■ J1の第2節J1の第2節。ACLはウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(H)とFCソウル(A)に敗れて2連敗スタートで、J1の開幕戦もアウェイで清水に1対3で敗れて公式戦は3連敗スタートと出だしで大きく躓いた鹿島アントラーズがホームの県立カシマサッカースタジアムで湘南ベルマーレと対戦した。湘南は開幕節はホームで浦和と対戦したが1対3で逆転負けを喫した。ともに今シーズンの初勝利を目指す試合となった。
ホームの鹿島は「4-2-3-1」。GK曽ヶ端。DF西大伍、山村、ファン・ソッコ、山本脩。MF柴崎岳、小笠原、遠藤康、土居、金崎。FW高崎。清水との開幕戦はスタメンから外れたGK曽ヶ端とMF小笠原の2人がスタメンに戻って来たが、DF昌子やFW赤崎やFWダヴィなどを欠いている。ACLとリーグ戦を並行して戦う厳しいスケジュールになっているが、シーズンの序盤にして怪我人が続出している。
対するアウェイの湘南は「3-4-2-1」。GK秋元。DF遠藤航、アンドレ・バイヤ、三竿雄。MF菊地俊、永木、藤田征、菊池大、大槻、高山。FWブルーノ・セザル。攻撃の要としてリーグ2位の20ゴールを挙げたFWウェリントンが退団して、加入がほぼ決まっていたポルトガル人のFWギマもメディカルチェックをパスできなかった。大きな誤算が生じたが、2月中旬に加入が決まったFWブルーノ・セザルが初出場となった。
■ 劇的な決勝ゴールで湘南が初勝利試合は前半13分に鹿島が先制する。中盤でボールを奪って右サイドに流れたFW高崎にパスが通ると、FW高崎がいいタイミングでグラウンダーのクロスを入れる。ゴール前に挙がっていたMF柴崎岳のスルーパスが入ってその裏にドフリーで待っていたMF金崎が決めてホームの鹿島が先制に成功する。3年ぶりにJリーグに復帰してきたMF金崎は復帰後初ゴールとなった。前半は1対0と鹿島がリードして折り返す。
迎えた後半10分に湘南のボランチのMF菊地俊がファーサイドにクロスを入れると、ゴール前に残っていたDF遠藤航に対して鹿島のMF小笠原がファールを冒して湘南にPKが与えられる。プレッシャーのかかるPKだったが、五輪代表のDF遠藤航が確実に決めてアウェイの湘南が1対1の同点に追いつく。DF遠藤航は開幕の浦和戦(H)に続いて2試合連続でPKを成功させて、早くも今シーズン2ゴール目となった。
その後は鹿島ペースとなる。MFカイオのヘディングシュートとMF遠藤康のミドルシュートがバーに当たるなど、入ってもおかしくないシーンが何度もあったが決められず。すると、後半46分に攻撃参加したDF遠藤航のクロスを途中出場の19歳のFWアリソンが値千金のヘディングシュートを決めて土壇場で湘南が2対1と逆転に成功する。結局、2対1で湘南が勝利してJ1復帰後の初勝利を飾った。
■ 湘南の出来は決して良くなかったが・・・。湘南の出来は決して良くなかった。中盤で不用意な形でボールを失うシーンが多くて、カウンターへの備えも十分ではなかった。再三にわたって鹿島がカウンターからチャンスを作ったおり、基本的には鹿島ペースが続いたが、バーに直撃するシーンが3度ほどあるなど、この日は湘南の方に運が味方した。とにもかくにも、2試合目にして初勝利を手に入れることができたのは非常に大きいと言える。
ボールを奪ってカウンターの形になったときに多くの人数をかけるのが湘南のスタイルで、このチームの一番のウリと言える。昨シーズンはその形でたくさんのゴールを奪ってきたが、リスクもある。J2であればボールを失って逆カウンターの形になったときも相手が勝手にミスをするケースが多かったので、守備側に回った湘南の選手の人数が少ない場合でもある程度は守りきれたが、J1の舞台になるとなかなか難しい。
まずは不用意なミスを減らすことが第一であるが、「リスク管理をどうするのか?」が課題になって来る。3バックの中央に入っている新外国人のDFアンドレ・バイヤはなかなか能力の高い選手だと思うが、1人では限界がある。逆カウンターの形でやられる機会が多くなると湘南の持ち味である人数を掛けたカウンターを仕掛けるのが難しくなるので、いかにしてバランスを取るかが当面の課題と言える。
■ DF遠藤航の上質なクロス湘南にとって危険なシーンは多かったが、アウェイで鹿島から勝ち点「3」を獲得できたのは大きな自信になるだろう。試合の流れを考えると1対1のままでも十分な結果を言えたが、後半46分に新外国人のFWアリソンが決勝ゴールをマークした。FWアリソンはゴールの直後に2枚目のイエローカードを受けて退場処分を受けた。約10分の出場時間にも関わらず、大きなインパクトを残すことになった。
「強さ」と「高さ」が生きたFWアリソンのヘディングシュートも見事だったが、DF遠藤航のクロスも非常に良かった。3バックの右で起用されているDF遠藤航がいいタイミングで攻撃に参加してきたが、あのような形からスピードに乗った状態でクロスを上げるプレーをDF遠藤航は得意にしている。クロスが明後日の方向に飛ぶこともあるので精度が高いとは言えないが、稀に上質なクロスが入って来る。
所謂、「低確率ではあるが上質なクロス」を基本ポジションがCBであるにもかかわらず、DF遠藤航は習得しており、彼の1つの武器になりつつある。難易度の高いクロスになるので、キックミスが起こることを覚悟した上で、1発でゴールに直結するようなクロスをJ2生活の中で意識して蹴って来たことが実を結んだと言える。右サイドから上がって来たDF遠藤航が質の高いクロスを蹴るのは珍しくはない。
「クロスの精度」というのは日本サッカー界の永年の課題と言える。世界的に見ると背が高くない選手が多いので、ピンポイントのクロスを上げないとなかなかゴールにつながらないが、ゴールラインを割るような明らかなクロスのミスを恐れるあまり、60点や70点ほどのクロスで満足しているケースが多い。しかし、シュートにつながらずに簡単に相手のCBにクリアされてしまったらあまり意味は無い。
主にSBの選手が攻撃参加した時、明後日の方向にクロスが飛んでゴールラインを割るようなことがあるとその選手は批判される。もちろん、「ノーチャンスのクロス」というのはできるだけ避けたいが、ミスを恐れるあまり、可能性の低いふんわりとしたクロスを上げるのもあまり有益なことではない。時と場合によるが、日本サッカー界の「クロスに対する考え方」は再考の余地があるのではないと思う。
■ 泥沼の4連敗となった鹿島アントラーズ一方の鹿島は公式戦は泥沼の4連敗となった。決して内容が悪いわけではない。J1の開幕戦の清水戦(A)の出来はあまり良くなかったが、その他の3試合はどちらかというと内容的には良かった。ACLで結果が出せていないが、2試合とも鹿島がいい感じで攻め込む時間が長かったので、内容的には決して悲観する必要はないが、ここまで結果が出ないとチーム内外を取り巻く雰囲気は悪くなる。
ゴールが決まるか、決まらないかは運にも左右されるが、今シーズンの鹿島は本当についていない。この試合は後半10分に同点に追いつかれたが、その後、鹿島が圧倒的に攻め込んで決定機を作った。「どちらのチームが2点目を奪う確率が高かったか?」というと明らかに鹿島だったが、ほんの少しのところでゴールが決まらなかった。流れの悪いときは我慢するしかないが、気の毒なほどツキが無かった。
もちろん、結果が出ていないのは運の要素だけが原因とは言えない。ACLの2試合に関してはCBのDF昌子のミスが失点に直結しており、この試合のPKを献上した場面も「MF小笠原の個人のミス」と言われても仕方がないようなシーンだった。ペナルティエリア内で意図した上でボールに関与しない状態であれだけ激しくチャージしたら、相手チームにPKが与えられるのは当たり前のことである。
内容は悪くないが、結果が出ていないので選手たちが焦ってしまって、さらに結果を出すのは難しくなるという悪循環にハマっているが、光明もいくつかある。1つは新加入のMF金崎がいいプレーを見せていることで、開幕戦の清水戦(A)の出来も非常に良かったが、この日も出来は良かった。前半13分には先制ゴールを記録したが、ドイツやポルトガルでのプレーが無駄ではなかったことを証明している。
奮起が期待されるのはFW高崎とMF土居の2人である。FWダヴィはもちろんのこと、FW赤崎も戦線を離脱しているので、FW高崎を1番手で使わざる得ない状況になっているが、この日もいくつかあったチャンスを決められなかった。一方のMF土居は他の選手と比べると監督の信頼は厚いが、今シーズンは消えている時間が長い。MF遠藤康やMF金崎の状態はいいので、2列目の序列は考え直す必要があるかもしれない。
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