■ アウェー対決はドローワールドカップのアジア3次予選のオマーン戦。アウェーのマスカットでの試合は、1対1のドロー。これでオマーンとの対戦成績で1勝1分けとなったため、予選突破に大きく近づいた。
日本は前半12分にセットプレー崩れからオマーンに先制ゴールを許すが、後半8分にMF遠藤のPKで追いついた。PKシーン以外でも多くのチャンスを作ったが、相手GKの好守に阻まれてゴールは奪えなかった。
終盤は日本の足が止まってセットプレーのピンチを迎えたが、GK楢崎が安定したキャッチングを見せてゴールを許さなかった。
■ 最低限のドロー日本は立ち上がりからリズムをつかんだが、一瞬のすきを突かれて先制を許した。その後、前半30分過ぎまではペースを落としたが、その後は、MF遠藤とMF中村俊を中心に反撃。後半にFW玉田が得たPKをものにして、引き分けに持ち込んだ。
その後の展開を楽にするためには勝ち点3が取れれば理想であったが、当面のライバルであるオマーンにアウェーで引き分けという結果は十分なものであり、無理に勝ち点3を狙いに行くようなことはしなかった。ドイツ大会では、初戦のオーストラリア戦で終盤に勝ち越し点を狙いに行くのか、ドローでいいのかの判断ができずに、一気に失点を重ねたが、この試合では、チーム内での意思統一はできていた。
ただ、後半35分過ぎから、完全に足が止まってしまって、オマーンに右サイドを破られかけたのは反省点で、交代のカードが2枚残っていたのであるから、もう少し早くカードを切った方が良かったのかもしれない。
■ 大きな成長を見せる玉田圭司①同点ゴールにつながるPKを奪ったFW玉田はこの試合でも質の高いプレーを見せた。この試合もFW大久保と2トップを組んだが、よくボールに絡んで突破を図った。立ち上がり早々のゴールチャンスを逃したのは残念だったが、高速ドリブルは大きな武器になっている。
ジーコ監督時代の2004年から代表でプレーしているFW玉田は、2004年のアジアカップで活躍し、日本代表に定着。ドイツW杯でもゴールをマークするなど輝きも見せたが、ムラがあって、コンスタントには活躍できなかった。
2005年オフに柏の降格に伴って名古屋に移籍。名古屋でもFW杉本らの台頭もあって、昨シーズンあたりからは控えに回ることも多くなっていたが、ピクシー監督の下、一気に才能が開花した。
■ 大きな成長を見せる玉田圭司②もともと、天性のスピードとボールテクニックを備えていて、潜在能力は並外れたものがあったが、オフ・ザ・ボールの動きが少なく、守備も熱心では無いなど、問題点も多かった。オシム監督になってからは、一度も代表に呼ばれたことはなく、完全に代表チームからは忘れ去られた存在となっていたが、岡田監督就任で、情勢は一気に変わった。
Jリーグの第1節の京都戦で抜群の切れ味を見せたFW玉田を、即、代表に復帰させ、さらにはコンスタントに起用し続けたことは岡田監督の大きなヒットである。1年半の間、代表から外れていた選手を呼び戻すのはなかなか簡単ではなく、「なぜ玉田?」という声もある中で、代表に招集した岡田監督の判断は正しかった。
■ 大きな成長を見せる玉田圭司③ピクシー監督に信頼されて起用されていることが精神的な落ち着きをもたらし、意識改革も進んでいるのだろう。以前と比べると、無謀なプレーが少なくなって、相手にとって危険なエリアで仕掛けることが多くなって、実効性のあるプレーを続けている。
アタッキングエリアでボールを受けた時は、絶えずドリブルで仕掛けて相手を惑わし、それ以外の簡単に済ませばいいエリアでは簡単に味方を使ってプレーする。その判断が高次元である。
代表ではトップに近いポジションでプレーしていることもあって、くさびのパスを受けるプレーも求められるが、ボランチやCBからのボールを引き出す動きも申し分なく、そこでボールを保持することなく、簡単にはたいてリズムを作るプレーも秀逸。
キレが命のタイプのプレーヤーなので、コンディション維持が不可欠だが、FW高原が代表から外れている状態では、フォワードのファーストチョイスである。
■ 持ち味を発揮しきれない松井大輔対照的にMF松井は、持ち味を発揮しきれなかった。ホームのオマーン戦でも出来は今一つであったが、この試合でもらしいプレーは少なかった。MF松井と同じプレーエリアで仕事をするタイプの選手が、FW玉田、FW大久保と前にそろっていて、彼らがMF松井のエリアを消してしまっているという側面もあるが、十分に機能しきれていない。
守備面ではよく頑張ってはいるが、攻撃的な良さ(ドリブルやアイディア)といった部分で見せ場を作ることが出来ないようだと、MF松井を下げて、もっと守備の強い選手を起用した方が得策である。代表に生き残るためには、残りの2試合は勝負の試合となる。
■ センスを感じさせる内田篤人のプレーDF長友の故障によって右サイドバックに起用されたDF内田は及第点以上のプレーだった。前半はややパスが味方と合わないシーンも目立ったが、次第にリズムを取り戻した。試合終盤に疲労もあってペースは落ちたが、厳しい状況でよく頑張った。
彼は20歳と若いプレーヤーだが、他のサイドバックと比べると、最終局面のプレーの選択に特徴があって、同じクロスを送るにしてもアイディアが豊富で、意外性のあるプレーができる。世界と戦うには普通のクロスを上げていたのではなかなかチャンスにならないことは明確で、従来のサイドバックには無いセンスのようなものを感じさせる。
もちろん走力もあって、身体的な能力も高いレベルにある。経験が乏しいこともあって危なっかしい面もあるが、岡田監督が辛抱強く起用しているのも理解できる。左サイドバックではDF長友が台頭し、右サイドバックにはDF駒野が起用されることが多いが、相手を押し込める展開ではDF内田という選択肢も面白い。
■ 大久保の愚行最後にFW大久保のレッドカードにつながった行為は最悪だった。幸いにして、オマーンのDFが挑発に乗って同時にレッドカードを受けたので大きなピンチにはならなかったが、リプレーで見る限り、全面的にFW大久保が悪い。
確かにキリンカップのころからFW大久保のコンディションはよくない。ホームのオマーン戦ではゴールを決めたが出来はもう一つで、フラストレーションもたまっていたのかもしれない。ただ、期待しているだけに残念である。ラフプレーで退場するのは、これが最後にしてほしい。
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