるが、親分肌で身内に対しては実に面倒見がよい。身近にいた者でないと語れない、そんな池波正太郎の素顔が生き生きと素描されているのも面白かった。
「銀座日記」や、「むかしの味」、「食卓の情景」、「散歩の時何か食べたくなって」、「男の作法」など、池波正太郎のエッセイは色々読んだが、また読み返したくなった。
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