■ セカンドレグナビスコカップの準々決勝第2戦。
ホームの第1戦で、FC東京に0対1で敗れた横浜Fマリノスが、アウェーの味の素スタジアムでFC東京と対戦。
FC東京は日本代表のMF今野とMF伊野波を欠き、<4-3-3>のシステム。徳永・茂庭・藤山・金沢の4バックで、福西・梶山・浅利の中盤。ルーカス・リチェーリ・鈴木の3トップ。
対する横浜FMも日本代表のDF中澤を欠き、MF河合も出場停止。<4-4-2>のシステムで、田中・栗原・松田・小宮山の4バックで、那須・吉田・エウチーニョ・山瀬功治の中盤で、大島と坂田の2トップ。
■ 攻撃的な横浜FMホームで敗れていることもあって、なんとしてもゴールを奪わなければならない横浜FMは、前半19分、右からのクロスをFW大島が落とし、走りこんだMF山瀬功治が決めて先制。大島の鮮やかなボールタッチからの見事な落としが、ゴールにつながった。
これで、2試合合計でイーブンとなった横浜FMは、後半開始からMFエウチーニョに代えてFWマルケスを投入し再加速する。後半3分、右サイドに流れたMF山瀬のクロスをFW大島が頭で合わせて追加点。
2試合合計でリードを許したFC東京は、引き分け以上が勝ち抜くための絶対条件となったため、無理をして攻めに出るが、MF福西やFW赤嶺の決定的なシュートを、GK榎本にセーブされて、ゴールを奪えない。
横浜FMは、後半23分に、FW大島のこの試合2点目のゴールで3点差とすると、後半27分にも、FWマルケスのゴールで追加点。決定的な4点差をつけた。その後、後半33分と42分にFC東京に2ゴールを許すが、大勢には影響はなく、2試合合計で横浜FMが4対3で上回って、準決勝進出を決めた。
■ 力強さが際立つ山瀬この試合のヒーローは、1ゴール1アシストのMF山瀬と、2ゴール2アシストのFW大島。
台風の影響で、ピッチ上は、試合開始から絶え間なく雨が降り注ぐ厳しい環境であったが、山瀬の力強いプレーに、ピッチコンディションの悪さは、何ら悪影響しなかった。
とにかく、前を向いたときの強さとトップスピードに乗ったときでもプレーが乱れない正確さは、Jリーガーの中では、際立って優れている。また、名門チームの10番を背負うプレッシャーを感じながらも、そのプレッシャーをいい方向にコントロールできていて、開幕から、責任感のあるプレーでチームをリードしている。
■ ポストプレーが光る大島4得点すべてに絡んだ、FW大島は、懐の深さを生かしたポストプレーが光った。地味な存在だが、ポストプレーヤーとしては、Jリーグの中でも、有数である。
スピードと運動量のあるFW坂田との2トップの相性もよく、元日本代表の鈴木隆行を、完全に構想外に追いやった。
■ エウチーニョの使いどころ横浜FMは、スタメンで新戦力のブラジル人MFエウチーニョを起用。本来、このポジションのレギュラーはレフティーのMF山瀬幸宏であるが、エウチーニョは、山瀬幸宏よりも、テクニックに優れており、アクセントをつけられる存在であるように感じられた。
この試合のエウチーニョは、雨のピッチに苦しんで、時折、ハッとさせるシーンを作ったものの、全体的にはいまひとつの出来であったが、ピッチコンディションが正常なときであれば、高い技術を生かせるだけのポテンシャルをもった選手のようである。
■ マルケスの使いどころ横浜FMの目指すプレッシングサッカーを実現させるためには、どうしても、マルケスをベンチスタートとするしかない状況ではあるが、やはり、マルケスの技術の高さは魅力であり、使いどころを見極めてあげれば、貴重な戦力となるのは間違いない。
2トップがすばらしい連携を見せているだけに、大島&坂田のコンビを崩したくない。とすると、この試合のように、左サイドのMFでマルケスを起用するのが、現実的である。山瀬幸宏・エウチーニョ・マルケスというタイプの異なる3つのカードを持つ、早野監督の起用法は、今後、注目したい部分である。
■ 決定力不足に泣いたFC東京FC東京は、決定力不足に泣いた。前半早々に、FWルーカスがDFラインの裏に抜け出してGKと1対1になったシーンが決まっていれば、試合の行方は大きく変わっていたと思われるが、残念ながら、2試合合計で突き放すチャンスを逃してしまった。
決定機を作ったとしても、すべてがゴールに結びつくわけではないが、決定機を「決める」・「決めない」では、その後の展開が、大きく変わってくる。決定機を外すことで、チームは、より難しい状況に追い込まれる。
ただ、決定力不足だけが、敗因ではない。2点差をつけられた段階で、後半6分にFW赤嶺を投入したことで2トップに変更し、赤嶺は決定的なシーンに何度も顔を出すなど、効果的なプレーを見せた。この試合でも、1トップをつとめたFWルーカスが相手の徹底したマークに苦しんでいただけに、試合開始から2トップという選択をしていたら、という気がしないでもない。
■ 立て直しの必要な中断期間FC東京は、開幕直後のどん底の状況は抜け出したが、なかなか、チームが落ち着かず、勝ったり、負けたりの状況を繰り返している。タレントだけ見れば、Jリーグでも有数ではあるが、それが、まだ、結果に結びついていない。
この試合を終えると、しばらくの間、チームは休暇に入る。J1の再開までには、時間があるため、もう一度、立て直すことができる。したがって、DFラインを中心に、見直しをはかりたい。現メンバー構成は、開幕前のキャンプのときに想定したものとは、大きく異なるので、チームとして、明確な立ち返る場所がない。だから、いい試合をしても続かないし、悪い流れのときは、流れに飲まれてしまう。
■ リスクの冒し方点を奪いに行くときに、人数をかけて攻め込むスタイルは、FC東京の伝統であり、魅力のひとつであるが、リスクのかけ方がまずく、カウンターから不用意な失点を重ねて、取り返しがつかなくなる試合が、多い。現状では、しっかりとリスクをかけて攻めているというよりは、ギャンブルと表現する方が、正しい。
開幕前に、大きな期待を背負って監督に復帰した原博美監督だが、これまでのところ、05年シーズンと、変わり映えはせず、物足りない部分が多く、着実な進歩を感じることはできない。選手のタレントはそろっているので、原監督自身が、指揮官として、レベルアップしなければならないだろう。そうでないと、浮上のきっかけはつかめない。
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