日曜日の午後、銀座に出たのだが、ちょっと時間があったので、コアビルの本屋をブラブラして目についた、「すし、うなぎ、てんぷら~林 修が語る食の美学」を購入。
「今でしょう!」先生が出したグルメ本。人気が継続しているまさしく「今」のうちに、何の分野ででも稼ぐぞという逞しい商魂が素晴らしいですな(笑) 普通、芸能人の書くグルメ本など買わないが、購入したのは、時折尋ねる築地の「天麩羅なかがわ」が掲載されていたから。
寿司、鰻、天麩羅のジャンルで一店ずつ紹介して店主に仕事を聞くインタビュー集となっている。「今でしょう」先生は学生時代からアルバイトで稼いであちこち食べ歩いていたというのだが、自身の食道楽の遍歴については、割と曖昧模糊とした部分あり。しかし、インタビューは実に的確で興味深く仕上がっている。
寿司屋は根津の「かじわら」。この店は先日BSの「早川光の最高に旨い寿司」に出ていた。温厚でおとなしく見える親方だが、番組での応対見ていると、ちょっと踏み込むと衣の内に偏屈の鎧が見え隠れするような気がした。この本のインタビュー読んでも、割と変わったところあり。「類友」というが「今でしょう」先生も人間が相当変わっているから、波長が合う職人ということだろうか。
鰻の店は江戸前ではなく九州の店が紹介されているのだが、この職人の話は従来の常識を覆して面白い。「蒸しにほとんど仕事させる江戸前は楽な仕事」、「鰻は客の顔を見てから裂くものだというが、それは冷蔵庫のなかった江戸時代の話。実際には先にさばいて身肉のアミノ産を熟成させたら旨味がある」等、なるほどそれも道理だと頷いた。
さて、肝心のこの本購入した理由である「天麩羅なかがわ」であるが、真面目な天麩羅職人の仕事を中川氏本人が語って実に面白い。
実際に、この店のカウンタに座って天麩羅が揚がるのを待ちながら仕事を見ていると、海老やイカを揚げる際には秒単位で真剣に油から出すタイミングを測っているし、キスなどは香ばしく焦げる寸前まで水分を抜いてじっくり揚げているのが分かる。衣のつけかたや油の温度コントロールにも実に細心に気を配っている。
中川氏は仕事中は寡黙で、あまり話好きではないように思えるが、他の客がおらず手が空いた時に、天種の旬の事や仕事の事を尋ねると、実に真剣に語ってくれる。聞くと何でも話してくれるのは、寿司屋でもそうだが職人の自信の現れでもある。
この本のインタビューでも、中川氏は実に真摯に、自分の仕事や店の事を語っているのだが、どの話も実に印象的。
キスをさばいて仕込むと、どれが一番良いかはきちんと分かる。「例えば30匹仕込んだ後で良い順に並べろと言われたら、1番から30番まで並べられますよ」とサラっと言う凄み。仕込みの作業の中で、どれだけ細心に心を澄ませて素材と対話しているかが窺われるのだった。
おきまりのコースとおまかせに出す種の違いについて裏表なく率直に語るところも興味深い。自分の仕事を分かってくれるおまかせの客には、その時の最高の物を最高の状態で供したいという職人の静かな矜持。いつ行っても裏切られることのない実によい店。そうだ、去年は白魚の時期をすっ飛ばしてしまったのだが、そろそろ白魚を食しに行かないと。
「今でしょう!」先生が出したグルメ本。人気が継続しているまさしく「今」のうちに、何の分野ででも稼ぐぞという逞しい商魂が素晴らしいですな(笑) 普通、芸能人の書くグルメ本など買わないが、購入したのは、時折尋ねる築地の「天麩羅なかがわ」が掲載されていたから。
寿司、鰻、天麩羅のジャンルで一店ずつ紹介して店主に仕事を聞くインタビュー集となっている。「今でしょう」先生は学生時代からアルバイトで稼いであちこち食べ歩いていたというのだが、自身の食道楽の遍歴については、割と曖昧模糊とした部分あり。しかし、インタビューは実に的確で興味深く仕上がっている。
寿司屋は根津の「かじわら」。この店は先日BSの「早川光の最高に旨い寿司」に出ていた。温厚でおとなしく見える親方だが、番組での応対見ていると、ちょっと踏み込むと衣の内に偏屈の鎧が見え隠れするような気がした。この本のインタビュー読んでも、割と変わったところあり。「類友」というが「今でしょう」先生も人間が相当変わっているから、波長が合う職人ということだろうか。
鰻の店は江戸前ではなく九州の店が紹介されているのだが、この職人の話は従来の常識を覆して面白い。「蒸しにほとんど仕事させる江戸前は楽な仕事」、「鰻は客の顔を見てから裂くものだというが、それは冷蔵庫のなかった江戸時代の話。実際には先にさばいて身肉のアミノ産を熟成させたら旨味がある」等、なるほどそれも道理だと頷いた。
さて、肝心のこの本購入した理由である「天麩羅なかがわ」であるが、真面目な天麩羅職人の仕事を中川氏本人が語って実に面白い。
実際に、この店のカウンタに座って天麩羅が揚がるのを待ちながら仕事を見ていると、海老やイカを揚げる際には秒単位で真剣に油から出すタイミングを測っているし、キスなどは香ばしく焦げる寸前まで水分を抜いてじっくり揚げているのが分かる。衣のつけかたや油の温度コントロールにも実に細心に気を配っている。
中川氏は仕事中は寡黙で、あまり話好きではないように思えるが、他の客がおらず手が空いた時に、天種の旬の事や仕事の事を尋ねると、実に真剣に語ってくれる。聞くと何でも話してくれるのは、寿司屋でもそうだが職人の自信の現れでもある。
この本のインタビューでも、中川氏は実に真摯に、自分の仕事や店の事を語っているのだが、どの話も実に印象的。
キスをさばいて仕込むと、どれが一番良いかはきちんと分かる。「例えば30匹仕込んだ後で良い順に並べろと言われたら、1番から30番まで並べられますよ」とサラっと言う凄み。仕込みの作業の中で、どれだけ細心に心を澄ませて素材と対話しているかが窺われるのだった。
おきまりのコースとおまかせに出す種の違いについて裏表なく率直に語るところも興味深い。自分の仕事を分かってくれるおまかせの客には、その時の最高の物を最高の状態で供したいという職人の静かな矜持。いつ行っても裏切られることのない実によい店。そうだ、去年は白魚の時期をすっ飛ばしてしまったのだが、そろそろ白魚を食しに行かないと。
- 関連記事
-
- 芥川賞受賞作、「火花」を読んだ。 (2015/08/31)
- 「浅草の勘三郎: 夢は叶う、平成中村座の軌跡」を読んだ。 (2015/04/22)
- 「すし、うなぎ、てんぷら~林 修が語る食の美学」 (2015/02/16)
- 94歳の歌舞伎役者、「小山三ひとり語り」を読んだ。 (2014/10/15)
- 「球童 伊良部秀輝伝」 (2014/07/22)
| ホーム |