■ アギーレジャパンの2試合目アギーレジャパンになって2試合目となるベネズエラ戦が横浜市にある日産スタジアムで行われた。アギーレ監督の初陣となった5日(金)のウルグアイ戦は収穫の乏しい内容で0対2で敗れたので、説得力のある試合を見せて初勝利を手にしたいところである。南米のベネズエラのFIFAランキングは29位なので、44位の日本よりも上となっている。
日本は「4-1-2-3」。GK川島。DF酒井高、水本、吉田、長友。MF森重、細貝、柴崎岳。FW本田圭、大迫、柿谷。ウルグアイ戦でスタメンだったDF酒井宏、DF坂井、MF田中順、FW皆川、FW岡崎慎の5人はベンチスタートで、DF酒井高、DF水本、MF柴崎岳、FW大迫、FW柿谷の5人がスタメンに名を連ねた。MF柴崎岳はフル代表のデビュー戦となる。
対するベネズエラは「4-2-3-1」。GKエルナンデス。DFゴンサレス、ビスカロンド、ペロソ、シチェロ。MFロサレス、リンコン、ゲラ、マリオ・ロンドン、セイハス。FWサロモン・ロンドン。ベネズエラ代表は南米の中では唯一、W杯に出場した経験がないが、近年、強化が進んでおり、2011年のコパ・アメリカではベスト4と好成績を残した。
■ 2対2のドロー試合の立ち上がりは日本ペースで、いきなりプレッシャーをかけてFW本田圭がシュートを放つなど、いい試合の入り方ができたが、徐々にペースダウンして、前半15分あたりを過ぎるとベネズエラが優勢となる。リズムを失った日本は前半38分に中央を崩してFW柿谷がキーパーと1対1のチャンスを得るが、決めることができない。
0対0で迎えた後半開始からFW大迫とFW柿谷を下げて、FW岡崎慎とFW武藤嘉を投入。FW岡崎慎を3トップの中央に入れると、後半6分にFW岡崎慎が競ってこぼれたボールを拾ったFW武藤嘉がドリブルから左足で鮮やかにシュートを決めて日本が先制に成功する。FW武藤嘉は代表初ゴールで、アギーレジャパンにとっても初ゴールとなった。
しかし、後半13分にDF水本が与えたPKをMFマリオ・ロンドンに決められて同点に追いつかれる。嫌な形で同点ゴールを許したが、後半22分にFW武藤嘉とMF柴崎岳のコンビで局面を打開して左サイドを完全に崩すと、最後はFW岡崎慎のクロスから中央に入ってきたMF柴崎岳がボレーシュートを決めて2対1と勝ち越しに成功する。
MF柴崎岳の代表初ゴールで勝ち越した日本だったが、後半26分にMFシチェロの放ったロングシュートに対してGK川島がまさかのファンブル。思わぬ形から2対2の同点に追いつかれてしまう。結局、この日も自分たちのミスから相手にゴールを許して2対2の引き分けに終わった。アギーレジャパンはこれで2試合を終えて0勝1敗1分けとなった。
■ いくつかの収穫勝利にはつながらなかったが、残念な試合となったウルグアイと比べるといいところは多かった。1つは守備の部分で、前からのプレスがはまっていい位置でボールを奪い取るシーンがいくつかあった。「4-1-2-3」を採用するメリットとして守備のときに前からプレスをかけやすいという点が挙げられるが、ハマったシーンがいくつかあった。
そして、コンビネーションから何度かチャンスを作った点も収穫と言える。前半はFW大迫が3トップの中央に入ったが、FW大迫のポストプレーを起点にして相手の守備を混乱させるシーンが見られた。今シーズンはドイツのケルンでプレーするFW大迫は前半だけで交代となって、シュートチャンスはなかったが、出来としてはまずまずだった。
左ウイングで起用されたFW柿谷は前半38分の決定機を逃したことが悔やまれる。そして、プレーに関与する回数は少なかったが、シンプルなプレーとFW大迫ら周囲との関係で局面を打開するシーンはいくつかあった。FW柿谷の出来は決して悪くなかったが、後半に代わって登場したFW武藤嘉が結果を出したので、立場はやや厳しくなった。
■ 大きな問題点と言えるビルドアップ問題はビルドアップの部分である。1失点目はMF水本のミスパスがきっかけになったが、それ以外にも危ないエリアでボールを失ってカウンターを食らう場面がいくつもあった。もちろん、最終ラインや中盤の選手の判断のまずさにも問題があるが、ボールを持ったときに顔を出してくれる選手が少ないので、選択肢が少ないことが大問題と言える。
ウイングのFW本田圭やFW柿谷はかなり高い位置を取るのでビルドアップにはあまり参加することができなくて、SBのDF酒井高とDF長友もボールを回し始めたときは高めの位置取りをする。したがって、CBの2人やアンカーのMF森重がボールを持った時にパスを出すことができる選手が非常に少なくて、無理にパスを出すとカットされてしまう。
前半は3トップの中央のFW大迫に難しいパスを出しても、しっかりとおさめてくれたのでまだマシだったが、FW岡崎慎が3トップの中央に入ると苦しくなる。結局のところ、左右のSBと左右のWBで起用される選手がもう少しビルドアップに参加してくれないと後ろの選手は大変で、危険なエリアでボールを失う回数が増えるのは当たり前である。
出しどころが少ないので、インサイドハーフの2人の出来が重要になってくるが、この日はMF細貝のところでボールを失うケースが多かった。守備力や運動量を期待されてスタメンで起用されていると思うが、このポジションの選手が難しいシチュエーションでもボールを受けて、かつ、捌いてくれないと展開するのは難しくなる。
もう1人のMF柴崎岳のところは攻撃においては大きな問題はなかったので、今後、MF細貝のポジションの人選というのは再考する必要があるだろう。守備力と運動量が求められることになるが、今は怪我のため戦列を離れているC大阪のMF山口蛍や、FC東京で同じポジションを見事にこなしているMF米本などが候補に挙がってくる。
■ MF柴崎岳が初スタメンで初ゴールこの試合における大きな収穫と言えるのは新戦力が活躍したことで、1992年生まれのFW武藤嘉とMF柴崎岳の2人が代表初ゴールを決めた。FW武藤嘉は代表2試合目で、MF柴崎岳は代表デビュー戦だったが、積極的にプレーして記念すべき初ゴールを記録した。なかなか初ゴールが生まれずに重い空気になっていたのを2人が振り払った。
FC東京のFW武藤嘉のドリブルからのゴールは鮮やかだった。右にFW本田圭がいて、前方にはFW岡崎慎もいたので、パスを出したくなるシチュエーションだったが、臆することなくドリブルで仕掛けた。FW武藤嘉は2点目のゴールにも絡んでおり、途中出場で流れを変えるジョーカー役として非常に優秀な選手であることを示したといえる。
一方、鹿島のMF柴崎岳は初出場で初スタメンとなったが、「組み立てに参加しつつ、ゴール前にも侵入して、ゴールに絡むことができる。」という自分の良さを発揮した。組み立てのところでいくつかミスはあったが、代表のデビュー戦としては上々の出来で、インサイドハーフのレギュラー争いの中心になりうる存在であることを示した。
「ポスト・遠藤」と言われて久しいが、鹿島では隣に経験豊富なMF小笠原がいることもあって、ゲームメークの仕事はそれほど任されていない。むしろ、中盤の底からゴール前に飛び出していくプレーが主体になっており、こういった飛び出しから今シーズンはいくつもの決定機を演出している。2点目のゴールは得意の形から生まれた。
「4-1-2-3」のもう1つの利点として、ゴール前の厚みが生まれやすいという点が挙げられる。もちろん、そのためには、「2」の位置でプレーするインサイドハーフの選手の頑張りが不可欠となるが、2点目のMF柴崎岳のゴールというのは新生・日本代表の可能性を感じさせるゴールであり、狙いとする形から生まれたファインゴールだったと言える。
ザックジャパンのときは「4-2-3-1」が基本だったが、1トップの選手(FW前田遼やFW大迫やFW柿谷)と2列目の3人(FW本田圭とFW岡崎慎とMF香川)にゴールが偏っており、ボランチを含めたそれ以外のポジションの選手のゴール数が伸びなかったが、「4-1-2-3」の「2」の選手がゴールに絡む回数が増えてくると面白いサッカーになるだろう。
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