■ ヤンマーカップ201512月17日(木)にベトナムの首都のハノイにあるハンダイ・スタジアムでU-23ベトナム代表とセレッソ大阪が親善試合を行った。1年でのJ1復帰を逃したC大阪は若手中心。一方のU-23ベトナム代表は3月に行われたU-23アジア選手権の予選で手倉森JAPANと同組だったが、FC東京のMF中島翔が2ゴールを挙げて2対0で日本が勝利している。U-23ベトナム代表を率いているのは大宮などで監督を務めた三浦俊也監督。
アウェイのC大阪は「4-2-2-2」。GK井上聖也。DF小暮大器、森下怜哉、温井駿斗、舩木翔。MF阪本将基、西本雅崇、斧澤隼輝、米澤令衣。FW岸本武流、前川大河。トップチームでJ1あるいはJ2の試合をある程度以上経験しているのは右SBのDF小暮のみ。高校2年生が4人、高校3年生が1人、プロ1年目が5人、プロ3年目が1人というフレッシュなメンバー構成となった。村田一弘コーチが指揮を執る。
左SBが本職のDF温井は今シーズンの途中に東海1部のFC鈴鹿ランポーレに期限付き移籍しており、神戸U-18出身で2013年と2014年に2年連続でプレミアリーグWESTの得点王に輝いた実績のあるMF米澤はJ3のブラウブリッツ秋田に期限付き移籍して23試合で5ゴールという結果を残している。CBのDF森下怜と左SBのDF船木は直近のU-18日本代表に招集されており、FW岸本もU-18日本代表の常連の1人である。
■ 2対2のドロー試合は前半21分にアウェイのC大阪が先制する。いいタイミングで攻撃に参加した左SBのDF船木のところにボールがこぼれてくると、左足で振り抜いたシュートがコース隅に決まって先制に成功する。U-18日本代表のDF船木のゴールで先制したC大阪だったが、直後の前半23分にJ2の水戸入りが決まった10番のFWグエン・コンフォンのFKを起点にあっさりと同点に追いつかれてしまう。前半は1対1で折り返す。
迎えた後半5分にFW前川のドリブルから左SHのMF米澤がキーパーと1対1の決定機を得るが決められず。しかし、後半20分に細かいパスワークから最後はMF米澤が落としたボールをボランチのMF阪本が鮮やかに右足で決めて2対1と勝ち越しに成功する。リードを奪ったC大阪だったが、後半25分にDF小暮の頭でのクリアが中途半端になったところを決められてすぐさま2対2の同点に追いつかれてしまう。
結局、試合は2対2の引き分けで終了。U-23ベトナム代表の10番のFWグエン・コンフォンは同点ゴールをアシストした。U-23ベトナム代表は予選を突破して来年1月に行われるU-23アジア選手権の出場権を確保しているが、ヨルダン・オーストラリア・UAEと同組なのでかなり厳しいグループに入っている。C大阪は今回の遠征メンバーの中で最年長でチームを引っ張る立場だったDF小暮が2つの失点に絡んでしまった。
■ 若手中心のメンバー構成だったセレッソ大阪C大阪のスタメン11人の平均年齢は18.3歳くらい。ユース所属の高校生が遠征メンバーの半数以上を占めるなど若手中心のメンバー構成だったが、U-23アジア選手権の本大会出場を決めているU-23ベトナム代表を相手に2対2のドローという結果はまずまずである。いずれも得点した直後に失点しているので試合運び等には課題を残したが急造チームなのである程度は仕方がない。アウェイで健闘したと言える。
C大阪は残念ながらプレーオフの決勝戦で福岡に勝てなくて「1年でのJ1復帰」を逃した。キャプテンのMF山口蛍のハノーファー96移籍が決定するなど中心選手が何人か抜ける可能性がある。今シーズンはFW玉田やFW田代有やMF関口といった経験のある選手に頼らざる得なかったが、J1再昇格ならびにJ1定着のためには若手の成長は不可欠である。遠征メンバーはいい経験を積むことが出来たのではないか。
C大阪のユース所属ならびにユース出身者がほとんどだったのでサッカー自体は「ハイプレス」という近年のC大阪のユースチームが得意とするやり方だった。U-18日本代表でトップチーム昇格が決まったFW岸本が前から追い回して後ろの選手が続くシーンが多かった。プレス自体はまずまず機能していたが、ボールを奪った後の精度は高くなかった。簡単にボールを失う場面が非常に多かったのは気になるところである。
■ 将来が楽しみな19歳のMF米澤令衣先のとおりで年代別代表の選手が少なくない。怪我の影響なのか、遠征メンバーには帯同しなかった高校3年生で187センチの大型センターバックのDF庄司(※ トップチームへの昇格が決定済)がこのあたりの年代のC大阪の選手の中ではもっとも将来を期待されている選手だと思うが、U-23ベトナム代表戦に出場した選手の中では左SHのMF米澤、左SBのDF船木、左CBに入ったDF温井の3人が目立った。
中でも19歳のMF米澤には大きな可能性を感じる。神戸U-18出身のMF米澤は今シーズンの途中にJ3の秋田に期限付き移籍したが23試合で5ゴールとまずまずの成績を残した。先日、C大阪への復帰が発表されたが攻撃的なセンスに溢れた選手である。抜群のシュートセンスを持ったアタッカーであるがJ2の群馬で大活躍してJ1の大宮入りが有力視されているMF江坂のような選手になれると面白い。
左SHでプレーすることが多かったMF楠神は契約満了で、さらには期限付き移籍中だったMFパブロも退団濃厚と言われている。今後、間違いなくアタッカーを1人あるいは2人ほど補強すると思うが同じポジションの競争相手が2人いなくなるというのはMF米澤にとっては幸運である。いつまでもFW玉田やFW田代有やMF関口に頼っていてはクラブとしての先は見えてこない。華のある選手なのでブレイクを期待したい。
C大阪U-18出身で同じく19歳のDF温井も有望な選手である。2つ学年が下となるU-18日本代表のDF船木も将来が楽しみな選手であるが、DF温井は177センチとSBとしてはサイズがあって左足で力強いボールを蹴ることが出来る。トップチームはDF丸橋がずっと左SBのレギュラーを張っているが競争相手が全くいない時期がかなり長く続いている。DF温井も2016年はトップチームの試合に絡んでもらいたい。
■ 水戸入りが決まった「ベトナムのメッシ」の実力は・・・。一方、大宮や神戸や甲府を指揮した経験のある三浦俊也氏が監督を務めるU-23ベトナム代表はJ2の水戸入りが決まった10番のFWグエン・コンフォンがチームの中心である。昨年の10月に行われたU-19アジア選手権のときも中心選手だった。このときのU-19日本代表の中心は当時はC大阪に在籍していたFW南野だったが、この試合に関しては相手の10番のFWグエン・コンフォンの方がはるかに出来は良かった。
FWグエン・コンフォンは1995年1月21日生まれ。この選手が旗手となるこの世代は「黄金世代」と言われており、ベトナム国内ではかなりの期待を集めているという話はよく聞くが、「ベトナムのメッシ」ことFWグエン・コンフォンはJ2の水戸入りが決定して、「ベトナムのピルロ」ことMFグエン・トゥアン・アインはJ2の横浜FC入りが決定しているので、ベトナムサッカー界に対する注目度は日本でも高まってきた。
「FWグエン・コンフォンがJリーグでどこまで出来るのか?」はベトナム国内では一大関心事だと思うが、攻撃的な資質に恵まれているのは明らかである。FW南野は1995年1月16日生まれなので5日違いである。比較対象としては最もふさわしいと思うが、FWグエン・コンフォンに関しては「ボールの持ち方が良くてスルーパスの上手な選手」という印象が強い。U-19日本代表は彼のスルーパスで多くのピンチを招いた。
FWメッシに例えられているが、個人的にはチャンスメーカータイプというイメージを持っている。身長は168センチ。体つきや風貌など全体の印象を加味すると早野監督時代の柏レイソルでもプレーした元韓国代表の「リトル・マラドーナ」ことMF崔成国によく似ているような気もする。この日はドリブルやスルーパスでチャンスを作るシーンはほとんどなかったが、右足のプレイスキックはかなり正確だった。
水戸にはいないタイプの選手だと思うので移籍先の選択としては非常に良かったと思う。彼がJリーグで活躍できると面白いことになると思うが、当然のことながら、運動量や守備意識などは改善が必要で、母国ではスーパースターの扱いを受けてきた選手が水戸というJ2の中でも裕福とは言えないクラブの環境にアジャストできるのか?など不安に感じるところは多い。成功するかどうかは何とも言えない。
2013年途中に札幌に加入したFWレ・コン・ビンとも比較されると思うが、27歳で札幌に入団したFWレ・コン・ビンと比べると若さのアドバンテージがある。「1年間の期限付き移籍」と発表されているので「1年間で日本あるいはJリーグの環境に慣れることが出来るのか?」は微妙に思うが、Jリーグのアジア進出のためには現地のスター選手のJリーグでの成功は不可欠。彼がJリーグで成功することを期待したい。
関連エントリー
2012/10/08 柿谷曜一朗(C大阪)の波瀾万丈なサッカー人生
2013/08/05 ベトナム代表のFWレ・コン・ビンへの期待
2013/09/25 ベン・メイブリーさんの大阪ダービーに関するコラムを読んで・・・
2013/09/28 Jリーグの観客動員数は本当に減っているのか? (上)
2013/09/29 Jリーグの観客動員数は本当に減っているのか? (下)
2013/09/30 Jリーグの観客動員数は本当に減っているのか? (extra)
2014/11/26 ベトナム代表の三浦俊也監督の発言をまとめてみた。
2014/12/13 本当に「セレッソブーム」は起こっていたのか?を検証してみた。 (上)
2014/12/13 本当に「セレッソブーム」は起こっていたのか?を検証してみた。 (下)
2015/09/13 そろそろ日本代表入りを期待したいザルツブルクのFW南野拓実
2015/12/23 クラブ別エントリー(水戸ホーリーホック)
2015/12/23 クラブ別エントリー (セレッソ大阪)
- 関連記事
-