■ 「JAPANESE ONLY」という横断幕J1の第2節は3月8日(土)に計9試合が行われた。2006年以来のリーグ制覇を目指す浦和レッズは埼玉スタジアムでホーム開幕戦を行ってサガン鳥栖と対戦したが、日本代表のFW豊田にゴールを許して0対1で敗れた。その内容や結果以上に関心を集めているのは、浦和のサポーター席の入口の1つに「JAPANESE ONLY」という横断幕が掲げられていたことで、「日本人以外お断り」と読み取ることができる。
サポーター席の入口に掲げられたということは「日本人サポーター以外お断り」という意味にも取れるが、今シーズン、サウサンプトンから浦和に完全移籍した元日本代表のFW李忠成の加入を快く思わない人が、「FW李忠成の加入はお断り」的な意味合いで横断幕を掲げたという見方が正しいのではないかと思う。これについては、「人種差別(民族差別)ではないか。」と言われても反論できない話である。
正直なところ、「韓国という国は好きか?嫌いか?」と質問されたら、「あまり好きではない。」と答えると思う。ただ、韓国人選手、特にJリーグでプレーしている韓国選手に悪いイメージは全く無い。2009年からアジア枠が導入されて、韓国人選手が非常に多くなったが、「悪いイメージは全く無い。」どころか、むしろ、「ポジティブな印象を抱いている選手」がほとんどである。
■ 増えた韓国人選手1989年1月1日以降に生まれた選手が「ロンドン世代」となるが、ロンドン世代あたりから20歳前後で日本にやってくる韓国人選手が非常に多くなった。Kリーグでプロの生活をスタートさせるのではなくて、Jリーグでプロの生活をスタートさせる選手が増えているが、MFキム・ボギョン(カーディフ)、MF金民友(鳥栖)、MFハン・グギョン(柏)、DF金珍洙(新潟)などが成功例として挙げられる。
韓国人というと、「自己主張が強い。」とか「自分勝手である。」といった風にネガティブなイメージを持っている人が多いと思うが、Jリーグでプレーする韓国人選手については、そういうイメージは全く無い。非常にまじめで、ちょっとシャイで、プレーも勤勉で、1年や2年で日本語をマスターする選手も多い。日本の社会に溶け込んで、Jリーグで活躍したいと思っている選手がほとんどである。
当たり前の話であるが、試合中に自分勝手なプレーをしたり、ピッチ内外でチームの和を乱すような言動をとったり、日本という国や日本人選手やJリーグを見下すような発言をするようであれば、国籍問わず、日本社会では受け入れられない。そういう選手がいると、その国全体のイメージが悪くなってしまうが、Jリーグでプレーする韓国人選手については、そういうところはほとんと見られない。
したがって、Jリーグの試合を頻繁に観ている人の中で、Jリーグでプレーしている韓国人選手にネガティブな印象を抱いている人はほとんどいないと思う。韓国人Jリーガーが増えていることに対して、異常なほど強い拒否反応を示す人もいるが、個人的にはそういう感覚は理解できない。人間性も優れている優秀な選手がJリーグに増えることを積極的に拒否する理由は全く無い。
■ 浦和というクラブは、創生期はドイツ(西ドイツ)の選手が多くて、ここ10年ほどは、FWエメルソンやFWワシントンやMFポンテなどブラジル人選手が多かった。よって、FW李忠成のように韓国にルーツのある選手や、韓国国籍を持った選手に対するイメージが他クラブのサポーターと比べて乏しいことは間違いないが、批判されても仕方がない内容であり、これほど何の得にもならない行動もないだろう。
クラブは当事者を特定しており、どういう意図があったのか、また、クラブとしてどう考えているのか、さらには、どういう処分が下されるのかなど、続報を多くの人が注目しているが、英語でメッセージが書かれているので、海外にも伝わりやすい。そうなると、「浦和のサポーターがこういうことをした。」と伝えられるのではなくて、「日本人がこういうことをした。」という伝えられるので、厄介である。
なので、浦和サポーターのイメージダウンにつながるだけでなく、Jリーグのイメージダウンにつながる話であり、日本のイメージダウンにつながる話であり、当事者と思われるFW李忠成の精神的なショックも大きいと思うし、選手とサポーター間の信頼関係にヒビが入ることも十分に考えられる。この横断幕を掲げて何かプラスになることがあるのか?と感じる不可解な内容の横断幕である。
1つ感じるのは、浦和レッズというチームを心底愛しているサポーターであるならば、DFブッフバルト、FWエメルソン、FWワシントン、MFポンテら、そして、同じように日本に帰化して活躍したDF闘莉王やMF三都主の功績をよく覚えているはずなので、「JAPANESE ONLY」という発想が出てくること自体が考えられない。「コアな浦和サポーターが起こした騒動」とはちょっと考えにくいところもある。
首謀者はこういう内容の横断幕を掲げたら騒動になるというところまで想像できなかったのか、あるいは、騒動が起こることを分かっていた上で自分の意見を主張したかったのか、はたまた、騒動が起こって浦和サポーターや日本人が批判されることをむしろ狙っているのか。1つ目ならばまだマシであるが、2つ目や3つ目になると話は非常に複雑である。とにかく、クラブにはきちんとした対応が求められる。
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