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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「新ばし しみづ」、久々に訪問。初夏の寿司を楽しむ。
今週火曜日の朝、なんとなくOMAKASEのサイトにアクセスしてみると、「新ばし しみづ」に当日空きがある。珍しいなと早速夜の早い回を予約。どうせ空いてないだろうなと思って掛ける電話は気が重いものであるが、事前に空きが分かるのがweb予約の便利な所。

JR新橋駅から店に向かうと、烏森神社の参道には、茅の輪が設営されている。もう初夏だ。

定刻2分前に到着したら、先客がちょうど入店する所。

暑かったので常温ではなく冷たい日本酒で始めてもらう。一応、つまみと握りのコースだが、握りはいつも決まったものだけでやってもらうので、他の客には握りで出す種がつまみで登場したり、ペースが違ったり、融通を利かせて貰っているのがちょっと申し訳ないような。

何時もの通りお通しはワカメと煎り酒。ふと見ると種札には白身がない。もうカレイの季節かなと思っていると、最初に切ってきたのはアラ。九州ではクエをアラとも呼ぶのだが、それとは分類が違う魚だという。煎り酒で食する。この日の煎り酒は酸味が立って白身に良く合う。アラは、脂は軽いが身肉に旨味が濃い。江戸前では夏のカレイ、冬のヒラメが普通だが、良いものが入らない時は、この店はあれこれ仕入れに工夫がある。

続いてイサキ。これも初夏を感じる白身。独特の風味と旨味。これも煎り酒で。

清水親方に、西大島は行ってますかと聞かれたのだが、新年早々嗅覚が飛んで4月頃まで外食を控えていた関係で、今年はまだ訪問できていない。しかし今年で営業終了というから行かないとなあ。清水親方も今度訪問するつもりという話を聞きつつ。

当日煮上げたタコ。鶴八系は柔らか煮ではなく身肉に少し歯応えがあるが、噛みしめるとタコ独特の香りと旨味が立つ。仕込みで結構塩を使っている為何もつけずとも旨い。

カスゴは軽い締め。口中で身肉がホロホロ崩れる塩梅が結構。脂と旨味が乗ったカツオは辛子醤油で。江戸の昔はワサビやショウガは一般的ではなく辛子で食したのだと、これはずいぶん前にこの店で聞いた話。

アワビ塩蒸しは肝を添えて。肝には味がつけてありソースにも。アワビはまさに海の滋味を深く凝縮したかのよう。アワビの季節になったねと親方に声を掛けると、この季節になると店の採算がガクンと落ちるんですよと冗談交じりに。そうだろうなあ。ここは何時も大振りで実に良いものを入れているので仕入れ値も張るだろう。しかし寿司屋としては旬に置かない訳にはいかないのだ。

トリ貝は、今日で最後ですとの事。今年は比較的長く使えて、舞鶴もまだ上がって来るのだが、もう身肉に厚みが無いと。

ウニは小さな器にバフンウニとムラサキウニを盛り合わせて。風味や旨味の濃さが違うのが面白い。焼きアナゴとキュウリ酢の物、漬け込みのハマグリと貰ってお酒終了。お茶に切り替えて握りに。

中トロが2。しっとりと柔らかい身肉は香りも旨味もあり、口中で力強い酢飯に溶け崩れていく。

コハダは肉厚の片身づけを1貫。しっかりと〆られて旨味が凝縮している。そして旬のアジを1貫。軽く酢で絞めてあるが脂が乗って身肉はトロトロ。ネギを叩いた薬味を中に噛ませて握るのだが、この薬味が効いている。上に乗せるより味がこなれるとの事。

「宝塚は行かないんですか」と清水親方に聞かれたのだが、興味は無いことはないが、相撲、歌舞伎の見物があるから、更に宝塚の沼に落ちて時間と金を投じる余裕はなあ。

ちょうど今、以前、「しみづ」で修業していた一番弟子、京都「まつもと」の松本親方の娘さんが東京宝塚劇場に出演中なのだそうである。

この娘さんは、昔々、まだ就学前の子供の時に会った事があるのだが、昨年だったか、ニュー新橋ビル「新橋鶴八」で再会して紹介してもらった。宝塚の同僚と二人で来ていたのだが、2人とも座る姿は背筋がすっと伸び、しかも喋り方がハキハキしている。普通の人とは違う宝塚のオーラを感じたものだった。

さて握りは終盤。アナゴは1貫は塩、もう1貫はツメで。何時も通りトロトロに煮上がっている。そしてカンピョウ巻半分で〆。デザートに小さなポーションでメロンが出た。

早い時間に入ったので、勘定を済ませて外に出てもまだ明るい。お弟子さんの見送りを受けてブラブラと退散。久々に「しみづ」の味を堪能。全て旨かった。満ち足りた気分で帰宅する初夏の夕暮れというのも良いものである。