■ フィナーレ 世界最高峰の戦いであるチャンピオンズリーグの決勝戦。
2008-2009年シーズンの欧州サッカーの締めくくりとなる決勝戦の舞台はイタリアのローマ。スペインのFCバルセロナとイングランドのマンチェスターユナイテッドというメガクラブ同士の戦いとなった。
試合は立ち上がりこそ、マンチェスターUが優勢に進めたが、前半10分にバルセロナのFWエトーが右サイドからシュートを決めて先制。このゴールで試合は一気にバルセロナに傾く。
マンチェスターUはGKファン・デル・サールの活躍で何とか追加点を許さなかったが、後半25分にMFシャビのクロスをFWメッシがヘッドで決めて2点目。結局、バルセロナが2対0で勝利し、マンチェスタUの連覇を阻むとともに、3年ぶりの欧州チャンピオンに返り咲いた。
■ 大きかった先制点人気、実力とも世界のトップを走る両雄の対決は、バルセロナがマンチェスターUを圧倒した。
驚いたのは、経験豊富なマンチェスターUクラスのチームでさえ、大事な試合の先制ゴールを奪われると、普通の精神状態ではなくなって、浮足立ってしまうという点である。序盤の入り方は、むしろ、マンチェスターUの方が良かったが、FWエトーのゴールが試合の流れを大きく変えてしまった。
■ 3トップの時代両チームとも3トップのフォーメーションであったが、旧来型の「センターフォワード+二人のウイング」という構成ではなく、唯一、FW朴智星を除くと、ストライカータイプの選手を並べている。
バルセロナはFWエトー、FWメッシ、FWアンリ。マンチェスターUはもっと変則で、出始めのころはウインガーとして鳴らしたFWクリスチャーノ・ロナウドをサイドではなく、センターで起用。バルセロナもFWメッシがセンターフォワードに入ることと多かった。
Jリーグでもアルビレックス新潟がストライカータイプを3枚、前線に並べる布陣を採用しているが、他のチームはそのような傾向は見られない。欧州は4バックが全盛であるが、4バックのチームに対して3トップは非常に有効であり、今後、日本でも新潟以外に3トップに移行するチームも出てくるのではないか。
■ ワーキング・スターの時代①完勝したバルセロナでやはり目を引くのは、MFシャビとMFイニエスタの二人。
ともに、EURO2008を制したスペイン代表の中心選手で、アーセナルのMFセスク・ファブリガスとバレンシアのMFダビド・シルバの四人はクアトロ・フゴーネス(4人のファンタジスタ)と言われたが、明らかに従来のファンタジスタとは一線を画する。
ファンタジスタの定義は、『シュートやパス、ドリブル等において、極めて高度な「閃き」や「創造性」に溢れた、誰もが予想も出来ないような芸術的なプレーで観客を魅了するプレーヤーのこと』とされる。典型的な例は、ロベルト・バッジオであるが、危うさや脆さを備えることもファンタジスタの要素とされるが、現代版のファンタジスタはその通りではないようだ。
MFシャビとMFイニエスタは誰よりも運動量豊富に動いて攻守にわたってチームに貢献をし、なおかつ、攻撃でも決定的な仕事を見せる。常に高いレベルのパフォーマンスを続けることが出来る点も、新型タイプといえる。
■ ワーキング・スターの時代②以前、オシム監督は、「テクニックがある選手を走れるようにするのと、走れる選手にテクニックをつけるのと、どちらが効率的か。一般的には前者の方が簡単に思われがちだが、走らない選手は本当に走らないのだよ、これが(笑い)。」と語ったことがあるが、現代サッカーは、テクニック or 運動量のどちらかしか持たない選手の活躍の場はほとんどなくなっている。
日本でも同じ傾向が進んでいて、ゴールデン・エイジと呼ばれた79年組の中でも、自らが進化することで現代サッカーに適合することが出来たMF遠藤やMF小笠原といった選手と、適合で出来なかった選手とでは、現在の立ち位置が大きく異なる結果となっている。
日本人選手の中でも、ここ最近、「走るファンタジスタ」と表現できるほどの運動量と創造性を備える選手が生まれてきている。代表格は、広島のMF柏木陽介、C大阪のMF香川真司、浦和レッズのMF山田直輝といった選手であるが、彼らはどちらかというと、『走れる選手がテクニックをつけた例』である。
逆のタイプで、『テクニックがある選手を走れるようにする』という話の成功例は、現時点はなかなか、すぐには思い浮かばないのが現状であるが、MF狩野健太やMF乾貴士といった選手には、可能性を感じる部分はある。
世界のサッカーは日々、進化を見せているが、攻撃だけ、守備だけという選手はもはや必要とされず、極端に表現すると、いかに優秀な『ワーキング・スター』を抱えるか、育てる事が出来るのかが、成功を収めるか、否かの大きな分かれ目ともいえる。
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