■ 第29節J2の第29節。10勝12敗5分けで勝ち点「35」のザスパクサツ群馬がホームの正田醤油スタジアム群馬で昇格1年目の金沢と対戦した。金沢は10勝6敗12分けで勝ち点「42」。金沢は6位とプレーオフ圏内に位置するが9試合勝ちなしと苦しんでいる。この日は群馬県のマスコットキャラクターである「ぐんまちゃん」が2014年のゆるキャラグランプリで悲願の優勝を果たしたことを記念した限定ユニフォームを着用した。
ホームの群馬は「4-2-3-1」。GK富居。DF小柳、有薗、黄誠秀、小林亮。MF坂井、アクレイソン、小林竜、青木良、オリベイラ。FW野崎桂。キャプテンのMF松下裕と攻撃におけるキーマンのMF吉濱は出場停止で、開幕から全試合でスタメン出場していた流通経済大出身の大卒ルーキーのMF江坂は今シーズン初のベンチスタートとなった。1トップでプレーするFW野崎桂はここまで20試合で4ゴールを挙げている。
対するアウェイの金沢は「4-2-2-2」。GK原田。DF辻尾、チャ・ヨンファン、作田、野田紘。MF秋葉、山藤、佐藤和、茂木駿、清原。FW大町。夏の移籍市場でJ1の仙台から加入したMF茂木駿は2試合連続スタメンとなった。攻撃の中心となるFW水永はベンチスタートで、FW大町が1トップの位置でスタメン起用された。「だいちょー」ことFW大町は3節の横浜FC戦(H)以来なので久しぶりのスタメンとなった。
■ MF江坂が後半49分に劇的な決勝ゴール試合はどちらかというとホームの群馬ペースで進んでいく。MF江坂、MF吉濱、MF松下裕と中盤の軸となる3人がスタメンから外れたが、17節の栃木SC戦(A)以来のスタメンとなった新外国籍選手のMFオリベイラを中心に効果的な攻撃を見せる。9試合勝ちなしと勝利から見放されている金沢は仙台から期限付き移籍のMF茂木駿が右足できわどいシュートを放ったが、厚みのある攻撃はほとんどできない。
押し気味で試合を進める群馬は後半13分にエースのMF江坂を投入。さらに後半20分には元日本代表のMF永井雄、後半31分にはスピードのあるMFカイケを投入。攻撃的なカードを次々に投入して攻め込むが決定力を欠いてなかなかゴールを奪えない。しかし、終了間際の後半49分に途中出場のMFカイケのCKからファーサイドでフリーになったMF江坂が豪快なヘディングシュートを決めて土壇場で群馬が先制する。
大卒ルーキーのMF江坂は今シーズン8ゴール目となった。23節の千葉戦(A)以来のゴールとなった。結局、スタメン落ちを経験したMF江坂がヒーローとなった群馬が1対0で勝利した。群馬はここ6試合は4勝1敗1分け。トータルでは11勝12敗5分けとなった。一方の金沢はこの日もノーゴール。これで10試合勝ちなしとなったが、ついにプレーオフ圏内から外れて9位まで順位が落ちた。踏ん張りどころを迎えている。
■ 10試合勝ちなしで9位に転落したツエーゲン金沢一時は首位に立つなど前半戦のJ2の主役だった金沢であるが、ここに来て急ブレーキがかかっている。6月21日(日)に行われた第19節の福岡戦(A)で勝利したのが最後。2か月ほど勝利から見放されている。ここ10試合の成績は0勝4敗6分け。ライセンスの問題があるので「6位以内に入ったとしてもプレーオフに出場する権利を得るのは難しい。」と報道されているが、ついにプレーオフ圏外に転落してしまった。
堅い守備と必殺のセットプレーを武器に着実に勝ち点を積み上げてきた金沢だったが、ここ最近の10試合では7得点のみ。シーズン前から懸念されていた得点力不足の問題が深刻になってきた。上位争いをしていたシーズンの前半戦はDF辻尾やMF山藤の精度の高いプレイスキックから欲しい時間帯にゴールを奪うことができていたが、昇格1年目でこれほどの結果を残すと相手チームからのマークは厳しくなる。
J1ライセンスを取得するためには自治体の協力は不可欠で、さらに言うと、自治体のバックアップを受けるためには地元の石川県民の盛り上がりが不可欠であるが、プレーオフに参加できるか否かは別として、プレーオフ圏内でシーズンを終えるのか、このまま失速してシーズンを終えるのかでは全然違ってくる。(※ 森下監督は上位争いをしていた時期から「あくまでも目標はJ2残留だ。」と謙虚に話しているが・・・。)
刺激が欲しいチーム状況ということもあって夏の移籍市場は積極的に動いた。資金力のあるクラブではないが、甲府のDF野田紘と仙台のMF茂木駿を獲得した。今シーズンの金沢は左サイドが弱点になっており、MF清原とDF辻尾のいる右サイドと比べると武器にならなかった。プロ入り後は左WBや左ストッパーでプレーすることが多かったが、攻撃力を持った左SBのDF野田紘の獲得というのは効果的と言える。
■ 万能型のアタッカーのMF江坂任一方の群馬は2連勝となった。MF松下裕とMF吉濱を出場停止で欠く苦しい布陣だったが、MF坂井ら代わりの選手の頑張りが目立った。何度かあった決定機を生かせずスコアレスドローで終わりそうな雰囲気だったが、本当のラストプレーでMF江坂の決勝ゴールが生まれた。怪我でスタメンから外れたわけではなさそう。奮起を期待したスタメン落ちだったと思われるが、見事すぎるヘディングシュートだった。
大卒ルーキーのMF江坂はこれで今シーズン8ゴール目。先日の試合までのデータではドリブル数が6位で、シュート数が3位で、スルーパスの本数が7位ということで、多くの攻撃的なスタッツでJ2屈指の数字を残している。「得点感覚の鋭い点取り屋」という前評判で、実際に点を取るセンスを持っているが、ドリブルもできるし、パスも出せるし、スピードもあるし、献身性もある。万能型のアタッカーである。
「最後にMF江坂がすべてを持って行った。」という群馬のサポーターには痛快な試合になったが、興味深かったのは群馬の服部監督の奇襲戦法である。MF江坂がスタメンから外れて、MF吉濱とMF松下裕は出場停止。どういう並びになるのか?が注目されたが、普段はCBでプレーする守備の要である長身のDF青木良が高い位置に入って、トップ下での起用が予想された本職・ボランチのMF黄誠秀がCBの位置に入った。
■ 既成概念を打破する服部監督の奇策キックオフの時点ではMF黄誠秀が高い位置に入って、DF青木良は普段通りに最終ラインに位置したが、最初のワンプレーが終わったあたりでポジションチェンジが行われた。結局、DF青木良とFW野崎桂というハイボールに強い2人を前線に並べてビハインドのときの試合終盤に行うようなパワープレーを試合の立ち上がりから行った。立ち上がりからCBの選手を前に上げてパワープレーを行うのはJリーグでは珍しい。
結局、DF青木良が前目のポジションでプレーしたのは最初の10分間のみ。前半10分あたりを過ぎるとDF青木良がCBの位置に戻って、MF黄誠秀がトップ下に入るノーマルな布陣になったが、完全な奇策であり、奇襲だった。結局、この時間帯にゴールを奪うことはできなかったので「大成功した。」とは言えないが、「相手のリズムを壊す。」という意味では効果的な采配で、非常に面白い作戦だったと言える。
この日の金沢は守備の要であるDF太田康が欠場した。DFチャ・ヨンファンがCBの位置に入ったので、そのあたりも関係していると思うが、「普通であれば試合の終盤にしか実施しないパワープレーを最初の10分間だけ行う。」という作戦は使い方次第では効果的な作戦になりうる。「パワープレーを行うのは試合の終盤だけ」というのは1つの常識になっているが、既成概念を打破するよく練られた戦法だったといえる。
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