■ ミスター・エスパルス今季限りで引退するMF沢登が、思い出の詰まったホームの日本平で現役最後の試合を戦った。J1での出場試合数は、歴代最多の381試合を誇る、名選手が引退する。
Jリーグ元年の2ndステージ。DF堀池、MF大榎、FW長谷川健太、MF三浦泰年ら、代表クラスの選手をそろえた清水エスパルスに、伝説的なGK・シジマールとDF加藤久が加入して、快進撃を見せる。王者ヴェルディ川崎とも互角の勝負を見せるほどの好チームを率いていたのが、司令塔の沢登。左右両足からの正確パスで、ゲームを組み立てた。すでに、オフト監督の下、代表にも定着していたが、シーズン終了後には、記念すべき初代のJリーグ新人王を獲得することになる。
■ ドーハ以後ドーハ以後の日本代表。その最大の関心は、すでに36歳となっていた司令塔のラモスの後釜探し。沢登か、磯貝か。これまで実績を考えると、沢登が有力の情勢であったが、意外にもはポスト・ラモスの座を射止めたのは、前園真聖だった。鋭いドリブルと決定力を備えた新鋭として頭角をあらわした。
それでも、広島アジアカップでは、その前園と4-4-2でダブル司令塔を組んで好プレーを見せる。しかし、この大会終了後にファルカン監督は解任される。その後の加茂監督のもとでは、MF名波やMF森島が台頭。沢登はたびたび代表に選出されるが、試合出場はままならず。そして1997年に、MF中田英寿が代表にデビューしてスタメンに定着すると、沢登が代表に呼ばれることはほとんどなくなった。
■ 「沢登的」な選手近年は、ボランチ的なポジションをこなすほど、オールラウンドな選手になっていたが、それでも、一言でいうと、典型的なトップ下でゲームを組み立てるプレーヤーである。前園が持っていたドリブル突破や、森島が持っていた運動量と決定力、中田英寿が持っていた強さと突進力がなかったために、代表では使いにくい選手だったかもしれない。
ただ、ボクは、近年の日本サッカー界が、若い攻撃的MF(例えば、小林大悟とか梶山とか成岡とか本田)にオールラウンドな働きを求めすぎていて、とりあえず中盤ならすべてのポジションをこなしますが・・・、という選手が、多くなっている状況を危惧する。せっかくの生まれた才能を、わざわざ図抜けた選手を生みにくい環境に置いているのではないだろうか?そんな状況だからこそ、「沢登的なスペシャリスト」といえる選手の登場を期待する。
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