■ 夢の舞台昨今、J1/J2に所属する36クラブ以外にも、全国各地で新しいサッカークラブが生まれてきている。Jリーグ加盟を目指す彼らの多くは、当面は、JFL昇格が1つの目標となるが、その先の先のクラブの最終目標が「アジアを制してクラブW杯に出場すること。」であることが多いようだ。
2005年から始まったクラブW杯は今回で4回目。紆余曲折あったが、Jリーグ勢として初めて、2007年に浦和レッズが出場。FWワシントンらの活躍で、見事に世界3位という結果を残した。
そして、今回、ガンバ大阪が、その夢の舞台にチャレンジする。
#1 FIFAクラブW杯
■ 知立と豊田豊田スタジアムへ向かうには、名鉄を利用するとJR名古屋駅からは約1時間を要する。その途中にあるのが、知立駅。名鉄名古屋本線と名鉄三河線が知立駅で交差している。知立駅で名鉄三河線に乗り換えて7つ目の駅が、スタジアム最寄りの豊田市駅となる。
豊田スタジアムのある豊田市は、もともと、「挙母市(ころもし)」という名称であったが、全国有数の「車の街」として発達したこともあって、1959年に名称が豊田市に変更された。もちろん、その名称は、トヨタ自動車創業者の豊田(とよだ)喜一郎に由来する。
#2 知立駅①
#3 知立駅②
■ スタジアムへの道のり豊田市駅から豊田スタジアムへは徒歩で約15分。駅からは、ほぼ直線の位置にあるので迷うことはない。この試合のキックオフは19:30とやや遅い時間。豊田市駅に着いた時は、当たりは真っ暗になっていた。
#4 豊田市の駅前①
年の瀬を感じさせるイルミネーションは「ブルー」が基本。ガンバ大阪のチームカラーと同じである。
#5 豊田市の駅前②
#6 豊田市の駅前③
スタジアム周辺でよく見かけるレプリカユニフォームを売っている店が、豊田市駅から豊田スタジアムまでの約1.5kmの道のりの中に、5~6店舗が存在した。一番人気は、やはりマンチェスター・ユナイテッドのものであるらしい。
#7 ユニフォーム売り場
■ 豊田スタジアム日本でも有数の美しいスタジアムとして知られる豊田スタジアム。2002年のFIFAワールドカップでも、会場予定地として候補に挙げられたが、新潟ビッグスワンとの決選投票の末に落選。ただ、臨場感あふれるスタジアムはサッカーファンの間で高く評価されており、「日本最高のサッカースタジアム」と評価する意見も少なくない。(
関連)
#8 スタジアムの景色①
#9 スタジアムの景色②
豊田大橋を渡ると、すぐそこが豊田スタジアムである。豊田大橋の全長は474.5m。鮮やかなアーチを描く芸術作品の設計は、豊田スタジアムと同じく建築家の黒川紀章氏である。
#10 スタジアムの景色③
収容人数は45,000人。近代的な球技専用スタジアムである。スタジアム周辺では、いくつものイベントが開催されていた。今回、スタジアム内は全席指定となっているため、じっくりとイベントを楽しむ時間があった。
#11 イベント会場①
#12 イベント会場②
#13 イベント会場③
■ スタジアム内の様子スタジアムに到着したときには、すでに多くのサポーターがスタジアム内に集まっていた。この日は雨模様の天気では無かったが、開閉式の屋根は閉じられていた。このスタジアムはやや無機質な感じを受けるが、それが雄大さを生みだす要因となっている。
辺りは冷えていたが、残念ながら、今回、噂の座席ヒーターは体感できなかった。調べによると、メインスタンドとバックスタンドの一部のみがヒーター付き座席で、約4000席だけであるらしい。
#14 スタジアム内①
#15 スタジアム内②
■ アデレード・ユナイテッド対戦相手のアデレード・ユナイテッドは2003年に創設された新しいクラブである。ただし、2005年にスタートしたオーストラリアリーグ(Aリーグ)では、毎年のように上位に食い込んでいる強豪チームである。ACLの準々決勝では、鹿島アントラーズを下している。
Aリーグの特徴的な制度として挙げられるのが、
・サラリーキャップ制度(チーム全員の年俸総額の上限の規定)
・ゲストプレーヤー制度
の2つである。2005-06シーズンには三浦知良がこのゲストプレーヤー制度を利用して、シドニーFCの一員としてオーストラリアリーグでプレーしている。
#16 アデレードのアップ
■ 夢の舞台夢の舞台に挑むアジアチャンピオンのガンバ大阪。アデレード・ユナイテッドとはACL決勝で対戦しており、トータルスコアで5対0の完勝しており、相性は抜群。勝てば準決勝で欧州チャンピオンのマンチェスター・ユナイテッドとの対戦となるだけに、何としても勝ち進みたい試合となる。
G大阪のスタメンは<4-5-1>。GK藤ヶ谷。DF加地、山口、中澤、安田。MF明神、橋本、佐々木、遠藤、二川。FWルーカス。MF二川が怪我から復帰し、現時点でベストといえるメンバー。FW播戸、FWロニー、FW山崎がベンチで控える。
#17 ガンバ横断幕
#18 ガンバ大阪のアップ
■ 値千金のゴールG大阪は立ち上がりは硬さが目立った。得意としている中盤でのパスワークでミスが目立ち、アデレードのプレッシャーに負けてしまうことが多かった。前半から安易に中盤でボールを失い、相手にカウンターのチャンスを許した。
流れが変わったのは前半20分にMF佐々木が怪我で交代し、FW播戸が投入されてからである。それまでの時間帯は前線にFWルーカスしかいなかったため、ボールの出しどころが1つしかなかったが、MF播戸が加わったことで前線へのパスコースが2つになった。
前半24分の先制ゴールはまさにその形。MF二川の浮き球のパスをFW播戸がうまく競り合ってゴール前に落とすと、走り込んだMF遠藤がゴール。大黒柱が貴重な先制ゴールをマークした。
後半はカウンター中心。その中でMF遠藤とFWルーカスが何度かチャンスを作るが、シュート精度を欠いて追加点は奪えない。アデレードは何度もゴール前に迫ったが、DF山口を中心に守りきって完封。苦しみながらも1対0で勝利し、準決勝進出を決めるメモリアルゲームとなった。
#19 選手の整列
#20 ガンバ側の応援席
■ 3度目の対戦3度目の対戦ということでアデレードはしっかりとG大阪の対策を立てていた。狙い目は173cmのDF安田のところで、DF安田のサイドにロングボールを蹴ってそのこぼれ球を狙うという意図がはっきりと見えた。また、G大阪自慢の中盤のパスワークを封じるべく積極的にプレスをかけてきた。
この作戦は成功し、過去の2度の対戦とは比べ物にならないくらいアデレードは自分たちのサッカーを通すことが出来た。シュート数はG大阪の方が多かったが、決定的なチャンスは、むしろアデレードの方が多かった。
ただ、その逆に、G大阪もアデレードの右サイドを集中的に狙っていた感じが受け取れた。前半は左サイドのDF安田の突破が威力を発揮し、サイドアタックでは主導権を握った。前半の途中に2トップに変更してからは、MF遠藤が左サイドに流れたこともあって、DF安田の突破は一層、効果的になった。
#21 試合終了後①
#22 ワニナレナニワ
■ 2トップの決断早い段階でMF佐々木が交代せざる得ない展開となったが、その代役としてFW播戸を起用。この選択は1つの驚きであった。
これまでは、FW山崎の方が優先順位として上という評価であったが、前線で起点がなかなか作れない状態ではムービングタイプのFW山崎よりも、中央にポジションを取れるFW播戸の方がチームとしては都合が良かった。結果的にはFW播戸が決勝アシストと見事に采配が的中した。
ただ、後半にカウンターでチャンスを作れていた時間帯では、FW山崎あるいはMF佐々木がデメリットの部分も露呈した。先制ゴールにはつながったが、追加点を奪うという目的からは遠ざかった。
#23 試合終了後②
■ 二川孝広の復帰J1の最後の3試合を怪我のため欠場したMF二川だったが、ギリギリで今大会に間に合った。
成熟した選手が揃うG大阪の中盤において、MF遠藤とMF明神の2人は国際経験が豊富で、どの試合でも安定したパフォーマンスを見せるが、MF二川の場合は体格に恵まれていないという理由もあって、試合によっては、完全に消されてしまう試合もある。
したがって、G大阪の攻撃がスムーズにいくかどうかは、MF二川がキーになる。試合前のアップ中から注目していたが、やはり状態は良くなさそうで、ボールを蹴った後に首をひねるシーンが多かった。
ただ、試合になると悪くなかった。序盤はやや消えていたが、先制ゴールはMF二川のアイディア溢れるパスが起点となったものであり、スペースの出来た後半は、さらに攻撃意欲を上げてゴールに迫った。
MF遠藤の存在がクローズアップされがちだが、決定的なチャンスを作る能力では、むしろ、MF二川の方が優れている。それだけに、後半の終了間際に怪我のためピッチを去らなければならなくなったのは非常に残念である。
#24 二川孝広
■ ルーカスの貢献度ただ、この試合のベストプレーヤーを選ぶとしたら、FWルーカスだろう。前半は1トップという厳しい立場ながら懸命に体を張ってボールをキープしようと試み、2トップに変更になった後は、パートナーのFW播戸をいかしつつ、自らもゴールに迫った。
この試合のシュート数は7本。決定的なシュートもあっただけに、「どれか決めていれば・・・。」という気もするが、「守」から「攻」への切り替えの早さも抜群で、その貢献度はチームで最も高かった。
#25 ルーカス
■ 次戦に向けてこの日は、アデレードの出来が良かったこともあって、G大阪はやや苦戦を強いられた。特に、中盤で安易なミスが目立ったことは気になった。相手をいなしてから次の味方にパスを送り出すパス回しはG大阪の得意のパターンだが、いなす部分で相手の足に引っ掛かかるケースが多かった。ルーズボールになると体格的に不利になるので、一気にピンチに陥ってしまう。
次の相手のマンチェスター・ユナイテッドはスーパーチームであり、安易なミスはすぐに失点に直結してしまうだろう。細心の注意を払わなければならない。
ただ、だからといって、リスクレスにロングボールを前線に蹴り込むサッカーは良くない。この試合のアデレードが良かった理由は、G大阪の中盤を相手に積極的にプレスをかけるのは、かわされる危険もあってややリスキーであるが、それを恐れずに果敢に攻めるディフェンスを見せたからである。
#26 試合終了後①
■ クラブW杯の可能性創設4年目とはいえ、クラブW杯というものは、少なくとも日本のクラブにおいては1つの大きな目標になりつつある。4大会連続で身近な地域で開催されてきたという理由もあるが、クラブW杯の価値と可能性を一番強く感じているのが日本のサポーターだろう。
この日の観衆は38,141人。若干の空席もあったが、日曜日の夜のナイトマッチという不利な条件を考えると悪くない数字である。
新鮮だったのは、ゴール裏の明らかにガンバ大阪のサポーターと思える集団を除くと、ほとんどが中立の立場のサポーターであり、(普通に考えて)名古屋圏のサポーターであったということである。その多くは、普段、名古屋グランパスを応援している方々と思われるが、それでも、同じ日本のクラブの代表としてクラブW杯に出場しているG大阪を懸命に応援した。
ワールドカップというと国と国の戦いであり、「火の無い戦争である」とも表現されるが、ナショナリズムがむき出しになる本家のワールドカップと比べると、心地よい「温暖な空気」が流れていた。
#27 試合終了後②
#28 試合終了後③
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久しぶりに覗いたので、勝手にまた言わせてもらいます。
今回早速のUPを読ませていただいて
「生観戦した者だけにできる入場までのプレビュー」
「選手数名の説得力のある評価と試合展開に関するオリジナルの視点」
「ラストの【心地よい温暖な空気】という結び」
レベルの高い記事で、読み応えを伴った読後感でした。
相容れないジャーナリストの駄文より
今回の(しか最近読んでなくて恐縮ですが)
じじさんの記事のほうがよかった。
今後また私の主観的に良いか悪いか極端な場合
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