火曜の夜は「新ばし笹田」。予約したのは前の週だが、前日の夜にたまたま通りかかったら店が閉まっていた。定休日は日曜のはずだったので、どうしたかと思い、入店早々に笹田氏に確認すると、日曜から金沢に蟹の勉強に行っており月曜はお休みしたのだと。天候は悪く移動は大変だったが、今年は寒さが来るのが早く、蟹の旨味もどんどん乗ってくるのだとか。
入り口にお祝いの花が何個か置かれているので尋ねたら、12月1日がこの場所に引っ越してから3周年で、そのお祝いだとか。そうか、すっかり忘れていた。笹田氏も、「実は私もすっかり忘れてたんですが、お客さんに思い出させてもらいました」と笑う。店の開店記念を忘れない、粋なお客さんがいるもんですな。
お酒は磯自慢純米吟醸。いつもの如く、ふくよかな米の旨味がまず口中に広がり、すっと爽やかな後口に。
最初に供されたのは、小さな器で供される白子の茶碗蒸し。温かいものがうれしい季節。実に濃厚な旨味。供される寸前に時間を見てきちんと蒸し上げられる。
香箱ガニは、身肉がきちんと取り出され、内子と外子が鮮やかに小さな甲羅に詰められて、まるで宝石箱の如し。オレンジの内子もプチプチした口当たりの外子も蟹の旨さが詰まっている。さすがに資源問題もあり、今シーズンは年内で禁漁ではないかと言うのだが。今では都内でもずいぶん供されるようになったからなあ。
ナガス鯨の尾の身。今回の個体は割とあっさりしているとのことだが、それでも旨味十分。臭みはまったく感じない。マグロと違って薄い二三切れで十分に満足できるというのは、やはり身肉に魚よりも獣肉としての濃いコクがあるからだろうか。尾の身も、すっかりこの店の名物に。
壬生菜と油揚げの煮物もここの定番。どこの家庭でも作れる惣菜ではあるが、スッキリと上品な出汁で、壬生菜と油揚げは別々に火を通し、合わせた後でこれまた直前に炙った胡麻を散らす。プロの技の高みを感じる一品。
お造りは、淡路の鯛と銚子のブリ。淡路は岩屋の港だと言ってたか。現地に行って漁師ときちんとルートを築いた仲卸が引いてくるのだとか。いつもながら上品な脂の旨味。ブリも脂は濃厚だがサラリと舌の上で旨味に変わって溶けて行く。天然の魚だけが持つ旨味だ。
お椀は甘鯛に小ぶりの椎茸を添える。ふんわりとした出汁はむしろ薄く感じるほどだが、甘鯛のゼラチン質と身肉の脂、そして旨味が溶け崩れて重なり、陶然とした旨味に。一瞬の柚子の香り。椎茸は炙ってあるのだが上質で、香りと旨味を引き出す細心な焼き具合にも感心する。酒を飲むのも忘れて一新に食べ終えると、口中にはくどい味は何ひとつ残らない。邯鄲の夢のような一椀。
サワラのつけ焼きは、香ばしい皮目の焼き上がりに、キシキシとした身肉に潜む旨味が絡んでこれまた結構。自家製のカラスミが添えられているのだが、これまた素晴らしいもの。この店のカラスミは甘塩であまり日持ちしない。カラスミ保存のためだけに零下60度出る冷蔵庫を買ったのだとか。真空パックにしてお土産でも売っている。年末に一本持って帰るかと注文すると、冷蔵庫から幾つか出してきて、色が悪いのは苦味があってダメです、この大きいのが素晴らしいですよと、選んでもらって、大きいのを一本予約して取っておいてもらうことに。
煮物は、これまたここの冬の定番。京野菜のおでん。聖護院大根、京人参、海老芋、自家製すり身揚げ、鶏皮、うずら玉子。全部一緒に鍋に入れて炊いた訳ではない。うずら玉子は絶妙の半生。鶏皮は火を入れて旨味を凝縮している。自家製の魚すり身揚げも手が込んでいる。大根が含んだ出汁の旨味とコックリ炊きあがった芋のネットリ感も比類が無い。
ここで〆のご飯に。タイミングを見計らって炊飯土釜で立ち上げた、艶々の白御飯。赤出しと、ちりめん山椒、自家製のお新香が添えられる。お代わりはお焦げを添えて。最後は香り高い煎茶に、これも定番の冷製の白玉ぜんざい。
気を衒う高価な食材をこれでもかと使う創作和食ではない。供されるプレゼンテーションも派手ではなく、組み立てもごくありふれた料理に思えるが、よい素材を使い、真面目な和食の料理人がしっかり手をかけて調理すると、ここまでの高みに達するのかと感心する一品ばかり。若干値段が上がったようだが、決して高いとは思わない。デフレ脱却にはよいんじゃないかな(笑)
勘定を済ませ、笹田夫妻の見送りを受けて満ち足りた気分で帰路に。笹田氏は年末、出身店のおせち作りを手伝いに行き最後は徹夜作業。いつもながら大変ですな(笑) 新年は6日から営業予定とか。
入り口にお祝いの花が何個か置かれているので尋ねたら、12月1日がこの場所に引っ越してから3周年で、そのお祝いだとか。そうか、すっかり忘れていた。笹田氏も、「実は私もすっかり忘れてたんですが、お客さんに思い出させてもらいました」と笑う。店の開店記念を忘れない、粋なお客さんがいるもんですな。
お酒は磯自慢純米吟醸。いつもの如く、ふくよかな米の旨味がまず口中に広がり、すっと爽やかな後口に。
最初に供されたのは、小さな器で供される白子の茶碗蒸し。温かいものがうれしい季節。実に濃厚な旨味。供される寸前に時間を見てきちんと蒸し上げられる。
香箱ガニは、身肉がきちんと取り出され、内子と外子が鮮やかに小さな甲羅に詰められて、まるで宝石箱の如し。オレンジの内子もプチプチした口当たりの外子も蟹の旨さが詰まっている。さすがに資源問題もあり、今シーズンは年内で禁漁ではないかと言うのだが。今では都内でもずいぶん供されるようになったからなあ。
ナガス鯨の尾の身。今回の個体は割とあっさりしているとのことだが、それでも旨味十分。臭みはまったく感じない。マグロと違って薄い二三切れで十分に満足できるというのは、やはり身肉に魚よりも獣肉としての濃いコクがあるからだろうか。尾の身も、すっかりこの店の名物に。
壬生菜と油揚げの煮物もここの定番。どこの家庭でも作れる惣菜ではあるが、スッキリと上品な出汁で、壬生菜と油揚げは別々に火を通し、合わせた後でこれまた直前に炙った胡麻を散らす。プロの技の高みを感じる一品。
お造りは、淡路の鯛と銚子のブリ。淡路は岩屋の港だと言ってたか。現地に行って漁師ときちんとルートを築いた仲卸が引いてくるのだとか。いつもながら上品な脂の旨味。ブリも脂は濃厚だがサラリと舌の上で旨味に変わって溶けて行く。天然の魚だけが持つ旨味だ。
お椀は甘鯛に小ぶりの椎茸を添える。ふんわりとした出汁はむしろ薄く感じるほどだが、甘鯛のゼラチン質と身肉の脂、そして旨味が溶け崩れて重なり、陶然とした旨味に。一瞬の柚子の香り。椎茸は炙ってあるのだが上質で、香りと旨味を引き出す細心な焼き具合にも感心する。酒を飲むのも忘れて一新に食べ終えると、口中にはくどい味は何ひとつ残らない。邯鄲の夢のような一椀。
サワラのつけ焼きは、香ばしい皮目の焼き上がりに、キシキシとした身肉に潜む旨味が絡んでこれまた結構。自家製のカラスミが添えられているのだが、これまた素晴らしいもの。この店のカラスミは甘塩であまり日持ちしない。カラスミ保存のためだけに零下60度出る冷蔵庫を買ったのだとか。真空パックにしてお土産でも売っている。年末に一本持って帰るかと注文すると、冷蔵庫から幾つか出してきて、色が悪いのは苦味があってダメです、この大きいのが素晴らしいですよと、選んでもらって、大きいのを一本予約して取っておいてもらうことに。
煮物は、これまたここの冬の定番。京野菜のおでん。聖護院大根、京人参、海老芋、自家製すり身揚げ、鶏皮、うずら玉子。全部一緒に鍋に入れて炊いた訳ではない。うずら玉子は絶妙の半生。鶏皮は火を入れて旨味を凝縮している。自家製の魚すり身揚げも手が込んでいる。大根が含んだ出汁の旨味とコックリ炊きあがった芋のネットリ感も比類が無い。
ここで〆のご飯に。タイミングを見計らって炊飯土釜で立ち上げた、艶々の白御飯。赤出しと、ちりめん山椒、自家製のお新香が添えられる。お代わりはお焦げを添えて。最後は香り高い煎茶に、これも定番の冷製の白玉ぜんざい。
気を衒う高価な食材をこれでもかと使う創作和食ではない。供されるプレゼンテーションも派手ではなく、組み立てもごくありふれた料理に思えるが、よい素材を使い、真面目な和食の料理人がしっかり手をかけて調理すると、ここまでの高みに達するのかと感心する一品ばかり。若干値段が上がったようだが、決して高いとは思わない。デフレ脱却にはよいんじゃないかな(笑)
勘定を済ませ、笹田夫妻の見送りを受けて満ち足りた気分で帰路に。笹田氏は年末、出身店のおせち作りを手伝いに行き最後は徹夜作業。いつもながら大変ですな(笑) 新年は6日から営業予定とか。
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