■ 第9節J2の第9節。4勝2敗2分けで勝ち点「14」の栃木SCが、ホームのグリーンスタジアムでFC岐阜と対戦した。栃木SCは、開幕2連敗スタートとなったが、その後の6試合は4勝2分けと好成績を残している。対するFC岐阜は1勝5敗2分けで勝ち点「5」。開幕7試合を終えて勝利がなかったが、8節で4連勝中のギラヴァンツ北九州に1対0で勝利して、今シーズン初勝利を挙げた。栃木SCはJ2に昇格して4年目、FC岐阜は5年目となる。
ホームの栃木SCは「4-2-2-2」。GK武田。DF山形辰、宇佐美、チャ・ヨンファン、ユ・デヒョン。MF菅、小野寺、高木、菊岡。FW棗、廣瀬。栃木SCはセンターバックに怪我人が続出しており、DF當間とDF大和田が欠場中で、今シーズン初出場のDF宇佐美がセンターバックで起用された。リーグ戦で2ゴールを挙げているFWサビアはベンチスタートで、MF菅とMF高木は古巣のFC岐阜との対戦となった。
対するFC岐阜は「4-2-3-1」。GK多田。DF野田、田中、関田、村上。MF李漢宰、服部、廣田、山崎、井上平。FW佐藤洸。北九州戦でプロ初ゴールを挙げたルーキーのMF廣田は開幕から9試合連続スタメンで、スタメン11人は北九州戦と全く同じとなった。ルーキーのMF地主園やベテランのDF池田らがベンチスタートとなった。
■ 1対1のドロー試合の前半はアウェーのFC岐阜のペースとなる。FC岐阜は、バランスのいい守備からカウンターでチャンスを作っていく。先制したのはFC岐阜で、前半終了間際に、MF井上平が高い位置でDFユ・デヒョンからボールを奪って左足でミドルシュートを放つと、ブレ球気味のシュートとなってGK武田がキャッチできずにゴールイン。新加入のMF井上平の移籍後初ゴールで、FC岐阜がリードして前半を折り返す。
ビハインドの栃木SCは、後半開始からMF小野寺に代えてMFパウリーニョを投入。これで流れを引き寄せた栃木SCは、ゴール前のシーンを増やして、圧力を加えていく。同点ゴールが決まったのは後半23分で、波状攻撃からセンターバックのDF宇佐美の上げたクロスボールを途中出場のFWサビアがヘディングで決めて1対1の同点に追いつく。FWサビアは3ゴール目で、3ゴール全てが途中出場でのゴールとなった。
追いついた栃木SCは、ホームで逆転ゴールを狙うが、終了間際にMFパウリーニョが2枚目のイエローカードを受けて退場。10人となってしまう。結局、試合は1対1で終了。栃木SCの連勝は3でストップして、8位となった。一方のFC岐阜も、勝ち点「1」を獲得して、20位となった。
■ 守備が安定してきたFC岐阜行徳監督が就任したFC岐阜は、1勝5敗3分けという成績で、なかなか勝ち点を伸ばすことができていないが、戦い方は悪くはない。昨シーズンは、怪我人が多かったこともあって、守備が完全に崩壊して最下位を独走することになったが、今シーズンは、守備が整備されて、戦えるチームになってきている。
開幕から7試合未勝利ということで、いろいろとメンバーを入れ替えて戦ってきたが、前節から、元北朝鮮代表のMF李漢宰をボランチで起用し、ルーキーのDF関田をセンターバックで起用している。行徳監督も試行錯誤を繰り返しているが、185センチのDF関田は跳ね返す能力が高いので、空中戦で強さを発揮している。サイドバックのDF野田とDF村上も堅実な守備を見せる選手なので、守備の安定に関しては、昨シーズンとは雲泥の差である。
問題は攻撃陣で、MF嶋田とFW押谷が退団したため、個人技で勝負できる選手が少なくなった。攻撃の中心となることが期待されるMF染矢もチームに貢献できず、ここまで、9試合で5ゴールと苦労しているが、FW佐藤洸が1トップ気味のポジションで頑張れるようになってきているので、前線で起点が出来つつある。2列目のポジションには、運動量があって、気の利いたプレーができる選手が揃っているので、FW佐藤洸のパフォーマンスがもっと上がってくれば、ゴール欠乏症から解放される可能性もある。
■ チームを引っ張るベテランチームを引っ張っているのは、鳥取から加入のMF服部で、FC岐阜でも大黒柱として存在感を示している。言うまでもなく、磐田の黄金時代を支えた選手の一人で、当時の中心メンバーの多くは、現役を引退するか、出番を失っているか、どちらかであるが、MF服部は、まだチームの主力としてプレーし続けている。
磐田のプレーしていたときは、周りの選手が非常に上手かったので、技術的に見劣りするところもあったが、J2の中では、パスの精度も高くて、キックも安定している。アトランタ五輪で、ダブルボランチを組んだ甲府のMF伊東輝も、まだまだレギュラークラスとして活躍しているが、ボランチのポジションで40歳近くになっても、軸としてプレーできるというのは、並大抵のことではない。
サッカー選手は、寿命も短くて、30歳を超えると、急激に落ちてしまう選手が多いが、落ち込むことなく、ここまで出来るというのは、尊敬に値する。若い選手には、世代別の代表があるので、クローズアップされる機会も多いが、ベテランになると、代表クラスだった選手でもクローズアップされにくい環境である。しかしながら、MF服部やMF伊東輝のような選手は、日本サッカーにとっての財産と言える選手なので、大事にしなければならない。
■ ミスから失点一方の栃木SCは、ミス絡みでピンチを迎えることが多かった。FC岐阜のゴールシーンは、DFユ・デヒョンがボールコントロールに失敗して高い位置でロストしたことがきっかけとなったが、MF井上平のシュートも、それほど難しいシュートではなかったので、GK武田は処理しなければならないボールだった。
松田監督は、守備組織を構築する能力に長けていて、センターバックに怪我人が相次いでいる状況にも関わらず、何とか、やり繰りして勝ち点を稼いでいるが、計算外のミスが発生すると、手の打ちようがなくなる。非常にもったいない失点で、勝ち点を失ってしまった。
対する攻撃陣は、川崎Fから加入のFW棗が存在感を発揮するようになってきた。駒澤大学の先輩のFW巻に似たタイプのフォワードで、高さと運動量を武器にするストロングヘッダーだが、アグレッシブなプレーがチームに勢いをもたらしている。松田監督も、「FW棗がフォワードの軸。」と語っているが、FWリカルド・ロボが抜けた穴を埋めようと奮闘している。経験の不足している選手なので、どこまで持つかどうかは不安視されるが、ノビシロのある選手なので、今後の成長にも期待したいところである。
■ 7試合負けなし栃木SCは、開幕2連敗を喫したときは、どうなることかと思ったが、ここ7試合で4勝3分けという好成績で、一気に浮上してきた。FC岐阜戦は、ホームゲームだったので、勝ち点「2」をとりこぼす結果となったが、最悪の試合だった2節の大分戦(H)の後、短期間に立て直すことに成功した点は見事で、まずまずのスタートとなった。
メンバーを見ると、FWリカルド・ロボ、DF大久保、DF那須川が退団し、大黒柱のMFパウリーニョも怪我から戻ってきたばかりでベンチスタートが続いているので、スタメン11人に関しては、経験の少ない選手が増えているが、若い選手が奮闘している。中でも、新加入のMFチャ・ヨンファンの活躍はサプライズで、本職はボランチだが、ここ最近は、センターバックで起用されて、守備の安定に貢献している。
また、同じ韓国人のDFユ・デヒョンも、左サイドバックのレギュラーを確保した。オフに、DF那須川、DF入江、DF堤と、左サイドバックをこなす選手が揃って退団したため、左サイドバックのポジションが不安要素となっていたが、穴を埋めている。まだ、攻撃的な良さをフルに発揮するには至っていないが、突破力もあって、キックの精度も高い選手と評判なので、今後、Jリーグに慣れてくると、チャンスに絡むプレーが増えていくのではないか。
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