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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
会田誠「天才でごめんなさい」に抗議あり
六本木ヒルズを先日訪問して、森美術館で見た会田誠「天才でごめんなさい」は、作品集も先日購入。

しかし、この展示が「性暴力展示」であるとして抗議している団体があり、森美術館に展示中止を求めているらしい。

会田誠の作品には、かなり露骨に性的なモチーフを扱ったものもあり、森美術館webに掲載されたエントリーを見ても、展示会開催前に展示方法を検討した事が伺える。実際の展示会場では、それらの作品は、入口に垂れ幕がかかり、18歳未満閲覧禁止の注意書きのあるブースで隔離して展示されていた。見たくない人はそのまま前を通り過ぎる事ができる。入るのは逆になんだか憚られるような雰囲気もあったよなあ。

上記の団体にやり玉にされて非難されているひとつは、この「18禁」ブースに展示されている「犬」という作品。確信犯的にタブーに踏み込んでるとも思える作品で、会田誠本人はTwitterで、
言うまでもなく「犬」は「お芸術とポルノの境界は果たして自明のものなのか?」という問いのための試薬のようなものです。問いをより先鋭化するため、切断や動物扱いという絶対悪の図像を選択しました。多くの人が指摘する通り、このたびの喧々囂々の議論は、最初から作品に内在していたものでしょう。
と述べている。

ただ個人的にこの作品を見た時に感じたのは、エロスというよりも、冷たいザラザラした違和感。表現として一種確信犯的な極北ではあるけれども、芸術と現実世界の狭間で、ある種エッジの効いた「問い」を見ている者に突き付けてきている作品だと思ったなあ。本当にこれがアートかと念を押されると、回答にちょっと迷うが、少なくともポルノだとはまったく思わない。あれは、鑑賞者に突き付けられたなんらかの「問い」だというのが一番しっくりくる分類か。

そして、もしもあれがアカンのなら、ジーターの「ドクター・アダー (ハヤカワ文庫SF)」なども当然発禁ということになると思うが、それもずいぶんな検閲社会なのでは。

もちろん、どんな表現にも不快感を持つ人はいるだろうし、その不快感を開陳するのも思想信条の自由。見たくない自由も尊重するべき。しかし往来で誰にでも見せている訳ではなく、展示した美術館に「展示してはいけない」とばかり圧力かけるのはどうだろうか。作品が、見る者の一部に不快感を与えたとしても、製作が不法行為ではない以上、やはりそれはどう考えても表現の自由の範囲内という気がするのだが。

しかし考えてみると、「天才でごめんなさい」というこの展示会の名前が、また人を食った感じであり、このようなドタバタがあると、かえって面白味を増す気もする。話題になると入場者が急増するのでは(笑)。