■ J2の第8節J2の第8節。4勝2敗1分けで勝ち点「13」の松本山雅(4位)と、3勝1敗3分けで勝ち点「12」の京都サンガ(5位)がアルウィンで対戦した。J2は開幕7連勝で勝ち点「21」を稼いでいる湘南が首位を走っており、4勝1敗2分けで勝ち点「14」の長崎が2位で、4勝2敗1分けで勝ち点「13」の磐田が3位に付けている。この試合はその次に位置する4位の松本山雅と5位の京都の上位対決となった。
ホームの松本山雅は「3-4-2-1」。GK村山。DF飯田、飯尾和、犬飼。MF岩間、喜山、田中隼、岩沼、岩上、船山。FW塩沢。フォワード陣に怪我人が出ており、昨シーズンは栃木SCで16ゴールを挙げたFWサビアは欠場中で、184センチのFW棗も怪我で離脱したので、FW塩沢にかかる負担が大きくなっている。2試合連続でDF飯尾和が3バックの中央に入って、DF多々良はベンチスタートとなった。
対するアウェーの京都は「4-2-2-2」。GKオ・スンフン。DF石櫃、酒井隆、バヤリッツァ、比嘉。MF工藤浩、ジャイロ、駒井、山瀬功。FW大黒、有田。6試合で2ゴールを挙げているFWアレッサンドロは欠場で、神戸から加入のFW有田がスタメンで起用された。2012年に愛媛FCで14ゴールを挙げている。弟のFW有田光成は2012年は松本山雅に所属した。元日本代表のFW大黒はここまで6ゴールを挙げている。
■ 上位対決はドローJ2の上位対決なのでがっぷり四つの展開になるかと思われたが、前半は京都が相手を圧倒する。特に前半15分あたりから完全に押し込んで、分厚い攻撃を見せる。しかし、横浜FMから加入した左SBのDF比嘉のシュートがクロスバーに当たったり、MF駒井の決定的なシュートが松本山雅のDF飯尾和にブロックされたり、あと少しのところでゴールが決まらない。前半は0対0で終了する。
前半は一方的な展開だったが、後半は松本山雅もチャンスを作るようになる。均衡を破ったのはホームの松本山雅で後半29分にMF船山が自ら得たPKを決めて先制に成功する。エースのMF船山は今シーズン6ゴール目となった。しかし、後半33分にMF工藤浩の縦パスから裏に抜け出した途中出場のFW三平が決めてすぐに京都が1対1の同点に追い付く。FW三平は今シーズン初ゴールとなった。
追いついた京都は後半40分にDF石櫃のパスを受けたFW大黒が滑らかな動きから右足で決めて2対1と逆転に成功する。FW大黒は今シーズン7ゴール目で、ここ3試合で6ゴールと量産体制に入っている。しかしながら、後半45分に松本山雅が右サイドのCKを獲得すると、MF岩上の蹴ったボールをCBのDF犬飼がヘディングシュートを決めて土壇場で2対2の同点に追い付く。DF犬飼は今シーズン初ゴールとなった。
その後、DFラインの裏に抜け出したMF船山が決定機を迎える。GKオ・スンフンもかわしてシュートを放ったが、戻ってきたDFバヤリッツァが間一髪クリアして逆転ゴールとはならず。結局、ラストの約20分間で4ゴール全てが生まれるというエキサイティングな展開となったが2対2の引き分けに終わった。松本山雅はホーム戦は3試合目だったが、0勝1敗2分け。今年もなかなかアルウィンで勝つことができない。
■ 勝負強さは天下一品のFW大黒京都のバドゥ監督は、以前、長野パルセイロで監督をしていたので、長野県はよく知っているところである。松本山雅に対しては特別な感情もあると思うが、2対2の引き分けに終わった。後半29分にPKで松本山雅が先制したが、前半は京都が圧倒しており、さらに、終盤にFW大黒のゴールで京都が2対1と逆転に成功した。京都ならびにバドゥ監督にとっては、非常に悔しいドローと言える。
不思議なことに京都も今シーズンはホームで勝てておらず、ここまで3試合連続で引き分けに終わっている。アウェーで3勝全てを挙げているが、8試合で3勝1敗4分け。極端に悪い成績ではないが、湘南が8節も勝利して開幕8連勝となったので、湘南との差は「11」となった。京都にとっては、湘南が自動昇格を争う最大のライバルになると思われるので、大きな差を付けられている点は気になるところである。
ただ、力はある。DF安藤とDF染谷がJ1のC大阪に移籍したが、DF石櫃、DF比嘉、MFジャイロ、FWアレッサンドロら新戦力がレギュラーを確保しており、FW大黒は8試合で7ゴールとハイペースでゴールを重ねている。FW宮吉、FW三平、FW横谷、MF中山博がベンチに控えていることからも分かる通り、攻撃的なポジションのタレントは豊富で、試合を決めることができるタレントが多い点は強みである。
中でも、FW大黒の活躍は目覚ましいものがある。6節の大分戦(A)はハットトリックを記録して、7節の山形戦(H)は2ゴールで、この日は後半40分に逆転ゴールをマークした。8試合で7ゴールという数字もさることながら、欲しいところでゴールを奪うことができている。G大阪や日本代表で活躍していた頃から勝負強さに定評のあるストライカーだったが、京都でも勝負強さをいかんなく発揮している。
この日のゴールもFW大黒ならではのゴールだった。DF石櫃のパスを受けて流れるような動きから右足でゴールに流し込んだが、このパスをゴールを結びつけることができる選手はなかなかいない。とにかく動き出しのいい選手で、ゴール前のポジショニングも優れているが、こういう選手は「次はどんな動きをするのだろう?」と動きを見ているだけでも面白い。FW宮吉やFW有田らの最高のお手本と言える。
■ 五輪代表入りもありえるDF犬飼一方の松本山雅は、前半にあれだけ攻め込まれるとは予想できなかっただろう。京都は両SBが効果的に絡んできて、前半15分以降は京都の一方的な展開となった。決まっていてもおかしくない場面はいくつかあったので、0対0でハーフタイムに突入できたのは大きかった。松本山雅が先制ゴールを奪ったので、勝てるチャンスはあったが、前半の内容を考えると松本山雅にとっては「引き分け」という結果は悪くない。
PKのシーンに関しては、いいポジションを取っていたのはMF船山で、DF酒井隆が後ろからユニフォームを引っ張っていた点が主審の心証を悪くしたと思うが、MF船山の動きを制限するほど強くユニフォームを引っ張っていたわけではなかった。よって、京都にとっては不運だったが、ミスジャッジとは言えない。個人的にはノーファールで良かったと思うが、PKを取られても文句は言えない微妙なプレーだった。
ちょっと幸運な形で先制ゴールを奪った松本山雅だったが、その後、2ゴールを許した。こういうところで確実にゴールを奪えるところなどは「さすが京都。」と言えるが、松本山雅は最後に得意のセットプレーから同点ゴールを奪った。すでにFW塩沢はベンチに下がっており、高さのある選手が1枚少なくなっていたが、20歳のDF犬飼が豪快にヘディングで合わせてチームに勝ち点「1」をもたらした。
DF犬飼は昨シーズンの途中に清水からレンタル移籍して来たが、すぐに左ストッパーのポジションを確保した。松本山雅は終盤に快進撃を見せて。その一番の立役者が湘南から加入のMF岩上だったことは間違いないが、DF犬飼の加入も非常に大きかった。昨シーズンも3ゴールを奪っているが、DF飯田やFW塩沢が警戒される中、マークが甘くなっているDF犬飼がヘディングで合わせるシーンはパターンになっている。
DF犬飼は1993年生まれなのでリオ世代となる。空中戦が強くて、試合経験も積んでいるので、今後、五輪代表候補に挙がってきてもおかしくないが、リオ世代はCBの層が史上最高レベルである。DF遠藤航、DF岩波、DF西野、DF植田、DF吉野、DF高橋祐、DF奈良、DF櫛引などなど、有望株が目白押しなので、なかなかチャンスは巡って来ないと思うが、安定感があって、得点力の高い優れたディフェンダーである。
リオ世代とは対照的にロンドン世代はCBの層が薄かった。最終年の2012年になった段階でさえ、所属クラブでポジションを確保している選手は少なかった。もし、ロンドン世代くらいの層の薄さであったならば、DF犬飼がCBの軸になってもおかしくなかったが、先のとおり、リオ世代のCB陣は、質も、量も充実している。ある意味では不運と言えるが、競争が激しいことをプラスに考えて、レベルアップしてほしい。
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