■ 決定率で1位になったのは・・・。今度はJ1の18クラブの「決定率」に注目してみた。例えば、E-1 サッカー選手権の2戦目の中国戦の後半終了間際にDF昌子(鹿島)が決めた超・ロングシュートの場面を思い出すと分かるとおり、『ゴールが決まる場面というのは絶対に決定機である。』とは全く言えない。何てことはないシーンでゴールが生まれるケースは少なくないが、ここでは話を単純にするために『決定率=総得点/決定機の数』と定義する。
クラブでも代表でも「決定力不足」が話題になることは多い。日本代表を含めた世界中の多くのクラブは「決定力不足が永遠の課題」と言われているが決定機ではない場面で如何にゴールを奪うのか?はかなり大事である。ゴール前の決定機でシュートをミスする確率が高いチームや選手は「非・決定機の場面でのゴール数」を増やす努力をするのも1つの解決方法であるが簡単な話でないのは言うまでもない。
いずれにしても「決定力」や「決定率」というフレーズは現代サッカーでは多用されるが表1が2017年のJ1の18クラブの決定率を示している。1位になったのは川崎Fで41.0%だった。前回のエントリーで記述したとおり、決定機の数は1位のC大阪、2位の仙台に次いでJ1で3番目だった。想像していたほど川崎Fは決定機の数が多くなかったが総得点はJ1でダントツの1位となる71得点。必然的に「決定率」は高くなる。
■ 決定力の高さに救われたコンサドーレ札幌2位は浦和で40.8%、続く3位は札幌で38.6%だった。札幌は1試合平均の決定機の数は大宮に次いでJ1でワースト2位となる2.97回だった。前半戦は2.89回、後半戦は2.88回なので、FWジェイとMFチャナティップの2人が加入した後半戦も決定機の数自体はそこまで変わらなかった14試合で10ゴールを挙げたFWジェイの決定力に助けられて最終的には余裕をもって「J1残留」を確定させることができた。
FWジェイの決定力の高さが札幌を救うことになったが「決定機を確実にゴールに結び付けてくれるストライカー」が加入するとチームは劇的に変わる。前半戦の札幌はFW都倉が決定機を外す場面が多くて波に乗り切れなかったがFWジェイが加入してからは少ないチャンスをゴールに結びつけてしぶとく勝ち点を積み上げるようになった。最終的には11位まで順位を上げたがまさしく「決定力の高さ」に助けられた。
4位はG大阪、5位は鳥栖、6位は柏と続いていく。鳥栖は決定機の数はリーグワースト3位だったのでなかなか決定機を作れなかったが高い確率でネットを揺らすことが出来たので8位と悪くない順位でシーズンを終えることが出来た。今シーズンの鳥栖は得点力が高くなかったので「決定力不足」と言われるケースが多かったが実際にはその反対である。「得点力不足=決定力不足」ではない好例と言えるだろう。
■ ワースト1位はヴァンフォーレ甲府一方、18クラブの中で決定率が最も低かったのは甲府でわずか17.4%だった。1試合平均の決定機の数は3.88回。これはJ1で9位タイなので決定機の数自体はそれなりに多かったがなかなか仕留めることが出来なかった。鳥栖とは真逆で甲府の得点数が少なかった最大の理由は「決定力不足」である。J1の平均程度に決定機を作れているので「攻撃力不足」と表現するのはあまり適切ではないだろう。
ワースト2位は新潟で22.4%だった。こちらも「1試合平均の決定機の数」は3.68回。J1で12位なのでそこまで少なくなかった。G大阪と比べても「若干少ない程度」なので『新潟の得点数が増えなかった理由は決定力不足である。』と表現するのが適切である。言い古された話であるが決定力を上げるための手っ取り早い方法は「優秀な選手を獲得する」ことである。こういう時に監督が出来ることは限られる。
ワースト3位は広島で23.2%。こちらも今シーズンは決定力不足に大いに悩まされた。続くワースト4位は仙台で24.0%だった。表1のとおり、決定率に関してはブッチギリでこの4チームが低かった。J1全体の平均値は32.8%なので甲府・新潟・広島・仙台の4チームは大きく下回っている。鹿島は35.8%で8番目、C大阪は34.8%で9番目。この2チームに関しては「決定率自体はそこまで高くなかった。」と言える。
表1. 2017年のJ1の18クラブの決定率
順位 | クラブ名 | (%) | 総得点 | 1試合平均の決定機の数 |
1 | 川崎フロンターレ | 41.0% | 71 | 5.09 |
2 | 浦和レッズ | 40.8% | 64 | 4.62 |
3 | コンサドーレ札幌 | 38.6% | 39 | 2.97 |
4 | ガンバ大阪 | 38.1% | 48 | 3.71 |
5 | サガン鳥栖 | 38.0% | 41 | 3.18 |
6 | 柏レイソル | 36.3% | 49 | 3.97 |
7 | ジュビロ磐田 | 36.0% | 50 | 4.09 |
8 | 鹿島アントラーズ | 35.8% | 53 | 4.35 |
9 | セレッソ大阪 | 34.8% | 65 | 5.50 |
10 | 横浜Fマリノス | 34.1% | 45 | 3.88 |
11 | ヴィッセル神戸 | 33.9% | 40 | 3.47 |
12 | FC東京 | 33.3% | 37 | 3.26 |
13 | 大宮アルディージャ | 32.2% | 28 | 2.56 |
14 | 清水エスパルス | 30.8% | 36 | 3.44 |
15 | ベガルタ仙台 | 24.0% | 44 | 5.38 |
16 | サンフレッチェ広島 | 23.2% | 32 | 4.06 |
17 | アルビレックス新潟 | 22.4% | 28 | 3.68 |
18 | ヴァンフォーレ甲府 | 17.4% | 23 | 3.88 |
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