■ J1の第4節J1の第4節。開幕3試合で0得点で10失点。3試合連続で完封負けを喫している徳島ヴォルティスと、優勝候補の一角に挙げられながら0勝1敗2分けとスタートでやや躓いた柏レイソルが鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムで対戦した。両チームは柏がJ2に参戦した2006年と2010年にJ2リーグで対戦しているが、6試合で3勝1敗2分けと柏が勝ち越している。
ホームの徳島は「4-2-2-2」。GK松井。DF福元、千代反田、橋内、アレックス。MF濱田、斉藤、大崎、衛藤。FW高崎、クレイトン・ドミンゲス。2013年はJ2で40試合で14ゴールを挙げたFW津田と、29試合で12ゴールを挙げたFWドウグラスはベンチスタートで、FW高崎がスタメンとなった。FW高崎は水戸時代の2009年に46試合で19ゴールを挙げている。右SBはDF福元が2試合連続スタメンとなった。
対するアウェーの柏は「4-2-3-1」。GK菅野。DF高山、鈴木大、近藤直、橋本和。MFハン・グギョン、大谷、工藤壮、レアンドロ・ドミンゲス、田中順。FWレアンドロ。日本代表のMF工藤壮は開幕のFC東京戦(H)でゴールを決めており、ここまで3試合で1ゴールという成績を残している。この試合はMFレアンドロ・ドミンゲスとFWクレイトン・ドミンゲスの兄弟対決に注目が集まった。
■ 2対0で柏が勝利試合の前半は静かな展開となる。ここまでの3試合で合計2得点とまだ攻撃が噛み合っていない柏はこの試合も1トップのFWレアンドロがあまり機能しなくて、開幕から3試合で合計10失点と不安を抱えている徳島の守備陣を崩しきれない。過去の3試合は前半に失点して試合展開が苦しくなった徳島だったが、この日は、0対0のスコアでハーフタイムを迎えることができた。
後半15分あたりを過ぎるとホームの徳島が決定機を作るようになる。途中出場のMF小島、左サイドハーフのMF衛藤、新外国人のMFクレイトン・ドミンゲスに決定機が訪れるが、いずれも決めることができない。すると、後半32分に右サイドのFWレアンドロのクロスからこぼれ球を左SBのDF橋本和が決めて柏が先制に成功する。2節の神戸戦(A)でもゴールを決めているDF橋本和は今シーズン2ゴール目となった。
さらに後半40分にもMF工藤壮のクロスからFWレアンドロが強烈なヘディングシュートを決めて2対0とリードを広げる。2013年はJ2のG大阪で19試合で13ゴールを記録したFWレアンドロは今シーズン初ゴールとなった。結局、試合は終盤までもつれたが、2対0で柏が勝利して今シーズン初勝利を飾った。一方の徳島は勝ち点を獲るチャンスはあったが、この試合も完封負けで、開幕から4試合連続完封負けとなった。
■ なかなか噛み合わない攻撃陣柏はスタートでやや躓いたが、1勝1敗2分けと持ち直してきた。ただ、攻撃が噛み合っているとは言い難くて、この試合もすっきりした試合ではなかった。FWレアンドロも、MFレアンドロ・ドミンゲスも、MF工藤壮も、MF田中順も、点を獲るだけでなく、アシストも出来る選手なので、簡単に融合できてもおかしくないが、まだ役割分担がはっきりしなくて、いずれの選手も力を発揮できていない。
気になるのはMF工藤壮が攻撃に絡むことができていない点で、この試合の後半は1トップのFWレアンドロと、右サイドハーフのMF工藤壮のポジションが大部分の時間帯で逆になったことが幸いしたのか、2つのゴールに絡んだが、自身の得点チャンスは無かった。W杯のメンバーに入ることができるかギリギリのところにいるので、アピールをしたい立場の選手であるが、思い通りの展開にはならなかった。
開幕のFC東京戦(H)こそゴールシーンを含めて4本のシュートを放ったが、2節の神戸戦(A)はシュート0で、3節の名古屋戦(H)と4節の徳島戦(A)はともに1本だけ。周りに生かされることで輝くことのできる選手であるが、今シーズンはほとんど存在感を発揮できていない。MFレアンドロ・ドミンゲスが戻ってきて、FWレアンドロが加入したので、昨シーズンとは状況は違っているが全く目立たない点は気になる。
したがって、「攻撃陣はまだまだ。」と言えるが、左SBのDF橋本和がチームを救う活躍を見せている。昨シーズンは怪我もあって20試合の出場にとどまったが、ここまで4試合で2ゴールを挙げている。ポジションを争っていた五輪代表のDF山中が千葉にレンタル移籍したので、不動のレギュラーのDF橋本和がこけるとかなり苦しくなるので、彼が元気なところを見せているところは明るいニュースと言える。
■ 4試合連続で完封負け一方の徳島は開幕から4試合連続完封負けとなった。J1の厳しさを痛感する出だしとなっているが、序盤戦は上位候補のチームとの対戦が続いており、2節はC大阪(H)、3節は横浜FM(A)、4節は柏(H)、5節は広島(A)、6節は川崎F(H)となっている。これだけ上位候補との試合が続くと初昇格の徳島でなくても勝ち点を積み上げるのは難しいが、初昇格のチームとなるとなおさらである。
3月・4月は過密日程になるACL組に配慮して、楽な展開になる確率が他の対戦相手よりも高くなると思われる徳島戦を意図して連戦の時期に組みこんでいると考えられるので、徳島にとってはつらいところであるが、ここを乗り切ることができると、少しは楽になる。辛抱のしどころと言えるが、早く初勝利が欲しいところである。J1で1つ勝つまではチーム内は落ち着かないだろう。
結局、この試合も完封負けだったが、勝ち点を獲れるチャンスはあった。鳥栖戦(A)、C大阪戦(H)、横浜FM戦(A)は限りなく0%に近かったが、相手のチーム状態があまり良くないこともあって、勝ち点「1」どころか、勝ち点「3」の可能性もあった。「とりあえず0対0のスコアで時計を進めて、相手が焦れて来た後半に先制ゴールを奪って1対0で勝利する。」という必勝パターンに持ち込める可能性はあった。
■ 残留のためにできることは?4試合を終えて0得点で12失点と予想以上に厳しい船出となっているが、まだ30試合も残っている。「やっぱり徳島はJ1で戦うことはできない。」、「J2のプレーオフ制度が良くない。」と批判することは誰にでもできるので、どうすればJ1で勝ち点を積み上げることができるのか?、また、どうすれば得点を奪うことができるか?を考えてみたいと思うが、「3-4-1-2」にシステムを変えるのも1つの手だと思う。
昨シーズンの序盤は3バックを採用していたが、3バックになると後ろの3人でビルドアップをすることができるので、ボール回しは少し楽になる。特に、最近は1トップを採用しているチームが増えているので、相手のフォワード1人が追いかけてきても、CBが3人いればボールをつなぐことはできるだろう。まずは、安易に蹴ってしまうシーンが多くて、両CBから効果的なパスが出て来ない点を修正したいところである。
また、「3-4-1-2」になると、MFクレイトン・ドミンゲスをトップ下で起用できるというメリットもある。「サイドハーフでプレーするのは無理。」とは言い切れないが、小林監督の求める水準には主に守備面で達していないように思えるので、4バックでMFクレイトン・ドミンゲスを使うとしたら「4-2-2-1-1」に近い布陣となって、そうなると、純粋なフォワードは1人しか使えなくなる。
この日も、FW津田とFWドウグラスがベンチスタートだったが、FW高崎とFWキム・ジョンミンも含めて、高さや得点力のあるフォワード陣は徳島の武器の1つなので、その中の1人しか出場できないのは勿体無い。個人技から独力でチャンスを演出できそうなタレントはMFクレイトン・ドミンゲスくらいなので、彼をスタメンから外すのも有益ではないので、「3-4-1-2」の方がうまく回りそうな感じはする。
「4-2-2-1-1」や「4-4-2」を継続するのであれば、MF大崎をもっと上手く使いたいところである。運動量も、スピードもあって、ボールを受ける能力も高いので、MF大崎のところにいいボールが入ると攻撃に厚みが出てくる。後方から出てくるパスは苦し紛れのパスが多くなっているので、これまでの4試合でMF大崎のところに生きたボールが入って来るシーンはほとんどなくて宝の持ち腐れになっている。
関連エントリー 2009/03/22
【徳島×熊本】 渦の国のプロサッカークラブ (生観戦記#3) 2009/05/29
『見る目』の大切さ 2009/06/22
【徳島×横浜FC】 柿谷曜一朗 デビュー戦でゴール 2009/06/28
サッカーサイトの「現状」について考える。 2012/04/20
サッカーライター・湯浅健二さんのこと 2012/10/08
柿谷曜一朗(C大阪)の波瀾万丈なサッカー人生 2012/10/12
マグネット式システム論の無意味さ 2013/04/12
柏レイソルのストライカー工藤壮人 2014/03/26
全記事一覧(2005年-2014年)
- 関連記事
-