■ オシム門下生対決16位の大宮アルディージャとの勝ち点差がわずかに「2」と迫られている15位のサンフレッチェ広島が、ホームのビッグアーチでジェフ千葉と対戦。広島は、現在5連敗中。ここ3試合ゴールがない。GK下田。DF森崎和・戸田・槙野。MF青山・駒野・服部・森崎浩・柏木。ウェズレイと佐藤の2トップ。
対する千葉は、6連勝の後、前節の浦和戦で2対4と敗れたが、後半の内容は悪くはなく、ムードはいい。しかしながら、この試合は、MF佐藤とMF水野とGK立石が怪我で欠場。下村も出場停止と苦しい布陣である。GK岡本。DF斉藤・水本・中島。MF工藤・伊藤・山岸・楽山・羽生。FW巻とレイナウド。
■ ロスタイムの悲劇試合は両チームともにDFラインから丹念にパスをつないで攻め上がるスタイルで、一進一退の攻防で進む。
先制は広島。前半31分に、ロングボールの処理を誤った千葉のGK岡本のミスをついてFW佐藤寿人が無人のゴールに流し込んでチーム3試合ぶりのゴールを挙げる。佐藤自身は、12試合ぶりのゴールとなった。
後半に入ると、千葉は、前半にまったく存在感を発揮できていなかったFW巻に代えてFW新居を投入。新居のポストプレーから、チャンスをつくるようになる。しかしながら、広島が追加点。後半20分に、FWウェズレイのスルーパスを受けたMF駒野がGKと1対1になると、冷静に決めて2対0となった。
これで、勝利にぐっと近づいた広島だったが、試合終了間際に悪夢が待っていた。
千葉は、ロスタイム直前にFW新居のゴールで1点差に迫ると、さらに、MF山岸のゴールで同点に追いつく。
広島は、ほぼ手中におさめていたはずの勝ち点3を落とし、横浜FCに勝利した大宮に抜かれて16位に転落。非常事態を迎えた。
■ 逃した勝ち点広島は、サッカーの内容自体は悪くなかっただけに、痛い引き分けとなった。1点を先制した後は千葉に攻め込まれたが、MF羽生が2度、FWレイナウドが1度の決定機を外すなど、運も味方につけていただけに、あっという間に失った2失点悔やまれる。
2点をリードした後に、極端に守備的になったわけでなく、時間の使い方も特に問題はなかったが、一瞬の隙を突かれて連続失点を喫した。
残りは4試合で、清水(A)、神戸(H)、川崎(A)、G大阪(H)と難敵がそろっており、大分(H)、甲府(A)、FC東京(A)、川崎(H)というカードが残っている大宮よりも、不利であるように思われる。
力のある選手はそろっており、けが人が続出しているわけでもないが、ムードがよくない。勝ちきれない雰囲気をいっそうさせるためには、ペトロビッチ監督を解任するのも、選択肢の1つである。
■ いくつかの収穫広島としては、内容的には見るべきものがあった。
特に中盤の連携はスムーズで、青山・柏木・森崎浩というこれまでやってきたメンバーに戻した効果は発揮された。柏木が縦横無尽に動いて、青山もツボを抑えた守備を見せた。
2トップでは、佐藤寿人が久々にゴールを挙げたことも収穫だった。ここ数年では、おそらく最長のスランプに陥っていた佐藤だけに、結果が残せたのは大きい。
■ メンバーが変わっても質は落ちなかったジェフ千葉は、MF水野・MF下村・MF佐藤を欠く苦しい布陣だったが、チャンスの数も多く、試合運びも悪くなかった。絶望的に決定力を欠いたために苦戦を強いられたが、何とかロスタイムに2点を返して追いついたのは見事だった。
驚くのは、中盤の3人を欠きながらも、本来のパス回しが出来ていたことである。MF工藤はともかく、MF楽山・MF伊藤という選手は、これまではあまり出場機会もなく、グループからは外れていた選手である。アマル・オシム監督の戦術が、チーム全体に浸透している成果といえるだろう。
スムーズにボールが運べる要因の1つは、DF中島の存在である。前節の浦和戦での山岸の幻のゴールシーンでのプレーが典型だが、相手の2トップが前線に残っていてカウンターで2対2の状況を作られるリスクを冒してでも、効果的にボランチの位置まで攻めあがって、ボール回しに参加してくれるので、千葉はボール回しが滞ることがない。
ストヤノフの退団で大ピンチを迎えた千葉だったが、結局、中島が定着し、ストヤノフを上回るプレーを見せていることが、好調の要因である。
■ 巻の不振千葉で、後半開始からFW巻に代えてFW新居を投入し、攻勢ムードを作った。新居は追撃ゴールを決めるなど存在感を発揮したが、一方の巻は、出来がは悪く積極性も足りなかった。
ボールタッチ数も少なく、広島のDFには高さが欠けていることもあって高さ勝負に持ち込むことができれば優位に立つことができたと思われたが、まったく、その高さが生かされることもなかった。
ここ最近、ベンチに控えるFW新居やFW青木のプレー内容がいいだけに、巻といえどもポジションは安泰ではない。
今シーズンの巻については、千葉でのプレーより、むしろ、日本代表でのプレーのほうが生き生きと貢献度が高いプレーを見せているように思われる。おそらく、代表では、ゴールは二の次で、とにかく泥臭く献身的な役割に徹することができるのに対して、千葉では、当然のことながら、ゴールを含めたそれ以上のプレーを求められるからであろうか。
■ 姉崎のマラドーナ千葉はMF工藤が2アシストの活躍。ともに、見事なラストパスだった。
この試合はボランチでプレーしたが、羽生が欠場の時にはトップ下に入ることも多く、中盤であれば、どのポジションでもプレーが可能。高いユーティリティー性を発揮する。千葉の中盤は、羽生・山岸・水野・下村・佐藤と日本代表クラスがそろっているが、6番手の工藤の存在は大きく、誰かが欠場しても致命傷にはならない。
マラドーナの異名通りに、ドリブルに見るべきところがあるが、運動量も豊富で、守備意識も低くない。特に下がり目の位置に入ると、巧みなキープから中盤にタメを作ることができる。下村や佐藤とは違ったプレースタイルでチームに貢献することができる貴重な存在である。
サンフレッチェ広島:採点GK:下田 6.0
→ ファインセーブで失点を防いだが・・・。
DF:森崎和 5.5
→ 守備で破綻はなかった。
DF:戸田 5.0
→ 致命的なミスがあった。
DF:槙野 5.5
→ 積極的な攻撃参加も。
MF:青山 5.5
→ 守備で貢献。
MF:森崎浩 5.5
→ 後半はやや存在感が薄くなった。
MF:柏木 6.0
→ 前半はがんばったが、後半はスタミナ切れ。
MF:駒野 6.0
→ 落ち着いて追加点をマーク。
MF:服部 5.5
→ ゴール前でチャンスに絡む。
FW:ウェズレイ 5.5
→ 見事なアシスト。
FW:佐藤 6.0
→ 待望のゴールも怪我のため交代。
サブ:平繁 5.5
→ サポートが薄く、チャンスにつなげられなかった。
サブ:ストヤノフ 5.5
→ 闘志は見せたが、逃げ切りに貢献できず。
サブ:吉弘 採点なし。
→ 時間稼ぎ要因。
ジェフ千葉:採点GK:岡本 5.0
→ 致命的なミスで失点。
DF:斉藤 5.5
→ 岡本と衝突して失点の原因となった。
DF:中島 6.0
→ 攻撃参加も効果的。
DF:水本 6.0
→ ボール捌きは安定。守備も問題なし。
MF:伊藤 5.5
→ 初スタメンも問題なし。
MF:工藤 7.0
→ 見事な2アシスト。MOM。
MF:山岸 6.5
→ やや駒野に劣勢も、ロスタイムに同点弾。
MF:楽山 5.5
→ 右サイドでタメは作った。
MF:羽生 5.0
→ 動きは悪くないが、2度の大チャンスを外す。
FW:レイナウド 5.5
→ リズムは作ったが、大チャンスを外す。
FW:巻 4.5
→ ほとんどプレーに関与できず。前半のみで交代。
サブ:新居 6.0
→ 追撃のゴール。
サブ:青木 5.5
→ 左サイドで起点になったが、怖さは発揮できず。
サブ:米倉 採点なし。
→ 途中出場も積極的にプレー。
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