■ フクアリでのホームゲーム開幕から4試合で勝利のない千葉が、ホームのフクアリで横浜FCと対戦したJリーグ第5節。ナビスコカップでは予選リーグで3連勝のスタートを切っているが、リーグ戦では結果が出ていない。
千葉は、<3-6-1>で巻の1トップ。工藤と羽生を2列目に配置する布陣。3バックは、ジョルジェビッチ・ストヤノフ・水本。対する横浜は、<4-4-1-1>。前節の名古屋戦でいいプレーを見せた、FW難波とFWジウマール・シウバの2トップ。
試合は、開始から運動量で優る千葉が優勢。前半27分に、羽生→下村とパスが回ると、下村からのスルーパスを受けた右サイドMFの水野がシュート。このシュートが決まって先制した。
この先制ゴールで完全にリズムをつかんだ千葉は、後半20分に左サイドに流れたMF工藤のクロスをFW巻とDF中島が競り合って、空中のボールは中島に当たってゴールイン。千葉が2点目となった。(→ その後、巻のゴールに変更された。)
さらに、後半25分には、相手パックパスの処理ミスから相手GKと1対1になった羽生が、1度はGKに阻まれたものの、再度つめて押し込んで3点目。さらに、後半28分にも、右サイドを抜けた水野のクロスをMF山岸が中央で押し込んで4点目。千葉は、その後、巻と羽生をベンチに下げる余裕の采配を見せる。結局4対0で勝利した。
■ ダイナミズムを生んだ工藤の働き千葉では、MF工藤の起用が大成功した。ナビスコカップから、いいプレーを見せていて、先発起用は必然の状況だったが、リーグ戦初スタメンで、見事に起用に応えた。
今シーズンの千葉の一番の問題は、両サイド(水野・山岸)を生かそうとする意識は感じるものの、真ん中からの攻撃がうまく機能しておらず、相手DFを中央に収縮できておらず、その結果、両サイドに相手マークが集中してしまい、サイドからの攻撃も行き詰るという悪循環にはまることが多かった。この点では、昨シーズンまで在籍したFWハースの穴を感じずに入られなかったが、この試合では、ハースの穴を感じさせなかった。
羽生や巻、山岸ら、千葉の選手は、パスのレシーバーは多いものの、パスの出し手が不足しており、需要と供給のバランスが悪かった。しかしながら、フォワードから少し下がった位置で、工藤がボールをうまく引き出して、攻撃に変化をつけることが出来ていた。”中の枚数の薄さ”という2トップではないが故の弊害も見られたものの、当分は、巻の1トップで、羽生と工藤を2列目で起用するのが、ベターなように思う。
■ スターへの階段を駆け上がる水野晃樹この試合でも、1得点1アシストを挙げた水野。今シーズンの水野は、昨シーズンまでの水野とは一味違っている。
もともと、高い素質をもっていたものの、能力の生かし方を十分に心得ておらず、からまわる試合や消えてしまう試合も多かった。しかし、今シーズンは、五輪代表での試合も含めて、高いレベルで安定したプレーを見せている。
この日は、対面した横浜FCの中島崇典が守備に難がある選手(※ 中島は、攻撃面は素晴らしい左足のキックを持っている。非常に、見所の多い選手である。)だったこともあり、完全に右サイドを支配した。この試合で水野が挙げたクロスは、いったい何本だったのか、数えるのに苦労するほどだった。
改善点として挙げるなら、朴宗真が入って水野がトップ下気味の位置に移ったあとの、朴とのコンビネーションがまだ確立されていないことだろうか。ともに、右サイドのタッチライン際を仕事場とする選手であり、まだまだ、プレーエリアが重なることで、互いの持ち味を殺しあっている印象を受ける。
■ 素晴らしかった4点目のゴール4点とも、千葉らしさが出たゴールだったが、特に良かったのが4点目のゴールシーン。ルーズボールで相手に拾われそうになったボールを、ボランチの下村(?)がスライディングタックルで奪い返して、右サイドでフリーになっていた水野へ展開。その水野のクロスを、左サイドから中に絞っていた山岸が、ダイレクトで決めたシーンである。
このゴールは、「攻守の切り替えの早さ」、「水野の高い精度のクロス」、「山岸のダイナミックさ」が融合して生まれた素晴らしいゴールシーンだった。右サイドの水野は、4節までで、リーグトップの28本のクロスを上げているが、中の枚数が足りていないため、クロスボールが合わない場面が多かったが、このシーンのように、山岸がゴール前に進出できるようになれば、攻撃がぶ厚くなっていくだろう。
■ 浮上のきっかけ千葉が、フクアリでこれほどいい試合を見せたのは、いつ以来だろうか。リーグ戦では、開幕から4試合勝利がなかったものの、内容自体はそれほど悪くなった。ただ、上位に浮上するには、何かしらのきっかけが必要だった。この試合は、今後、浮上するきっかけになるかもしれない。
千葉の選手は、水野にしても、羽生にしても、水本にしても、佐藤勇人にしても、1年ほど前と比べると、個人能力がアップしていて、着実に成長しているという印象を受ける。それは、彼らが、オシム監督によって、日本代表に選ばれたことによって、自覚と自信をもったためだと考えることもできる。個々のレベルアップが、まだ、チーム全体のレベルアップに結びついていないは残念だが、今後、どのように、チームとして発展していくのか、楽しみである。
■ 守備ブロックの形成よりも・・・横浜FCについては、戦い方に???。<4-4-1-1>に近いスタイルで、しっかりと2ラインを作って戦うという意思統一は見える。ただ、何のために、2ラインを敷いているのかが、理解できない。
これは、大宮アルディージャも同様の傾向が見られるが、2ラインの守備がはまったときは、相手の攻撃を封じ込めることができるだろうし、いい形からカウンターでゴールできるかもしれないが、ひとつ歯車が狂うと、この試合のような大差になる。
確かに守備のときのバランスは大事だと思う。しかしながら、守備のバランスを気にしすぎて、ボールを奪った瞬間にアクションを起こせるのが、FWの難波とシウバだけなので、相手は対応しやすいし、ボランチの佐藤や下村も思い切って攻撃に参加できる。その結果、相手に押し込まれることになる。
昨シーズンのメンバーからは、主力のアウグスト・城・アレモンが退団していて同じではないのは理解しているが、J2では、もっと鋭いカウンターを見せていたし、人数をかけた攻撃も出来ていた。守備的なチームといわれているが、本来は、もっと攻撃も出来るチームである。今後の試合に期待する。
ジェフ千葉 採点
GK 岡本 6.0
→ クロスボールへの対応に不安感は残るが、この試合ではミスはなかった。
DF ストヤノフ 6.5
→ 大量リードしたこともあって、控えめのプレー。チームに安定をもたらした。
DF ジョルジェビッチ 6.0
→ 守備では、堅実に対応した。フィードは、相手に寄せられると、ぶれるシーンが目立つ。
DF 水本 6.5
→ 無難なプレー。危ないシーンは、ほとんど作らせず。
MF 下村 6.0
→ 攻撃面で、まだ、持ち前の展開力を発揮できていないが、守備でチームを引き締めた。
MF 佐藤 6.5
→ 膠着したときは、佐藤勇人の攻撃参加がないと打開が出来ない印象。勇人がどれだけ攻撃参加できるかが、今後の鍵。
MF 水野 7.5
→ マン・オブ・ザ・マッチ。
MF 山岸 6.5
→ 見事な4点目のゴール。それ以外のプレーでも、悪くなかった。
MFW 羽生 6.5
→ 絶えず動き回った。相手は、マークできず。
MF 工藤 6.0
→ オン・ザ・ボールでのプレーは、やや不満も残るが、チームでは異色の存在で、必要なタイプの選手。
FW 巻 7.0
→ 久々にらしいプレー。復調気配。
監督 アマル・オシム 6.5
→ 予想以上の成果。次節に注目。
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