■ グループリーグ第2戦初戦で、グループリーグの最大のライバルと目されていたカタールに引き分けてグループリーグ突破に大きく前進した日本は、初戦でホスト国のベトナムに0対2で敗れて後のないUAE代表と対戦。
日本は、<4-4-2>。左MF山岸に代えて、FW巻を起用。2トップに変更。左サイドバックには、怪我が癒えたDF駒野が入り、加地・中澤・阿部・駒野の4バックでスタート。
対するUAEは、<4-3-3>。2003年のワールドユースでMVPを獲得している、FWイスマイル・マタルが攻撃の軸。
■ 待望のゴール日本は、立ち上がりこそ、UAEの出足のよさに苦しんだが、前半の10分を過ぎると、試合は、日本ペースに落ち着いていく。カタール戦と同様に、中村憲剛と遠藤を中心に、見事な連携からの崩しを見せ始める。
そんな中、前半22分、中村俊輔のクロスをゴール前でフリーになっていた高原が決めて先制。さらに、前半27分にも、右サイドバックの加地のクロスを遠藤がスルーし、ゴール前の高原が右足ダイレクトで決めて追加点。前半42分には、中村憲剛のロビングパスを裏で抜け出た遠藤が、相手GKに倒されてPKを獲得。そのPKを中村俊輔が決めて、3対0となった。
日本は、2トップに変更したことで、高原へのマークが緩んで、高原の得点力を存分に生かせるようになった。巻は、ゴールこそなかったが、献身的なプレーで、チームを活性化させた。また、駒野が復帰したことで、左サイドからも鋭い攻撃が見られるようになった。守備陣も、相手の10番、イスマイル・マタルへのマークが厳しく、徹底されていた。
■ 失速した後半後半7分、UAEのDFがレッドカードで退場になって、相手が10人になる。その後、日本は、ボールポゼッションで圧倒したが、暑さからか、徐々に足が止まり始めると、後半28分に、ドリブル突破から、ゴールを許す。
その後も、マタルのシュートに脅かされるなど、楽な展開にはならなかったが、それでも、最後は、したたかに時間稼ぎを行って、3対1で勝利。グループ首位に立った。
■ プロの戦士が見せた意地高温多湿なコンディションに加えて、初戦で嫌な形で同点ゴールを奪われていたことから生じた雑音などなど、ネガティブな要素も少なくなかったが、その雰囲気を一掃するだけの試合内容を見せた。
特に前半は、強豪のUAEを3対0で圧倒。高い組織力と個のアイディアが終結し、UAEをまったく、寄せ付けなかった。カタール戦のあと、たぶんに、ポーズもあったと思うが、オシム監督に渇を入れられた選手たちは、見事に結果と内容を両立するサッカーを見せた。
■ エース誕生エースの高原は、見事な2ゴール。貴重な先制ゴールと、追加点の2点目。特に、2点目のふりの速いコンパクトで力強いシュートは、明らかにアジアレベルを超越していた。
カタール戦でも先制ゴールを挙げている高原は、2試合で3得点。巧みなキープ力で前線で基点となるプレーも秀逸で、非の打ち所のないプレーだった。
フランスの地で、FW三浦知良というエースストライカーを失って以来、日本中が捜し求めていたストライカーが、ようやく生まれようとしている。カズは、チームが苦しい立場に追い込まれたとき、必ず、チームに栄光をもたらすゴールを生み出した。高原も、ベトナムの地で、チームに栄光をもたらすゴールを、決められるのだろうか?
■ 遠藤保仁の輝き高原と同様に、高いパフォーマンスをみせたのが、MF遠藤。初戦では、やや消極的なプレーも見られたが、この試合では、試合開始早々のドリブル突破のシーンが象徴するように、積極的で効果的なプレーを続けた。
ジーコジャパンでは、ボランチでのプレーがほとんどだったが、オシムジャパンでは、一貫して、攻撃的MFでプレーしている。当初は、ポジションの違いに、やや戸惑いも見られたが、試合を重ねるごとに、前目のポジションに適合してきており、オシムジャパンの核といってもいいだろう。
3得点すべてに絡んだだけでなく、試合終盤には、相手をいなすボールポゼションの中心に君臨した。すばらしい出来だった。
■ 改善の余地のある中村俊輔のプレー1ゴール1アシストという結果を残した中村俊輔だが、彼のマックスパフォーマンスから考えると、カタール戦に引き続いて、UAE戦のパフォーマンスも、十分ではなかった。後半開始早々に、右サイドで仕掛けて、相手DFを外して、GKと1対1となったシーンのような場面をもっと作らないといけなかった。
印象では、ポジションがやや下がりすぎていて、アタッキングエリアでドリブルで仕掛けるシーンが少ないのが、気になる。サイドでボールをもった俊輔のドリブルからの仕掛けは、日本の武器のひとつなので、ベトナム戦では、そういうシーンを多く作って欲しい。
■ 効果的な水野の起用中村がPKのシーンで、イエローカードをもらっていたことで、MF水野が、後半途中に中村に代わって攻撃的MFで起用されたが、ポジティブな印象をもった。
相手が10人の状況ではあったが、日本の流動的な中盤の枠組みに組み込まれず、水野自身が完全に右サイドに張ったことで、右サイドアタッカーが水野と加地の2枚になり、水野が右サイドバックの加地のオーバーラップを効果的に引き出して、右サイドから厚みのある攻撃を演出した。
■ 失速の理由前半で3対0とリードし、後半も畳み掛けたい日本だったが、後半にやや失速し、不完全燃焼の後半になった。後半に足が止まることは、この気候では仕方のない部分であり、足が止まる時間(後半15分あたり)までに、十分なリードが奪えていれば、なんら問題はないと思う。ただ、もう少し、したたかに、試合をクローズできれば、無駄な労力を使わなくても済むので、オシムジャパンの課題のひとつといえる。
試合によって状況は異なるので、どういうクローズの仕方が正解かについては答えはないが、この試合では、2トップから1トップに変更したことも、流れが悪くなった要因になった。羽生の運動量は効果的ではあるが、この試合に限っていうと、2トップのままで、相手に、もっと圧力をかけたほうがよかった。
■ 1トップか2トップか1トップか2トップか、どちらがふさわしいかについては、オシム監督も悩んでいるようだが、個人的には、やはり、2トップがベターであるように感じる。
ゴール前の人数が増えることはもちろんその第一理由だが、遠藤や中村憲剛がいる日本の中盤の構成力を考えれば、もうひとり、MFタイプの選手を増やす必要性は、FWを増やす必要性よりも大きいとは思わない。
■ 脱アジアへの期待カタール戦、UAE戦とも、リズムのいい時間帯の日本の攻撃は、アイディアが豊富で、ファンタスティックなものだった。アジア全体のレベルが向上しているのは今大会の結果を見れば明らかだが、それでも、相手DFを崩し切って攻撃チャンスを生み出す日本の力は、頭ひとつ抜けているような印象をもつ。
相手にべた引きされたときに崩すことが難しいのは万国共通だが、それでも、遠藤&中村憲剛&中村俊輔のトリオならば、何とか崩して、美しいサッカーを見せてくれるのではないかという、期待を抱かせる。
■ プロの監督のすごさこの2試合で一番、感じるのは、イビチャ・オシムのすごさである。ワールドクラスの選手、たとえば、エトーやカカ、ルーニーらが、日本人選手と比べても、明らかに力が優れているのと同様に、ワールドクラスの名将は、やはり、只者ではないという思いを抱かずにはいられない。
思い起こしてみると、昨年のオシムジャパンのベストメンバーといえるサウジアラビア戦とは、サッカーの質も内容もスタイルも、アジアカップの日本代表チームとは、かなり異なっている。
どちらが好みかは、それぞれの嗜好によるし、ボクは、危うさと隣り合わせながら、チームのどこからでも仕掛けられて、誰もがゴール前に侵入していくアグレッシブな「06バージョン」の方が好みではあるが、中村俊輔と高原と中澤というスペシャリストを要所に配置して、高い技術と高い守備能力を備える「07バージョン」は、引いてカウンターを持ち味とするアジア諸国を相手にするには、理想に近いチーム構成であるように思える。
アジアカップ以後、オシム監督が、どちらのスタイルをベースにするのか分からないし、そもそも、意図的に区別をしているつもりはないのかもしれないが、傍から見ると、よくも、これだけの短期間で、2つ異なるスタイルの完成度を高めて、試合に披露できるようになったと、感心せずにはいられない。
アジアカップというひとつの区切りが終わると、結果はどうあれ、オシム監督は、更なる選手発掘にいそしむことだろう。この試合のピッチに立った選手であっても、地位が安泰な選手は誰一人いない。世界的な名将は、今後、どんな人材を発掘し、登用していって、最終的には、どんなチーム構成を描いているのだろうか?
■ ベトナム戦に向けてグループ首位に立ったことで、優位に立った日本だが、グループ最終戦は、ホスト国のベトナムである。ホームの大歓声を背に、アグレッシブに攻めてくるベトナムは、容易な相手ではないだろう。
とはいっても、個人能力では、日本が圧倒的に優勢である。したたかに戦うことができれば、問題のある相手ではない。個人的には、グループリーグの第1戦と第2戦でイエローカードを受けていて、第3戦にイエローカードをもらうと、大事な決勝トーナメントの初戦が出場停止になるDF阿部とMF中村俊輔を先発で起用するのか、興味がある。
ともに、チームにとっては大事な選手であるので、難敵との対戦が予想される決勝トーナメントに向けて、温存させるのも、作戦のうちである。
日本代表・採点GK川口能活 6.0
→ マタルの強烈なシュートを2度はじいて、最小失点に抑えた。
DF加地亮 6.5
→ カタール戦とは見違えるプレーで、サイド攻撃を活性化。見事なアシストもマーク。
DF中澤佑二 6.5
→ ハイボールへの強さは、群を抜く。安定感も抜群。
DF阿部勇樹 6.0
→ フィードでは、軽率なミスもあったが、カバーリングはすばらしかった。
DF駒野友一 6.5
→ 前半から、果敢にサイドアタックを仕掛けた。中に切れ込んで、シュートを放つ意欲も旺盛。
MF鈴木啓太 6.0
→ ハードワークで、守備の穴を作らなかった。怪我が心配だが・・・。
MF中村憲剛 6.0
→ やや狙いすぎのシーンもあったが、確実なキープ力は、日本の攻撃には不可欠。
MF中村俊輔 5.5
→ 見事なアシストも、攻撃の流れの中には乗り切れず。ドリブルで仕掛けるシチュエーションを、もっと作りたい。
MF遠藤保仁 7.0
→ 憲剛とともに、攻撃をリード。飛び出す意識も高く、文句のつけようのない出来。
FW高原直泰 7.0
→ 体調不良をおしての2ゴールは、圧巻。唯一、代えのきかない選手なので、体調が心配。
FW巻誠一郎 5.5
→ イーブンのボールを、相手DFと競り合ってマイボールに出来るのが、どれほどチームにとって、助かるかを証明した。決定機を外したのは、マイナス。
MF羽生直剛 5.5
→ アグレッシブに動いたが、実効性は欠いた。
MF水野晃樹 6.5
→ 途中出場で、右サイドの基点となった。
MF今野泰幸 6.5
→ 難しい展開の中、ピッチに投入されて、ミスなく、試合を終えた。ユーティリティ性が光る。
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>>> ハッサン二世さん
どうも、コメントありがとうございました。
興味深い内容でしたので、文中で引用させていただきました。
これからも、よろしくお願いいたします。
とても参考になります
遠藤は本当良かった
かなり叩かれてますけど巻は今日自分も良かったと思います
ただ巻の1トップは高原さんの1トップよりキツイですね
巻でも矢野でも次は彼ら自身の得点を期待します
最後に他ブログなどを見ると必要以上に巻羽生山岸水野阿部が叩かれていてジェフサポでない自分も悲しくなります
彼らはそんなに悪いプレーしてると思えないのですがどうなんでしょう?
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