「動的平衡~生命はなぜそこに宿るのか」読了。
著者の福岡伸一は分子生物学者で、「できそこないの男たち」、「生物と無生物のあいだ」、「プリオン説はほんとうか~タンパク質病原体説をめぐるミステリー」などの著書で知られる。週刊文春にも「福岡ハカセ」として科学エッセイの連載を持ち、あちこちで活躍中。
この本も、雑誌に連載した、生命科学エッセイを1冊の本にしたもの。
連載エッセイだけあって、どの表題についても読み切り。逆に内容の重複を感じる部分もあるが、専門知識は必要なく気楽に読める。「生命とは何か」という問いを巡る、研究者達のドラマや研究の歴史について、興味深いエピソードから説き起こし、生命科学の現状を、あれこれ俯瞰できるようになっている。「プリオン」や「生命の定義」など、今までの著作で扱った話題についても簡単に総括されており、これも面白い。
著者は最近翻訳にも力を入れており、翻訳した2冊が近々出版されるのだが、それがライアル・ワトソンの本だと書いてあり、これにはちょっとビックリ。ライアル・ワトソンは、「ニュー・サイエンス」ブームの時にずいぶん本が売れたが、面白いものの、書かれているエピソードに怪しいものが多い。
ワトソンの「生命潮流」という有名な本がある。ここで述べられている「100匹目のサル」のエピソードは、個々の生命レベルを越えた上位の次元で、生命が繋がってるのではと思わせる実に印象的な話。しかし、これについては、サル学の研究者が「そんな話は聞いたことがない」と否定している。
また、テニスボールの裏表を一瞬にして「ポン!」と裏返すことのできる超能力少女に関しても、本当ならば、次元を超越した超能力の存在を示唆する衝撃的な話。ワトソン自身が、その裏返ったボールを手元に持っているという話だったのだが、コリン・ウィルソンに執拗に追求され、結局ホラだとばれてしまった。残念なことに、一番肝心なところがホラなんだなあ、この人は(笑)。
今回、福岡ハカセが翻訳した本の一冊は、象の生態を扱った「エレファントム」というらしい。その中に、南アフリカの生息地で、象牙乱獲により、たった一匹になってしまった象が、行方不明になる話がある。現地に飛んだライアル・ワトソンが探しに行くと、海を見下ろす高台にその象を発見。そして、ワトソンは、その象が、海に現れたシロナガスクジラと、低周波を使ってコミュニケーションをしている場面を見たのだという。海と陸に分かれた孤高の生物同士の、魂の邂逅。まさに奇跡のように美しい詩的な場面。と、福岡ハカセは紹介するのだが。。。しかし、上記のようなワトソンの昔の「ホラ」癖を知ってると、話があまりにも美しすぎて、どうにも眉唾だなあ(笑)。
もっとも、ところどころに「ホラ」や「トンデモ」があっても、ワトソンの著作自体は、自然への素直な畏敬と愛情に基く、美しい詩情あふれるものであり、個人的には決して嫌いではなかった。「スーパーネイチュア」、「風の博物誌」、「アースワークス」など、どれも懐かしい。ワトソンご本人は、昨年亡くなったのだそうで、ここにもしみじみと時代を感じる。福岡ハカセ翻訳の新刊が出たら、また買ってみるか。
著者の福岡伸一は分子生物学者で、「できそこないの男たち」、「生物と無生物のあいだ」、「プリオン説はほんとうか~タンパク質病原体説をめぐるミステリー」などの著書で知られる。週刊文春にも「福岡ハカセ」として科学エッセイの連載を持ち、あちこちで活躍中。
この本も、雑誌に連載した、生命科学エッセイを1冊の本にしたもの。
連載エッセイだけあって、どの表題についても読み切り。逆に内容の重複を感じる部分もあるが、専門知識は必要なく気楽に読める。「生命とは何か」という問いを巡る、研究者達のドラマや研究の歴史について、興味深いエピソードから説き起こし、生命科学の現状を、あれこれ俯瞰できるようになっている。「プリオン」や「生命の定義」など、今までの著作で扱った話題についても簡単に総括されており、これも面白い。
著者は最近翻訳にも力を入れており、翻訳した2冊が近々出版されるのだが、それがライアル・ワトソンの本だと書いてあり、これにはちょっとビックリ。ライアル・ワトソンは、「ニュー・サイエンス」ブームの時にずいぶん本が売れたが、面白いものの、書かれているエピソードに怪しいものが多い。
ワトソンの「生命潮流」という有名な本がある。ここで述べられている「100匹目のサル」のエピソードは、個々の生命レベルを越えた上位の次元で、生命が繋がってるのではと思わせる実に印象的な話。しかし、これについては、サル学の研究者が「そんな話は聞いたことがない」と否定している。
また、テニスボールの裏表を一瞬にして「ポン!」と裏返すことのできる超能力少女に関しても、本当ならば、次元を超越した超能力の存在を示唆する衝撃的な話。ワトソン自身が、その裏返ったボールを手元に持っているという話だったのだが、コリン・ウィルソンに執拗に追求され、結局ホラだとばれてしまった。残念なことに、一番肝心なところがホラなんだなあ、この人は(笑)。
今回、福岡ハカセが翻訳した本の一冊は、象の生態を扱った「エレファントム」というらしい。その中に、南アフリカの生息地で、象牙乱獲により、たった一匹になってしまった象が、行方不明になる話がある。現地に飛んだライアル・ワトソンが探しに行くと、海を見下ろす高台にその象を発見。そして、ワトソンは、その象が、海に現れたシロナガスクジラと、低周波を使ってコミュニケーションをしている場面を見たのだという。海と陸に分かれた孤高の生物同士の、魂の邂逅。まさに奇跡のように美しい詩的な場面。と、福岡ハカセは紹介するのだが。。。しかし、上記のようなワトソンの昔の「ホラ」癖を知ってると、話があまりにも美しすぎて、どうにも眉唾だなあ(笑)。
もっとも、ところどころに「ホラ」や「トンデモ」があっても、ワトソンの著作自体は、自然への素直な畏敬と愛情に基く、美しい詩情あふれるものであり、個人的には決して嫌いではなかった。「スーパーネイチュア」、「風の博物誌」、「アースワークス」など、どれも懐かしい。ワトソンご本人は、昨年亡くなったのだそうで、ここにもしみじみと時代を感じる。福岡ハカセ翻訳の新刊が出たら、また買ってみるか。
- 関連記事
-
- 「納棺夫日記」と、人の死を巡る物語 (2009/04/07)
- 「池波正太郎の食まんだら」 (2009/04/02)
- 福岡ハカセ、そしてライアル・ワトソン (2009/03/25)
- 「日本のおかず」 (2009/03/17)
- 「遠野物語」 (2009/03/14)
| ホーム |