先週土曜日に歌舞伎座二月大歌舞伎、昼の部に。
席は7列目で花道に近く、七三で見得を切るところなどは実に迫力あり。
ただ、前の週に行った夜の部もそうだったが、後ろのほうは割と空席が目立つ。webで検索しても結構空席あるようだ。花篭の食事予約は満席だったのだが、これが団体が入っているのかな。
最初は「吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)」
江戸の正月興行には「曽我物」を上演するのが吉例だったというが、なぜそんなに当時の人に曽我物がうけたのか、今ではあまり実感することができないのだった。
最初の場は鎌倉鶴ヶ岡八幡宮の石段前。「がんどう返し」は、舞台奥へと続く大きな鶴ヶ岡八幡宮の登り階段が、役者を乗せたまま後ろに倒れて行き、その裏面が次の富士山の背景となるという、歌舞伎らしいケレンに満ちた実に派手な場面転換で呆気にとられた。階段だからこそ後ろに90度ひっくり返っても役者は姿勢を転換して最後まで倒れずに立ち続けることができる。最初に考えた奴はエライね。
続く段では、富士山を一望する大磯の廓近くで、遊女たちを交えて工藤と曽我兄弟の対面となる。
急に「だんまり」になるところは、なんだか唐突にも思えるが、登場人物が全員ゆっくりと舞台を練り歩いて、客席全部に自分の衣装と演技を見せる興行上の演出だと考えれば、誠に豪華で面白い趣向。又五郎、錦之助、芝雀、歌六など出演。 ただ配役は若干地味に感じたかな。
35分の幕間。お昼は取らずに歌舞伎座内をうろうろ。3階で売られてる舞台写真を興味深くチェック。買わないけれども(笑)
二番目の演目は「彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち) 毛谷村」
「けやむら」というのが略称らしい。毛谷村六助を初役で菊五郎が演じる。70歳過ぎて初役に挑むというのも偉いもんですな。他の役者が主役で何度も上演されている演目なのだが、筋書き的にはあまりカタルシスを感じない。公演履歴は結構あるのだが、そんな人気狂言なのかねえ。
事前に予習してもあまりストーリーが頭に入らなかったので、筋も配役もほとんど予備知識無しに見ていたのだが、花道から出てきた虚無僧の立ち回りを見ていて、「あれ、これ女じゃないか」と気付く。立ち回りの後で笠を取ると時蔵演じるお園。予備知識なくなぜ女だと思ったかはいわく言い難いが、やはり女方の芸の力と言うしかない。もっとも女だと思っても勿論男が演じている訳で、そこがややこしい歌舞伎の重層性なのだが(笑)
六助に頼みこんで八百長で負けて貰ったくせに、勝った後に威張りくさって扇で六助の額を打ちすえた憎き敵役の微塵弾正が冒頭以降登場しないというのも、話に盛り上がりが欠ける理由と思うが、そもそも歌舞伎流に、前後がある話を切り取って出しているのでちょっとやむなし。
義太夫狂言だけあって随所に時代な趣が感じられるところはなかなか見どころがあった。ただまあ、菊五郎でなくてもよいというか、失礼ながら誰がやってもこの狂言はあんまり面白くないのではという気もするのだった。次にかかったら観ないなあ(笑)
幕間を挟んで最後は「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」
逢坂の関を舞台にした舞踊劇。
小野小町姫を演じる菊之助は、花道の出から華やかで美しい。白木の所作台が敷かれて。足を踏むとよい音がする。関守の関兵衛は幸四郎が演じるのであるが、昔からの型に則って丸く演じる所作事だとイヤホンガイドで。ただ劇としての面白みはあまり感じられない。ひとつには、常磐津のほうが台詞をしゃべる「つけ台詞」のせいもあるかと思うのだが。
舞踊の巧拙そのものは、やはり素人には分からない。「菊之助の礼儀」でも、菊五郎が「踊りの巧拙というのは、なかなか分かるものではない」と述べていたが、役者にしてそうなんだから、日本舞踊など習ったことがない私にはもとより分かるはずないのであった(笑)語りえぬ事については沈黙せねばならない(笑)
登場人物が少ない上に場面転換なく、およそ120分と上演時間が長いので、ちょっと中盤ダレる感が無きにしもあらずだが、関守が「国崩し」の大悪人大伴黒主に、そして小野小町が桜の精へと、一瞬にして引き抜きの技で衣装がはらりと変化する「ぶっ返し」のある最終部分は見ごたえあり。
打ち出しは若干予定よりも早かったか。これで二月大歌舞伎は昼夜制覇して鑑賞終了。個人的には、夜の「一谷嫩軍記 陣門・組打」の吉右衛門が実によかったなあ。
席は7列目で花道に近く、七三で見得を切るところなどは実に迫力あり。
ただ、前の週に行った夜の部もそうだったが、後ろのほうは割と空席が目立つ。webで検索しても結構空席あるようだ。花篭の食事予約は満席だったのだが、これが団体が入っているのかな。
最初は「吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)」
江戸の正月興行には「曽我物」を上演するのが吉例だったというが、なぜそんなに当時の人に曽我物がうけたのか、今ではあまり実感することができないのだった。
最初の場は鎌倉鶴ヶ岡八幡宮の石段前。「がんどう返し」は、舞台奥へと続く大きな鶴ヶ岡八幡宮の登り階段が、役者を乗せたまま後ろに倒れて行き、その裏面が次の富士山の背景となるという、歌舞伎らしいケレンに満ちた実に派手な場面転換で呆気にとられた。階段だからこそ後ろに90度ひっくり返っても役者は姿勢を転換して最後まで倒れずに立ち続けることができる。最初に考えた奴はエライね。
続く段では、富士山を一望する大磯の廓近くで、遊女たちを交えて工藤と曽我兄弟の対面となる。
急に「だんまり」になるところは、なんだか唐突にも思えるが、登場人物が全員ゆっくりと舞台を練り歩いて、客席全部に自分の衣装と演技を見せる興行上の演出だと考えれば、誠に豪華で面白い趣向。又五郎、錦之助、芝雀、歌六など出演。 ただ配役は若干地味に感じたかな。
35分の幕間。お昼は取らずに歌舞伎座内をうろうろ。3階で売られてる舞台写真を興味深くチェック。買わないけれども(笑)
二番目の演目は「彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち) 毛谷村」
「けやむら」というのが略称らしい。毛谷村六助を初役で菊五郎が演じる。70歳過ぎて初役に挑むというのも偉いもんですな。他の役者が主役で何度も上演されている演目なのだが、筋書き的にはあまりカタルシスを感じない。公演履歴は結構あるのだが、そんな人気狂言なのかねえ。
事前に予習してもあまりストーリーが頭に入らなかったので、筋も配役もほとんど予備知識無しに見ていたのだが、花道から出てきた虚無僧の立ち回りを見ていて、「あれ、これ女じゃないか」と気付く。立ち回りの後で笠を取ると時蔵演じるお園。予備知識なくなぜ女だと思ったかはいわく言い難いが、やはり女方の芸の力と言うしかない。もっとも女だと思っても勿論男が演じている訳で、そこがややこしい歌舞伎の重層性なのだが(笑)
六助に頼みこんで八百長で負けて貰ったくせに、勝った後に威張りくさって扇で六助の額を打ちすえた憎き敵役の微塵弾正が冒頭以降登場しないというのも、話に盛り上がりが欠ける理由と思うが、そもそも歌舞伎流に、前後がある話を切り取って出しているのでちょっとやむなし。
義太夫狂言だけあって随所に時代な趣が感じられるところはなかなか見どころがあった。ただまあ、菊五郎でなくてもよいというか、失礼ながら誰がやってもこの狂言はあんまり面白くないのではという気もするのだった。次にかかったら観ないなあ(笑)
幕間を挟んで最後は「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」
逢坂の関を舞台にした舞踊劇。
小野小町姫を演じる菊之助は、花道の出から華やかで美しい。白木の所作台が敷かれて。足を踏むとよい音がする。関守の関兵衛は幸四郎が演じるのであるが、昔からの型に則って丸く演じる所作事だとイヤホンガイドで。ただ劇としての面白みはあまり感じられない。ひとつには、常磐津のほうが台詞をしゃべる「つけ台詞」のせいもあるかと思うのだが。
舞踊の巧拙そのものは、やはり素人には分からない。「菊之助の礼儀」でも、菊五郎が「踊りの巧拙というのは、なかなか分かるものではない」と述べていたが、役者にしてそうなんだから、日本舞踊など習ったことがない私にはもとより分かるはずないのであった(笑)語りえぬ事については沈黙せねばならない(笑)
登場人物が少ない上に場面転換なく、およそ120分と上演時間が長いので、ちょっと中盤ダレる感が無きにしもあらずだが、関守が「国崩し」の大悪人大伴黒主に、そして小野小町が桜の精へと、一瞬にして引き抜きの技で衣装がはらりと変化する「ぶっ返し」のある最終部分は見ごたえあり。
打ち出しは若干予定よりも早かったか。これで二月大歌舞伎は昼夜制覇して鑑賞終了。個人的には、夜の「一谷嫩軍記 陣門・組打」の吉右衛門が実によかったなあ。
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