九月も歌舞伎座「九月大歌舞伎」は座席数を減らし、短い演目を選んでの四部制営業。
先週の土曜日は、まず第一部。「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)工藤館の場」。
昔から正月によく上演されたそうで、目出度い雰囲気を残しつつ、白塗りの殿様、赤っ面、傾城、和事に荒事と、歌舞伎のお約束の役割が登場し、様式美に満ちた狂言。木阿弥の優れた台本と練られた台詞。歌舞伎お約束の人物像がダイジェストされて、配役の妙を楽しむ演目でもある。
扇の要として、鷹揚で機嫌よく品格を見せる梅玉の工藤左衛門。風格ある傾城の魁春。花道を蹴破らんばかりの勢いで出てくる松緑演じる五郎は荒事の演技で、和事で演じる気品ある錦之助との対象も際立っている。又五郎の朝比奈。最後は歌六まで鬼王役で友切丸持って登場。最近、若手中心の「寿曽我対面」が多かった気がするが、コロナシフトもあってか大変豪華な布陣。歌舞伎伝来のフォーマットに綺麗に収まった豪華な祝祭。
しかし45分のこの幕だけ見て満足感と共に歌舞伎座を去って満足感を味わえたかというとりそうではない。やはり、時代物、舞踊、世話物と狂言が出て、幕間では食事をして酒も飲んで、機嫌よく帰路につくのが歌舞伎観劇の醍醐味。コロナ禍で人との接触を削減するためには、上演時間を短くするしかないが難しいところ。
もっとも、この度声を出さない古典芸能の観劇は、劇場の人数制限が緩和されるのだという。ただ現段階で前のようにギッシリの客席で長い時間観劇するというのも、やはりためらいがあるなあ。
一旦帰宅してシャワー浴びて休憩した後、夕方から再び歌舞伎座、第三部「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)引窓」。九月は大相撲秋場所もあり、歌舞伎座が四部あるからといって4日を潰す訳にもゆかない。どこかに予定を集約しないと。
この演目は、以前、彌十郎の濡髪長五郎で見たことがあるのだが、その時は作品の見どころが今ひとつピンと来なかった。しかし吉右衛門で見ると、さすがに母親を中心に義理の息子と実の息子を巡る家族のドラマが見事に立ち上がってくる。
吉右衛門演じる相撲取りの濡髪が、義理立てから止むなく人を殺めてお尋ね者となり、今生の別れに告げに、昔別れた実の母親を訪ねてくる。そして、その母は再婚し、相手の先妻の子である菊之助の南方十次兵衛は、村の役人に取り立てられ、義理の兄とも知らず濡髪を捜索しているという極限状況。
実の息子を逃がしたい、しかし昔の忠孝の常識では義理の息子こそ立てねばならない。板ばさみになった母親の葛藤。そして、義理の母親の苦しい心を察知して、濡髪を逃がしてやろうとする十次兵衛の思いやり。東蔵の母親お幸が実に良い。雀右衛門の十次兵衛女房お早も人情に厚い演技で親子の葛藤を盛り上げる。吉右衛門の濡髪はまた、母親の為に、南方十次兵衛のお縄を受けようとする苦しい葛藤が実に分厚い。
どの人物も他人を思いやるが上での葛藤。吉右衛門も当然に良いが、菊之助がまた印象的。さすがに人間国宝の岳父とやると力が入るだろう(笑) 引窓を使って、月光を入れ、まだ夜中なのにもう夜は明けた、自分のお役目も終わったのだという演出も放生会の設定と相まってよく出来ている。
先週の土曜日は、まず第一部。「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)工藤館の場」。
昔から正月によく上演されたそうで、目出度い雰囲気を残しつつ、白塗りの殿様、赤っ面、傾城、和事に荒事と、歌舞伎のお約束の役割が登場し、様式美に満ちた狂言。木阿弥の優れた台本と練られた台詞。歌舞伎お約束の人物像がダイジェストされて、配役の妙を楽しむ演目でもある。
扇の要として、鷹揚で機嫌よく品格を見せる梅玉の工藤左衛門。風格ある傾城の魁春。花道を蹴破らんばかりの勢いで出てくる松緑演じる五郎は荒事の演技で、和事で演じる気品ある錦之助との対象も際立っている。又五郎の朝比奈。最後は歌六まで鬼王役で友切丸持って登場。最近、若手中心の「寿曽我対面」が多かった気がするが、コロナシフトもあってか大変豪華な布陣。歌舞伎伝来のフォーマットに綺麗に収まった豪華な祝祭。
しかし45分のこの幕だけ見て満足感と共に歌舞伎座を去って満足感を味わえたかというとりそうではない。やはり、時代物、舞踊、世話物と狂言が出て、幕間では食事をして酒も飲んで、機嫌よく帰路につくのが歌舞伎観劇の醍醐味。コロナ禍で人との接触を削減するためには、上演時間を短くするしかないが難しいところ。
もっとも、この度声を出さない古典芸能の観劇は、劇場の人数制限が緩和されるのだという。ただ現段階で前のようにギッシリの客席で長い時間観劇するというのも、やはりためらいがあるなあ。
一旦帰宅してシャワー浴びて休憩した後、夕方から再び歌舞伎座、第三部「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)引窓」。九月は大相撲秋場所もあり、歌舞伎座が四部あるからといって4日を潰す訳にもゆかない。どこかに予定を集約しないと。
この演目は、以前、彌十郎の濡髪長五郎で見たことがあるのだが、その時は作品の見どころが今ひとつピンと来なかった。しかし吉右衛門で見ると、さすがに母親を中心に義理の息子と実の息子を巡る家族のドラマが見事に立ち上がってくる。
吉右衛門演じる相撲取りの濡髪が、義理立てから止むなく人を殺めてお尋ね者となり、今生の別れに告げに、昔別れた実の母親を訪ねてくる。そして、その母は再婚し、相手の先妻の子である菊之助の南方十次兵衛は、村の役人に取り立てられ、義理の兄とも知らず濡髪を捜索しているという極限状況。
実の息子を逃がしたい、しかし昔の忠孝の常識では義理の息子こそ立てねばならない。板ばさみになった母親の葛藤。そして、義理の母親の苦しい心を察知して、濡髪を逃がしてやろうとする十次兵衛の思いやり。東蔵の母親お幸が実に良い。雀右衛門の十次兵衛女房お早も人情に厚い演技で親子の葛藤を盛り上げる。吉右衛門の濡髪はまた、母親の為に、南方十次兵衛のお縄を受けようとする苦しい葛藤が実に分厚い。
どの人物も他人を思いやるが上での葛藤。吉右衛門も当然に良いが、菊之助がまた印象的。さすがに人間国宝の岳父とやると力が入るだろう(笑) 引窓を使って、月光を入れ、まだ夜中なのにもう夜は明けた、自分のお役目も終わったのだという演出も放生会の設定と相まってよく出来ている。
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