■ 低迷の要因の1つ5勝10敗4分けで16位に低迷する横浜Fマリノス。MF山瀬功治とDF中澤佑二という日本代表の主力2人を軸に数多くの代表経験者を揃えた豪華布陣に対して、「3強(鹿島・浦和・G大阪)にも匹敵する戦力である。」と高い前評判を与えた人もいた。しかしながら、思わぬ大苦戦を強いられている。
監督の交代、外国人選手の不振などなど、名門が低迷する要因はいくつか挙げられるが、その1つに数えられるのが、昨オフのMF吉田孝行の放出。
昨シーズンまでのJ1での通算成績は、228試合で29得点。本職がフォワードで、攻撃的なポジションを担う選手にしてはゴール数が少ないと感じるが、それでも、彼の価値は残した記録だけによらない。スピードがあって、運動量も豊富で、戦術理解度が高く、主力選手ではないが攻守ともに隙の無いプレーを安定して披露する。彼が試合に参加することで、チームは活性化する。彼の不在の影響は、1人の選手の不在にとどまらない。
1977年生まれの31歳。移籍先のヴィッセル神戸でも、必ずしもスタメンというわけでは無いが、ここまでの19試合中16試合に出場。チームのリズムが良くないとき、全体の運動量が不足しているとき、どうしてもゴールが欲しいとき、あらゆる場面で投入されて、チームを蘇生させる。まさしく、J屈指のダイナモである。
■ Jのダイナモもともと、ダイナモ(dynamo)とは、「発電機」を意味し、特に自転車や自動車に付けられる発電機や、発電式の懐中電灯・ラジオなどの発電機を指すが、サッカー用語は、主に中盤の選手に与えられる呼称で、「運動量豊富に動いて、攻守にわたってチームを活性化させる役割を担う選手」を指す。
前述のMF吉田孝行のチームメイトで、ヴィッセル神戸のMF田中英雄も典型的なダイナモである。2006年の神戸のJ2昇格の立役者であるMF田中は172cmで65Kg。恵まれた体では無いが、尽きることのないスタミナを武器に、先発出場のときも、途中出場のときも、常にアグレッシブにプレーする。
他チームでは、今シーズンから大宮アルディージャでプレーするMF内田智也も、ダイナモの典型である。横浜FCで10番を背負ったMF内田はキックの精度も高く、神戸のMF田中英雄と比べると、もう少し洗練されたプレーを見せるが、それでもMF内田がピッチに入ると、周りの選手がより一層生きるようになって、チームが連動する。
それ以外のダイナモを探してみると、今年39歳を迎えた湘南ベルマーレのベテランMF加藤望がいる。2007年シーズンはJ2で10ゴールと驚異のシーズンを送ったMF加藤は柏レイソルで13シーズンに渡ってプレーした百戦錬磨のミッドフィールダー。高度なテクニックも光るが、39歳とは思えない精力的な動きで、チームに喝を入れ続ける。
同じく、ベテランでは神戸のMF栗原圭介の存在も光る。35歳という年齢ながら、19試合中18試合に先発出場して4ゴール。攻守ともに休むことのないプレースタイルは神戸の中盤に欠かせないものであり、若いころはフォワードだったこともあって得点力は並のダイナモ以上。彼が攻撃でいい場面に絡むことが出来れば出来るほど、神戸の攻撃は厚みが出る。まさしくキープレーヤーである。
■ 異質なダイナモ前述のように、「ダイナモ」というと中盤の選手が連想されることが多いが、そんな中で、異彩を放つのが、ガンバ大阪のFW山崎雅人。昨シーズン、大分トリニータでシャムスカ監督の指導を受けてブレークした26歳のフォワードである。しかしながら、挙げたゴールは26試合で1ゴールのみ。チームへの貢献度の高さは評価されていたが、層の厚い移籍先のG大阪で、果たしてどれだけ出場機会が得られるか、疑問の声は少なくなかった。
しかしながら、プレシーズンから、積極的にディフェンスに参加し、ボールの無いところでも惜しみないフリーランニングを続けた。その結果として、チームメイトの厚い信頼を勝ち取って、わずか数試合の間で、G大阪に無くてはならない存在となった。西野監督も移籍1年目から大きな信頼を寄せており、FW陣ではFWバレーやFWルーカスに次ぐ3番手の地位を確立した。
MF遠藤やMF二川に代表されるように、テクニックのある選手が揃うG大阪の攻撃陣だが、ともすると、一本調子になりやすい。そういうチームが停滞した時こそ、FW山崎に出番が回ってくる。彼が前線をかき回すことで、MF遠藤やMF二川の才能が、漏れることなく引き出される。
■ 日本代表のダイナモもちろん、「ダイナモ」について語る上で、FC東京のMF羽生直剛に触れないわけにはいかない。イビチャ・オシム監督に見いだされた167cmのミッドフィールダーは、ジェフ市原・千葉だけでなく、日本代表として日の丸をつけて、ピッチ上で躍動した。
2006年の夏、オシム監督によって初めて日本代表に選ばれたとき、彼の選出を疑問視する声は少なくなかった。本人も語っていたように、MF羽生よりもテクニックがあって、MF羽生よりも華やかで、MF羽生よりもゴール数やアシスト数の多いトップ下の選手は、他に何人も存在した。
しかしながら、そういった懐疑的な声は、日本代表のピッチの上で、自らの力で封じて見せた。明らかにMF羽生よりも才能のある選手はいるが、その選手がMF羽生の代わりに代表のピッチに投入されても、MF羽生がこなす以上の仕事は出来なかった。オシムジャパンは、MF羽生が動くことでチーム全体が運動量を取り戻し、いくつもの流れるような攻撃を披露して見せた。
■ 新世紀のダイナモ時が経って2008年。3月のバーレーン戦での敗戦を受けて、岡田監督が日本代表に招集したのは、19歳のJ2所属のMF香川真司だった。
キレのあるドリブルや正確なラストパスばかりがクローズアップされるが、彼の最大の武器は運動量。90分間、休むことなくピッチ上を走り続けてチャンスシーンを演出する。セレッソ大阪の多くのサポーターは、新しいスター選手に背番号「8」の姿を連想させる。
小気味よいドリブル、絶え間ない運動量、抜群の飛び出しを武器に1998年と2002年の2度のワールドカップメンバーとなったセレッソ大阪のMF森島寛晃。桜色のユニフォームの背番号「8」を背負い続けた168cmの日本代表戦士は、Aマッチ64試合で12ゴール。2001年のトルシエジャパンの時代には、トップ下はMF中田か?MF森島か?で大いなる議論を呼んだ。
オフトジャパンのMF北澤豪から始まって、トルシエジャパンのMF森島寛晃、オシムジャパンのMF羽生直剛。日本代表が日本らしいサッカーをするならば、優秀なダイナモは不可欠である。
ストライカーや司令塔と華やかな役割を担う選手だけでなく、ダイナモにも注目してみませんか?優秀なダイナモを擁するクラブは、きっと魅力的なサッカーをするはずである。
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>>> Yusuke-EuExさん
どうもコメントありがとうございます。山崎については、これだけフィットして出場機会を得るとは、シーズン前に予想はしていませんでした・・・。スピードに乗ったドリブルも武器の1つですので、さらなる活躍が期待できるのではないでしょうか。
>>> 太郎さん
どうもコメントありがとうございます。こういうコメントを頂けると嬉しいです。(ただ、この記事については、作成にかなりの時間がかかっていますので、ご了承ください・・・。)
毎回更新を楽しみに見ています!
こういったのたくさん書いてください!!
どうもガンバサポです。山崎くんは確実に西野監督の求めるタイプの選手でしたね。
山崎くんが生きるシチュエーションが今までガンバが苦手とされた「1点差リードで逃げ切り」ですね。相手もカウンターからしたたかに点を取りにいくことが多いわけですがそこで前線からフォアチェックされてディフェンスラインを乱されたらその意識も乱れるでしょうし。
もちろん山崎くんも「クローザー」の役割で満足などしないでしょうし、これからに期待してます!
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