■ J2の第15節J2の第15節。6勝4敗4分けで勝ち点「22」のファジアーノ岡山(7位)と、5勝3敗6分けで勝ち点「21」のV・ファーレン長崎(9位)がkankoスタジアムで対戦した。岡山は最初の8試合は2勝4敗2分けと低迷したが、9節以降は4勝2分けと勝ち点を積み上げている。一方の長崎は8試合を終えた段階では5勝1敗2分けだったが、9節以降は0勝2敗4分け。6試合勝ち星から遠ざかっている。
ホームの岡山は「3-4-2-1」。GK中林。DF鎌田、後藤圭、田所。MF島田譲、上田康、田中奏、三村、片山、妹尾。FW清水慎。最終ラインに怪我人が続出しており、DF鎌田とDF田所をストッパーで起用する苦しい布陣になっているが、ここ6試合でわずか2失点と機能している。早稲田大学出身でルーキーのMF片山は4試合連続スタメンとなった。ここまで2ゴールを挙げている。
対する長崎は「3-4-2-1」。GK中村隼。DF岡本拓、山口貴、下田。MF黒木聖、三原、古部、中村祐、小松、奥埜。FW水永。ここ6試合勝利なしと結果が出ていないこともあって、ターゲットマンのFW水永を今シーズン初めてスタメンで起用して、190センチのMF小松をシャドーの位置で起用してきた。左WBで突破力のあるMF中村祐も今シーズン初スタメンとなった。
■ 2対1で岡山が逃げ切る試合は質の高い好ゲームとなる。6試合負けなしで一気に7位まで順位を上げてきた岡山に対して、長崎は6試合勝ちなしと苦しんでいる。GW期間中の過密日程がプラスに作用した岡山と、マイナスに作用した長崎という対照的な両チームの対戦となったが、ともに攻守の切り替えが早くて、運動量も多くて、両チームともそれなりのレベルで自分たちの狙いとするサッカーができた。
ただ、同じ「3-4-2-1」を採用していることもあって、なかなか隙が生まれずに決定機はあまり作れない。点が入りそうな雰囲気は高くなかったが、後半22分に右サイドで粘ったMF片山がゴール前にクロスを入れると、キーパーのGK中村隼がイージーに処理できるボールだったが、その前でクリアしようとしたDF山口貴がクリアミスしてオウンゴール。思わぬ形で岡山が先制する。
さらに直後の後半23分に岡山は左サイドのCKを獲得すると、新加入のMF上田康が蹴ったボールを1トップで起用されたFW清水慎が豪快に頭で合わせて2点目を挙げる。FW清水慎は今シーズン3ゴール目となった。しかし、後半25分に今度は長崎が左サイドのCKを獲得すると、いいタイミングでゴール前に入ってきた左ストッパーのDF下田が頭で合わせて1点差に迫る。
終盤は長崎がチャンスを作ったが、岡山が何とか1点リードを守り切って3連勝を達成した。これで岡山は7試合負けなしで、プレーオフ圏内となる5位に浮上した。一方の長崎は内容はそこまで悪くなかったが、不運な形でオウンゴールから失点したのが痛かった。7試合負けなしで急浮上の岡山とは対照的にこちらは7試合勝ちなしとなった。次節はホームで讃岐と対戦する。
■ 一気にプレーオフ圏内に浮上岡山はここ7試合は5勝2分けと快進撃を見せている。J2リーグもGWによる過密日程の影響で苦しんでいるチームは多いが、岡山は思いきってターンオーバーを採用したことが良かった。9節の札幌戦(H)は2対0で快勝したが、その次の10節の山形戦(A)は中2日だったこともあって、前目のポジションの3人を全て変更。思い切った選手起用だったが、この試合も2対0で勝利した。
9節の札幌戦(H)はFW久保とMF石原克とMF林容のトライアングルで、10節の山形戦(A)はFW清水慎とMF妹尾とMF片山のトライアングルだったが、結局、長崎戦のトライアングルは10節の山形戦と全く同じだった。もちろん、FW清水慎とMF妹尾とMF片山の3人がレギュラーを勝ち取ったわけではないが、いい競争ができており、ターンオーバーが浮上のきっかけの1つとなった。
この日も2点目のFW清水慎のゴールをアシストしたMF上田康がJ1の大宮から加入したことがV字回復の最大の理由であることは間違いないが、もう1人、ルーキーのMF片山の存在も大きい。10節の山形戦(A)がプロ初スタメンだったが、以降の6試合のうち、5試合でスタメン起用されている。MF上田康の陰に隠れているが、MF片山の活躍なくして、V字回復はなかった。
■ 泥臭いプレーでチームに貢献する片山瑛一岡山は前目のポジションは駒が豊富で、ウリの1つであるが、ドリブルで勝負するアタッカータイプか、点取り屋タイプがほとんどである。2013年の前半戦はFW荒田が1トップで起用されて、後半戦はFW押谷が起用されたが、サイズがあって、チームメイトのために頑張ることのできる選手はいなかった。もっとも不足していた部分に大卒ルーキーのMF片山が見事にハマったと言える。
ロングスローも武器にしているが、とにかく、身体能力が高い。そして、松本山雅のFW塩沢とよく似たタイプで、最後まであきらめることなく常に全力でプレーすることができる。派手さはないが、これはプロの世界では大きな武器となる。FW塩沢も同様であるが、こういうタイプの選手はゴールを量産することはないので、過小評価されがちであるが、こういう選手がいるチームは強い。
最近はロングスローを投げる選手が増えており、鳥栖のMF藤田直と松本山雅のMF岩上がJリーガーの中では最高峰と言えるが、MF片山のロングスローも相当なものである。仙台のDF二見、鳥栖のMF清武の距離やスピードも物凄いものがあるが、MF片山も上位レベルである。DF近藤やDF植田など高さのあるCBがスタメンに戻ってくると、さらに威力を発揮するだろう。
守備に関しては、対戦相手の長崎が(今の)岡山の最大の不安要素である「高さ不足」を突いてきた。FW水永を1トップにおいて、シャドーに190センチのMF小松を起用したので、172センチのDF鎌田が右ストッパーで、175センチのDF田所が左ストッパーで起用されている岡山は不利だったが、3バックの中央に入っている183センチのDF後藤圭が頑張ってハイボールを跳ね返した。
■ 過密日程になると有利か?不利か?」対する長崎は内容が悪いわけではないので、悲観する必要はないと思うが、7試合勝ちなしとなった。J2は全日程の1/3が過ぎた段階で、まだまだ上位グループは混戦ではあるが、7試合で0勝3敗4分けという成績になると、上位グループからは離されてしまう。3月・4月で作った貯金は底を突いてしまったので、ここからが踏ん張りどころであり、正念場である。
長崎はJ2の中でエネルギーをたくさん消費するサッカーをしているチームの1つであるが、「そういうチームは過密日程になると有利なのか?不利なのか?」という質問に答えるのは難しい。運動量が低下していつものサッカーができなくなることもあるが、相手も同じ条件である。「こちらの運動量が低下したとしても、相手よりは上回ることができる。よって、問題はない。」という見方もできる。
結局のところ、ケース・バイ・ケースである。運動量が最大の武器である首位の湘南もGW期間中は連勝記録が続いたが、過密日程の影響は大きくて、チーム全体のパフォーマンスはかなり落ちていた。「過密日程だから有利に働く。」と言い切ることはできないし、「過密日程だから不利である。」とも言えない。どちらに転ぶのか分からないところは非常に面白いところである。
これで7試合勝ちなしとなったが、1トップで起用されたFW水永は存在感を発揮した。試合終盤の決定機に決められなかったのは悔いが残るが、パフォーマンスは良かった。180センチなので、CFとしては決して大きくないが、体の強さがあって、軸がぶれることがないので、高い確率で自分のベストに近いジャンプができる。なので、身長がそれほど高くないのに、相手に競り勝つことができる。
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