■ 再開初戦水曜日に再開したJ1リーグ。全18チームの試合が予定されている13節は残留を争っている京都サンガと湘南ベルマーレが直接対決。ともに水曜日にも試合を行っていて中3日での試合。京都はガンバ大阪と対戦して1対1のドロー。湘南は鹿島アントラーズと対戦して0対1の敗戦を喫している。
梅雨も明けて夏本番を迎えた京都でのタフなナイトマッチ。ホームの京都は<4-2-3-1>。GK平井。DF渡邊大、増嶋、水本、中谷。MF安藤、角田、宮吉、ディエゴ、柳沢。FWドゥトラ。MF安藤がやや下がり目でMF角田が前目に位置するダブルボランチ。右サイドハーフにMF宮吉、左サイドハーフにMF柳沢、トップ下にMFディエゴ。1トップでFWドゥトラ。左サイドバックは大怪我から復帰したDF中谷。
対する湘南は<4-1-2-3>。GK都築。DF山口、ジャーン、村松、小澤。MF田村、永木、坂本。FWエメルソン、田原、阿部。鹿島戦で採用した<3-4-3>とは違ってこの日は<4-1-2-3>気味の布陣。2008年にFC東京でプレーしたブラジル人FWエメルソンが湘南でのデビュー戦。同じく新外国人の194cmのFWバウドはベンチスタート。中央大学在学中のMF永木は2試合連続スタメン。
■ 湘南が勝利試合は引いて守る湘南に対して、ホームの京都が圧倒的に攻める展開となる。個の力のある4人のアタッカーが中心となって、立ち上がりから何度かミドルシュートを放つ。しかし、京都の放つシュートはミドルシュートはほとんど。しかも多くが枠外ということで湘南に本当の意味での脅威を与えられない。前半は押し気味ながらも京都は無得点。0対0で折り返す。
後半の立ち上がりに京都がゴール前のチャンスを作るが、その直後に湘南がチャンスを迎える。右サイドバックのDF山口の左足のクロスに対してファーサイドのFW阿部が落ち着いたトラップからシュート。湘南が先制する。FW阿部は今シーズン4ゴール目。京都は右サイドバックのDF渡邊大の守備が甘かった。
その後、京都はMF加藤、MFチエゴ、MF中村太を投入。特に後半32分から登場した左サイドのMF中村太の突破から何度かチャンスを作るが同点ゴールは生まれず。結局、1対0で湘南が勝利し、今シーズン3勝目。これで湘南は16位に浮上。アウェーでは今シーズン初勝利を飾った。対する京都は完封前。最下位に転落した。
■ 今シーズン3勝目湘南はワールドカップの中断期間中に行われたナビスコカップで5戦全敗。リーグ戦を合わせると7連敗中。昇格1年目で非常に苦しい状況に陥りつつあったが、浮上のきっかけとなり得る貴重な勝ち点「3」を獲得した。これで勝ち点は「12」。16位にまで上昇し、降格圏脱出も見えてきた。
前節の鹿島戦では珍しく3バックを採用。立ち上がりから鹿島に攻められ続けて、鹿島アントラーズのオリベイラ監督も「湘南は消極的だった。」と苦言を呈していた。この日もシュート数はわずかに3本でボール支配率も35%。昨シーズン、J2で見せていた「人数をかけて攻め込む湘南らしいサッカー」は見られなくなったが、ナビスコの5試合で13失点と守備陣が苦しんでいただけに、マイナーチェンジが必要な時期になっていて、一種のギャンブルといえたが、結果を残したことで次の可能性が広がったといえる。
新しい選手も入ったが、チーム全体で「まずはしっかり守ろう。」という意識が徹底されてきていて、2試合で1失点のみ。敗れたとはいえ王者の鹿島を1点に抑えたことで生まれた自信が、確かにこの試合では生きていた。
■ 新加入の二人湘南は怪我が回復しないFWアジエルの登録を抹消し、中断期間中にFWエメルソン、FWバウドらを加えた湘南。登録の関係で鹿島戦は出場できなかったため、共にこの日が湘南でのデビュー戦となった。
まずFWエメルソンは右ウイングで先発出場。彼のプレースタイルはよく知られている通りで、運動量も多くて、かつ技術もあるということで、フィットすれば大きな戦力となる可能性がある。この日は押し込まれる時間が長かったが、時間が進むに連れて攻撃に絡む回数が増えていった。55分間で交代したが、ポジティブな印象を残すプレーだった。FWエメルソンが入ったことでFW中村が先発から外れることになったが、ポジション争いは熾烈になるだろう。
一方のFWバウドは後半28分から出場。FW田原に代わって出場したが、良さはあまり発揮できなかった。194cm78kgということで高さはあるが、高さを生かしたプレーはほとんどなく、あまりその高さは脅威とはならなかった。こちらもFW田原とのポジション争いが待っているが、華奢な選手であり、FW田原の代わりにスタメンを任せるには厳しいのではないか、という印象を持った。
■ 2試合目の永木湘南はMF永木が2試合連続でスタメン出場。来シーズンからのチーム加入が決定しているが、一足先にJリーグデビューを果たしたが、レギュラーをつかみそうな勢いでプレーを続けている。
さすがに鹿島戦の前半はやや堅さが目立ったが、ボールを持った時の落ち着きは他の湘南の選手と比べても見劣りはせず、前を向く巧さもある。このポジションは、昨シーズンからMF坂本とMF寺川で不動だったが、バックアッパーと呼べる選手がいないままで不安なポジションだったが、MF永木が入ったことで選択肢も広がることになった。
FWアジエルがいない状況で、ボールを持って味方を動かせる選手がいない湘南だが、MF永木がスタメンに入ったことで、これまでずっとかかえてきた問題のいくつかが解決される可能性が出てきた。
■ 決勝ゴールの阿部吉朗決勝ゴールはFW阿部。今シーズンは3節からずっとスタメン出場を続けていて、チームの得点源の1つとなっている。「守って少ないチャンスをものにするスタイル」への変更を模索中の湘南にとって、いいところでゴールを決めてくれるFW阿部の存在は非常に大きい。
普通の<4-1-2-3>であると、「3」の選手はある程度、攻撃に専念できる状況になるが、湘南の場合はそうもいかずに守備への貢献も求められる、タフなポジションであるが、これまでのところは十分に期待にこたえている。1つのチャンスをものにしたこの日のFW阿部のゴールがチームにもたらしたものは大きい。
■ まさかの敗戦 一方、ホームで最下位の湘南を相手に確実に勝ち点「3」を獲得したかった京都だったが、まさかの黒星。これで勝ち点「10」のままで最下位に転落してしまった。15位の神戸との差は「2」、14位の仙台との差も「3」と射程圏内であるが、水曜日にアウェーでガンバ大阪と引き分けた試合の価値が半減してしまうショッキングな敗戦となった。
確かにシュート数は「23本」対「3本」と圧倒したが、京都に決定的なシュートチャンスはほとんどなくて、後半のMF中村太亮のクロスバーを直撃したシュートくらい。湘南のGK都築が活躍するシーンはそれほど多くはなかった。夏場の京都の試合というと、独特のまとわりつくような暑さで相手チームが先にへばるケースが多く、ホームコートアドバンテージを持つが、この日は生かされなかった。
■ バランスの悪い攻撃京都は、FWドゥトラを1トップ気味に置いて、その下にMFディエゴ、MF宮吉、MF柳沢を並べる布陣でスタートし、途中からFWドゥトラとMF柳沢のポジションを入れ替えるなど、試行錯誤を繰り返したが、結局、実らなかった。「前半は守って、後半に1点を取って勝ち点「3」をつかむ」という湘南側にとって、この試合の唯一の勝ちパターンにものの見事にはまってしまった。
期待の前線の4人もあまりバランスは良くなく、MF宮吉にしてもMF柳沢にしても、サイドハーフで起用された場合でもそつなくこなす事は出来るが、十分に持ち味を発揮したとはいいがたく、どちらかをベンチに置いておいて、半途中の点が欲しい時間帯に出てこられた方が、相手にとっては嫌だっただろう。
■ ディエゴとドゥトラ攻撃のリズムを壊していたのは、MFディエゴとFWドゥトラの二人。悪い流れの試合では良く見られる展開であるが、MFディエゴがボール欲しさにボランチの位置まで下がり過ぎてくるケースが多くて相手に脅威を与えることが出来ず、FWドゥトラは安易な仕掛けからのボールロストするシーンが、この日も多かった。
チームの攻撃のリズムを作ることを最優先に考えるとしたら、この二人がピッチにいない方がいいだろうが、スペシャルな能力を持った選手なので、ベンチに置いておくのももったいない。ということで、彼らの力をうまくチームに組み合わせることが必要であるが、残念ながらうまくいっておらず、プラス面よりもマイナス面の方が目立つ試合となった。
■ 加藤久監督の限界2007年の終盤に京都の監督に就任し、J1昇格やJ1残留を成し遂げてきた加藤久監督であるが、そろそろ限界に来ている。京都の戦力値はJ1の18チームの中でも中位クラス以上であり、単純に戦力値を考えると18位にとどまるチームではない。この状況では監督が批判されても仕方がない。
MF角田の起用法等、いくつか面白い選手抜擢を見せてきた加藤監督。どちらかというとやりくり上手なキャラクターであり、18番目のチームを12位にする力はあるが、12番目のチームを6位にする力はないようで、12番目のチームを18位にしてしまう危険性も備える。戦力が集まったチームを采配するのは苦手のように感じる。
リーグ戦はここ9試合で6敗3分け。そろそろ、加藤監督のクビも危うくなってきている。
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