(上)の続き →
Jリーグは11年前と比べてはどこが変わったのか? (上)
(5) 反則の数
→ (上)と(下)を合わせて、全部で「8つの数字」をピックアップするが、ここまでの4つ(=得点数・PKの数・シュート本数・CKの本数)は「大きな差はない。」と言える。一方、ここからの4つ(=反則数・FKの数・警告の数・退場の数)というのは、目に見えて変わっている部分である。ということで、(
上)で挙げた4つは「変わっていない部分」で、(
下)で挙げる4つは「大きく変わっている部分」と表現できる。
表5-1は「反則の数の推移」となる。サッカーの試合で「反則」というと、オフサイド、(フィールドプレーヤーの)ハンド、ファールスローなどもあるが、反則の大部分を占めるのは、「トリッピング」、「ホールディング」、「キッキング」、「プッシング」といった相手選手へのファールになるだろう。相手に間接フリーキックが与えられる反則と、直接フリーキックが与えられる反則がある。
当然、「オフサイド」や「ハンド」や「ファールスロー」といった反則の数というのは、急激に増えたり、急激に減るものではない。ハンドは1試合に1回あるか無いかの頻度で、ファールスローに至っては10試合に1回あるか無いかといった頻度なので、結局のところ、表5-1のように「反則の数」が激減している理由というのは、「接触プレーで簡単にファールを取らなくなった。」と考えるのが自然である。
ファールに相当する行為があったとしても流すシーンが増えている。「積極的にアドバンテージを活用するようになった。」ということも関係していると思うが、「レフェリングの基準が変わってきている。」というのは、間違いない。ちなみに、2013年の広島は「反則の数」が414回だったが、ここ11年では最少だった。さらに2番目に少なかった仙台の427回というのがここ11年間で2番目に少ない数字だった。
表5-1. 反則の数の推移 (2003年-2013年まで)
| 反則 |
| 総数 | 1試合平均 |
2003年 | 10,339 | 43.08 |
2004年 | 10,286 | 42.86 |
2005年 | 11,753 | 38.41 |
2006年 | 11,575 | 37.83 |
2007年 | 10,880 | 35.56 |
2008年 | 10,833 | 35.40 |
2009年 | 10,375 | 33.91 |
2010年 | 10,261 | 33.53 |
2011年 | 9,530 | 31.14 |
2012年 | 9,838 | 32.15 |
2013年 | 9,307 | 30.42 |
表5-2. 反則の数が少なかったチーム・ベスト10 (2003年-2013年まで)
| チーム名 | 反則 |
2013年 | サンフレッチェ広島 | 414 |
2011年 | 名古屋グランパス | 427 |
2013年 | ベガルタ仙台 | 427 |
2011年 | 横浜F・マリノス | 469 |
2012年 | 浦和レッズ | 469 |
2012年 | サンフレッチェ広島 | 470 |
2012年 | コンサドーレ札幌 | 477 |
2009年 | モンテディオ山形 | 485 |
2011年 | 大宮アルディージャ | 485 |
2007年 | ガンバ大阪 | 491 |
(6) FKの数
→ 次の表6-1はFKの数となる。これは、(当たり前の話であるが、)表5-1の反則の数とほとんど同じである。FKの数の方がやや少なくなっているのは、「反則があって、笛が鳴って、FKで試合が再開される場面だったが、反則の笛が吹かれた直後に前半あるいは後半の終了を告げるホイッスルが鳴った。」というケースがあるからと考えられるが、ここ11年間で見事なほどFKの数は減っている。
90分間の中で、笛が鳴って試合が止まる回数がこれだけ違っていると、当然、アクチュアル・プレイング・タイムは長くなる。選手は休むことのできる時間が短くなるので、体力的にはキツイと思うが、観ている人にとっては、ありがたいことであり、ストレスを感じずに済む。「簡単に笛を吹かない。」、「できるだけ試合を止めない。」という方針に変わってきていることがはっきりと分かる推移になっている。
ここ11年間で「FKの数」がもっとも多かったのは、2007年の甲府(=大木監督のとき)で827回。逆にもっとも少なかったのは、2013年の磐田で402回。(2番目に少なかったのは444回で2013年のC大阪だった。)2007年の甲府と2013年の磐田を比較すると半分以下になっているが、どちらのチームも「J2降格」となった。「FKの数は少ない方がいい。」とは言い切れないところもある。
表6-1. FKの数の推移 (2003年-2013年まで)
| FK |
| 総数 | 1試合平均 |
2003年 | 10,299 | 42.91 |
2004年 | 10,228 | 42.62 |
2005年 | 11,686 | 38.19 |
2006年 | 11,509 | 37.61 |
2007年 | 10,826 | 35.38 |
2008年 | 10,782 | 35.24 |
2009年 | 10,321 | 33.73 |
2010年 | 10,202 | 33.34 |
2011年 | 9,462 | 30.92 |
2012年 | 9,784 | 31.97 |
2013年 | 9,248 | 30.22 |
表6-2. FKの数が多かったチーム・ベスト10 (2003年-2013年まで)
| チーム名 | FK |
2007年 | ヴァンフォーレ甲府 | 827 |
2005年 | 柏レイソル | 774 |
2005年 | 鹿島アントラーズ | 761 |
2006年 | 横浜F・マリノス | 742 |
2005年 | 浦和レッズ | 731 |
2005年 | 川崎フロンターレ | 716 |
2005年 | ジュビロ磐田 | 710 |
2005年 | 横浜F・マリノス | 704 |
2006年 | 鹿島アントラーズ | 704 |
2006年 | 川崎フロンターレ | 694 |
表6-3. FKの数が少なかったチーム・ベスト10 (2003年-2013年まで)
| チーム名 | FK |
2013年 | ジュビロ磐田 | 402 |
2013年 | セレッソ大阪 | 444 |
2011年 | モンテディオ山形 | 451 |
2011年 | ジュビロ磐田 | 451 |
2012年 | コンサドーレ札幌 | 461 |
2011年 | 大宮アルディージャ | 463 |
2009年 | ジュビロ磐田 | 473 |
2012年 | 川崎フロンターレ | 478 |
2011年 | アルビレックス新潟 | 479 |
2011年 | 川崎フロンターレ | 480 |
(7) 警告の数
→ 表7は警告の数となるが、これも着実に減ってきている。反則の数(≒ファールの数)自体が少なくなっているので、それに伴って警告の数も減っていることは容易に想像できたが、(コミュニケーション能力など)主審の技術が向上して、イエローカードで試合をコントロールしなくても済むようになったというのも、警告の数の減少につながっているのは間違いないところである。
もちろん、選手たちのフェアプレーの意識が高まっていることも理由の1つで、その他では、「異議のイエローカード」の減少も大きいのではないか?と思う。主審や副審が致命的なミスを犯した場合、選手が詰め寄ってきて、最終的には、「選手に警告が出される。」というケースは少なくないが、「致命的なミス」が少なくなれば、選手たちが判定に対して文句を言う機会も少なくなる。
2012年に「微増」となったのは、「アクチュアル・プレイング・タイム」の意識が高くなって、試合の終盤にリードしているチームの遅延行為を厳しく取り締まるようになったことが理由ではないかと思うが、2013年はついに「2点台」に突入した。当然、1つの理由ではなくて、選手・主審・副審など、関係する全ての人の努力と技術向上によって、こういう結果になっていると推測できる。
表7. 警告の数の推移 (2003年-2013年まで)
| 警告 |
| 総数 | 1試合平均 |
2003年 | 1,023 | 4.26 |
2004年 | 1,022 | 4.26 |
2005年 | 1,168 | 3.82 |
2006年 | 1,190 | 3.89 |
2007年 | 1,147 | 3.75 |
2008年 | 1,067 | 3.49 |
2009年 | 1,009 | 3.30 |
2010年 | 966 | 3.16 |
2011年 | 980 | 3.20 |
2012年 | 1,040 | 3.40 |
2013年 | 915 | 2.99 |
(8) 退場者の数
→ 最後は退場者の数で、まとめると表8のようになる。これも警告の数と同様で、10年ほど前と比べると、明らかに減ってきている。(個人的には、必ずしもいいことだとは思わないが、)「できるだけ退場者が出ないように試合をコントロールしよう。」と考える主審が増えてきて、「どうしようもないほど荒れる試合」というのは確実に減ってきている。
さらには、試合中に熱くなりすぎて、感情をコントロールできずに立て続けにイエローカードを受けて退場になる選手というのは、Jリーグにはほとんどいない。(もちろん、全くいないわけではない。)さらには、暴力的な行為をする選手や、やられた選手が大怪我をする可能性がある悪質極まりないタックルを仕掛ける選手というのもほとんどいない。このあたりというのは、最近のJリーグの誇れる部分だと思う。
表8. 退場者の数の推移 (2003年-2013年まで)
| 退場 |
| 総数 | 1試合平均 |
2003年 | 67 | 0.279 |
2004年 | 74 | 0.308 |
2005年 | 65 | 0.212 |
2006年 | 70 | 0.229 |
2007年 | 86 | 0.281 |
2008年 | 58 | 0.190 |
2009年 | 43 | 0.141 |
2010年 | 51 | 0.167 |
2011年 | 39 | 0.127 |
2012年 | 47 | 0.154 |
2013年 | 40 | 0.131 |
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