■ J2の第35節J2の第35節。11勝15敗8分けで勝ち点「41」の栃木SC(17位)と、12勝9敗13分けで勝ち点「49」の京都サンガ(8位)が栃木県グリーンスタジアムで対戦した。J2のプレーオフ争いは6位の大分が勝ち点「51」で、7位の山形と8位の京都と9位の千葉の3チームが勝ち点「49」で追っている。8位の京都はPO圏内で6位の大分との差が「3」となっている。
ホームの栃木SCは「4-2-2-2」。GK鈴木智。DF山形辰、赤井、チャ・ヨンファン、荒堀。MF岡根、本間、廣瀬、近藤祐。FW杉本真、大久保哲。190センチのFW大久保哲は30試合で7ゴールを挙げている。MF小野寺とMF西澤の2人が出場停止で、今夏にJ1の新潟から移籍してきたベテランのMF本間は今シーズン4試合目のスタメンとなった。
対するアウェーの京都は「4-1-2-3」。GKオ・スンフン。DF石櫃、酒井隆、内野、福村。MF田森、田中英、中山博。FWドウグラス、大黒、駒井。CBのDFバヤリッツァと中盤のMF工藤浩の2人は出場停止となった。エースのFW大黒はここまで34試合で22ゴールを挙げており、2位に6ゴール差をつけてJ2の得点ランキングの首位を独走している。
■ 2対1で栃木SCが競り勝つ試合は前半7分にホームの栃木SCが先制する。左サイドからMF近藤祐がゴール前にクロスを入れると、相手2人と対峙しながら競り勝ったFW大久保哲が落としたボールをFW杉本真が左足で流し込んで先制ゴールを奪う。しかし、京都も前半19分にFWドウグラスの落としからエースのFW大黒が左足で決めてすぐさま1対1の同点に追いつく。
1対1で迎えた後半18分に栃木SCは中盤でMF田中英からボールを奪ってカウンターを仕掛けると、右サイドを駆け上がったボランチのMF本間の折り返しをFW杉本真が押し込んで2対1と勝ち越しに成功する。背番号「10」を背負うFW杉本真はこの試合は2ゴールの活躍で今シーズン5ゴール目。ここ6試合で4ゴールと量産体制に入っている。
京都は後半の終了間際にDF石櫃に決定機が訪れるがフリーで放ったヘディングシュートは枠には飛ばず。結局、2対1でホームの栃木SCが競り勝った。栃木SCは4試合ぶりの白星で、22節から27節にかけて6連敗を喫した後は8試合で3勝2敗3分けとなった。一方の京都は3試合ぶりの敗戦で、3年連続となるプレーオフ進出に黄色信号が灯った。
■ 背番号「10」のFW杉本真が2ゴールの活躍試合前の段階で17位だった栃木SCは非常にいい内容で上位の京都から勝ち点「3」をもぎ取った。川勝監督率いる京都は「試合の立ち上がり」に大きな課題を抱えているが、この日の京都は「試合の入り方」は悪くなかった。むしろ、良かった部類と言えるが、前半7分に栃木SCが先制ゴールを奪ったことで試合を優位に進めることができた。
2ゴールを挙げたFW杉本真がヒーローになったが、1点目も、2点目も、ポジショニングが良かった。そして、1点目はターゲットマンのFW大久保哲の落としが見事で、2点目は中盤の好守備からカウンターを仕掛けた。どちらもチームとして狙っている形から生まれたゴールで、何人もの選手が絡んだいい形から2つのゴールが生まれた。
栃木SCは夏場に6連敗を喫するなど苦しんだ時期もあったが、昨オフに経営難のためMFクリスティアーノやMFパウリーニョなど個の力に優れた助っ人が抜けて、さらにはMF菊岡やDF當間など日本人のキープレーヤーも他クラブに流出するなど非常に台所事情が苦しかったことを考えると「残留争い」に全く巻き込まれることがなかった点は評価できる。
■ 組織的なチームを作っている阪倉監督もちろん、10位→10位→11位→9位と昇格2年目の2010年以降は毎年、中位に食い込んできた直近の4年間と比べると順位は悪くなっているが、クラブを取り巻く環境が全く異なるので同じ目線で評価することはできない。紆余曲折はあったが、監督としてのキャリア1年目となる阪倉監督はまずまず頑張っていると言える。
「爆発的な個の力」を持った選手が何人も抜けてしまったので、なかなか思うような結果は出ていないが、サッカーの質自体は2012年や2013年と比べても今シーズンの方が優っているように思える。「組織力」という点ではJ2の中では上位クラスで、自分が頭に描いているサッカーを選手にたちに伝える能力に長けた指導者なのではないかと思われる。
ある程度のベースはできているので、ここからどこまで上積みができるかが大事になってくるが、今夏も主力級のFW瀬沼やDFドゥドゥなどを失っている。経営的には苦しい。クラブしての体力を付けて流出や引き抜きの確率を下げることが求められるが、「クラブ力をアップさせる。」というのは短期間では非常に難しいことである。
■ 苦しくなってきた京都サンガ一方の京都は試合前の段階で6位の大分との差は「2」だった。1試合で逆転できる差だったが、大分が勝利して、京都は敗れたので、その差は「5」に広がった。5位の岡山は引き分けだったので、岡山との差も「5」となったが、残り7試合で「5差」というのは簡単には逆転できない差である。非常にダメージの大きい敗戦と言わざる得ない。
エースのFW大黒はこの日も1ゴールを記録した。これで23ゴール目となったが、今シーズンのFW大黒の活躍は目覚ましくて、攻撃陣を引っ張っている。新加入のFWドウグラスもまずまずのプレーを見せており、チーム状態は悪くないと思うが、相手に先制点を奪れる試合がほとんどなので、難しい試合展開になることが続いている。
これだけ続くと監督や選手もナーバスになって来るが、先のとおり、この日は「試合の入り方」は良かった。フルパワーで試合に入ることができたが、190センチのFW大久保哲の高さに対抗できなくて、FW杉本真へのマークも甘くなってしまった。CBの主軸のDFバヤリッツァを出場停止で欠いた影響は少なからずあった。
京都はJ2の22クラブの中では上位クラスの資金力と戦力を有しているが、そうは言っても、「昇格の可能性は高い。」、「PO出場は当たり前。」と言えるほどではない。湘南や松本山雅や磐田はもちろんのこと、岡山や大分や千葉や山形と比べても大きなリードがあるわけではない。内外の雰囲気も含めて難しい終盤戦になってきている。
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