■ ザックジャパンにケチをつけるザックジャパンは、2011年1月に行われたアジアカップを制覇し、2014年のブラジルW杯のアジア予選も順調に勝ち点を積み上げている。もちろん、いくつかの部分で改善の余地はあるが、これ以上ないほど、順調にきている。ここに来て、海外組が多くなったが、ほとんどの選手はクラブでも出場機会を得ており、今のところ、試合勘不足の心配も無い。
こうなると、困るのは、代表チームを批判することで、飯を食っている人たちである。今回は、あえて、そちら側の立場に立って、ザックジャパンにケチを付けたいと思う。どうすれば、今のザックジャパンを叩くことができるか?ただ、説得力を伴った批判をするのは、かなり難しい。頭を悩ませることになったが、とりあえずとして、以下の5つが思い浮かんだ。
(1) メンバーを固定しすぎている。 → スタメンの11人(川島・内田・吉田・今野・長友・長谷部・遠藤・岡崎・本田圭・香川・前田)というのは、アジアカップの頃からほとんど変わっていない。唯一、アジアカップの当初は、MF松井がスタメンで起用されていたが、大会途中に怪我をしてMF岡崎がスタメンに昇格しているが、変わっているのはここだけで、2年以上、同じメンバーがレギュラーとして起用されている。
これは、個人的にも、以前から気になっているところで、エントリーでも、何度か触れている。一理あるが、とはいっても、これだけ結果が出ているので、今の段階で、チームを大きくいじる必要性は、あまり感じない。MF遠藤とFW前田の年齢は気になるが、それ以外の選手はノビシロもあって、クラブでも、代表でも、日本代表のレギュラーに恥じないプレーを見せている。
「結果が出ないにもかかわらず、メンバーを固定している。」というのであれば、批判の種になるが、ただ単に、「メンバーを固定するのはダメだ。」と批判するだけでは、ピント外れである。メンバーがコロコロ変わって、成熟しないよりは、メンバーが固定されている方が、はるかにマシである。
さらに言うと、最近のザッケローニ監督は、意外といろいろなことを試していて、「メンバー固定」とは言い難い状況になってきている。しばしば、怪我人が出ていることも関係して、2012年はベストメンバーが揃わない試合の方が多かったと思うが、怪我以外の理由で、DF内田やMF岡崎がスタメンから外れることもあった。昨年の秋ごろから、オートマチックにスタメンが決まる状況ではなくなりつつある。
したがって、少し前の時期であるならいざ知らず、このタイミングで、メンバーを固定していることを問題視するのは、あまり効果的とは言えず、『それを指摘するのは、今じゃないでしょ。』と言いたくなる。やはり、これを切り口に、ザックジャパンを批判しようとするのは、難易度が高いと思う。
(2) Jリーグで結果を出している選手を選んでいない。 → これは、一理ある。よく言われるのは、2012年のJリーグでMVPを獲得した広島のFW佐藤寿が選ばれていないことで、得点ランキングで2位だった鳥栖のFW豊田も選出されていない。「Jリーグで結果を出しているのに代表に呼ばれないのは、間違っている。」という意見はおかしなものではない。今回は、Jリーグがオフの期間ということもあって、海外組を重視しているが、VVVのMF大津よりも、優先されるべき選手は何人かいる。
ただ、メンバーについては、ザックジャパンが誕生して2年半が経過しており、ある程度、固まってきている。CFのポジションでは、FW前田が地位を固めており、FWハーフナー・マイクの高さが武器になることは、いくつかの試合で証明している。そもそもとして、CFの枠は2つあるいは3つしかないので、FW佐藤寿も呼んで、FW豊田も呼ぶというのが、なかなか難しい。
当然のことながら、枠には限りがあるので、新しい選手を試さないことを批判するのであれば、同時に、誰を外すべきなのか、そのあたりにも触れないと、説得力がなくなる。「ずっと選出していた選手を呼ばない。」というのは、大きな決断になるので、次から次へと新しい選手を呼べるわけではない。
(3) 新しい選手を呼んでも、試合で使わない。 → ありがちな批判であるが、賛同はできない。試合で起用されるかどうかは、練習のときのパフォーマンスが大事になってくるので、そこでアピールできなかったのであれば、試合で使われなくても、仕方がないし、交代枠にも限りがある。よって、批判のための批判と言わざる得ない意見であり、「頭の悪い人」と思われるのを避けたいのであれば、これを理由に叩くのは、諦めた方がいい。
(4) やっているサッカーが面白くない。娯楽性に欠ける。 → これは、気にくわないチームを批判するときの定番のフレーズである。近年のJリーグでは、2006年頃の浦和レッズや2010年頃の名古屋グランパスがこう言われた時期があったが、多分に嫉妬心が含まれていて、恰好のいい批判の仕方とは言えない。できれば使いたくない方法であり、自分を貶めることにもつながるので、注意が必要である。
さらには、今の日本代表に当てはめて、批判の種にできるかというと、無理がある。テレビ視聴率も高くて、動員力もあって、サポーターの支持は得られている。また、結果優先のサッカーをしているとは思えず、どちらかというと、娯楽性の高いサッカーをしているので、この切り口で攻めていくのは、相当に無理がある。ここは、触れない方が無難である。
(5) ザッケローニ監督のサッカーは分かりにくい。Jリーグのクラブや日本サッカーに与える影響が少ない。 → これは、きちんと論理立てて主張できるのであれば、叩く理由になる可能性はある。かつて、トルシエ監督が3バックを導入したら、Jリーグのクラブのほどんどが3バックになったことがあったし、また、オシム監督が「考えて走るサッカー」を提唱したら、Jリーグでも、クレバーな選手や運動量のある選手が脚光を浴びるようになった。
それに比べると、ザッケローニ監督が、何か、新しいものを日本にもたらしたかというと、即座に、思い浮かぶものは無い。オフト監督のアイコンタクト、加茂監督のゾーンプレス、トルシエ監督のフラットスリー、ジーコ監督の黄金の中盤、オシム監督の考えて走るサッカー、岡田監督の接近・展開・連続など、これまでの代表チームは流行語やキャッチコピーを生み出しているが、ザックジャパンには、そういうものは見当たらない。
したがって、「革新的ではない。」というのは、批判のネタになりうる。が、時代が変化していて、世界中の出来事がリアルタイムで日本に入ってくる時代になって、また、日本サッカーも大きな進歩しているので、1人に指導者がインパクトのあることを教えられる時代ではなくなっている。そのため、日本代表監督に何か大きなことを期待するのは、昔チックな考え方のようにも思える。
ということで、5つを挙げてみたが、どれも決め手と説得力に欠けている。なので、相当に頑張らないと、あっさりと、一言で反論できるような主張しかできない可能性が高い。繰り返しになるが、今のザッケローニ監督やザックジャパンを批判するのは、相当にクレバーな人でないと難しいと思うし、批評家気取りで安易に批判しようとすると、痛い目に合うだろう。
となると、無難なのは、極論をいうことで、例えば、スペイン代表やドイツ代表やブラジル代表など、世界のトップチームと比べて、「○○が不足している。」、「このままでは、W杯では戦えない。」ということである。世界のトップチームと比べると、まだまだ、個人としても、チームとしても、対抗するのは、難しいので、墓穴を掘る可能性は低くなる。
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