■ 抜きんでたフロント力を持つ鹿島アントラーズサッカークラブにおいて方向性を決めるのはフロントである。監督選びも、選手獲得も、環境作りも、全てはフロントが絡んでくる。チーム作りに関しては「作り上げるのには相当な時間がかかるが、壊すのは簡単」と言われることが多くてフロントのちょっとしたミスが原因でチームが壊れてしまった例はJリーグにも多い。それだけ重要なポジションであり「フロント力」と「チーム力」は比例することが多い。
Jリーグで「フロントが優秀なクラブ」の筆頭に挙げられるのはやはり鹿島アントラーズになる。このクラブは方針がぶれることがほとんどない。短期的な視野で物事を考えることもできるし、長期的な視野でクラブの方向性を考えることもできる。「ジーコスピリット」はフロントにも浸透しており、『「4-2-2-2」で左右のサイドバックの攻撃参加を重視するスタイル』が基本。監督が代わっても根幹は変わらない。
Jリーグで獲得したタイトル数もずば抜けている。もちろん、全ての仕事を完ぺきにこなせるわけではないのでいくつかは問題点もあると思うがトータルで考えると鹿島のフロント力はJリーグの53クラブの中で頭1つ抜け出ていると言える。鹿島は高卒や大卒の目玉クラスの選手を獲得できることが多いがクラブとしての方向性がしっかりしているので親や(高校や大学の)監督は安心して選手を預けることができるだろう。
■ あっという間にJ1の強豪クラブになった川崎フロンターレ2005年にJ1再昇格を果たしてからあっという間にJ1屈指の強豪クラブになった川崎フロンターレもフロントがしっかりしているクラブと言える。当然、迷走した時期もあるが再昇格後は攻撃的なサッカーを貫いている。サッカー自体が魅力的であることが大きな助けになっているのは間違いないが、多くの試合で等々力競技場を満員に近い観衆で埋めることが出来ているのはフロントの頑張りによるところが大きい。
「堅実」というイメージのある鹿島に対して、川崎Fのフロントは遊び心もあるように感じられる。川崎Fのホームゲームというと相撲部屋とのコラボなどユニークな催し物が人気を集めているが、クラブに流れる空気も鹿島などとはまたちょっと違っているように感じられる。風間監督になってから、ほぼ毎年、上位の成績を残しているが、Jリーグでは実績のなかった風間監督を招聘したことは最大のヒットの1つと言える。
王者の広島もフロント力には定評のあるクラブである。スタジアム問題が泥沼化しつつある点は気になるが、ペトロヴィッチ監督が築き上げたスタイルをクラブ全体に取り入れてユースチームも同じようなサッカーで結果を残しているところあたりはしっかりとした方向性を示したフロントの頑張りによるところが大きい。補強の成功率の高さは目を見張るものがあって、自クラブに合った選手を連れてくる眼力も見事。