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主要五カ国のドル離れとその理由

Top 5 countries opting to ditch US dollar & the reasons behind their move

RT/ Home/Business News/   2019年1月2日 

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ 2019年3月23日)

<記事原文>寺島先生推薦
https://www.rt.com/business/447915-top-states-ditching-dollar/

Top 5 countries opting to ditch US dollar & the reasons behind their move
© Getty Images

昨年は、世界の地政学的空間を二つの陣営に分裂させることになった出来事がたくさんあった。 二つの陣営の一つは、ドルを普遍的金融ツールとして使うことを支持する陣営であり、もう一つはドルから離反しつつある陣営である。 

アメリカ政府が仕掛ける様々な経済制裁や貿易摩擦によって国際的な緊張が高まり、標的となった国々は、現在のドル一辺倒の支払いシステムを見直さざるを得なくなっている。 

RTは最近の「脱ドル化」現象の真相を探った。 以下、主要五カ国のドル依存脱却の現状と依存脱却に至る理由をまとめた。

中国

米中間の貿易摩擦が進行中であることと、また中国の主要貿易相手国への経済制裁のため、世界第二位の中国経済は、やむを得ず自国経済のドル依存緩和へと舵を切っている。

中国政府には特徴的なソフトパワー・スタイルで、この問題に関してまだ声高な声明は出していない。 しかし、中央人民銀行は米国債の保有高を定期的に削減している。 それでもなお中国は世界最大の米国債保有国だが、2017年5月以来過去に例を見ないほどの保有高にまで削減した。 

さらに、中国は直ちにドルに背を向けることはせず、自国通貨である元を国際化する努力をしている。 これまでドル、円、ユーロ、そしてポンドで構成されていたIMFの通貨バスケットに、2016年、元が加わった。 中国政府は元の強化に向けて、最近次のような手段を講じている。 
    ① 金保有量を増やす
    ② 元建ての原油先物取引を手がける
    ③ 貿易相手国と元で交易する

野心的な「一帯一路」構想の一貫として、元の使用を促進するため、参加国へ「スワップ執行ファシリティ」*を導入する計画がある。 さらに、中国は「地域包括的経済連携(RCEP)」と呼ばれる自由貿易協定を積極的に推し進めている。 この協定には東南アジア各国が含まれる。 RCEPは「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」に容易に取って代わることもできるだろう。 アメリカはトランプ大統領が政権を取るとすぐに同協定から離脱したため、TPPの骨組みはガタガタになっているからだ。 RCEPには16カ国が参加しており、34億人近い人口をまとめ上げる協定となることが期待され、49.5兆ドル規模の経済基盤を形成することになる。 これは世界のGDPのほぼ40%にあたる。 
   *[訳注:スワップ執行ファシリティ(swap-execution facilities) ]  (「投資
   用語集」より)
      デリバティブ取引は実態把握が困難であり、そのためリーマン・ショッ
     クに端を発する金融危機を未然に防げなかったとの反省から、2013年
     10月から米国で導入された電子取引基盤のこと。
      デリバティブ取引の大半が情報開示の義務の無い店頭(OTC:over-the
     -counter)等の相対取引であったため、金融危機再発防止のたに制定さ
     れたドッド・フランク法(金融規制改革法)によりデリバティブ取引をスワッ
     プ執行ファシリティ(SEF)上で行うことが義務付けられ、取引所の売買と
     同様でそれぞれ複数の売買注文を受け付けて取引を成立させることと
     なり、取引の透明度の向上や金融規制当局の不正監視が容易となった。
     また、デリバティブ取引の清算後に取引情報蓄積機関(swap data
     repository)への取引報告も義務付けられている。
      EUにおいては、「組織化された取引施設(OTF:organized trading facility)」
     がSEFと同様な電子取引基盤として整備されている。


インド

世界第六位の経済大国にランクされるインドは、世界最大の商品輸入国のひとつである。 同国が世界のほぼすべての地政学的紛争からの影響をまともに受け、貿易相手国に課せられた制裁によって大きな影響があることは当然である。

今年初め、インド政府はルーブルを使ってロシア製S-400対空システムの対価を支払った。 アメリカがロシアに対して経済的なペナルティーを導入した結果である。 インドは、また、アメリカ政府がイランに対する経済制裁を再開した後、ルピーを使ってイランの原油を購入せざるを得なかった。 12月、インドとアラブ首長国連邦は「通貨スワップ」協定に調印し、第三者の通貨[ドル]を介さずに、交易と投資の拡大を図ることにした。

インドが購買力平価では世界第三位の国であることを考えると、同国のこのような動きは世界貿易におけるドルの役割を著しく低下させることにもなるだろう。 

トルコ

今年初め、トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンはドル独占を終了させる新しい政策を発表し、貿易相手国とは非ドル仕立ての交易を目指す、とした。 その後の声明で、エルドアン大統領は、中国、ロシア、ウクライナと自国通貨で交易する準備を進めていることを発表した。 また、トルコはイランとの交易にドルではなく自国通貨が使えないかどうかの議論も行った。 

こういった動きの背景には、いくつかの政治的、経済的理由がある。 トルコとアメリカの関係は、2016年のエルドアン大統領追放クーデター未遂事件以来、悪化している。 報道によれば、エルドアンはこのクーデターにアメリカが関与しているのではないかと疑っている。 そして、トルコ政府がクーデターの黒幕として非難している亡命中のイスラム聖職者フェトフッラー・ギュレンに、アメリカが隠れ家を提供していることを糾弾している。

トルコ経済が落ち込んだのは、クーデター未遂事件に関連して、アメリカの福音派牧師アンドルー・ブランソンがテロ容疑で逮捕されたことに対して、アメリカが経済制裁を導入してからだった。 

エルドアンは、アメリカ政府が、①世界貿易戦争の端緒を開いた、②トルコに経済制裁を科した、③イランを孤立させようとしたことを繰り返し非難した。

さらにトルコは、ドルから離れ、自国通貨を支える試みに取り組んでいる。 トルコ通貨リラはドルに対して昨年度比ほぼ50%安となっている。 リラ暴落に、猛烈なインフレと物価、公共サービスの値上げが加わり、事態はさらに悪化した。

イラン

イランは世界交易の場面に意気揚々と復帰したが、長くは続かなかった。 トランプは大統領当選後、2015年イランとの間で署名された「核合意」から離脱する選択をした。 この「合意」にはイギリス、アメリカ、ドイツ、ロシア、中国、そしてEUも参加していた。

石油資源の豊富なイランは、アメリカ政府が再開した厳しい経済制裁の標的となった。 アメリカは、同時に、この禁輸措置に違反するいかなる国もペナルティーの対象になる、と脅した。 一連の懲罰的措置でイランとのビジネスは禁止され、イランの石油産業は身動きが取れなくなった。

アメリカが経済制裁を発動したため、イラン政府はドルに代わる通貨で、輸出した原油の代金を受けざるを得なくなった。 インドの原油代金支払いはインド通貨ルピーで行う契約で、イランは何とか取引きをつなぎ止めることができた。 また、隣国イラクとは通貨を介在させない「バーター取引」の交渉も行った。 この二国は、相互交易にイラク通貨ディナールを使うことも計画している。 ドル依存の度合いを減らすためだ。 アメリカの経済制裁に関連して、銀行業務には種々の問題が発生している。

ロシア

アメリカは「ドルの信頼を失墜させる」ことで「戦略的には壮大な誤りを犯している」、とプーチン大統領は述べた。 プーチンは、ドルを使った取引きの制限や、ドルの使用を禁ずる指示を一度もしたことがない。 しかし、今年初め、ロシア金融大臣アントン・シルアノフは、次のように語った。 ロシアとしてはアメリカ国債の保有を止め、より確かな資産としてルーブル、ユーロ、そして貴金属に傾かざるを得ない、と。

ロシアは、自国経済の脱ドル化に向けた措置をすでにいくつか実施している。 2014年以来、様々な問題をめぐるアメリカの経済制裁のために、ずっしりとロシア経済に大きな負担をかけてきているためだ。  アメリカが、ロシアの金融システムを標的にした新たな、一層厳しい経済制裁の脅しをかけきたので、ロシアは、「国債銀行間通信協会(SWIFT)」、Visa、マスターカードに代わる自国支払いシステムを開発した。 

これまでのところ、ロシア政府は輸出取引きの一部で、ドル建てを止めることができた。 中国、インド、そしてイランを含む国々と「通貨スワップ」協定の署名をしている。 ロシアは最近、ドルではなくユーロを使ったEUとの交易を申し出た。

かつてはアメリカ国債保有高上位10カ国に入っていたロシアだが、それをほぼゼロにした。 アメリカ国債を売却したお金を使い、外貨準備高を増やし、自国通貨ルーブルを安定させるため金の備蓄に努めている。 
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