■ 第10節J2の第10節。2勝4敗3分けで18位とスタートでつまづいた横浜FCと、7勝1敗1分けで首位を走るヴィッセル神戸がニッパツ三ツ沢球技場で対戦した。9節を終えた時点で、首位の神戸が勝ち点「22」で、2位のG大阪は勝ち点「17」なので、勝ち点「5」の差がある。2012年は4位で、今シーズンはJ1昇格を狙う横浜FCにとっては、これ以上離されると苦しくなるので、勝利の必要な試合と言える。
ホームの横浜FCは「4-2-2-2」。GK柴崎。DF野上、ペ・スンジン、森下、森本。MF佐藤謙、松下、武岡、小野瀬。FW青木翔、大久保。桐蔭横浜大出身でルーキーのFW青木翔はプロ2度目の先発出場となった。190センチのFW大久保は2試合連続ゴール中と調子を上げてきている。46歳になったFW三浦知はベンチスタートとなった。1節と8節で途中出場を果たしている。
対するアウェーの神戸は「4-2-2-2」。GK山本海。DF奥井、イ・グァンソン、岩波、相馬。MF田中英、大屋、杉浦、マジーニョ。FW田代、ポポ。好調の攻撃陣は、FWポポが4ゴール、FW田代とMFマジーニョが3ゴールを挙げている。同じく3ゴールを挙げているMF小川はベンチ外となった。ユース出身で18歳のDF岩波は開幕から10試合連続スタメンとなった。
■ ベテランの吉田が決勝ゴール試合の前半はどちらかというとアウェーの神戸ペースで進んでいく。ブラジル人のFWポポとMFマジーニョを中心にした攻撃でチャンスを作っていく。一方の横浜FCは、攻撃の起点となることが期待される190センチのFW大久保のところになかなかボールが入らなくて、形を作れない。前半は神戸が優勢のまま、0対0で終了する。
試合が動いたのは後半5分で、MF杉浦のパスを受けたFWポポが個人技で相手DFをかわしてから左足で落ち着いて決めて神戸が先制に成功する。浦和から戻ってきたFWポポは今シーズン5ゴール目となった。しかし、横浜FCは後半29分に波状攻撃を見せて、最後は、右サイドのDF野上の精度の高いクロスをゴール前に上がっていたDFペ・スンジンがヘディングで合わせて1対1の同点に追い付く。
追いつかれた神戸だったが、後半38分に左サイドのDF相馬のクロスを途中出場のFW吉田孝が合わせて2対1と勝ち越しに成功する。三ツ沢球技場で育った36歳のベテランのFW吉田孝は思い出のスタジアムで今シーズンの2ゴール目を記録した。結局、試合は2対1でアウェーの神戸が勝利して8勝目。2位のG大阪も勝利したので、首位の神戸と2位のG大阪との差は「5」のままで変わらなかった。
■ 出遅れた横浜FC昇格候補の1つと言われた横浜FCは、10試合を終えて2勝5敗3分けと出遅れてしまった。昨年もスタートで躓いたので、同じような感じになっているが、今年に関しては、J1レベルの総合力を持つ神戸とG大阪がライバルになるので、取り戻すのは、かなり大変である。この敗戦で首位の神戸との差は「16」となったが、攻守とも安定している神戸が急失速することが考えにくいので、大きな差と言える。
オフに何人かの新戦力が加わって、ボランチのMF松下や最終ラインのDF森下がレギュラーに定着しているが、それ以外は、それほど大きくは変わっていないので、「チーム力を維持している。」と思われたが、予想以上に苦戦している。絶対的なストライカーはいないので、この点は泣きどころと言えるが、チャンスメークできる選手は沢山いるので、これほど苦労するとは想像できなかった。
苦しい中で、山口監督は若手を積極的に起用しているが、右SBで起用されている大卒ルーキーのDF野上が同点ゴールをアシストを記録した。オフに熊本から実績のあるDF市村を獲得したが、開幕からずっとスタメンで起用されており、思い切りのいいプレーを続けている。「主戦場はボランチ」と紹介されているが、右SBでも違和感なくプレーしており、横浜FCの中では、数少ないポジティブな話題である。
一方で、スタメンに抜擢された大卒ルーキーのFW青木翔とリオ世代のMF小野瀬は、ほとんど見せ場を作れなかった。事前の情報では、「FW青木翔がサイドハーフで、MF小野瀬がフォワードに入る。」と言われていたが、実際にはその反対で、FW青木翔がフォワードに入って、MF小野瀬がサイドに回ったが、どちらもチャンスに絡むことは出来なかった。競争は激しいので、早く結果が欲しいところである。
■ ベテランが決勝弾!!!対する神戸は、同点に追いつかれる直前にFW田代が決定的なチャンスを迎えたが、決められなかった。ここで確実に決めていれば、苦しむことなく、勝ち点「3」を得ることが出来たと思うが、GKとの1対1を防がれて、その数分後にDFペ・スンジンに同点ゴールを許した。ちょっと嫌な流れになったが、途中出場のベテランのFW吉田孝が値千金のヘディングシュートを決めて勝利を勝ち取った。
FW吉田孝は、長らく横浜フリューゲルスで活躍した選手なので、思い出に残るゴールになったと思われるが、こういった難しい展開になったとき、新たなヒーローが出てくるところを見ると、「チームがうまく回っている。」と感じる。横浜FCのCBのDFペ・スンジンとDF森下の間に入って、身長の低いDF森下との競り合いに持ち込むというクレバーさも光った。
その他の選手では、FWポポとMFマジーニョという助っ人コンビの活躍も目立ったが、川崎Fからレンタル移籍中のMF杉浦が潤滑油になって攻撃にうまく絡んでいる。右サイドハーフに入っているが、助っ人コンビとの関係も良くて、後半のチャンスの多くにMF杉浦が絡んでいる。川崎Fでは出番がほとんどなかったが、愛媛FCでは中心として頑張った選手で、新天地の神戸では貴重な戦力になっている。
■ レギュラーを獲得した岩波拓也注目の大型CBのDF岩波は、この日もスタメンフル出場を果たして、開幕から10試合連続フル出場となった。チーム状態もいいので、それほど相手に攻め込まれる展開にはならないので、「大活躍」という感じではないが、正確なフィードと冷静なプレーが光っている。トータルで900分プレーして、警告を一度も受けていないところも評価できる。
神戸は、オフにDF高木和とDF伊野波が移籍して、さらには、守備の要であるDF北本が病気で戦列を離れているので、CBが手薄になっている。開幕後、C大阪からDF金聖基を獲得するなど、台所事情が苦しくなっているが、DF岩波はチャンスを生かして、レギュラーの座を固めつつある。高卒1年目からCBのポジションでレギュラーを獲得する選手はほとんどいないが、落ち着いたプレーを見せている。
この日は、加入2年目のDFイ・グァンソンとコンビを組んだが、大きな問題はなかった。韓国出身で193センチのDFイ・グァンソン選手は非常に荒削りな選手なので、余計にそのように感じるが、DF岩波は18歳とは思えないほど冷静にプレーしている。高さや強さも魅力であるが、何よりもCBの選手に必要な冷静さを備えているところが、この選手の一番の武器である。
■ 史上最高レベルの逸材すでに何度も記述しているが、「将来のフル代表のDFラインの中心」になることは間違いない選手なので、早い時期にフル代表に呼ばれて、いい経験を積んでほしいと思う。もちろん、今、選ばれている選手たちと比べると、総合力や経験値で劣っているのは間違いないが、高さとフィード力は代表レベルである。神戸でもポジションを確保しており、いつフル代表に呼ばれても驚きはない。
真面目な選手なので、フル代表に呼ばれたからといって、浮かれることは無いと思うが、気になるのは、プレースタイルがDF吉田麻也と比較的、似ているところである。そのため、「この2人でCBを組ませることが本当に有益なのか?」という点は、2018年のロシアW杯までの4年間で、飽きるほど議論されると思うが、CBとしては日本サッカー史上最高級の逸材なので、順調に成長してほしいところである。
DF岩波はヴィッセル神戸のU-18出身で、高校3年生だった2012年もJ1で2試合に出場しているが、10年ほど前と比べると、超逸材がユース育ちである確率が格段に高くなっている。高校あるいは大学のチームからプロの世界に進む場合、超逸材はJ1のビッグクラブを入団先に選択することが多くて、人材が偏ってしまったが、ユース育ちである割合が高くなって、そういうことがなくなりつつある。
もちろん、高校や大学からJ1のビッグクラブに進んだ超逸材たちが、入団先で早い段階からレギュラーポジションを確保できれば問題はないが、ライバルは多いので、そんな簡単に出場機会を得ることはできない。そのため、「期待されたほど成長できなかった。」という元・超逸材も少なくないが、近年はユース出身者が多くなって、そのままトップチームに上がるので、早い段階からチャンスを得るケースが増えている。これも、近年の日本サッカーの躍進の助けになっていると考えられる。
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