■ FIFAランキングは信用できるか? 国際試合で対戦相手の(何となくの)強さを知るときはFIFAランキングを調べるのが手っ取り早い。5月に発表された日本代表のFIFAランキングは47位だったが、同じC組のコロンビアは5位で、ギリシャは10位で、コートジボワールは21位だった。したがって、4チームの中では一番下となる。しかも、大きな差がある。「3チームとも格上ではないか。」と感じる人もいるだろう。
ただ、よく言われるとおりで、「FIFAランキングはあまりあてにならない。」というのが正直なところである。 もちろん、実際のチーム力に見合った順位になるようにポイントの算出方法に関しては見直しもされている。「ドイツW杯以前の算出方式と比べるとマシになった。」という意見は多いが、まだまだ十分とは言えない。 高すぎるチーム、低すぎるチームはいくつかある。
以前のエントリーでギリシャのFIFAランキングがなぜ高いのか?について簡単に触れたが、せっかくなので、もう少し踏み込んでみたいと思う。表1はザックジャパンの最近1年間の戦績である。( FIFAランキングの算出時方法については下のエントリーで詳しく記しているが、対象となるのは過去4年間の成績で、2010年6月から2014年5月を対象期間として話を進めていきたい。)
→ 2013/11/24
【FIFAランキング】 なぜ日本が44位で、ベルギーが5位なのか? (上) → 2013/11/25
【FIFAランキング】 なぜ日本が44位で、ベルギーが5位なのか? (下) ■ ここ1年間で日本代表が得たランキングポイントは? FIFAランキングを算出するとき、直近の1年間のウェイトが100%で、その前の1年間のウエイトが50%で、さらに前の1年間のウエイトが30%で、さらに前の1年間のウエイトが20%となる。よって、特に重要となるのは直近の1年間の成績であるが、日本代表の場合、8勝6敗3分けとなる。親善試合が多いのが特徴の1つで、勝つと高いポイントが得られたコンフェデは3連敗に終わった。
表1. 日本代表のここ1年間の戦績
年度 | 月日 | 対戦相手 | FIFAランク | 区分 | 結果 | スコア |
|
2013年 | 6月4日 | 豪州 | 59 | W杯予選 | △ | 1-1 |
2013年 | 6月11日 | イラク | 100 | W杯予選 | ○ | 1-0 |
2013年 | 6月15日 | ブラジル | 4 | コンフェデ | × | 0-3 |
2013年 | 6月19日 | イタリア | 9 | コンフェデ | × | 3-4 |
2013年 | 6月22日 | メキシコ | 19 | コンフェデ | × | 1-2 |
2013年 | 7月21日 | 中国 | 96 | 東アジアC | △ | 3-3 |
2013年 | 7月25日 | 豪州 | 59 | 東アジアC | ○ | 3-2 |
2013年 | 7月28日 | 韓国 | 55 | 東アジアC | ○ | 2-1 |
2013年 | 8月14日 | ウルグアイ | 6 | 親善試合 | × | 2-4 |
2013年 | 9月6日 | グアテマラ | 124 | 親善試合 | ○ | 3-0 |
2013年 | 9月10日 | ガーナ | 38 | 親善試合 | ○ | 3-1 |
2013年 | 10月11日 | セルビア | 30 | 親善試合 | × | 0-2 |
2013年 | 10月15日 | ベラルーシ | 83 | 親善試合 | × | 0-1 |
2013年 | 11月16日 | オランダ | 15 | 親善試合 | △ | 2-2 |
2013年 | 11月19日 | ベルギー | 12 | 親善試合 | ○ | 3-2 |
2014年 | 3月5日 | NZ | 111 | 親善試合 | ○ | 4-2 |
2014年 | 5月27日 | キプロス | 130 | 親善試合 | ○ | 1-0 |
表2は各試合で何ポイントを得たかを示している。対戦国間の強さ(C)は相手国のFIFAランキングを元に出てくる数字である。当然、対戦した当時のFIFAランキングをあてはめることになるが、調べるのが大変なので、5月のFIFAランキングで計算している。なので、正確なポイント数ではないが、FIFAランキングの順位が大きく変動することは少ない。誤差の範囲と言えるだろう。
結局、(A)*(B)*(C)*(D)*100から導かれる数字が各試合で得られるポイントとなって、最後に1年間の平均値を出す。勝ち点(A)は勝った時は3.0、引き分けの時は1.0、負けた時は0.0なので、どこが相手でも負けると0ポイントとなる。この17試合で得たポイントを合計すると3511.95ポイントで、試合数の17で割ると206.59ポイントで、これが日本代表の直近の1年間のポイントとなる。
表2. 日本代表がここ1年間(2013年6月 - 2014年5月)で獲得したポイント
対戦相手 | FIFAランク | 区分 | 結果 | ポイント | 勝ち点 | 重要度 | 対戦国間の強さ | 連盟間の強さ |
(A) | (B) | (C) | (D) |
豪州 | 59 | W杯予選 | △ | 303.15 | 1.0 | 2.5 | 1.41 | 0.86 |
イラク | 100 | W杯予選 | ○ | 645.00 | 3.0 | 2.5 | 1.00 | 0.86 |
ブラジル | 4 | CC | × | 0.00 | 0.0 | 3.0 | 1.96 | 0.93 |
イタリア | 9 | CC | × | 0.00 | 0.0 | 3.0 | 1.91 | 0.93 |
メキシコ | 19 | CC | × | 0.00 | 0.0 | 3.0 | 1.81 | 0.87 |
中国 | 96 | 東アC | △ | 89.44 | 1.0 | 1.0 | 1.04 | 0.86 |
豪州 | 59 | 東アC | ○ | 363.78 | 3.0 | 1.0 | 1.41 | 0.86 |
韓国 | 55 | 東アC | ○ | 374.10 | 3.0 | 1.0 | 1.45 | 0.86 |
ウルグ | 6 | 親善試合 | × | 0.00 | 0.0 | 1.0 | 1.94 | 0.93 |
グアテ | 124 | 親善試合 | ○ | 198.36 | 3.0 | 1.0 | 0.76 | 0.87 |
ガーナ | 38 | 親善試合 | ○ | 417.96 | 3.0 | 1.0 | 1.62 | 0.86 |
セルビア | 30 | 親善試合 | × | 0.00 | 0.0 | 1.0 | 1.70 | 0.93 |
ベラル | 83 | 親善試合 | × | 0.00 | 0.0 | 1.0 | 1.17 | 0.93 |
オランダ | 15 | 親善試合 | △ | 172.05 | 1.0 | 1.0 | 1.85 | 0.93 |
ベルギー | 12 | 親善試合 | ○ | 524.52 | 3.0 | 1.0 | 1.88 | 0.93 |
NZ | 111 | 親善試合 | ○ | 228.29 | 3.0 | 1.0 | 0.89 | 0.86 |
キプロス | 130 | 親善試合 | ○ | 195.30 | 3.0 | 1.0 | 0.70 | 0.93 |
■ ギリシャ代表と比較すると・・・・ 比較のためにギリシャ代表がここ1年間で獲得したポイントを示すと表3のようになる。10試合で5607.5ポイントを獲得しており、1年間の平均値は560.75ポイントとなる。これはかなりの高ポイントである。勝利という結果を出しているのはもちろんのこと、ルーマニアとのPOを含めたW杯予選で荒稼ぎしており、(B)=1.0となるのでポイントを稼ぎにくい親善試合が3試合と少ない。
表2と表3を見ると、なぜ日本のFIFAランキングは低いのか?そして、なぜギリシャのFIFAランキングが高いのかが見えてくる。親善試合では、FIFAランキングが上位のベルギーにアウェーで勝利したとしても524.52ポイントで、オランダに引き分けたとしても172.05ポイントである。(B)=1.0となる親善試合が占める割合が高くなると、年間の平均値を上げるのは難しくなる。
FIFAランキングを取り上げるニュースの中で「日本代表はアジアの中では○位だった。」と書かれる。この点をなぜ?と思う人は多いと思うが、W杯の最終予選などはアジアの中の上位数チームがシードされるので、アジアの中で何番目かというのは非常に大事であるという理由に加えて、「他大陸のチームとFIFAランキングを比較してもあまり意味がない。」という理由もある。
■ 親善試合が多くなると不利になる。日本は2011年のアジアカップで優勝したため、次回大会の予選は免除されているが、大陸選手権の予選は(B)=2.5でW杯予選と同じである。例えば、ユーロ予選はどのチームも8試合or10試合をこなすのでポイントの稼ぎどころとなるが、日本は0試合である。日韓豪よりもイランの順位が上になっているのは、前者の3チームがアジアカップ予選を免除されているからに他ならない。
強化という意味ではアジアカップ予選が免除されている方がありがたいが、ボーナスステージになり得る試合が全くないというのはFIFAランキング的には痛手である。W杯予選や大陸選手権の予選で稼いだポイント数を親善試合で上回るのはかなり難しい。日本の場合、FIFAランキングが1位のスペインに勝利したとしても558.00ポイントで、これが親善試合におけるMax値となる。
一方、W杯予選でFIFAランキングが113位のチームに勝利すると561.15ポイントを獲得できるので、親善試合でスペインに勝利したときに得られるポイント数と同程度である。なので、親善試合の割合が高くなると年間の平均値は下がってきて、順位も下がってくる。これがFIFAランキングの問題点の1つで、異なる大陸のチームで順位を比較するとおかしなことになる原因である。
表3. ギリシャ代表がここ1年間(2013年6月 - 2014年5月)で獲得したポイント
相手 | FIFAランク | 区分 | 結果 | ポイント | 勝ち点 | 重要度 | 対戦国間の強さ | 連盟間の強さ |
(A) | (B) | (C) | (D) |
リトア | 104 | W杯予選 | ○ | 720.00 | 3.0 | 2.5 | 0.96 | 1.00 |
オース | 59 | 親善試合 | ○ | 423.00 | 3.0 | 1.0 | 1.41 | 1.00 |
リヒテ | 150 | W杯予選 | ○ | 375.00 | 3.0 | 2.5 | 0.50 | 1.00 |
ラトビ | 109 | W杯予選 | ○ | 682.50 | 3.0 | 2.5 | 0.91 | 1.00 |
スロバ | 46 | W杯予選 | ○ | 1155.00 | 3.0 | 2.5 | 1.54 | 1.00 |
リヒテ | 150 | W杯予選 | ○ | 375.00 | 3.0 | 2.5 | 0.50 | 1.00 |
ルーマ | 32 | PO | ○ | 1260.00 | 3.0 | 2.5 | 1.68 | 1.00 |
ルーマ | 32 | PO | △ | 420.00 | 1.0 | 2.5 | 1.68 | 1.00 |
韓国 | 55 | 親善試合 | × | 0.00 | 0.0 | 1.0 | 1.45 | 0.93 |
ポルト | 3 | 親善試合 | △ | 197.00 | 1.0 | 1.0 | 1.97 | 1.00 |
→
日本代表のFIFAランキング(46位)はなぜ低いのか? (後編)に続く。
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