◆勇気はあるか?―実家に忘れてきました。何を?勇気を―
この文章は、『モダンタイムス』という伊坂幸太郎の小説の書き出しである。あらすじを乱暴に書けば、国家という巨大なシステムと個人(主人公をはじめとした登場人物達)の闘いが描かれている。
ブラジルでのワールドカップにおける、日本代表の物語が終わった。
勇気はあるか?
僕たちの代表チームは、勇気をどこかに忘れてきてしまったのだろうか。ワールドカップ直前の3試合に、勇気はあったはずだった。この4年間の試合のほとんどにも。
初戦のコートジボワール戦、本田の先制ゴールが決まったのは、前半16分だ。日本代表の選手達は、問われる。勇気はあるか?コートジボワールは少しずつ、それでも確実に前へ圧力をかけてきた。
2戦目のギリシャ戦、ギリシャのカツラニスが2枚目のイエローカードで退場になったのは、前半38分だ。日本代表のザッケローニ監督は、問われる。勇気はあるか?ギリシャは攻撃をほとんど捨てて、守備を固めてきた。
打ち合うべきだったとか守りを固めるべきだったとか、選手交代をするべきだったとかパワープレーをするべきではなかったとか、そのどれもが正解かもしれないし、正解ではないかもしれない。
そもそも、サッカーも恋も人生も、正解がないから面白いということは分かりきっている。
『モダンタイムス』の最後、主人公は目前にある小さな闘いにも敗れ、巨大な敵から逃げて、見て見ぬふりをすることを決意する。
3戦目のコロンビア戦、コロンビアのキーパーのモンドラゴンが交代出場したのは、後半40分だ。日本代表のサポーター達は、問われる。
勇気はあるか?
日本代表は、負けたのだ。サッカーに正解はない。それでも、勇気はあるか?