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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「天ぷらにソースをかけますか」
「天ぷらにソースをかけますか?~ニッポン食文化の境界線」読了。

この題名を見たとたんに、「そういえば、子供の頃神戸の実家では、野菜の天ぷらにソースかけて食べてたぞ」という記憶が彷彿として蘇り、つい発注したのであった。天ぷらにソースは信じられない人も多いだろうが、関西以西はソース文化の地。さすがに海老の天ぷらにソースかけたりはしなかったが、サツマイモの天ぷらにソースかけると、結構美味かったなあ。たまねぎの天ぷらにソースという組み合わせもあった。串カツの親戚みたいなもんかねえ。まあ、さすがに今ではソースで食べる気はしないのだが。

私は神戸生まれの神戸育ちだが、大学卒業後はずっと関東圏とアメリカに住んでいる。関西と関東の食文化の違いはずいぶん身をもって体験した。うどんとそば、塩味と醤油味、昆布出汁と鰹出汁、牛肉と豚肉、薄口醤油と濃口醤油など、ずいぶんと違う。関東に来てから、うどんの出汁がまずいのにはびっくりしたし、気軽に入れるお好み焼き屋がないのも驚きだったよなあ。

この本は、単に関東と関西の差に留まらず、ぜんざいvsお汁粉、メロンパンとサンライズ、冷やし中華の呼び方など、ネットを利用した口コミ調査により、日本の各地に分布した興味深い食文化の違いを明らかにしようという試み。昔はこのような調査をするのは大変だったろうが、今やインターネットの登場により、全国からのアンケート調査が実に容易になり、面白い結果が出ている。

単純に関東と関西の間で線が引けるのではなく、北と南の差であったり、空白地があったり、複雑に分布が入り組んでいたり。食文化というのは、歴史と風土に深く根ざしており、単に関東及び関西中心からの同心円的な文化伝播では説明できない結果が多々出ており、これも興味深い。

もちろん、メディアや交通機関の進展、居住地に関する流動性が高まったことなどによって、日本全体の地域差は平準化されている傾向にあるのは間違いない。

それでもなお、関東の蕎麦屋のうどんは関西人にとってはいまだに受け入れがたいところがある。讃岐うどん系は近年、東京でもずいぶんポピュラーになったのだが、あれも関西のうどんとはやはりちょっと違うのである。名店とかこだわりの店ではなく、関西ならそこらにある普通のうどん屋でよいのだが、そんなうどん屋がまず東京にはない。まあ、おそらくニーズも無いのかもしれないが。

寿司、蕎麦、天ぷら、鰻など、関西が及びもつかない美味が東京にはもちろんあるのだけれど、それでもなお、関西風のうどんが無いのが残念。もちろん、アメリカにも無いのだが(笑)

それにしても、食に関する嗜好というのもがいかに幼少の時にインプリンティングされるかという事を再度自覚した、気軽に読めてなかなか面白い本であった。