■ プレーオフが開幕J2のプレーオフが開幕。リーグ戦で4位だった徳島ヴォルティスと、5位だったジェフ千葉が鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムで対戦した。ポカスタで行われた20節の対戦はアウェーの千葉が2対1で勝利して、フクアリで行われた26節の試合はアウェーの徳島が2対1で勝利しており、2試合ともアウェー側が勝ち点「3」を手にしている。
ホームの徳島は「4-2-2-2」。GK松井。DF藤原、橋内、千代反田、アレックス。MF柴崎、濱田、宮崎、大崎。FW津田、ドウグラス。エースのFW津田は40試合で14ゴール、FWドウグラスは29試合で12ゴール、MF大崎は41試合で8ゴールを挙げている。DF福元とDF青山隼の2人は怪我で欠場中で、この試合もDF橋内とDF千代反田のCBコンビとなった。DFアレックス2009年と2010年は千葉でプレーしている。
対するアウェーの千葉は「4-2-3-1」。GK岡本。DF米倉、キム・ヒョヌン、山口智、高橋峻。MF山口慶、佐藤健、兵働、町田、谷澤。FWケンペス。左サイドハーフはMF田中佑がベンチスタートとなって、MF谷澤がスタメンで起用された。FWケンペスは38試合に出場して22ゴールを挙げてJ2の得点王に輝いている。FW森本、MF田中佑、MF大塚、MF深井、MF佐藤勇らがベンチスタートとなった。
■ 徳島が決勝進出を決める試合の序盤は両チームともリスクを冒すことなく、慎重な試合の入り方をする。「引き分けでもOK」という有利な立場にある徳島はFWドウグラスを目掛けてロングボールを蹴り込むシーンが目立つ。前半の終盤を迎えて千葉がボールを保持する時間が長くなり始めた前半35分にMF濱田のスルーパスを受けたFW津田がペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。これをFWドウグラスが決めて徳島が先制する。
これで「2点以上」が必要となった千葉は前半40分に右サイドのCKを獲得すると、MF兵働の蹴ったボールをDF山口智が合わせて千葉が1対1の同点に追い付く。前半終了間際にFWドウグラスが相手の不用意なバックパスに反応して、不利な体勢だったDF山口智に倒される。しかしながら、FWドウグラスのファールという判定で、しかも、FWドウグラスはプレー続行が出来なくなって、FW高崎が投入される。
1対1で迎えた後半は「もう1点」が必要な千葉が猛攻を仕掛ける。徳島はCKの守備がまずくて、幾度となく、千葉の選手にフリーでシュートを放たれるが、GK松井の好セーブもあってゴールを許さない。後半34分に徳島はFW津田を下げてMF斉藤を投入。守りに入ると終盤の千葉の攻撃を何とか凌いで1対1で終了。引き分けのときは、リーグ戦で上の順位だったチームが勝ち抜けとなるので、徳島が決勝進出を決めた。
■ J1昇格まであと1勝!!!「四国初のJ1クラブ」を目指す徳島が初のJ1昇格まであと1つに迫った。3位の京都と6位の長崎が対戦したもう片方の試合は0対0だったので、3位の京都が勝ち抜けを決めている。よって、決勝戦は3位の京都と4位の徳島の対戦となったので、徳島は次の試合は勝つしかないが、幸いにして、中立地の国立競技場で開催される。アウェーの環境ではないことはポジティブな要素である。
先制ゴールを奪った直後に追い付かれて、後半は苦しい展開となった。MF米倉やFW森本が決定的なシュートを放って、決まっていてもおかしくないシュートはいくつもあったが、運に味方されたところもあるし、最終ラインの選手が体を張って自由を与えなかったところもある。特に、CBのDF橋内とDF千代反田の2人の活躍は目覚ましくて、最終節の長崎戦(A)に続いてハイパフォーマンスを見せた。
PKの場面はFWドウグラスが落ち着いて決めたが、徳島はPKに関してはトラウマがある。2011年の終盤は大事なところでMF徳重が決められずに4位に終わって、今シーズンも終盤の勝負どころでFW津田が2試合連続でPKを失敗した。誰がキッカーを務めるのか?FW津田がそのまま自分で蹴るかと思われたが、FWドウグラスに任せた。PKに対する嫌なイメージを払しょくするゴールになったと言える。
残念だったのは、攻撃の中心の1人であるFWドウグラスが前半終了間際に負傷交代したことである。1週間後にPOの決勝戦を控えているが、捻挫ということでスタメンで出場できるかどうかは微妙で、スタメンで出場できないとなると大きな戦力ダウンとなる。このシーンは千葉のDF山口智と交錯して、FWドウグラスがファールを取られたが、これについては、吉田レフェリーのミスジャッジだったのではないかと思う。
完全にFWドウグラスが裏に抜け出しかけていたので、DF山口智のファールを取った場合は、イエローの対象となる。しかも、DF山口智は前半10分に1枚目のイエローを受けているので、「2枚目のイエローで退場」となるところだった。笛が鳴った直後は、DF山口智は2枚目のイエローが出されることを覚悟した感じの振る舞いだったが、なぜか、FWドウグラスのファールとなった。
吉田レフェリーは「大きな試合で退場者を出したくない。」という心理が働いたのではないか?と推測できるが、疑問の残るジャッジだった。大きな試合や注目度の高い試合というのは、「11人対11人のまま」で試合が続けられるのが望ましいが、だからといって、レッドカードに値するようなプレーを見過ごすというのは、どうかと思う。場の空気を読み過ぎた末の判断ミスだったと思う。
■ またしてもJ1復帰はならず・・・一方の千葉はいくつかあった決定機に決められなかったことが響いた。後半にMF大塚、MF深井、FW森本を投入して、チャンスは作ったが、運もなかった。2012年のプレーオフは3試合ともリーグ戦の順位が下だったチームが勝利したが、やはり、「引き分けでも勝ち抜け」となる上位チームが圧倒的に有利なレギュレーションである。今年は、徳島も、京都も、「引き分けでもOK」という有利さを生かした。
「J1昇格まであと1勝」となった徳島とは対照的に、千葉はまたしても「J1復帰」に失敗した。これで4年連続でJ1昇格に失敗して、J2生活は5年目に突入する。勝負強いチームとは言えないので、プレーオフではなくて、自動昇格(=2位以内)でJ1復帰を決めたいところであるが、2012年も、2013年も5位という順位に終わった。この順位からプレーオフを制するというのは、非常に難易度が高い。
就任1年目の鈴木監督に対しては、批判的な声も出ているが、鈴木監督というのは、スペシャルな監督ではない。新潟のときも、大宮のときも、与えられた戦力を上手く活用して、「自軍の戦力値から考えて期待される順位よりもちょっと上」くらいの成績を残すことで評価を高めてきたが、今の千葉は「J1に昇格して当たり前」と言えるほどの戦力があるかというと、そういうわけではない。
どう考えても、G大阪よりはかなり下で、神戸よりも下で、京都と比べてもやや劣勢である。徳島や長崎や札幌や松本山雅よりは恵まれた戦力と言えるかもしれないが、それでも、大きな差があるわけではない。「5位という順位」も、「プレーオフで敗退する。」という結果も、十分に考えられる範疇のものである。「J1昇格がノルマ」と言いきれるほどの巨大戦力ではない。
鈴木監督については「続投となる可能性が高い。」と報じられているが、やはり、毎年のように監督を交代させていたら、チームは強くならない。もちろん、イビチャ・オシム監督のようなスーパーな監督を引き当てることが出来たら、今シーズンの戦力でも「J1復帰」を果たすことができたかもしれないが、スーパーな監督でない場合は、こういう結果になる確率が一番高い。
このあたりのことはフロントも、サポーターも理解していると思うが、「自軍を過大評価しているのではないか?」と感じる部分もないとは言えない。主力の高齢化は進んでいて、有望な選手は引き抜きにあう可能性もあるので、そろそろ腰を据えてチームを強化しないとダメな時期に入っている。そうでないと、来シーズン以降も、同じような失敗を繰り返すことになるだろう。
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