■ 9人がプレーする一部リーグ今シーズン、ブンデスリーガでプレーする日本人は9名となって、過去最多となっている。さらに、2部リーグでも、C大阪でプレーしていたMF乾がプレーしており、ブンデスリーガのクラブに日本人がいることは当たり前になってきた。
この中で、MF香川やMF長谷部のようにレギュラーとしてプレーしてる選手もいるし、MF岡崎やDF内田のように、今シーズンはスタメン落ちしている選手もいるし、DF槙野やFW矢野のように思ったほど出場機会の得られていない選手もいる。状況は様々であるが、これだけ、日本人選手がプレーしているとブンデスリーガも身近に感じられるし、彼ら(=日本人選手)を通して、ブンデスリーガを知ることもできる。
■ ブンデスリーガの魅力は?ブンデスリーガで、一番、凄いと感じるのは、観客動員の多さである。2006年に男子のW杯を開催したこともあって、ドイツ中に近代的なスタジアムがあって、いつもスタジアムは満員に埋まっている。満員のスタジアムが生み出す雰囲気は世界でもトップクラスで、サポーターの力で、ブンデスリーガのブランド力を引き上げている。これは、うらやましい限りである。
一方、プレー面で目に付くのは、GKのレベルの高さである。世界最高のGKという評価もあるバイエルン・ミュンヘンhのGKノイアーは言うまでもないが、下位のクラブにも、安定感があって、レベルの高いGKがたくさんいる。ドルトムントのGKヴァイデンフェラーのようなベテランGKもいるが、20代前半の若くて優秀なGKも多くて、代表クラスでないGKも、驚くほど高いレベルにある。
過去、Jリーグでは、シジマール(清水エスパルス)やジルマール(セレッソ大阪)のような素晴らしい外国人GKがプレーしていて、彼らのプレーから「世界基準」を感じることができたが、残念ながら、最近では韓国人を除くと、外国人のGKはほとんどおらず、ブンデスリーガとは大きな差を感じてしまう。
ファインセーブの多い試合は「魅力的」になることが多いので、Jリーグのクラブもチャンスがあれば、レベルの高い外国人GKの獲得を検討してほしいが、コミュニケーションの問題もあって、実現は難しいだろう。
■ センターバックの違い①また、センターバックにも違いが見られる。ブンデスリーガでは、このポジションの選手は、190㎝オーバーの選手が当たり前になっていて、空中戦の迫力は凄まじい。セットプレーのシーンでは、190㎝台の攻防が繰り広げられて、リーグの目玉の一つになっている。
したがって、180㎝くらいの身長でケルンに移籍したDF槙野に、なかなか、CBとして出場のチャンスが回って来ないことも理解できる。180㎝のセンターバックというのは、よほどスーパーな選手でない限り、厳しいものがある。高い壁に挑戦する意欲は買えるが、活躍するのは厳しいだろう。
ただ、ブンデスリーガでプレーするCBが「万能」かというと、そういうわけでもない。MF香川のような機動力のある選手にあっさりとかわされるシーンはよく見られるが、スピード勝負になると、劣勢となる。もちろん、DFフメルス、DFスボティッチ、DFヘヴェデス、DFボアテングといった「各国の代表クラス」は例外で、彼らはスピードのある選手にも余裕を持って対応することができるし、フィードも正確であるが、トップレベルの選手を除くと、脆さを見せるCBも少なくない。
■ センターバックの違い②ここで、Jリーグの外国人CBについて考えてみると、意外と数は少なくて、過去の成功例もそんなに多くない。
西ドイツ代表でも活躍したDFブッフバルト、韓国代表として4度のW杯に出場したDFホン・ミョンボ、長身でクレバーでカバーリング能力も高かった名古屋グランパスのDFトーレスなど、目覚ましい活躍を見せたCBもいるが、その数は、FWやMFと比べるとずっと少ない。
外国人枠もあるので、どのポジションに外国人を使うかは、各クラブの考え方次第で、通常、もっとも弱いポジションや層の薄いポジションに外国人を使ってくる。したがって、日本では絶対数の少ない「長身のセンターバック」に外国人を使ってくるチームが多くなってもおかしくないが、現実は逆である。
「外国人だけの2トップ(or 3トップ)」と言うのは、「勝つために手段を選ばないのか?」とサポーターから批判を受けることもあって歓迎はされないが、今年の栃木SCなど、普通にいくつも例があるが、「外国人のCBコンビ」というと、ほとんど例がない。パッとすぐに思いつくのは、黄金時代のヴェルディ川崎のDFロッサムとDFペレイラと、最近のヴァンフォーレ甲府のDFキム・ジンギュとDFダニエルのコンビくらいで、成功例は非常に少ない。
■ センターバックの違い③理由を考えてみると、GKと同様にコミュニケーションの問題もあるが、単純に高さだけのCBは、Jリーグでは活躍しにくいという点も挙げられる。Jリーグには、ほとんどのチームに、小柄でスピードを武器とするアタッカーがいて、彼らのスピードに対応できないと、いくら「高さ」や「強さ」があっても、CBのレギュラーとして活躍するのは難しい。
過去、大型のCBを獲得してチームを強化しようとした例もあるが、あまりうまくいっていない。失敗例としてよく話に出てくるのは、2004年シーズンのセレッソ大阪で、DFカブラル(194cm)とDFラデリッチ(190cm)という長身DFを獲得し、守備力強化が期待されたが、スピードに難があって、シーズンが進むにつれてボロが出てきた。
近年では、大宮アルディージャでプレーしたDFマト(191cm)の例がある。DFマトはKリーグで活躍し、2009年から大宮でプレーしたが、1年目は高さを生かして好プレーを見せたが、スピードに難があって、味方との連携も取れなくなって、2年目のシーズン途中からポジションを失った。「高さ」は圧倒的で、左足のシュートは魅力十分だったが、長く活躍することはできなかった。
もちろん、高さがあって、スピードに対応できるワールドクラスのCBを獲得できれば全く問題はないが、そういうレベルのCBをJリーグのクラブが獲得するのはほとんど不可能で、そのため、高さを武器にする屈強なタイプのCBは、Jリーグでは非常に少なくなっている。
■ センターバックの違い④DF槙野の例を見ても、現状では、日本人のCBが海外のクラブでポジションをつかむのは、非常に難しい。ただ、同じように、外国人のCBがJリーグで成功するのも難しい。これは、リーグのレベルの違いというよりは、スタイルの違いが大きいと感じる。したがって、DFフメルスやDFスボティッチのようなトップレベルの選手は別にして、ブンデスリーガでレギュラーとして活躍しているCBでも、Jリーグで成功できない選手は、かなり多いのでは?と思われる。
この違いは、日本で大型CBが生まれにくい理由の1つにもなる。もともと、長身のCBの数自体が欧州の国と比べて少ないが、さらに、その上、Jリーグでは、CBにも一定以上のスピードが要求されるので、試合で起用するのは難しく、日本サッカーというのは、大型CBが成長していくには優しくない環境にある。
そう考えると、日本代表のDF吉田麻也のように、大型のCBは早い時期に海外に渡っていくのもアリなのかもしれない。DF吉田の場合、ユースの頃はボランチでもプレーしていたので、スピードのある選手への対応も慣れていて、名古屋でもレギュラーポジションをつかんでいたが、もう少し下のレベルの選手で、Jリーグでは出場機会の得られないCBは、思い切って、海外に飛び出すというのも選択肢の1つなのか?とも考えられる。
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