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緊迫するベネズエラ情勢―――アメリカはどう動くか?

Make Latin America Great Again? On the REAL chances of a US invasion of Venezuela

ミハイル・コーダ・レノックはRTの軍事コメンテーター。彼は退役大佐で、ロシア軍作戦参謀本部長でもあった。

RT Op-ed 2019年2月3日

(翻訳: 寺島メソッド翻訳グループ 2019年2月 10日)

<記事原文>(寺島先生推薦)https://www.rt.com/op-ed/450511-usa-venezuela-invasion-khodarenok/


© Reuters / Carlos Barria

ベネズエラの危機に関して、アメリカのトランプ大統領は、「軍事的選択」も可能性の中にあると語った。 だが、アメリカは本当に攻撃の準備を進めているのであろうか?

確かに、これくらいの規模の軍事侵略作戦を計画し、実行することはアメリカ軍にとって困難なことではない。 別にホンデュラスのソト・カノ空軍基地、キューバのグアンタナモ湾海軍基地、そしてサン・ホワン(プエルトリコ)のフォート・ブキャナン基地を使うまでもないかもしれない。

フロリダからベネズエラの首都カラカスまでたった2、000kmの距離しかないのだ。 こんな距離は現在のアメリカ軍にとって何の問題にもならない。 カリブ海に点在する上記の基地のどこかに一時着陸の必要性があったとしても。

アメリカ軍は、陸軍、海兵隊、海軍、空軍、そして沿岸警備隊から成る。 選択はどれでもかまわない。 何なら、いくつかの選択を組み合わせてもいい。 装備も、必要な機具、そして十分訓練された、経験豊富な兵士が揃っているのだから、作戦に何の支障もないだろう。 
米海軍輸送司令部は、必要な資財と兵站を目的地に輸送する十分すぎる能力を備えている。

だから、机上の話としても、きわめて現実的な話としても、アメリカ軍は一日もかけずにこの作戦を計画し、さらに数日もあれば、兵力を現地で待機、あるいは臨戦態勢に置くことは可能だろう。 結局、アメリカはベネズエラ軍を一週間以内に壊滅させることができると思う。

兵士一人ひとりの勇敢さはこの場合役に立たない。 ベネズエラの兵士たちが自分の祖国にどんな熱い思いを持っていても、だ。戦争の基本的な法則は間違いなく貫徹し、兵力を上回った方が勝利を収めるだけだ。 

言い換えれば、ベネズエラ軍がアメリカの侵略にほんとうに抵抗できる可能性はきわめて小さい。 それに、アメリカ政府はそういった侵略作戦をカリブ海域で何回か経験していることもある。
 

Reagan meeting with Congress on the invasion of Grenada in the Cabinet Room, 25 October 1983 © Wikipedia
レーガン、グレナダ侵攻で議会と会合、1983年10月25日、閣議室にて。

例を挙げよう。 1983年のグレナダ侵略だ。 コードネームは「押さえ切れない憤怒作戦」。 まず、東カリブ海諸国機構の声明があった。 グレナダで血のクーデターがあり、革命的指導者だったモーリス・ビショップが処刑されたことに対して出されたものだ。 レーガン政権は、すかさず軍事介入に乗り出した。 グレナダに在住するアメリカ人の安全確保のための軍事介入だと、その動機の一部を説明した。 侵略軍の構成は、①アメリカレインジャー部隊、②第82空挺師団パラシュート部隊、③アメリカ海兵隊、④陸軍デルタ・フォース、⑤アメリカ海軍特殊部隊、だった。 この作戦はアメリカが、ものの四日で勝利を収めた。

1989年にはパナマ侵略もあった。 この時も、グレナダ侵略の場合と同じように、アメリカは35、000人の在住アメリカ市民安全確保を理由に行動した。 さらに、「民主主義の回復」させることも理由に加えた。 1965年のドミニカ内戦への介入を挙げてもいい。 これは最初はアメリカ市民の救助活動として始まったが、次にそれは大規模な「パワー・パック作戦」に転じ、フランシスコ・カーマニョ政府放逐を目指した。 明らかにアメリカはラテンアメリカの国々の「民主主義回復」の豊富な経験を有している。

<アメリカは同じことは繰り返さない>
今回、アメリカがベネズエラで、直接的軍事介入に乗り出さないことは、ほぼ確実だ。 ベネズエラの上空が、ある日、第82空挺部隊のパラシュートや、第101空挺部隊のヘリコプターの白い斑点で覆われることはないだろうし、ベネズエラの砂浜が、アメリカ海外遠征軍兵士の軍靴で踏み潰されることも恐らくないだろう。 繰り返しになるが、軍事行動のきっかけとしてグレナダ侵略のような古典的シナリオが採用されることはまずあり得ない。

何よりも、そんなことをすればアメリカにとって最も望ましくない結果になる可能性がでてくる。 ベネズエラの民衆が結束して外国の介入に正面から対決することもあり得るからだ。

、その影響が世界に広がることはアメリカがどうしても避けたいことだ。 

さらに、ベネズエラ国土の複雑な地形だ。 軍事行動には実際向かない。 ジャングルを占領することは不可能だ。 アメリカ人はベトナム戦争でそのことは熟知している。 アメリカは絶対にあらゆる権謀術数をベネズエラに仕掛けることはあっても、爆撃や空対地ミサイル攻撃をすることは、まずない。

US Marine Corps LAV-25 in Panama © Wikipedia

しかし、ユーゴスラビアで重要なインフラを破壊するために、ミサイル攻撃をしたような作戦を、ベネズエラで繰り返す可能性はある。 

どう考えてもあり得るのは、アメリカがマドゥロ大統領を追い落とすために、種々の情報作戦を含んだ最新テクノロジーを駆使することだ。 その目的達成のために、アメリカはサイバー司令部と心理作戦グループの力を使える。 

これに関して、アメリカが二つの主要目的を目指して動く、と仮定することはあながち的外れでもない。 まず、マドゥロ体制の行政的、軍事的指揮系統を完全に寸断し、現政権の信頼性に致命的な損傷を与える。 同時に、反マドゥロ勢力に、情報、組織増強、そして資金などを含んだ必要な支援を行う。 この二つのことをアメリカは行おうとするだろう。

アメリカがベネズエラで真っ先にやろうとするのは、軍隊の高官たちを反対勢力の側に就かせ、その脅威を中和化することだ。 これは、もちろん、イラクでの経験が役に立つだろう。 その経験の一部をアメリカは現在の情勢に適用することになるだろう。

ベネズエラの将軍や将官たちは、恐らくすでにアメリカからの接触を受け、マドゥロを見捨てることと引き換えに、誘惑に富んだ申し出を呈示されているはずだ。

今後非常事態が起こった場合、アメリカは、レインジャー部隊、グリーン ベレー、海軍特殊部隊、特殊戦航空団などの特別部隊をベネズエラに派遣することは疑いない。それらは多くの任務を遂行するために使われ、協力しないベネズエラ・ボリバル共和国の指導者を抹殺する。


© Reuters / Miraflores Palace / Handout

アメリカが、ニコラス・マドゥロ大統領と対峙する怪しげなラテンアメリカ諸国と連携する可能性がある。 さしあたっての候補はコロンビアとブラジルだ。 この二国は共同して国境検問所を押さえることができるし、人道的支援船が近づけないよう、ベネズエラの一部を海上封鎖することができる。 

結局のところ、アメリカ軍がこれからやろうとすることは、言うことを聞かないマドゥロ大統領の基盤を弱体化させるために大規模なミサイル攻撃や爆撃をただやればいい、というのとは大分様相を異にしている。
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