新年3日目は、「新ばし しみづ」の正月営業。夜2回目の回。
昨年12月に来た時に店で直接予約。年末年始の営業はもう随分と昔からで、この期間の予約はOMAKASEでは休日にしており取れないようになっている由。
最近は代行で予約する業者もおり、インバウンドの人が正月のお馴染みさんばかりの営業に来られても、との事であった。本来、日本語が出来る人同行必須の条件になっているのだが、実際に店に来て片言でもしゃべられると断るのは難しいようだ。
この遅い時間は同業の飲食関連の人が多い模様。もっとも私は誰も知らないのだが(笑)
まずお屠蘇として菊姫の微炭酸濁り酒が小さなグラスでふるまわれる。その後はいつものように常温の酒を貰って。
最初は、関西の焼きアナゴを入れた茶碗蒸し。焼きアナゴは懐かしい関西の味。
まずつまみがおまかせで供される。
松皮カレイは縁側も添えて。マコと違い冬場が旬。タコは香りと旨味あり。サヨリは細切りでショウガ醤油と合える。赤貝。
アマダイ酒蒸しは身肉の旨味が出汁に溶けてこれがまた旨い。数の子が出るのは正月風味。自家製からすみは軽く焼いた薄餅で挟んで。あん肝は癖がなく旨味だけが何時もながら濃い。北寄貝紐串焼き。正月気分を残すつまみも多かった。5日まで営業して3連休とのこと。
ここで握りに。お茶を貰ってまずカスゴ。かなり強めの〆だが脂が乗っており酢飯と良く合う。中トロもシットリした肉質に旨味十分。コハダもここ独特の強い〆だが酢飯に実によく合う。イワシはトロトロの脂が乗り、これが酢〆でネットリした旨さに。アナゴは塩とツメで一つずつ。鶴八伝来の仕事。最後はかんぴょう巻き半分。
「本年もよろしくお願いします」と挨拶して店を出る。お年賀の手ぬぐいを頂いた。これも何度貰ったかなあ。20近いのではと思うけれど。新年の寿司始めを「しみづ」でするようになったのはいつからだっけ。過去の記憶はどんどん遠ざかって行く気がする昨今だ。
食後の腹ごなしに銀座まで歩いた。
昨年12月に来た時に店で直接予約。年末年始の営業はもう随分と昔からで、この期間の予約はOMAKASEでは休日にしており取れないようになっている由。
最近は代行で予約する業者もおり、インバウンドの人が正月のお馴染みさんばかりの営業に来られても、との事であった。本来、日本語が出来る人同行必須の条件になっているのだが、実際に店に来て片言でもしゃべられると断るのは難しいようだ。
この遅い時間は同業の飲食関連の人が多い模様。もっとも私は誰も知らないのだが(笑)
まずお屠蘇として菊姫の微炭酸濁り酒が小さなグラスでふるまわれる。その後はいつものように常温の酒を貰って。
最初は、関西の焼きアナゴを入れた茶碗蒸し。焼きアナゴは懐かしい関西の味。
まずつまみがおまかせで供される。
松皮カレイは縁側も添えて。マコと違い冬場が旬。タコは香りと旨味あり。サヨリは細切りでショウガ醤油と合える。赤貝。
アマダイ酒蒸しは身肉の旨味が出汁に溶けてこれがまた旨い。数の子が出るのは正月風味。自家製からすみは軽く焼いた薄餅で挟んで。あん肝は癖がなく旨味だけが何時もながら濃い。北寄貝紐串焼き。正月気分を残すつまみも多かった。5日まで営業して3連休とのこと。
ここで握りに。お茶を貰ってまずカスゴ。かなり強めの〆だが脂が乗っており酢飯と良く合う。中トロもシットリした肉質に旨味十分。コハダもここ独特の強い〆だが酢飯に実によく合う。イワシはトロトロの脂が乗り、これが酢〆でネットリした旨さに。アナゴは塩とツメで一つずつ。鶴八伝来の仕事。最後はかんぴょう巻き半分。
「本年もよろしくお願いします」と挨拶して店を出る。お年賀の手ぬぐいを頂いた。これも何度貰ったかなあ。20近いのではと思うけれど。新年の寿司始めを「しみづ」でするようになったのはいつからだっけ。過去の記憶はどんどん遠ざかって行く気がする昨今だ。
食後の腹ごなしに銀座まで歩いた。
年末休み初日、土曜日の夜は「新ばし しみづ」。毎年、寿司屋巡りの最後は何時も「しみづ」で寿司納めと決めている。
定刻ちょっと前に店に着くと、まだのれんが上がっていない。しかしほどなくお弟子さんが出てきてのれんを掲げて一番に入店。
お酒は何時ものように常温の日本酒。この日は水も別に貰った。お通しはしらすおろし。塩と煎り酒が出てくる。
OMAKASEのコース選択は握りのみか、つまみと握りの2種類だが、馴染み客には、つまみ少なめとか、お好みでつまみと握り選択にもフレキシブルに対応しているようだ。私の場合も握りはいつも決まったものを6つ貰うだけだから、つまみでもらう季節の種が少し増えている。ただ握りでしか出さない海老などの種は出てこないが。
まずおまかせでつまみから。白身は松皮カレイとタイ。どちらも上質。松皮カレイは結構大きな個体。スミイカは細切りで。タコは歯応えと旨味あり。サバは軽めの〆。〆たものと皮を炙ったものを一切れずつ。皮目を炙ると香ばしく脂が溶けて旨味が増す。元々九州の方でやる食べ方だと聞いたが。
生牡蠣は産卵した事のない若い個体。柑橘を絞っただけで供されるが生臭さはなく爽やかな旨味だけがある。前回来た時より段々育って大きくなっている。
この店は30日まで営業。正月は2日から営業、5日までやってお休みかな。疲れるでしょうと親方に問うと、もう毎年だから慣れたものだと。仲卸も慣れているので新年は市場が開く前に特別に魚を入れてくれるが、初荷よりも良いものが入るのだと。
温かい白子ポン酢は冬場に出るとやはりほっとする一品。天然ホタテ、赤貝、青柳と貝類3種が同時に。ホタテは溶けるような甘み。
ここの年末の名物、あん肝の赤酒煮は、全く癖のない旨味。材料の吟味が重要で、これは北海道産だとか。あんこうは茨城でしか穫れないのかと思ったら、全然そんな事は無いのだとか。ウニ、北寄貝紐串焼きもつまみで。この日は結構つまみが充実していた印象。
この辺りでお茶に切り替えて握りに。
マグロは何時もの中トロより脂の強いトロに近い部分2。脂の旨味がこの店の赤酢の強い酢飯に溶け崩れる。コハダも「鶴八」伝来の仕事よりは水分をかなり飛ばして強めの〆。酢飯に合わせているのだが、このマッチングも実に良い。イワシも1。これも〆てあるが脂がトロトロ。「與兵衛」のイワシにも似ている。この時期、脂の乗った良いイワシが穫れるのだとか。一般には夏がシーズンと思っていたが、必ずしも夏ばかりではないんだな。
アナゴは塩とツメで1貫ずつ。これもトロトロに煮上がっている。最後はカンピョウ巻を半分で。
お茶の差し替えを貰って、しみじみと食後の充実感を感じる。勘定を済ませて「よいお年を」と清水親方に挨拶して店を出た。馴染みの店で何の気兼ねもなく時間を過ごせる幸せ。また正月に今度は寿司初めで訪問する予定なのだが。
今年最後だし顔を出すかと向かいの「P.M.9」のドアを開けると店内は見た所満席。バーテンダーM氏はシェイカーを振っている所で会話するには取り込みだったので、手だけ振って挨拶してドアを閉めた。
食後の一杯をやる時間が浮いたので、帰路の途中でしばし散策。
SL広場は待ち合わせの人が集って賑やか。
歌舞伎座は十二月大歌舞伎が終わり、既に新年への準備万端。
築地本願寺は改修中のようだった。歩いている分にはそんなに寒さは感じない。途中で地下鉄に乗って帰宅。いよいよ今年も押し迫って来た。あっと言う間だったなあ。
定刻ちょっと前に店に着くと、まだのれんが上がっていない。しかしほどなくお弟子さんが出てきてのれんを掲げて一番に入店。
お酒は何時ものように常温の日本酒。この日は水も別に貰った。お通しはしらすおろし。塩と煎り酒が出てくる。
OMAKASEのコース選択は握りのみか、つまみと握りの2種類だが、馴染み客には、つまみ少なめとか、お好みでつまみと握り選択にもフレキシブルに対応しているようだ。私の場合も握りはいつも決まったものを6つ貰うだけだから、つまみでもらう季節の種が少し増えている。ただ握りでしか出さない海老などの種は出てこないが。
まずおまかせでつまみから。白身は松皮カレイとタイ。どちらも上質。松皮カレイは結構大きな個体。スミイカは細切りで。タコは歯応えと旨味あり。サバは軽めの〆。〆たものと皮を炙ったものを一切れずつ。皮目を炙ると香ばしく脂が溶けて旨味が増す。元々九州の方でやる食べ方だと聞いたが。
生牡蠣は産卵した事のない若い個体。柑橘を絞っただけで供されるが生臭さはなく爽やかな旨味だけがある。前回来た時より段々育って大きくなっている。
この店は30日まで営業。正月は2日から営業、5日までやってお休みかな。疲れるでしょうと親方に問うと、もう毎年だから慣れたものだと。仲卸も慣れているので新年は市場が開く前に特別に魚を入れてくれるが、初荷よりも良いものが入るのだと。
温かい白子ポン酢は冬場に出るとやはりほっとする一品。天然ホタテ、赤貝、青柳と貝類3種が同時に。ホタテは溶けるような甘み。
ここの年末の名物、あん肝の赤酒煮は、全く癖のない旨味。材料の吟味が重要で、これは北海道産だとか。あんこうは茨城でしか穫れないのかと思ったら、全然そんな事は無いのだとか。ウニ、北寄貝紐串焼きもつまみで。この日は結構つまみが充実していた印象。
この辺りでお茶に切り替えて握りに。
マグロは何時もの中トロより脂の強いトロに近い部分2。脂の旨味がこの店の赤酢の強い酢飯に溶け崩れる。コハダも「鶴八」伝来の仕事よりは水分をかなり飛ばして強めの〆。酢飯に合わせているのだが、このマッチングも実に良い。イワシも1。これも〆てあるが脂がトロトロ。「與兵衛」のイワシにも似ている。この時期、脂の乗った良いイワシが穫れるのだとか。一般には夏がシーズンと思っていたが、必ずしも夏ばかりではないんだな。
アナゴは塩とツメで1貫ずつ。これもトロトロに煮上がっている。最後はカンピョウ巻を半分で。
お茶の差し替えを貰って、しみじみと食後の充実感を感じる。勘定を済ませて「よいお年を」と清水親方に挨拶して店を出た。馴染みの店で何の気兼ねもなく時間を過ごせる幸せ。また正月に今度は寿司初めで訪問する予定なのだが。
今年最後だし顔を出すかと向かいの「P.M.9」のドアを開けると店内は見た所満席。バーテンダーM氏はシェイカーを振っている所で会話するには取り込みだったので、手だけ振って挨拶してドアを閉めた。
食後の一杯をやる時間が浮いたので、帰路の途中でしばし散策。
SL広場は待ち合わせの人が集って賑やか。
歌舞伎座は十二月大歌舞伎が終わり、既に新年への準備万端。
築地本願寺は改修中のようだった。歩いている分にはそんなに寒さは感じない。途中で地下鉄に乗って帰宅。いよいよ今年も押し迫って来た。あっと言う間だったなあ。
今週の水曜は「新橋鶴八」。前回の訪問時に年末最後の訪問を予約していた。
仕事帰りに店についたのは6時ちょっと前。
しかし入口横のテーブルには既に4名ばかりのオッちゃん達が飲んで盛り上がって激論中。カウンタにも2組4名の客。バイトの女性はまだ来ておらず、五十嵐親方一人で寿司を握って酒を出しての営業。大変だな。
それでも親方自身がつけ場から出てきて、先客のコート掛けのコートを移動し、一番奥に掛けられるようにしてから、「どうぞ」とハンガーを渡してくれる。忙しいのに悪いね。
ついた一番奥の席には既に猪口と酒のメニューが用意してある。
埼玉の「五十嵐」を、「親戚の酒蔵?」と冗談を言って注文。まあ違うだろうなあ。初めて聞く酒だが。そのあとで「高尾の天狗」を貰った。
すぐ後に2名入店してテーブルもカウンタも満席。バイトはまだ来ない。どうする(笑)
一人で回すにはパニックになるような忙しさだが、他のお客におまかせのつまみを出したり、お好みで注文された握りや鉄火巻きを作ったり、親方はマイペース。
手を洗う都度、私の席の前に来るのだが、エヘヘと笑いながら私と、鶴八一門についての会話をしたりする。「あっちのテーブルで今、ハイボール3杯頼んでいたぞ」とこちらのほうが心配になる(笑) しかし「まあまあ大丈夫ですよ」とのんびりしたものだ。それでもお客はおとなしく待つのでトラブルなく店は進行する。親方にさほど焦った様子は無い。
弟子の時から、もともとのんびりした性格だが、忙しさへの対応は鈍感力なのか。あるいは「大賢は大愚に似る」というから、案外に大人物なのかもしれない。
私の方は、早く帰るのは諦めて、のんびりと酒を飲みつつ、つまみから。ヒラメは分厚く切って旨味あり。サバは脂が乗ってちょうどよい〆具合。カツオは要らないと言ってあったのだが切ってきた(笑)「旨いでしょう」と自慢する。まあネットリと脂が乗って旨いけれどもこの季節だと他にも頼むべき種があるからなあ。
バイトが来たのは6時半過ぎ。だいぶ前に辞めた女性で「どうもお久しぶりです」と。人手が足りないので助っ人に来たらしい。なんだか懐かしいね。
ブリもつまみで。腹の身でくどくない脂が乗っている。北海道のシャコ漬け込み。鶴八伝来の仕事。種札にあるミル貝を頼んだら、今日は北寄貝しかないというのでそれを。甘味があってこれも旨い。
芋焼酎の水割りも貰っていたのだが、この辺りで握りに。
タイ、ヅケ、コハダ、小柱軍艦、ハマグリ。酢飯は米の旨味を残してふっくら炊き上げてある。どれも旨い。中トロも握りますかと聞かれたが、それは断る。
しかし、観察していたが誰にもガリを出していない。ちゃんと出してよと要求。「え、ガリって何ですか? 本当に要るんですか(笑)」と聞いてから、しぶしぶ裏に取りに行っていた。ガリ出さない寿司屋があるかよ(笑)。しかしガリが出なくても誰も文句言わないとは、おとなしく良い客に恵まれている。
本年の営業は28日まで。29日はやってもよかったが、まったく予約が入らなかったので止めにしたと。今年はカレンダーの都合でそんな店が多いのだとか。大常連O氏は今度の金曜日、久々に予約が入っているとか。今年は結局ここでは一度も会っていない。
次の日も仕事なので適当な所で勘定にしてもらう。「よいお年を」と挨拶して店を出た。
仕事帰りに店についたのは6時ちょっと前。
しかし入口横のテーブルには既に4名ばかりのオッちゃん達が飲んで盛り上がって激論中。カウンタにも2組4名の客。バイトの女性はまだ来ておらず、五十嵐親方一人で寿司を握って酒を出しての営業。大変だな。
それでも親方自身がつけ場から出てきて、先客のコート掛けのコートを移動し、一番奥に掛けられるようにしてから、「どうぞ」とハンガーを渡してくれる。忙しいのに悪いね。
ついた一番奥の席には既に猪口と酒のメニューが用意してある。
埼玉の「五十嵐」を、「親戚の酒蔵?」と冗談を言って注文。まあ違うだろうなあ。初めて聞く酒だが。そのあとで「高尾の天狗」を貰った。
すぐ後に2名入店してテーブルもカウンタも満席。バイトはまだ来ない。どうする(笑)
一人で回すにはパニックになるような忙しさだが、他のお客におまかせのつまみを出したり、お好みで注文された握りや鉄火巻きを作ったり、親方はマイペース。
手を洗う都度、私の席の前に来るのだが、エヘヘと笑いながら私と、鶴八一門についての会話をしたりする。「あっちのテーブルで今、ハイボール3杯頼んでいたぞ」とこちらのほうが心配になる(笑) しかし「まあまあ大丈夫ですよ」とのんびりしたものだ。それでもお客はおとなしく待つのでトラブルなく店は進行する。親方にさほど焦った様子は無い。
弟子の時から、もともとのんびりした性格だが、忙しさへの対応は鈍感力なのか。あるいは「大賢は大愚に似る」というから、案外に大人物なのかもしれない。
私の方は、早く帰るのは諦めて、のんびりと酒を飲みつつ、つまみから。ヒラメは分厚く切って旨味あり。サバは脂が乗ってちょうどよい〆具合。カツオは要らないと言ってあったのだが切ってきた(笑)「旨いでしょう」と自慢する。まあネットリと脂が乗って旨いけれどもこの季節だと他にも頼むべき種があるからなあ。
バイトが来たのは6時半過ぎ。だいぶ前に辞めた女性で「どうもお久しぶりです」と。人手が足りないので助っ人に来たらしい。なんだか懐かしいね。
ブリもつまみで。腹の身でくどくない脂が乗っている。北海道のシャコ漬け込み。鶴八伝来の仕事。種札にあるミル貝を頼んだら、今日は北寄貝しかないというのでそれを。甘味があってこれも旨い。
芋焼酎の水割りも貰っていたのだが、この辺りで握りに。
タイ、ヅケ、コハダ、小柱軍艦、ハマグリ。酢飯は米の旨味を残してふっくら炊き上げてある。どれも旨い。中トロも握りますかと聞かれたが、それは断る。
しかし、観察していたが誰にもガリを出していない。ちゃんと出してよと要求。「え、ガリって何ですか? 本当に要るんですか(笑)」と聞いてから、しぶしぶ裏に取りに行っていた。ガリ出さない寿司屋があるかよ(笑)。しかしガリが出なくても誰も文句言わないとは、おとなしく良い客に恵まれている。
本年の営業は28日まで。29日はやってもよかったが、まったく予約が入らなかったので止めにしたと。今年はカレンダーの都合でそんな店が多いのだとか。大常連O氏は今度の金曜日、久々に予約が入っているとか。今年は結局ここでは一度も会っていない。
次の日も仕事なので適当な所で勘定にしてもらう。「よいお年を」と挨拶して店を出た。
先週の土曜日は西大島「與兵衛」。今年一杯で店を閉めると聞いたのは、去年の暮だったか。半分は本気にしていなかったが、今年の前半は体調を崩し訪問できず、7月に訪れた時には閉店の意思は堅そうだった。鈴木親方は75歳。奥さんもずっと店を手伝っており、もう身体が持たないのだと。
9月に電話したら、もう年末閉店まで全て満席だと言われて泡を食ったが、親方にキャンセル待ちを頼んだら、この日が空いたので最後の訪問。
店に定刻5分前位に着くと、他のお客さん6人組は既に到着済み。女将さんに御礼の品を渡して席に。この店に初めて来たのは2001年の10月。その初回から、ここは通うべき特別な店だと分かった。途中5年間アメリカに住んだけれども年末に一時帰国したら必ず寄って、23年間通った事になる。しかし店が閉店するなんて思ってもみなかった。
女将さんは、このところもう最後の訪問のお馴染みさんばかりで、懐かしいのよねえと笑う。今日は7名の予約のグループが6名になったので、入れてもらったようで実に良かった。
まずお酒は、本日の大吟醸、「くどき上手」を。ふっくらした旨味がさっと消えていく口当たりの良い酒。この店の酒は、長谷川酒店がずっと入れており「十四代本丸」「醸し人九平次」など置いてあり、昔は一合600円で出していた時もあった。酒屋の話なども親方と雑談しながら。
最初に供されたのは暖かい牡蠣のスープ。実に複雑な旨味。マグロや白身、海老などの出汁も入って、まるでブイヤベースのよう。親方によると、隠し味にはほんの少しニンニクを入れてあるのだという。それは知らなかったなあ。丸ごとの粒を少し入れて煮るのだそうだ。最後の最後までこんな秘密を黙っていたなんて(笑) しかし、この店の技術を伝承して跡を継ぐ弟子はいない。数年働いた弟子は今、名古屋で店をやっているそうだが。
ツメや煮物に使う継ぎ足しの出汁は、火入れをしなくてはいけないので、親方が入院している時にも、定期的に女将さんが店に来て火入れをしていたと。40年以上続けた店の資産も引き継ぐ者は居ない。なんとも残念な気がする。
ますお通しの一皿。海老頭漬け、塩釜のマグロは中トロと赤身。ヅケになっているが酸味と旨味がある。ホタテ煮浸し、ヤリイカゲソ煮、ヒラメ甘酢ヅケなど。酒が進んで、「十四代本丸」「醸し人九平治」と貰う。
そしておまかせの握りに。
中トロヅケはねっとりした旨味。ここの酢飯は硬めに炊かれて他の店よりも若干温度が低く供されるのだが、米の旨味があって寿司種との相性は抜群。口中でのほぐれ具合が素晴らしいのは親方の握りの技術だ。
ヒラメ甘酢ヅケ、胡麻醤油ヅケ。一味唐辛子やアサツキと薬味が変えてあるのも良いアクセント。
シマアジはここの名物。ヅケにしてから皮目を深く炙り、薄く削ぎ切りにして3枚つけて握る。旨味もあって香ばしく、他のどこにも無い味。これがもう食せなくなるなんて。
途中からお茶に切り替え。この店はガリもお茶も素晴らしい。
海老は才巻の大きさだが甘酢に漬けた昔ながらの仕事。北寄貝は軽く火を通した後で甘酢につけてあるのだが、これも他店ではお目にかかった事のない旨味。きっと何か特別な仕事がある。そしてそれはもう失われてしまうのだ。
サヨリは脂が乗って真っ白、身肉の旨味を残す〆、コハダはしっとりした〆具合。イワシは大変に脂があるのだが、強めに〆て脂がまるで蜜蝋のように身肉に固まっているのだが、これが口中で溶け崩れる。ここの光り物はいつも素晴らしかった。
煮イカはヤリイカ。漬け込みのハマグリはコクのあるツメが良く合う。白いアナゴは爽煮のようなパサパサではなく、白醤油で実にふっくらと炊いてあり、これもここの店でしか無い味。
最後は玉子焼き。これは昔、神保町「鶴八」の師岡親方に指導を乞うたそうだが、妙な所でこの店も「鶴八」一門と縁があるのだった。昔は小柱を入れて焼いていたのだが、今は芝海老。もう玉子焼きに入れられる江戸前の小柱が無いのだとか。
閉店を今月末に控えているとはいえ、親方は冗談を連発し、女将さんも明るく合いの手を入れるいつも通りの雰囲気。初めてのお客さんも、いつしか店のムードに馴染んでしまうのがこの店の良い所。
11月には「しみづ」の親方も来たのだとか。「醸し人九平治」がパリの「クリヨン」の日本酒にセレクトされ、そのパーティーに呼ばれて仕込んだ魚をスーツケースに詰めてパリまで出張握りをした件など、懐かしい話をあれこれ。
なにもかもが懐かしい一夜。カレイ、アワビ塩蒸し、アユ、キスなど他の季節に供された寿司種が思い出される。他の何処にもない「One and Only」の寿司店。しかしその仕事は失われて行くのだなあ。
名残は尽きないのだが、何時までも居る訳にはいかない。勘定を済ませ、最後に親方と女将さんに「どうもありがとうございました」と、この店で最後の御礼のご挨拶。
ホロ良い気分でブラブラと西大島銀座商店街を通って駅へと向かう。ここも23年の間には店がつぶれたり、空き地になったりマンションが建ったり変遷が色々あった。しかしもうこの通りを歩くことは恐らくないなあ。
澄み切った冬の夜空を見上げると、この店で過ごした沢山の素晴らしい夜が脳裏を通り過ぎて行く。人生は夢幻の如し。
しかし、ありがとう「與兵衛」! 決して忘れない。
9月に電話したら、もう年末閉店まで全て満席だと言われて泡を食ったが、親方にキャンセル待ちを頼んだら、この日が空いたので最後の訪問。
店に定刻5分前位に着くと、他のお客さん6人組は既に到着済み。女将さんに御礼の品を渡して席に。この店に初めて来たのは2001年の10月。その初回から、ここは通うべき特別な店だと分かった。途中5年間アメリカに住んだけれども年末に一時帰国したら必ず寄って、23年間通った事になる。しかし店が閉店するなんて思ってもみなかった。
女将さんは、このところもう最後の訪問のお馴染みさんばかりで、懐かしいのよねえと笑う。今日は7名の予約のグループが6名になったので、入れてもらったようで実に良かった。
まずお酒は、本日の大吟醸、「くどき上手」を。ふっくらした旨味がさっと消えていく口当たりの良い酒。この店の酒は、長谷川酒店がずっと入れており「十四代本丸」「醸し人九平次」など置いてあり、昔は一合600円で出していた時もあった。酒屋の話なども親方と雑談しながら。
最初に供されたのは暖かい牡蠣のスープ。実に複雑な旨味。マグロや白身、海老などの出汁も入って、まるでブイヤベースのよう。親方によると、隠し味にはほんの少しニンニクを入れてあるのだという。それは知らなかったなあ。丸ごとの粒を少し入れて煮るのだそうだ。最後の最後までこんな秘密を黙っていたなんて(笑) しかし、この店の技術を伝承して跡を継ぐ弟子はいない。数年働いた弟子は今、名古屋で店をやっているそうだが。
ツメや煮物に使う継ぎ足しの出汁は、火入れをしなくてはいけないので、親方が入院している時にも、定期的に女将さんが店に来て火入れをしていたと。40年以上続けた店の資産も引き継ぐ者は居ない。なんとも残念な気がする。
ますお通しの一皿。海老頭漬け、塩釜のマグロは中トロと赤身。ヅケになっているが酸味と旨味がある。ホタテ煮浸し、ヤリイカゲソ煮、ヒラメ甘酢ヅケなど。酒が進んで、「十四代本丸」「醸し人九平治」と貰う。
そしておまかせの握りに。
中トロヅケはねっとりした旨味。ここの酢飯は硬めに炊かれて他の店よりも若干温度が低く供されるのだが、米の旨味があって寿司種との相性は抜群。口中でのほぐれ具合が素晴らしいのは親方の握りの技術だ。
ヒラメ甘酢ヅケ、胡麻醤油ヅケ。一味唐辛子やアサツキと薬味が変えてあるのも良いアクセント。
シマアジはここの名物。ヅケにしてから皮目を深く炙り、薄く削ぎ切りにして3枚つけて握る。旨味もあって香ばしく、他のどこにも無い味。これがもう食せなくなるなんて。
途中からお茶に切り替え。この店はガリもお茶も素晴らしい。
海老は才巻の大きさだが甘酢に漬けた昔ながらの仕事。北寄貝は軽く火を通した後で甘酢につけてあるのだが、これも他店ではお目にかかった事のない旨味。きっと何か特別な仕事がある。そしてそれはもう失われてしまうのだ。
サヨリは脂が乗って真っ白、身肉の旨味を残す〆、コハダはしっとりした〆具合。イワシは大変に脂があるのだが、強めに〆て脂がまるで蜜蝋のように身肉に固まっているのだが、これが口中で溶け崩れる。ここの光り物はいつも素晴らしかった。
煮イカはヤリイカ。漬け込みのハマグリはコクのあるツメが良く合う。白いアナゴは爽煮のようなパサパサではなく、白醤油で実にふっくらと炊いてあり、これもここの店でしか無い味。
最後は玉子焼き。これは昔、神保町「鶴八」の師岡親方に指導を乞うたそうだが、妙な所でこの店も「鶴八」一門と縁があるのだった。昔は小柱を入れて焼いていたのだが、今は芝海老。もう玉子焼きに入れられる江戸前の小柱が無いのだとか。
閉店を今月末に控えているとはいえ、親方は冗談を連発し、女将さんも明るく合いの手を入れるいつも通りの雰囲気。初めてのお客さんも、いつしか店のムードに馴染んでしまうのがこの店の良い所。
11月には「しみづ」の親方も来たのだとか。「醸し人九平治」がパリの「クリヨン」の日本酒にセレクトされ、そのパーティーに呼ばれて仕込んだ魚をスーツケースに詰めてパリまで出張握りをした件など、懐かしい話をあれこれ。
なにもかもが懐かしい一夜。カレイ、アワビ塩蒸し、アユ、キスなど他の季節に供された寿司種が思い出される。他の何処にもない「One and Only」の寿司店。しかしその仕事は失われて行くのだなあ。
名残は尽きないのだが、何時までも居る訳にはいかない。勘定を済ませ、最後に親方と女将さんに「どうもありがとうございました」と、この店で最後の御礼のご挨拶。
ホロ良い気分でブラブラと西大島銀座商店街を通って駅へと向かう。ここも23年の間には店がつぶれたり、空き地になったりマンションが建ったり変遷が色々あった。しかしもうこの通りを歩くことは恐らくないなあ。
澄み切った冬の夜空を見上げると、この店で過ごした沢山の素晴らしい夜が脳裏を通り過ぎて行く。人生は夢幻の如し。
しかし、ありがとう「與兵衛」! 決して忘れない。
神保町「鶴八」も年末最後の訪問をしないと。
先週月曜に電話で席を確認すると、火曜は遅い時間しか空いていないとのこと。水曜は定休日。木曜は空いているというので予約。
仕事を早目に切り上げて神保町へ。カウンタには既に2名。ほどなくもう1名入店。端の席の男性一名は終了時間が切られているのか、座るやいなや焦った感じで甲高い声で次々に握りを注文。こっちはいつまで居て良いんだっけ、終了時間については特に聞いてないよなあ、と心配になったが、まあ後があればそれで知らせてくれるだろうと、一応いつも通りやる事に。
お酒は新潟のお酒を注文したが名前は失念。お通しは軽く酢が効いたアジを炙ったもの。
まずつまみから。白身はヒラメ。ここの白身は大きな個体を仕入れて身を厚めに切りつけるが、何時も身が活かって温度は低い。熟成が流行る昨今の流儀とは違って昔風だが、これが美味い。石丸親方は以前も「熟成って最近よく聞きますけど、そんなに美味いんですかね」と首を捻っていた事があったっけ。
石丸親方が諸岡親方の神保町「鶴八」の門を叩いたのが1966年だと言う。暖簾分けを許されてニュー新橋ビルに「新橋鶴八」を開店したのが1982年。36年営業を続けて、店を引き継でいた前任者が去った修行先の神保町「鶴八」に戻って来たのが2018年の1月。既に神保町でも7年になる。時の経つのはあっと言う間だ。
そんな昔の話を聞きながら。次に塩蒸しを注文。水分を飛ばして炒りつけるように火を通してあるのだが、相変わらず美味い。似た肝も別皿で供される。
サヨリを頼んだら「今日はありませんよ」と。カウンタから見て正面の種札にあったのだが、こっちは前から残っている種札で、本物(笑)は「新橋鶴八」から持ってきた右側に掲げてあるものだったっけ。そちらを見ると確かに無かった(笑)
ブリもつまみで。びっしり脂の乗った腹の身だが脂にくどさはなく天然の旨さあり。漬込みのハマグリもつまみで。鶴八伝来の旨さ。
今年もあっという間ですねと親方。新橋の頃の古いお客さんは随分減ったのだが、新しいお客さんも神保町で増えたのだとか。
この辺りでお茶を貰って握りに。
まずヒラメ昆布〆。昆布の旨味が染みた白身が、米の旨味を残して硬めに炊き上げたここの酢飯に良く合う。中トロも1貫。冬のマグロは脂が乗ってきた。コハダは2。大きさを変えて。何時もながらネットリした旨味。このコハダも鶴八伝来の〆。アナゴも2。トロトロの身にコクのあるツメが旨い。ハマグリのお椀が出て、最後はカンピョウ巻を貰った。
勘定を済ませて「よいお年を」と挨拶して店を出る。この店に来た時に常に感じる、どっしりした充実感。何時もの物が何時ものように旨い。そんな幸せを感じつつ、師走の忙しそうな街をのんびりと帰宅した。
先週月曜に電話で席を確認すると、火曜は遅い時間しか空いていないとのこと。水曜は定休日。木曜は空いているというので予約。
仕事を早目に切り上げて神保町へ。カウンタには既に2名。ほどなくもう1名入店。端の席の男性一名は終了時間が切られているのか、座るやいなや焦った感じで甲高い声で次々に握りを注文。こっちはいつまで居て良いんだっけ、終了時間については特に聞いてないよなあ、と心配になったが、まあ後があればそれで知らせてくれるだろうと、一応いつも通りやる事に。
お酒は新潟のお酒を注文したが名前は失念。お通しは軽く酢が効いたアジを炙ったもの。
まずつまみから。白身はヒラメ。ここの白身は大きな個体を仕入れて身を厚めに切りつけるが、何時も身が活かって温度は低い。熟成が流行る昨今の流儀とは違って昔風だが、これが美味い。石丸親方は以前も「熟成って最近よく聞きますけど、そんなに美味いんですかね」と首を捻っていた事があったっけ。
石丸親方が諸岡親方の神保町「鶴八」の門を叩いたのが1966年だと言う。暖簾分けを許されてニュー新橋ビルに「新橋鶴八」を開店したのが1982年。36年営業を続けて、店を引き継でいた前任者が去った修行先の神保町「鶴八」に戻って来たのが2018年の1月。既に神保町でも7年になる。時の経つのはあっと言う間だ。
そんな昔の話を聞きながら。次に塩蒸しを注文。水分を飛ばして炒りつけるように火を通してあるのだが、相変わらず美味い。似た肝も別皿で供される。
サヨリを頼んだら「今日はありませんよ」と。カウンタから見て正面の種札にあったのだが、こっちは前から残っている種札で、本物(笑)は「新橋鶴八」から持ってきた右側に掲げてあるものだったっけ。そちらを見ると確かに無かった(笑)
ブリもつまみで。びっしり脂の乗った腹の身だが脂にくどさはなく天然の旨さあり。漬込みのハマグリもつまみで。鶴八伝来の旨さ。
今年もあっという間ですねと親方。新橋の頃の古いお客さんは随分減ったのだが、新しいお客さんも神保町で増えたのだとか。
この辺りでお茶を貰って握りに。
まずヒラメ昆布〆。昆布の旨味が染みた白身が、米の旨味を残して硬めに炊き上げたここの酢飯に良く合う。中トロも1貫。冬のマグロは脂が乗ってきた。コハダは2。大きさを変えて。何時もながらネットリした旨味。このコハダも鶴八伝来の〆。アナゴも2。トロトロの身にコクのあるツメが旨い。ハマグリのお椀が出て、最後はカンピョウ巻を貰った。
勘定を済ませて「よいお年を」と挨拶して店を出る。この店に来た時に常に感じる、どっしりした充実感。何時もの物が何時ものように旨い。そんな幸せを感じつつ、師走の忙しそうな街をのんびりと帰宅した。
年の瀬は馴染の寿司屋へ、本年最後の挨拶回りで訪問する時期。
水曜は前の週に食べログで予約していた「み富」。会社帰りに寄ったのだが、まだカウンタにはお客なし。
前回飲んだ酒は除いて一升瓶を並べてくれたので、広島の酒「西條鶴」を選択。この店に入れている酒屋は広島の酒を数多く持っている。サラっと爽やかな飲み口に仄かな品の良い旨味。これはこれで刺身の味に触らなくて結構。
お通しで白魚と、イカと椎茸の和え物。
お好みでまずつまみから。大洗産のタイ。最近は淡路よりひょっとすると千葉竹岡などのほうが質も良く値も上がっており、茨城大洗も良いのだとか。皮目を湯引きした腹の身だが、確かに脂が乗って旨味があり香りもある。
ブリは舞鶴。先週は能登氷見のブリがあったのだが、もうそこを越して京都まで来てるんだ。今年は大漁だそうで、元日の震災で被害を受けた氷見の漁港も活況だとよいが。
お酒は富久長に変更。これも広島の酒。トロっとした口当たりでふくよかな旨味を感じる。
ミル貝。柱はタレをつけて炙って。これは本ミルだが、アメリカの寿司屋では大型大味で臭みもある所謂白ミルが結構置いてある。一度日本から来た客が、アメリカの寿司屋で、この白ミルが食いたかったんだよと感激していたっけ。まあ味覚は人それぞれ。
サヨリは細切りで。身肉に脂が乗っており独特の香りが良い。皮は串に巻いて炙る。かんぬきと呼ばれる大きさになると途端に仕入れの値段が倍以上になるとか。
この辺りまで他のお客が居なかったので、あれこれ親方と寿司種話やら回転寿司の話やらして面白かった。
酢〆していないアジも旨味がある。シャコは小樽。もう禁漁になったが、囲ってあったという卵入りを貰う。古式江戸前漬込みの味。
このあたりでお茶を貰ってお好み注文の握りに。
まずヒラメ昆布〆。昆布の旨味が染みた白身がここの軽めの酢飯によく合う。シマアジも1貫。脂もあるが、ツルンとした舌触り。
ここから光り物を続けて。カスゴはふんわりした白身が酢〆になった旨味。コハダもしっとりした〆。イワシは良く脂が乗っている。古い江戸前仕事は酢飯とのバランスが美味い。
車海老を注文。茹であげ。珍しいですねと親方に言われる。確かに珍しいのだが、ごくたまに食うとやはり、ほのかに温かく上品な甘みが美味い。
以前の「銀座新富寿し」でも常に生きた海老を置いてあり、注文がある都度茹で上げて出していたのだが、店には種札も無いし、商売っ気が無い社長は客に勧める事もないので、偶々知っている客しか注文せずロスばかり出していたとか。私も新富では海老を頼んだ事がないなあ。ここの店では、お任せのコースに必ず茹で上げの海老を入れて覚えてもらうようにしているのだと以前に聞いた。
そういえば、茹で上げの海老は築地「つかさ」のおまかせで、握りになってから後半で必ず出た。高橋親方は仕入れの目利きもあったし、おまかせで出す順番や寿司種にも、季節の走り、旬、名残を組み合わせて入れて、組み立てが上手かった。適当に出す「ニュー新橋鶴八」とは違うような気が(笑)
最後は干瓢巻。甘辛く柔らかい干瓢がこんなに入っている巻物はどこにもない。この店の名物。8割の客が注文するとか。「み富」の寿司を堪能した。
この店はこれが本年最後の訪問。「よいお年を。来年もよろしく!」と挨拶して店を出た。まあ、来年も元気で好きな時に寿司を食えるとよいなあ。
水曜は前の週に食べログで予約していた「み富」。会社帰りに寄ったのだが、まだカウンタにはお客なし。
前回飲んだ酒は除いて一升瓶を並べてくれたので、広島の酒「西條鶴」を選択。この店に入れている酒屋は広島の酒を数多く持っている。サラっと爽やかな飲み口に仄かな品の良い旨味。これはこれで刺身の味に触らなくて結構。
お通しで白魚と、イカと椎茸の和え物。
お好みでまずつまみから。大洗産のタイ。最近は淡路よりひょっとすると千葉竹岡などのほうが質も良く値も上がっており、茨城大洗も良いのだとか。皮目を湯引きした腹の身だが、確かに脂が乗って旨味があり香りもある。
ブリは舞鶴。先週は能登氷見のブリがあったのだが、もうそこを越して京都まで来てるんだ。今年は大漁だそうで、元日の震災で被害を受けた氷見の漁港も活況だとよいが。
お酒は富久長に変更。これも広島の酒。トロっとした口当たりでふくよかな旨味を感じる。
ミル貝。柱はタレをつけて炙って。これは本ミルだが、アメリカの寿司屋では大型大味で臭みもある所謂白ミルが結構置いてある。一度日本から来た客が、アメリカの寿司屋で、この白ミルが食いたかったんだよと感激していたっけ。まあ味覚は人それぞれ。
サヨリは細切りで。身肉に脂が乗っており独特の香りが良い。皮は串に巻いて炙る。かんぬきと呼ばれる大きさになると途端に仕入れの値段が倍以上になるとか。
この辺りまで他のお客が居なかったので、あれこれ親方と寿司種話やら回転寿司の話やらして面白かった。
酢〆していないアジも旨味がある。シャコは小樽。もう禁漁になったが、囲ってあったという卵入りを貰う。古式江戸前漬込みの味。
このあたりでお茶を貰ってお好み注文の握りに。
まずヒラメ昆布〆。昆布の旨味が染みた白身がここの軽めの酢飯によく合う。シマアジも1貫。脂もあるが、ツルンとした舌触り。
ここから光り物を続けて。カスゴはふんわりした白身が酢〆になった旨味。コハダもしっとりした〆。イワシは良く脂が乗っている。古い江戸前仕事は酢飯とのバランスが美味い。
車海老を注文。茹であげ。珍しいですねと親方に言われる。確かに珍しいのだが、ごくたまに食うとやはり、ほのかに温かく上品な甘みが美味い。
以前の「銀座新富寿し」でも常に生きた海老を置いてあり、注文がある都度茹で上げて出していたのだが、店には種札も無いし、商売っ気が無い社長は客に勧める事もないので、偶々知っている客しか注文せずロスばかり出していたとか。私も新富では海老を頼んだ事がないなあ。ここの店では、お任せのコースに必ず茹で上げの海老を入れて覚えてもらうようにしているのだと以前に聞いた。
そういえば、茹で上げの海老は築地「つかさ」のおまかせで、握りになってから後半で必ず出た。高橋親方は仕入れの目利きもあったし、おまかせで出す順番や寿司種にも、季節の走り、旬、名残を組み合わせて入れて、組み立てが上手かった。適当に出す「ニュー新橋鶴八」とは違うような気が(笑)
最後は干瓢巻。甘辛く柔らかい干瓢がこんなに入っている巻物はどこにもない。この店の名物。8割の客が注文するとか。「み富」の寿司を堪能した。
この店はこれが本年最後の訪問。「よいお年を。来年もよろしく!」と挨拶して店を出た。まあ、来年も元気で好きな時に寿司を食えるとよいなあ。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は三部制。11月が劇場工事のせいで昼の部の興行しかなかったから、ここで3部の公演にして興行収入を確保しようという松竹の方針か。
第一部の「あらしのよるに」は以前見て面白かったけれども、童話が元であまり大人の再度の鑑賞には堪えないかと思ってチケットを取らなかった。12月初旬に第二部と第三部を見たので備忘記を。
第二部最初の演目は、河竹黙阿弥作、「盲長屋梅加賀鳶」いわゆる「加賀鳶(かがとび)」。
今まで道玄は、芝翫、團十郎(当時海老蔵)、白鸚(当時幸四郎)で見た。元々は五世菊五郎が河竹黙阿弥に脚本を依頼し、六世菊五郎が道玄中心の段だけを抜き出して演じるようになったのだという。当代の菊五郎では見た事がない。
今回、松緑が道玄を演じる。合わせて最初の場、加賀鳶の頭、天神町梅吉の二役。
序幕の「本郷木戸前勢揃い」は鯔背な加賀鳶連中が花道にずらりと並び、河竹黙阿弥の七五調のセリフを次々と回していく「ツラネ」が見どころ。
歌舞伎らしく派手で恰好良い場面だが、このあとで続く道玄の物語には、勘九郎演じる日蔭町松蔵以外一切関係しないという所が、なんとも歌舞伎らしい清々しい割り切り。
主役を張る松緑の威光があってか、息子の左近も、獅童と彦三郎の間に挟まれて花道の先頭の方で出てくるのだが、並ぶと両脇の獅童、彦三郎より背丈は随分と小さいのだなあ。親父の松緑が、自分とはニンが違うから女方の修行もさせようというのも分かる気がする。彦三郎、亀蔵兄弟はさすがに声が良い。
道玄を演じるのは松緑。禿のかつらで出てきた様は、祖父の二世松緑にも似ている。ギラついた鋭い眼光に、時折見せる素っ頓狂な表情。悪漢なのだが粗忽で妙な愛嬌がある道玄を、初役ながら印象的に演じた。
勘九郎演じる日蔭町松蔵は、竹町質見世の場で、店の主人を恐喝しようとする道玄の悪だくみを見抜き、他の大罪の証拠も突き付け、道玄の顔色を失わせて追い払う痛快な役。歌舞伎では大店を強請ると、大概失敗する。
強請られる伊勢屋主人は権十郎。大店の主人らしい風格あり。道玄に虐待される哀れな女房は芝のぶ。女按摩お兼は本来、はすっぱだが妙な色気があって魅力的に演じる事もできる悪女だと思うし、市川齊入が以前襲名披露でこの役を演じた時は感心した覚えがある。しかし雀右衛門がやると、どうも草臥れた世話女房風になって、どこか違う気がするんだよなあ。
しかし物語そのものは面白い。最後はだんまりの捕り物になって歌舞伎風味満載。
次の演目は「鷺娘(さぎむすめ)」。
2020年9月、コロナ禍での歌舞伎座四部制の玉三郎は、第四期歌舞伎座サヨナラ公演での自身の映像を使った凝った演出で、一部をライブで自分で踊り、客席は万来の拍手でカーテンコールまであったっけ。
七之助の鷺の精が舞ってみせる、娘の恋心、執着と情念。そして地獄の責め苦に雪の中倒れ伏す、哀しくも美しい姿。白無垢の登場から舞踊中に何度も引き抜いて鮮やかな衣装変わりを見せるのも歌舞伎の美。
上映記録では、歌舞伎座ではずっと玉三郎だけが勤めており、その前は2001年の福助まで遡るようだ。七之助は赤坂や大阪松竹座で上演しており、今回が3度目、初の歌舞伎座公演となった。二部上演後に「花篭」で食事。
第三部は、まず中村屋所縁の変化舞踊、「舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)」
十七世勘三郎のために作られた舞踊。勘九郎は、祖父の演じた桜の精、松虫、雪達磨という三役を踊り分ける。松虫では息子の長三郎も登場。
春、秋、冬と変わる背景の中で、娘の姿や松虫、滑稽な雪達磨と装束が変わり、すっぽんやセリも使って、勘九郎はその身体能力を一杯に使って踊ってみせる。なかなか見応えがあった。
この後の幕間、「花篭」で食事。
次の演目は、泉 鏡花 作、坂東玉三郎、今井豊茂 演出の「天守物語(てんしゅものがたり)」。
玉三郎の当たり役で、演出も手掛けるようになった作品。昨年12月の歌舞伎座公演では、自ら指導した七之助を主役の富姫に配し、自分は妹分の亀姫を演じて、これで演じ納めと玉三郎は考えていたのだという。しかし若手、市川團子の「ヤマトタケル」に触発され、團子を相手役に指名して、再び富姫役として歌舞伎座に戻ってきた。
姫路城の天守に存在する異形の世界。この世のものではない美しき姫と、現実を行き来する若者が結ぶ夢幻の恋。
玉三郎は幽玄の美を体現する。そして團子の真っ直ぐな図書之助は、口跡も良く凛々しいが、実は現世に身を置く所がない儚さも感じさせる所が実に良い。これは現実の澤瀉屋にあって、彼が置かれている孤高な境遇が投影されているのではないかという気もするのだった。
七之助の亀姫もまた素晴らしい。この人は、この世ではない異形な魂を持ったものを演じてみせるのに長けている。富姫と亀姫両方を経験し、やがて富姫は七之助の当たり役になるだろうと思わせる。
男女蔵の朱の盤坊は、親父の左團次が演じた役を初役で。生首を舐める門之助の舌長姥は、随分丁寧にやるので、ああ、あんな仕掛けなんだと面白かった。
獅童の近江之丞桃六は終盤を締める重要な役だが、割とサラサラと終わった印象。獅童は今月の歌舞伎座、自らが出ずっぱりで獅子奮迅の第一部「あらしのよるに」だけでなく、「加賀鳶」、「天守物語」三部全部に出演なので、最後は少々疲れていたのかねえ。
第一部の「あらしのよるに」は以前見て面白かったけれども、童話が元であまり大人の再度の鑑賞には堪えないかと思ってチケットを取らなかった。12月初旬に第二部と第三部を見たので備忘記を。
第二部最初の演目は、河竹黙阿弥作、「盲長屋梅加賀鳶」いわゆる「加賀鳶(かがとび)」。
今まで道玄は、芝翫、團十郎(当時海老蔵)、白鸚(当時幸四郎)で見た。元々は五世菊五郎が河竹黙阿弥に脚本を依頼し、六世菊五郎が道玄中心の段だけを抜き出して演じるようになったのだという。当代の菊五郎では見た事がない。
今回、松緑が道玄を演じる。合わせて最初の場、加賀鳶の頭、天神町梅吉の二役。
序幕の「本郷木戸前勢揃い」は鯔背な加賀鳶連中が花道にずらりと並び、河竹黙阿弥の七五調のセリフを次々と回していく「ツラネ」が見どころ。
歌舞伎らしく派手で恰好良い場面だが、このあとで続く道玄の物語には、勘九郎演じる日蔭町松蔵以外一切関係しないという所が、なんとも歌舞伎らしい清々しい割り切り。
主役を張る松緑の威光があってか、息子の左近も、獅童と彦三郎の間に挟まれて花道の先頭の方で出てくるのだが、並ぶと両脇の獅童、彦三郎より背丈は随分と小さいのだなあ。親父の松緑が、自分とはニンが違うから女方の修行もさせようというのも分かる気がする。彦三郎、亀蔵兄弟はさすがに声が良い。
道玄を演じるのは松緑。禿のかつらで出てきた様は、祖父の二世松緑にも似ている。ギラついた鋭い眼光に、時折見せる素っ頓狂な表情。悪漢なのだが粗忽で妙な愛嬌がある道玄を、初役ながら印象的に演じた。
勘九郎演じる日蔭町松蔵は、竹町質見世の場で、店の主人を恐喝しようとする道玄の悪だくみを見抜き、他の大罪の証拠も突き付け、道玄の顔色を失わせて追い払う痛快な役。歌舞伎では大店を強請ると、大概失敗する。
強請られる伊勢屋主人は権十郎。大店の主人らしい風格あり。道玄に虐待される哀れな女房は芝のぶ。女按摩お兼は本来、はすっぱだが妙な色気があって魅力的に演じる事もできる悪女だと思うし、市川齊入が以前襲名披露でこの役を演じた時は感心した覚えがある。しかし雀右衛門がやると、どうも草臥れた世話女房風になって、どこか違う気がするんだよなあ。
しかし物語そのものは面白い。最後はだんまりの捕り物になって歌舞伎風味満載。
次の演目は「鷺娘(さぎむすめ)」。
2020年9月、コロナ禍での歌舞伎座四部制の玉三郎は、第四期歌舞伎座サヨナラ公演での自身の映像を使った凝った演出で、一部をライブで自分で踊り、客席は万来の拍手でカーテンコールまであったっけ。
七之助の鷺の精が舞ってみせる、娘の恋心、執着と情念。そして地獄の責め苦に雪の中倒れ伏す、哀しくも美しい姿。白無垢の登場から舞踊中に何度も引き抜いて鮮やかな衣装変わりを見せるのも歌舞伎の美。
上映記録では、歌舞伎座ではずっと玉三郎だけが勤めており、その前は2001年の福助まで遡るようだ。七之助は赤坂や大阪松竹座で上演しており、今回が3度目、初の歌舞伎座公演となった。二部上演後に「花篭」で食事。
第三部は、まず中村屋所縁の変化舞踊、「舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)」
十七世勘三郎のために作られた舞踊。勘九郎は、祖父の演じた桜の精、松虫、雪達磨という三役を踊り分ける。松虫では息子の長三郎も登場。
春、秋、冬と変わる背景の中で、娘の姿や松虫、滑稽な雪達磨と装束が変わり、すっぽんやセリも使って、勘九郎はその身体能力を一杯に使って踊ってみせる。なかなか見応えがあった。
この後の幕間、「花篭」で食事。
次の演目は、泉 鏡花 作、坂東玉三郎、今井豊茂 演出の「天守物語(てんしゅものがたり)」。
玉三郎の当たり役で、演出も手掛けるようになった作品。昨年12月の歌舞伎座公演では、自ら指導した七之助を主役の富姫に配し、自分は妹分の亀姫を演じて、これで演じ納めと玉三郎は考えていたのだという。しかし若手、市川團子の「ヤマトタケル」に触発され、團子を相手役に指名して、再び富姫役として歌舞伎座に戻ってきた。
姫路城の天守に存在する異形の世界。この世のものではない美しき姫と、現実を行き来する若者が結ぶ夢幻の恋。
玉三郎は幽玄の美を体現する。そして團子の真っ直ぐな図書之助は、口跡も良く凛々しいが、実は現世に身を置く所がない儚さも感じさせる所が実に良い。これは現実の澤瀉屋にあって、彼が置かれている孤高な境遇が投影されているのではないかという気もするのだった。
七之助の亀姫もまた素晴らしい。この人は、この世ではない異形な魂を持ったものを演じてみせるのに長けている。富姫と亀姫両方を経験し、やがて富姫は七之助の当たり役になるだろうと思わせる。
男女蔵の朱の盤坊は、親父の左團次が演じた役を初役で。生首を舐める門之助の舌長姥は、随分丁寧にやるので、ああ、あんな仕掛けなんだと面白かった。
獅童の近江之丞桃六は終盤を締める重要な役だが、割とサラサラと終わった印象。獅童は今月の歌舞伎座、自らが出ずっぱりで獅子奮迅の第一部「あらしのよるに」だけでなく、「加賀鳶」、「天守物語」三部全部に出演なので、最後は少々疲れていたのかねえ。
土曜日に「新ばし しみづ」訪問。
OMAKASEネット予約に切り替わって以来、最初に飲み物を注文する際、「日本酒のリストを見せてくれ」とか「芋焼酎の水割り」とか頼む、明らかにこの店に初めて来たのだと思う客によく出くわす、いや、なんなら殆どそんな客の時もある。しかし、この日は何故か全員慣れた客が殆どだった。
お酒は常温を貰って始めてもらう。お通しはしらすおろし。1年ずっとワカメで通すのかと思っていたが、久々の変更。塩と煎り酒は別皿で供される。
清水親方は「九州場所は行ったんですか」と。そういえば前に来た時に遠征する話をしたかもしれない。千秋楽のチケットは取れてフライトもホテルも押さえていたのだが、仕事が立て込んで遠征を直前にキャンセルしたのだと回答。もったいなかった。
西大島「與兵衛」の話になって親方は11月に訪問したようだ。私もキャンセル待ちをしていたら連絡があり、12月後半になんとか予約できたのだった。「しみづ」は年末までにあと1回予約を入れてある。正月の営業は5日まではOMAKASEで受け付けないというので、その場で予約を入れてもらった。
まずおまかせのつまみから。私は握りは決まったものしか食さないので、他の客に握りで出す寿司種も、時々つまみで登場する。
まずヒラメ。上等な白身。スミイカは細切りで。タコは、新橋鶴八とは違い、歯応えを残した煮上げなのだが、香りも旨味もある。シャコは肉厚で大型。北海道産だがもう禁漁になったのだと。
サバは〆たものと皮目を炙ったものと。脂が乗っている。小粒な生牡蠣は軽く塩を当ててある。クリーミーな旨味。ワインも合うかなと問うと、意外に生臭さが立つので、やはり日本酒ですよとの事であった。
赤貝も肉厚の身。暖かい白子ポン酢が出ると、ああ冬だなあと感じる。漬け込みハマグリは鶴八系伝来の仕事。あん肝赤酒煮はこの店冬場の名物。癖のない旨味が実によい。ウニもつまみで。
この辺りでお茶を貰って握りに移行。
まず中トロ2。しっかりした赤酢の酢飯にマグロの旨味が解け崩れる。強い〆のコハダもこの店独特。今日はイワシが1貫。酢〆されているがトロトロに脂が乗って実に旨い。アナゴは塩とツメで。これまた鶴八伝来、トロトロに柔らかく旨い。最後はカンピョウ巻を半分貰って終わり。
他にも清水親方と、「笹田」の予約が取れない話や、コロナ禍の話やら、昔の「しみづ」はまだカウンタに灰皿が置いてあった話などして懐かしくも面白かった。
私が「しみづ」に通い始めたのは2001年で、その頃は、「しみづ」に限らず、他の寿司屋のカウンタでも、結構普通にタバコが吸えたんだよなあ。「銀座新富寿司」でもカウンタに灰皿が置いてあった記憶が。私はその時、既に禁煙していたので、「しみづ」のカウンタでタバコ吸った事はないのだが。しかし、店での禁煙が当たり前になった今となっては、もう信じられない昔の物語。
OMAKASEネット予約に切り替わって以来、最初に飲み物を注文する際、「日本酒のリストを見せてくれ」とか「芋焼酎の水割り」とか頼む、明らかにこの店に初めて来たのだと思う客によく出くわす、いや、なんなら殆どそんな客の時もある。しかし、この日は何故か全員慣れた客が殆どだった。
お酒は常温を貰って始めてもらう。お通しはしらすおろし。1年ずっとワカメで通すのかと思っていたが、久々の変更。塩と煎り酒は別皿で供される。
清水親方は「九州場所は行ったんですか」と。そういえば前に来た時に遠征する話をしたかもしれない。千秋楽のチケットは取れてフライトもホテルも押さえていたのだが、仕事が立て込んで遠征を直前にキャンセルしたのだと回答。もったいなかった。
西大島「與兵衛」の話になって親方は11月に訪問したようだ。私もキャンセル待ちをしていたら連絡があり、12月後半になんとか予約できたのだった。「しみづ」は年末までにあと1回予約を入れてある。正月の営業は5日まではOMAKASEで受け付けないというので、その場で予約を入れてもらった。
まずおまかせのつまみから。私は握りは決まったものしか食さないので、他の客に握りで出す寿司種も、時々つまみで登場する。
まずヒラメ。上等な白身。スミイカは細切りで。タコは、新橋鶴八とは違い、歯応えを残した煮上げなのだが、香りも旨味もある。シャコは肉厚で大型。北海道産だがもう禁漁になったのだと。
サバは〆たものと皮目を炙ったものと。脂が乗っている。小粒な生牡蠣は軽く塩を当ててある。クリーミーな旨味。ワインも合うかなと問うと、意外に生臭さが立つので、やはり日本酒ですよとの事であった。
赤貝も肉厚の身。暖かい白子ポン酢が出ると、ああ冬だなあと感じる。漬け込みハマグリは鶴八系伝来の仕事。あん肝赤酒煮はこの店冬場の名物。癖のない旨味が実によい。ウニもつまみで。
この辺りでお茶を貰って握りに移行。
まず中トロ2。しっかりした赤酢の酢飯にマグロの旨味が解け崩れる。強い〆のコハダもこの店独特。今日はイワシが1貫。酢〆されているがトロトロに脂が乗って実に旨い。アナゴは塩とツメで。これまた鶴八伝来、トロトロに柔らかく旨い。最後はカンピョウ巻を半分貰って終わり。
他にも清水親方と、「笹田」の予約が取れない話や、コロナ禍の話やら、昔の「しみづ」はまだカウンタに灰皿が置いてあった話などして懐かしくも面白かった。
私が「しみづ」に通い始めたのは2001年で、その頃は、「しみづ」に限らず、他の寿司屋のカウンタでも、結構普通にタバコが吸えたんだよなあ。「銀座新富寿司」でもカウンタに灰皿が置いてあった記憶が。私はその時、既に禁煙していたので、「しみづ」のカウンタでタバコ吸った事はないのだが。しかし、店での禁煙が当たり前になった今となっては、もう信じられない昔の物語。
ニュー新橋ビル「新橋鶴八」。先週、SMSで空きを確認して金曜日に訪問。
先客は2組。お酒はいつものようにリストを見て、まず「白龍」。
この前の「新ばし 笹田」で、新橋鶴八が店に来訪したと聞いた事を話す。店のお客さんと一緒に行ったとか。笹田氏に「五十嵐さんは幾つくらいなんですか」と聞かれて、47か48歳位ではないかと伝えたのだが、本人に確認すると48歳なんだと。鶴八史上最長不倒の19年修行してから分店を出して10年だから、だいたい計算が合う。笹田氏が「若く見える」と言っていた旨を伝えると、五十嵐親方はなんだか喜んでいた。
いつもと同じく、別におまかせとも言ってないのだが、勝手につまみを出してくる。この店の常連を見ていると、腰を据えて、お好みでゆっくりとつまみや握りをひとつずつ頼む客が多いのだが、私には勝手に出してくるよなあ(笑)
そういえば、過去の「新橋鶴八」では、カウンタ一番奥でとぐろを巻いている大常連O氏には、付き合っていられないからか、注文を聞かずに石丸親方が適当にカツオやタコなど切っておっつけていたが、この店でもその流儀でO氏に接するようになり、そのとばっちりでこちらも同じような扱いになった気がする。思い返すと。
しかし、いつもカウンタ奥に座っていた大常連O氏も最近は来店しないのだとか。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。そんな言葉が胸に去来するなあ。
白身はまずヒラメ。なかなか上質な脂が乗り旨い。カツオは皮目を炙ってある。腹の身も一切れつけて。ネットリした旨味。今年はカツオの当たり年だと聞くが、今は九州で揚がっているのだと。
お酒は「高尾の天狗」に切り替え。タコはまだ煮上げの温かさが残っている。香りよく旨味あり。シャコは漬け込みの仕事。鶴八伝来の味。サバはかなり浅い〆。炙ったボタン海老の上に酒盗をかけた一品。この酒盗は市場で売ってる既製品らしいが、上品な味でなかなか旨いのであった。
日本酒は2本で終了して芋焼酎の水割りを所望。いつもながら親方が「はい、ダブルですよ」と女性に言って濃く作らせ、グラスの中身が減ってくると「はい、おかわりですね」と目ざとく見つけて酒を勧めるので、どうも酔いが回って困る。
そろそろ握りますかと言われて、握りはまず赤身ヅケ。これまた頼んでいないのに勝手に出てくる。ただこのヅケはマグロの良い酸味が感じられて旨い。
この店のマグロは、手広く商売をやっている「やま幸」から入れているそうである。前にTVの番組に出たあそこの社長は「寿司屋にはその酢飯に合ったマグロを出す」信念があって、取引する時にはその店に行って握りを食べて、どのマグロを出すのか決めるのだと言っていた。この店にも来たのか聞くと、別に来ていないそうである。話が違うな(笑)
メジマグロは腹の脂が乗った部分だが、あっさりした旨味。酢飯は米の旨味を残して固めに焚き上げてあり、ほぐれ具合もよく、相変わらず旨い。
ヒラメ昆布〆も1貫。昆布の滋味が白身に染みて酢飯とも良く合う。赤貝も肉厚。握りで赤貝は久しぶりに食した気がする。
ここで小柱を食べたかったので、1貫注文。小柱はやはり海苔の風味と良く合う。自分で注文したのはこれだけ。コハダやサヨリも注文したかったが忘れていた。最後はアナゴが1貫。鶴八伝来の仕事。
あれ、そういえばガリの記憶がない。またケチして出さなかったのかな。普通の店なら自動的に出てくるから、ガリをくれと意識して頼まないが、どうもガリを食べた記憶がないのだった。
結構酔いが回って勘定を。帰宅してから、あれ、そういえば12月中にもう一度行く約束をした記憶があるのだが、何日だったか思い出せないことに気づく。年内最終の営業日28日はもう予約で一杯と聞いた記憶はあったのだが。翌日、SMSで親方に確認。やはり予約を入れてあった。思い出してよかった。
しかし、そろそろ他の寿司屋にも、年末の挨拶をかねて今年最後の訪問を計画しなくては。時の流れは速く、いつの間にか年越しが目前のそんな時期になった。
先客は2組。お酒はいつものようにリストを見て、まず「白龍」。
この前の「新ばし 笹田」で、新橋鶴八が店に来訪したと聞いた事を話す。店のお客さんと一緒に行ったとか。笹田氏に「五十嵐さんは幾つくらいなんですか」と聞かれて、47か48歳位ではないかと伝えたのだが、本人に確認すると48歳なんだと。鶴八史上最長不倒の19年修行してから分店を出して10年だから、だいたい計算が合う。笹田氏が「若く見える」と言っていた旨を伝えると、五十嵐親方はなんだか喜んでいた。
いつもと同じく、別におまかせとも言ってないのだが、勝手につまみを出してくる。この店の常連を見ていると、腰を据えて、お好みでゆっくりとつまみや握りをひとつずつ頼む客が多いのだが、私には勝手に出してくるよなあ(笑)
そういえば、過去の「新橋鶴八」では、カウンタ一番奥でとぐろを巻いている大常連O氏には、付き合っていられないからか、注文を聞かずに石丸親方が適当にカツオやタコなど切っておっつけていたが、この店でもその流儀でO氏に接するようになり、そのとばっちりでこちらも同じような扱いになった気がする。思い返すと。
しかし、いつもカウンタ奥に座っていた大常連O氏も最近は来店しないのだとか。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。そんな言葉が胸に去来するなあ。
白身はまずヒラメ。なかなか上質な脂が乗り旨い。カツオは皮目を炙ってある。腹の身も一切れつけて。ネットリした旨味。今年はカツオの当たり年だと聞くが、今は九州で揚がっているのだと。
お酒は「高尾の天狗」に切り替え。タコはまだ煮上げの温かさが残っている。香りよく旨味あり。シャコは漬け込みの仕事。鶴八伝来の味。サバはかなり浅い〆。炙ったボタン海老の上に酒盗をかけた一品。この酒盗は市場で売ってる既製品らしいが、上品な味でなかなか旨いのであった。
日本酒は2本で終了して芋焼酎の水割りを所望。いつもながら親方が「はい、ダブルですよ」と女性に言って濃く作らせ、グラスの中身が減ってくると「はい、おかわりですね」と目ざとく見つけて酒を勧めるので、どうも酔いが回って困る。
そろそろ握りますかと言われて、握りはまず赤身ヅケ。これまた頼んでいないのに勝手に出てくる。ただこのヅケはマグロの良い酸味が感じられて旨い。
この店のマグロは、手広く商売をやっている「やま幸」から入れているそうである。前にTVの番組に出たあそこの社長は「寿司屋にはその酢飯に合ったマグロを出す」信念があって、取引する時にはその店に行って握りを食べて、どのマグロを出すのか決めるのだと言っていた。この店にも来たのか聞くと、別に来ていないそうである。話が違うな(笑)
メジマグロは腹の脂が乗った部分だが、あっさりした旨味。酢飯は米の旨味を残して固めに焚き上げてあり、ほぐれ具合もよく、相変わらず旨い。
ヒラメ昆布〆も1貫。昆布の滋味が白身に染みて酢飯とも良く合う。赤貝も肉厚。握りで赤貝は久しぶりに食した気がする。
ここで小柱を食べたかったので、1貫注文。小柱はやはり海苔の風味と良く合う。自分で注文したのはこれだけ。コハダやサヨリも注文したかったが忘れていた。最後はアナゴが1貫。鶴八伝来の仕事。
あれ、そういえばガリの記憶がない。またケチして出さなかったのかな。普通の店なら自動的に出てくるから、ガリをくれと意識して頼まないが、どうもガリを食べた記憶がないのだった。
結構酔いが回って勘定を。帰宅してから、あれ、そういえば12月中にもう一度行く約束をした記憶があるのだが、何日だったか思い出せないことに気づく。年内最終の営業日28日はもう予約で一杯と聞いた記憶はあったのだが。翌日、SMSで親方に確認。やはり予約を入れてあった。思い出してよかった。
しかし、そろそろ他の寿司屋にも、年末の挨拶をかねて今年最後の訪問を計画しなくては。時の流れは速く、いつの間にか年越しが目前のそんな時期になった。
先週の水曜は、銀座「鮨 み富」。しばらく禁酒していたのだが、そろそろ一杯やるかと月曜に食べログ予約で見ると水曜が空いていたので予約したのだった。
仕事を定時に切り上げて入店すると、まだカウンタには他にお客さんなし。
親方が何時ものようにお勧めの酒の一升瓶を並べて見せてくれる。千葉「不動」と同じ酒蔵の新酒だという「仁勇」を選択。爽やかな口当たりの酒。
お通しに、白魚、イカと椎茸の味噌漬けを貰う。
他にお客さんが居ないので、のんびりと飲みながら、親方と築地場外に残るお店の話など。仕入れは豊洲だが、野菜ものやつまものは、築地で買うのだと。人気の食べ物屋など教えて貰った。インバウンドで外国人がやたら多いのが困りものだが、たまには行ってみたいな。
白身はまず鯛。皮目に旨味あり。ブリはもう能登だと。サヨリもかなり大きくなってきた。皮は串に巻いて炙ってくれる。
北寄貝があるというので貰う。ここのつまみは甘酢に潜らせてだすのだが、北寄は甘酢が貝自体の甘みを引き立ててよく合う。ミル貝が無い時にピンチヒッターで買う時が多いと。紐も炙ってつまみで。火を通すと甘みが増して美味い。
ヤリイカのゲソ、漬込みのシャコ、ハマグリもつまみで。
大相撲11月場所で琴櫻優勝の祝賀で掲げていた鯛が大物で8キロだったと言う話をすると、親方は、8キロの鯛は聞いた事がないなあと。そこまで大きくなるのはかなり爺さんの鯛で身肉は食しても雑味あるんじゃないかな。勿論、縁起物だから相撲部屋の後援者は金に糸目をつけずに大きいものを探すのだろうが。かなり前から発注をかけないと大物は手に入らないので、結果的に優勝を逃した場合など、巨大な鯛も縁起物としては日の目を見ない事もあるだろう。
この辺りでお茶を貰って握りに。
鯛の昆布〆は昆布の旨味が良い。カスゴ、コハダ、イワシと光り物を貰う。この店の酢飯は〆た物によく合う。そして光り物がたくさん置いてあるのがまた良い所。昔の江戸前を感じる味なんだなあ。
煮物ではツメに古式を感じるアナゴ。そしてこの店名物のカンピョウ巻を貰って〆。勘定を済ませた後にお歳暮を貰い、年内にもう一度来ますからと約して店を出た。
仕事を定時に切り上げて入店すると、まだカウンタには他にお客さんなし。
親方が何時ものようにお勧めの酒の一升瓶を並べて見せてくれる。千葉「不動」と同じ酒蔵の新酒だという「仁勇」を選択。爽やかな口当たりの酒。
お通しに、白魚、イカと椎茸の味噌漬けを貰う。
他にお客さんが居ないので、のんびりと飲みながら、親方と築地場外に残るお店の話など。仕入れは豊洲だが、野菜ものやつまものは、築地で買うのだと。人気の食べ物屋など教えて貰った。インバウンドで外国人がやたら多いのが困りものだが、たまには行ってみたいな。
白身はまず鯛。皮目に旨味あり。ブリはもう能登だと。サヨリもかなり大きくなってきた。皮は串に巻いて炙ってくれる。
北寄貝があるというので貰う。ここのつまみは甘酢に潜らせてだすのだが、北寄は甘酢が貝自体の甘みを引き立ててよく合う。ミル貝が無い時にピンチヒッターで買う時が多いと。紐も炙ってつまみで。火を通すと甘みが増して美味い。
ヤリイカのゲソ、漬込みのシャコ、ハマグリもつまみで。
大相撲11月場所で琴櫻優勝の祝賀で掲げていた鯛が大物で8キロだったと言う話をすると、親方は、8キロの鯛は聞いた事がないなあと。そこまで大きくなるのはかなり爺さんの鯛で身肉は食しても雑味あるんじゃないかな。勿論、縁起物だから相撲部屋の後援者は金に糸目をつけずに大きいものを探すのだろうが。かなり前から発注をかけないと大物は手に入らないので、結果的に優勝を逃した場合など、巨大な鯛も縁起物としては日の目を見ない事もあるだろう。
この辺りでお茶を貰って握りに。
鯛の昆布〆は昆布の旨味が良い。カスゴ、コハダ、イワシと光り物を貰う。この店の酢飯は〆た物によく合う。そして光り物がたくさん置いてあるのがまた良い所。昔の江戸前を感じる味なんだなあ。
煮物ではツメに古式を感じるアナゴ。そしてこの店名物のカンピョウ巻を貰って〆。勘定を済ませた後にお歳暮を貰い、年内にもう一度来ますからと約して店を出た。