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新橋演舞場「初春花形歌舞伎」 石川五右衛門を観た
土曜日は、新橋演舞場で「初春花形歌舞伎」夜の部に。昼夜とも同一演目、市川海老蔵が主役を張る「石川五右衛門」という公演。

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これは、漫画の原作者である樹林伸の新作歌舞伎。2009年に、今は亡き十二代市川團十郎と息子である海老蔵が親子役で共演した「石川五右衛門」から見所の多いところを抜き出し、更に石川五右衛門が中国に渡って大活躍するという後半部分を新たに付け加えたもの。振付・演出は藤間勘十郎。現代の作品だが、どこか古風な時代味のある作品に仕上がっている。

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本日の座席は花道に近い7列目。

まず五右衛門が登場する短い場があって暗転し、「石川五右衛門」と大きく書かれた浅葱幕が下りてくるのは、まるで映画のタイトルバックのよう。アニメ「ワンピース」の如き、壮大で荒唐無稽なストーリー。もともと歌舞伎は江戸時代の、TVと映画を合わせたような一大エンターテインメントであったから、逆に言うとこんな壮大な物語こそ歌舞伎にふさわしいのかもしれない。

現代の新作で演出に何の縛りもないだけに、舞い散る桜吹雪、印象的なスッポンからの登場、舞い踊る巨大な龍、宙乗り、火薬、立ち回り、大掛かりな舞台装置の転換、客席を練り歩く俳優連などなど、これでもかとばかり歌舞伎のケレン味を一杯に詰め込んだ豪華絢爛たる舞台。

新作だけに、台詞や長唄を聞き取るのに不便無いのではとイヤホン・ガイドは借りなかったが、これは正解で、若干の古い言い回しの使用はあるものの聞き取りに不便無し。途中、義太夫風でノリ地のような演出があるのだが、これも聞き取りに不便は無い。

海老蔵は座長として出ずっぱりの大活躍だが、石川五右衛門の大きさを感じさせる印象的な出来。既に「形」としてやるべき事と台詞が練り上げられている時代物よりも、完全な新作の方が、台詞が上ずったり、心ここにあらずという所なく、伸び伸びと演技している気がする。市川宗家の芸として歌舞伎十八番は継承してゆかねばならないだろうが、将来的には先代猿之助のような「海老蔵版スーパー歌舞伎」を目指して行くのが合っている気もする。

市川右近は、白塗りの二枚目には似合わないが、この秀吉役は、時代がかった大きい演技が風格もあり、なかなかよい。市川笑三郎が演じる女将軍櫻嵐女も艶やかで印象的に成立している。加藤段蔵/悪龍の精の二役を演じる市川猿弥も鮮やか。茶々を演じる孝太郎のしどころとしては、ひとつには舞踊ということになるのだが、歌舞伎狂言全体の中で若干浮いた感がするのだが、これはまあ舞踊の巧拙が分からないこちらの責任でもある。

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35分の幕間、新橋演舞場では初めてインターネットで食事予約をしてみた。3600円のちらし寿司なのだが、これはなかなか豪華で味もよく感心した。

新橋演舞場の打出しは8時。早いのは結構。ただ、日中を巡る壮大な物語を生き生きと語るには、もう少し時間が必要だったかもしれない。切りでは中国を征した五右衛門が「絶景かな」のキメ台詞。舞台がせり上がりつつ前に動き、高所から劇場全体を見下ろす形で海老蔵が全力で観客を隅々まで市川宗家のお家芸で「睨む」、実に目出度いラスト。

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