■ 天皇杯の準決勝天皇杯の準決勝の1試合目。2009年大会以来の優勝を目指すガンバ大阪と、2010年大会以来の優勝を目指す鹿島アントラーズがエコパスタジアムで対戦した。今シーズンの対戦成績は、鹿島の1勝1分けで、カシマスタジアムで行われた8節の試合は5対0で鹿島が圧勝している。
G大阪は「4-2-3-1」。GK武田。DF加地、中澤、岩下、藤春。MF武井、今野、二川、遠藤、倉田。FW家長。エースのFWレアンドロは出場停止のため、FW家長が1トップのポジションで起用された。ベテランのMF明神はコンディション不良で欠場で、MF武井がスタメンで起用された。
対する鹿島は「4-2-3-1」。GK曽ヶ端。DF西、岩政、青木、新井場。MF柴崎、小笠原、遠藤、ドゥトラ、ジュニーニョ。FW大迫。こちらはベストに近いスタメンとなった。FW大迫はリーグ戦は32試合に出場して9ゴールを挙げる活躍を見せた。FW興梠はベンチから出番を待つ。
■ ガンバが決勝進出!!!試合は前半23分にG大阪が先制する。左サイドのCKを得て、ショートコーナーでリターンパスを受けたMF遠藤が右足で巻いたボールを蹴ると、これが、そのままネットに吸い込まれて、G大阪が先制に成功する。MF遠藤は4回戦の町田戦、準々決勝のC大阪に続いて3試合連続弾となった。前半は1対0でG大阪がリードして折り返す。
後半開始から鹿島はMF遠藤に代えてMFレナトを投入。G大阪のペースが落ちたこともあって、完全にボールを支配して圧倒的に攻め込むようになる。しかしながら、最後のパスやシュートの精度を欠いて、なかなかG大阪のGK武田を脅かすシーンを作れない。
結局、試合は1対0でG大阪が勝利して決勝進出が決定。1月1日に行われる決勝戦に駒を進めた。一方の鹿島は、すでにジョルジーニョ監督の退任が決定しているので、優勝して送り出したかったが、決勝進出はならず。今シーズンの戦いはこれで終了となった。
■ ACLへの想い天皇杯に関しては、如何にしてモチベーションを保った状態で試合に入ることができるかが重要になる。その点で言うと、「ジョルジーニョ監督の花道を飾りたい。」という思いのある鹿島もモチベーションは高かったと思うが、「J2降格となったが、2013年のACLに出場したい。」というG大阪の方がモチベーションでは上回っていた。
G大阪は降格となったので、主力や若手が流出する可能性もあるが、ACLの出場権を獲ることができれば、流出を最低限に抑えることができるだろう。そういう意味でも、今回の天皇杯は、クラブのこれからを考えても大事な大会と言えるが、これで決勝進出を決めて、柏と対戦することが決定した。
FWレアンドロが出場停止のため、誰を1トップで起用するのか?が注目されていたが、結局、FWパウリーニョではなくて、FW家長を1トップで起用してきた。「1トップの経験はない。」ということなので、人生初の1トップだったが、キープ力はあるので、足元にボールが入ると、しっかりとキープすることができていた。
明らかに2列目タイプのFW家長が1トップの位置に入るので、『ゼロトップ』とも表現できるが、この試合は、前に残っていることが多かったので、「ゼロトップ」と言うよりは、「1トップ」に近かったと思うが、能力の高い選手なので、こういう役割を与えられても、しっかりとこなすことができる。
■ 家長の1トップ日本でゼロトップというと、2010年の南アフリカW杯の岡田ジャパンが例に挙げられることが多いが、個人的には、岡田ジャパンのときのFW本田圭は、完全にセンターフォワードの仕事をしていたので、「ゼロトップ」と表現するのは違和感がある。
正真正銘のゼロトップだったのは2008年の広島で、FW佐藤寿が不在のときはフォワードを置かずに、「4-6-0」で戦うことあったが、FW家長の場合も、1トップに慣れてきて、もっと自由にプレーできるようになると、本当の「ゼロトップ」を披露できるのではないかと思う。
もちろん、FWレアンドロが戻ってきたら、ノーマルな1トップに戻るのは確実なので、次に、いつ、FW家長のゼロトップを見ることができるかは、全く分からない。むしろ、これが「最初で最後」に可能性もそれなりに高いと思うが、FW家長の1トップ(あるいはゼロトップ)というのは、ロマンを感じる戦略である。
■ ジョルジーニョ監督の最終戦一方の鹿島は、後半にペースを上げて攻め込んだが、単純なミスも多くて、リズムを壊してしまった。後半開始から20分あたりまでは、「いつ同点ゴールが決まってもおかしくない。」という雰囲気で、G大阪はほとんどボールをつなげなかったが、自分たちのミスが追い上げムードに水を差す形になった。
ジョルジーニョ監督の交代策も効果的ではなかった。後半開始からMFレナトを投入し、後半17分にFW興梠を入れて、さらには、後半33分にMF本田拓を送り出したが、どの交代も有効ではなかった。ジョルジーニョ監督は、ブラジルでも「有望な若手指導者の1人」と評価されているというが、今シーズンの戦いを見る限り、選手に交代に関しては、あまり上手ではなかった。
これで、鹿島は2012年シーズンが終了となった。ナビスコカップを制して6年連続でタイトルを獲得したところなどは、底力を感じさせるが、リーグ戦は11位という順位に終わった。これは2011年の1stステージと並んでクラブ史上ワーストの順位で、リーグ戦に関しては、不本意な成績だった。
ジョルジーニョ監督は家庭の事情もあって、今シーズン限りでチームを離れることになるが、「いい別れ方」ができたのではないかと思う。ブラジルでも評価の高い指導者なので、クラブは、年俸などで、相当に無理をしていたと思うが、11位という結果では、「コストパフォーマンスは良くなかった。」と評価せざる得ない。
ただ、ナビスコカップを獲得し、MF柴崎やFW大迫ら、若手の力を引き出した点は、高く評価できる。クラブのレジェンドなので、無下に扱うことはできず、「続投」となると、難しい事態になったと思うが、世代交代が進んでいないチームを引き継いで、「誰が監督になっても、難しい状態」でバトンタッチされたことを考慮すると、「まずまずだった。」と言えるのではないか。
1年前は、黄金世代が衰えてきて、明るい未来を想像しにくいチーム状態だったが、この1年間で、かなり持ち直した。来年以降、鹿島がリーグ戦で上位に入ってきたり、MF柴崎やFW大迫などが日本代表で活躍するようなことがあれば、ジョルジーニョ監督の遺産と言えるだろう。リーグ戦は11位に終わったが、「土台作りには成功した。」と言えるのではないか。
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