■ 東アジアカップが開幕2013年の東アジアカップが開幕。若手中心で召集された23人全員が国内でプレーする選手となったザックジャパンは中国代表と対戦した。東アジアカップは5度目の出場となるが、日本は初優勝を目指す。一方の中国はスペイン代表などで監督を務めた経験のあるカマーチョ監督が解任されて、フー・ボ氏が新監督に就任した。中国も国内組が中心で2005年と2010年に続く3度目の優勝を目指す。
日本は「4-2-3-1」で、GK西川。DF駒野、栗原、森重、槙野。MF山口螢、青山敏、工藤、高萩、原口。FW柿谷。国際Aマッチは76試合目となるDF駒野がキャプテンで、DF森重とMF青山敏とMF山口螢とMF工藤とMF高萩とFW柿谷の6人が国際Aマッチデビューとなる。GK権田、GK林、DF徳永、DF森脇、DF鈴木大、DF千葉、MF高橋秀、MF扇原、MF山田大、FW大迫、MF齋藤学、FW豊田の12名がベンチスタートとなった。
■ 3対3のドロー試合は前半5分に中国が先制する。ペナルティエリア内でDF栗原が相手のドリブルについていくことができずにPKを獲られると、これを決められて中国が先制する。初出場の選手が多くてコンビネーションが良くない日本はなかなかチャンスを作れなかったが、前半34分に左サイドのCKを獲得すると、MF工藤が頭で折り返したボールをDF栗原が合わせて1対1の同点に追い付く。前半は1対1で終了する。
迎えた後半は中国の足が止まり始めて日本ペースとなる。すると後半14分に左SBのDF槙野のニアへのクロスをFW柿谷がヘディングで合わせて2対1と逆転に成功する。FW柿谷は代表初ゴールとなった。さらに、直後の後半16分にもカウンターからFW柿谷のパスを受けたMF工藤が右足で決めて3対1とリードを広げる。同じくMF工藤も代表初ゴールとなった。
これで圧倒的に有利になったが、後半36分にペナルティエリア内でDF駒野がファールを犯してPKを献上すると、これをMFワン・ヨンポに決められて1点差となる。そして、後半42分にも中国が左サイドからクロスを上げると、中央でフリーになった選手が合わせて3対3の同点に追いつく。結局、試合は3対3で終了。韓国とオーストラリアの試合はスコアレスドローだったので、4チームとも勝ち点「1」からのスタートとなった。
■ 微妙なジャッジいきなりPKで先制ゴールを奪われたが、セットプレーからDF栗原のゴールが生まれて1対1の同点に追い付くと、後半にはFW柿谷とMF工藤の代表初ゴールが生まれて3対1とリードを奪った。中国は完全に足が止まっていたので、このまま逃げ切らなければならない試合展開だったが、不可解なPKで1点差に迫られると、勢いを取り戻した中国の勢いを食い止めることができず3対3に追い付かれた。
最初のPKに関しては、完全にDF栗原がかわされているので、妥当なPKと言えるが、2本目のPKに関しては、中国の選手が頭から突っ込んできており、PKに値するようなプレーではなかった。この日のレフェリーは、接触プレーでファールを取り過ぎるなど、レベルの高いレフェリーではなかったが、DF駒野はあの場面は足を上げてクリアする以外に選択肢は無いので、アンラッキーだったと言うしかない。
「2点差というのがもっとも危険なスコアである。」というのは、言い古された言葉であるが、結局のところ、その典型のような試合となった。ただ、1点差に追い上げられた後、落ち着くことができなかったのは残念である。フルメンバーが揃った場合でも、リードした時の試合運びに課題を抱えているので、急造チームであれば仕方がないところもあるが、リーダーシップを発揮する選手はいなかった。
■ FW柿谷は1ゴール1アシスト試合はアンラッキーなジャッジもあって、残念な引き分けに終わったが、収穫は少なくない。まず、いきなり先制ゴールを奪われたが、そこから盛り返して3対1まで持っていったことは評価できる。中国がかなり飛ばしていたので、前半の途中から動きが悪くなったことに助けられた部分もあるが、時間が進むにつれて、日本代表のコンビネーションも良くなって、綺麗な形から2点目と3点目のゴールを奪った。
注目されたFW柿谷はヒーローにはなり損ねたが、1ゴール1アシストと結果を残した。正直なところ、逆転ゴールを決めるまではいいところはほとんど無くて、特に、後半はミスが目立った。ベンチにはFW豊田やFW大迫が控えていたので、後半の早い段階で交代となっても仕方がない出来だったが、最初の決定機を生かして、さらには、その2分後にMF工藤の初ゴールをアシストした。
その後は、ノリノリとなったが、コンビネーションで勝負するタイプなので、息が合うまでに時間がかかるのは仕方がないところである。日本代表は勝負どころで決定的な仕事ができる選手を必要としているが、1対1のスコアから1ゴール1アシストと結果を出したのは見事と言うしかない。ポストワークや守備面など改善の余地があるが、とりあえずとして、最初のテストはクリアしたと言える。
■ アピールできたのは・・・その他では、MF工藤、MF高萩、MF山口螢、DF槙野あたりは、ザッケローニ監督にアピールすることができたと言える。柏のMF工藤は前半は消える時間が長かったが、DF栗原のゴールをアシストすると、後半16分にはFW柿谷のパスからネットを揺らした。サイドハーフというのは、慣れたポジションではないと思うが、不慣れなところでもきちんとアジャストできるのが、MF工藤のいいところである。
MF高萩はこの試合のキーマンとなった。ゴールやアシストはなかったが、彼がいい形でボールを持った時はチャンスにつながっており、存在感は大きかった。MF本田圭とは全くタイプのトップ下であるが、創造性溢れるプレーが魅力で、彼がボールを持つと何をするのか分からないので、相手チームも混乱する。当面は川崎FのMF中村憲との争いになると思うが、トップ下候補に名乗りを上げたと言える。
ボランチで出場したMF山口螢は持ち味である運動量でアピールした。MF青山敏がゲームを作るタイプなので、MF山口螢は下がり目でプレーすることになったが、五輪代表でも見せていたアプローチの早さと正確なつなぎは光っていた。相手からボールを奪うシーンも多くて、日本代表に不足している「守備力のあるボランチ」として、MF細貝やMF高橋秀との争いに加わる権利を得たと言える。
■ 動きが悪かったDF駒野キーパーのGK西川については3失点となったが、1失点目と2失点目はPKであり、3点目はどうすることも出来ないシュートだった。183センチなので、高さの面で不安は残るが、前半の最後のファインセーブは試合の流れを左右するビッグプレーであり、大きなミスもなかったので、まずまずと言えるのではないか。次は持ち味であるフィード力を発揮してほしいところである。
一方で、良くなかったのは、DF栗原、DF駒野、MF齋藤学といったところで、DF栗原は同点ゴールを決めているが、1失点目のPKは相手に振り切られてしまって、3失点目も相手選手を捕まえ切れなかった。日本代表はCBが弱点とされているので、今大会でアピールして、DF吉田やDF今野の地位を脅かしたいところであるが、先日のコンフェデのメキシコ戦に続いて、不安定なところを見せてしまった。
DF駒野に関しては、最悪の出来だった。2失点目につながったPKは仕方がないプレーなので、減点材料ではないが、持ち味であるクロスの精度が低くて、守備に回った時も、相手の選手をフリーにすることが多かった。中国の選手のクロスの精度があまり高くなかったので、大ピンチにはつながらなかったが、最後のところで簡単にクロスを上げられてしまって、これが同点ゴールにつながった。
MF齋藤学は後半27分にMF原口に代わってピッチに送り出されたが、緊張していたのか、全く試合に入り切れなかった。3対1とリードして、カウンターからチャンスを作れそうな状況だったので、疲れが見え始めたMF原口に代えてMF齋藤学を投入するというのは、オーソドックスな交代策と言えるが、MF齋藤学のサイドが機能しなくなって、チームとしても機能しなくなった。
五輪代表のときもそういうときが何度かあったが、入れ込み過ぎる傾向がある。それほど国際試合に慣れた選手ではないので、仕方がないところもあるが、MF齋藤学の投入というのが、試合のリズムがおかしくなった要因の1つである。ただ、こういう経験するために国内組でチームを組んで韓国に来ているので、苦い経験をプラスに代えて欲しいところである。あと2試合残っているので、取り返してほしいところである。
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