先週の土曜日は、歌舞伎座「六月大歌舞伎」昼の部。10時半前に入場が始まる。そんなには混んでる印象無いね。
入場する時にはまだ「六月大歌舞伎」の垂れ幕が下がっていなかった。そんな事もあるんだ(笑)
最初の演目は、「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)三笠山御殿」
「妹背山婦女庭訓」は、人形浄瑠璃から移された何段もある長い芝居。舞台は大化の改新辺り。細かい風俗は江戸の物を援用しているとは言え、やはり上代独特の雰囲気も感じられる「時代物」。
「吉野川」も見たし、「杉酒屋」から「三笠山御殿」までの通しも見たが、今回は「三笠山御殿」のみ。「杉酒屋(すぎざかや)」、「道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)」など前の段が出ないと、なんで「苧環」持っているのかとか、恋の争いの背景とかがやはりちょっと分かりづらいが、まあそれが歌舞伎の興行。長くなったら長くなったで寝てしまうし(笑)
冒頭の入鹿は楽善。彦三郎、亀蔵の息子2名を左右に従えて。台詞がみんな明晰で良い。玉三郎で見た時の漁師鱶七実は金輪五郎は、今回も松緑だったが、荒事味あり、豪放磊落でかつ可笑しみのある演技が舞台に映えて実に印象的。
杉酒屋娘お三輪は時蔵。嫉妬に狂った「凝着の相」から、切られた後、自分の死は無駄ではなく愛する者を救うのだという安堵、しかし最後に一目会う事はかなわないという哀しい結末まで芸の力で見事に演じる。
本質とは関係無いが、時蔵の頬骨が張っている所を見ると、いつもメリル・ストリーブを思い出して、小娘に見えなくなってしまうのでいかんな(笑)
お三輪を虐める官女達は立役がやるのがお約束なのだそうだが、前回見た時ほど印象的では無かったかな。「三笠山御殿」のみだが幕間無しで2時間近いというのは、最初の演目とはいえちょっと疲れる。
ここで30分の幕間。今回は昼も夜も幕間が少なくギチギチに演目が詰まっており、30分の幕間が昼夜とも遅い。三階の花篭食堂はガラガラ。だって午後1時近いものねえ。
次の演目は舞踊。六歌仙容彩「文屋(ぶんや)」。
先月も菊之助が六歌仙の一幕を踊ったが、今月も続けて。詰め込み気味の時間表だけを見るなら、公演としては無くともよかったが、まあ色々と事情があるのでしょうな。最初の演目で官女が大勢出るので、舞踊にも出そうとか(笑)幕開きと同時に清元に「延寿太夫!」と声が掛かる。人気ですな。「たいめいけん」や「雷門おこし」の若旦那達の如く真っ黒だが、サーファーなんだろうか(笑)
15分の幕間を挟んで、河竹黙阿弥作、「野晒悟助(のざらしごすけ)」。
あまり深い展開は無く、男伊達の粋と女にモテモテの格好良さを菊五郎が見せる、気楽な世話物。歌舞伎座では20年ぶりの上演。背景は大阪だが雰囲気は江戸の下町。
住吉神社鳥居前、与太者の乱暴狼藉に会った土器売りの貧乏な親娘を助けて金を与え、敵はきっと打ってやるという颯爽とした菊五郎は、同じく参拝に来ていた大店の娘も助けて、両方の娘から惚れられる事になる。この野晒悟助の出が何のことは無いけれども格好良くて印象的。
児太郎演じる薄幸な娘お賤と、米吉演じる大店のおっとりした娘小田井の対比も良く効いている。その後もドタバタがあり、娘二人が押しかけ女房に来て、嫁の座は先に来た小田井のものに。この辺りも、「もう少し早く来てくれれば」と結構エー加減な埒もない風味である。
そして制裁を加えた与太者の親分、左團次がやってきて揉め事になり、百両が要る事になるが、お賤が身を売って百両を用立てる。自分のために苦界に身を落とすお賤の手を取って「来世はお前と夫婦に」と言う悟助の台詞に「えええ!」と驚く米吉が面白い。米吉は、ポワンとちょっと抜けているような娘役が似合うよねえ。
百両を手にして提婆仁三郎(左團次)を追いかける悟助の立ち回りで大団円。菊五郎劇団の大立ち回りは、大勢がチームワーク良く音羽屋の柄が入った傘を使い、トンボも何度も派手に切って全員の息が合っている。
河竹黙阿弥が五世尾上菊五郎のために書き下ろした作品だそうであるが、菊五郎が粋で格好良く見える、小難しい所のない気楽な世話物。なかなか面白かった。
入場する時にはまだ「六月大歌舞伎」の垂れ幕が下がっていなかった。そんな事もあるんだ(笑)
最初の演目は、「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)三笠山御殿」
「妹背山婦女庭訓」は、人形浄瑠璃から移された何段もある長い芝居。舞台は大化の改新辺り。細かい風俗は江戸の物を援用しているとは言え、やはり上代独特の雰囲気も感じられる「時代物」。
「吉野川」も見たし、「杉酒屋」から「三笠山御殿」までの通しも見たが、今回は「三笠山御殿」のみ。「杉酒屋(すぎざかや)」、「道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)」など前の段が出ないと、なんで「苧環」持っているのかとか、恋の争いの背景とかがやはりちょっと分かりづらいが、まあそれが歌舞伎の興行。長くなったら長くなったで寝てしまうし(笑)
冒頭の入鹿は楽善。彦三郎、亀蔵の息子2名を左右に従えて。台詞がみんな明晰で良い。玉三郎で見た時の漁師鱶七実は金輪五郎は、今回も松緑だったが、荒事味あり、豪放磊落でかつ可笑しみのある演技が舞台に映えて実に印象的。
杉酒屋娘お三輪は時蔵。嫉妬に狂った「凝着の相」から、切られた後、自分の死は無駄ではなく愛する者を救うのだという安堵、しかし最後に一目会う事はかなわないという哀しい結末まで芸の力で見事に演じる。
本質とは関係無いが、時蔵の頬骨が張っている所を見ると、いつもメリル・ストリーブを思い出して、小娘に見えなくなってしまうのでいかんな(笑)
お三輪を虐める官女達は立役がやるのがお約束なのだそうだが、前回見た時ほど印象的では無かったかな。「三笠山御殿」のみだが幕間無しで2時間近いというのは、最初の演目とはいえちょっと疲れる。
ここで30分の幕間。今回は昼も夜も幕間が少なくギチギチに演目が詰まっており、30分の幕間が昼夜とも遅い。三階の花篭食堂はガラガラ。だって午後1時近いものねえ。
次の演目は舞踊。六歌仙容彩「文屋(ぶんや)」。
先月も菊之助が六歌仙の一幕を踊ったが、今月も続けて。詰め込み気味の時間表だけを見るなら、公演としては無くともよかったが、まあ色々と事情があるのでしょうな。最初の演目で官女が大勢出るので、舞踊にも出そうとか(笑)幕開きと同時に清元に「延寿太夫!」と声が掛かる。人気ですな。「たいめいけん」や「雷門おこし」の若旦那達の如く真っ黒だが、サーファーなんだろうか(笑)
15分の幕間を挟んで、河竹黙阿弥作、「野晒悟助(のざらしごすけ)」。
あまり深い展開は無く、男伊達の粋と女にモテモテの格好良さを菊五郎が見せる、気楽な世話物。歌舞伎座では20年ぶりの上演。背景は大阪だが雰囲気は江戸の下町。
住吉神社鳥居前、与太者の乱暴狼藉に会った土器売りの貧乏な親娘を助けて金を与え、敵はきっと打ってやるという颯爽とした菊五郎は、同じく参拝に来ていた大店の娘も助けて、両方の娘から惚れられる事になる。この野晒悟助の出が何のことは無いけれども格好良くて印象的。
児太郎演じる薄幸な娘お賤と、米吉演じる大店のおっとりした娘小田井の対比も良く効いている。その後もドタバタがあり、娘二人が押しかけ女房に来て、嫁の座は先に来た小田井のものに。この辺りも、「もう少し早く来てくれれば」と結構エー加減な埒もない風味である。
そして制裁を加えた与太者の親分、左團次がやってきて揉め事になり、百両が要る事になるが、お賤が身を売って百両を用立てる。自分のために苦界に身を落とすお賤の手を取って「来世はお前と夫婦に」と言う悟助の台詞に「えええ!」と驚く米吉が面白い。米吉は、ポワンとちょっと抜けているような娘役が似合うよねえ。
百両を手にして提婆仁三郎(左團次)を追いかける悟助の立ち回りで大団円。菊五郎劇団の大立ち回りは、大勢がチームワーク良く音羽屋の柄が入った傘を使い、トンボも何度も派手に切って全員の息が合っている。
河竹黙阿弥が五世尾上菊五郎のために書き下ろした作品だそうであるが、菊五郎が粋で格好良く見える、小難しい所のない気楽な世話物。なかなか面白かった。